消費増税、ニセ薬効果の化けの皮が剥がれる:山田
2014-01-17

信用乗数効果のないブタ積みのベースマネー。
「アベノミクス」=ニセ薬効果の賞味期限
消費税増税が引き金になる2014年の波乱 1/16 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
時の流れが加速している。世の移ろいも速くなった。
人気商品も、ヒットソングも、リーディングカンパニーも、めまぐるしく変わる昨今である。
そんな中、近年稀な安定感を感じさせた安倍政権も2014年は波乱に揉まれるだろう。
経済(医学)用語でいう「プラシーボ効果」が綻びる。
プラシーボとは偽薬つまり「ニセ薬」のこと。
皆がクスリと信じていた時は効くが、やがて薬効は消える。
経済政策の詐術は長続きすることはない。
きっかけはさしずめ消費税増税。
アベノミクスの化けの皮が剥がれる年になりそうだ。
銀行に注がれた資金はブタ積みのまま
2013年末、日銀の資金供給量は200兆円を突破した。アベノミクスの第一の矢「異次元の金融緩和」を数字で表したものだ。市場に流し込むおカネの量(マネタリーベース)は札束で積み上げれば上空2000キロに達する市場空前の規模になった。
アベノミクスが始まる前、2013年3月末は146兆円だった。
黒田東彦日銀総裁になって54兆円が積み増しされた勘定だ。
マネーは経済の血液と言われる。大量に輸血すれば元気になる、ということだが、人の体も一国の経済もそんな単純ではない。
日銀統計を調べると銀行融資は470兆円台で微増という状態。どう見ても怒涛のマネーが貸出に向かっているとは言えない。
約50,000,000,000,000円もの黒田マネーはどこに行った。
アベノミクスでは中央銀行が銀行に大量にマネーを供給することで資金を必要としている企業への融資が増え、経済活動が活発になる、ということだった。
「銀行に注がれた資金はブタ積みです」と日銀関係者はいう。
ブタ積みとは業界用語で、日銀に設けられた銀行口座に溜まっている、という意味だ。
日銀は銀行の銀行である。一個人である我々が口座を持つことはできない。
日銀との取引は銀行など金融機関だけに許されている。この口座にカネを流したり吸いとったりして、日銀は金融調節を日々行なっている。
カネが注入されれば銀行は金利をつけて貸出し、利ザヤを抜く。それが銀行の商売だ。日銀が供給するベースマネーは銀行の飯のタネである。
飯のタネが大量に供給されているのだから銀行は笑いが止まらない、というのが普通だが現実はそうなっていない。
「飯のタネを活かせる状況ではない」と金融関係者はいう。
日銀統計によるとメガバンクの日銀口座の残高は2013年3月は15兆円だったが、11月には45兆円に膨らんだ。30兆円の増加である。日銀がせっせと資金を供給しても30兆円もの資金が滞留し、日銀の外に出て行かない。
資金需要がないから、と銀行の人たちは言う。
借りてほしい大企業は銀行に頼らない。内部留保を貯めこんでいるから。
一方、資金を求めて来る中小企業には貸せない。不良債権になることが怖い。
カネを寝かせておかないのが金融業の常識だが、こんな事態になった原因は「ゼロ金利」である。45兆円をほったらかしても資金コストはかからない。
異次元緩和は「空噴かし」状態
黒田総裁の異次元緩和は「空噴かし」という状態だ。なのに「景気は回復しつつある」といわれるのはなぜか。
円安と株高である。毎日のニュースで報告される円相場と東証ダウは日本経済が好転している印象を与える。
1ドル=80円だった円相場が100円を突き抜けた。25%の円切り下げ。ドルを稼ぐ輸出企業は何もしなくても25%利益が増えた。好決算に株式市場は湧いた。
昨年の株式市場を見ると日本株を買っているのは外国人投資家だ。
売っているのは日本の個人投資家。
企業や機関投資家は値上がりした株を抱えたままだ。
底値で買った外人は買い進み相場を押し上げている。個人は値上がりを好感して売った。
安値から比べるといい値で売れた。
あぶく銭を手にした気分が高額商品の売れ行きを活発にし、個人消費の一部を押し上げた。
円安で業績好転。株が上がった。ブランド品や宝飾品が売れ出した。
そんな朗報がデフレに沈んだ気分に一筋の光となったのが2013年の年末だった。
「アベノミクスは人々の期待感に働きかける政策」といわれる。
通貨供給を増やしても景気に直結しないことはエコノミストの常識である。
ただ、マネーの大量供給が通貨価値を下落させ、もしかしたらインフレになるのでは、という期待が高まれば、急いでカネを使う人が増えるかもしれない。
円安で輸出企業が潤えば、設備投資や賃上げが可能になり、庶民や中小企業にもカネが回って来るのではないか。そんな期待感が膨らめば人々の財布のヒモが緩み、企業の投資も増えるのではないか。
それがアベノミクス効果とされている。
金融緩和はブタ積みが増えるだけであっても、人々が「この薬が効きそうだ」と期待が膨らめば、病は気から治るかもしれない。それが「ニセ薬効果」である。
円安が生活を圧迫し始めた
その薬効に賞味期限が近付いている。政府やメディアが「景気回復」「デフレ脱却」と囃しても多くの人は実感できない。
それどころか暮らしは悪化している。物価が上がり出した。喜んでいた円安が生活を圧迫し始めた。
14日の新聞各紙は夕刊で「日本の経常収支が過去最大の赤字」と報じた。
21世紀の初頭まで日本は巨大な黒字国家だった。貿易で黒字を稼ぎ、儲けを海外に投資し、その配当で所得収支も黒字となり世界最大の債権国になった。それが近年変調した。
リーマンショック後の世界は、バブル崩壊の穴を金融緩和で埋めようとする米国などの政策によって、マネーであふれかえっている。
向かう先は供給の限られた資源や食糧。原油や鉱石、小麦、食料油などが投機の対象になり値上がりした。
エネルギー資源は中国など途上国の勃興で高騰。そこにフクシマの事故が起きた。原発が止まり石油や天然ガスに頼り、日本の輸入が急増した。
資源価格の上昇から国内を守っていたのは円高だった。安倍政権の登場と共に始まった円安がその防波堤を決壊させた。
貿易収支の赤字は、利子配当などの所得収支で埋めることができず、日本の経常収支は赤字になった。
メディアは輸出企業の業績好転ばかりを囃したてたが、暮らしを直撃する円安の弊害がボディーブローのように効いてきた。
アベノミクスは、資金供給を2倍にして2年で消費者物価を2%上昇させる、という目標を立てている。
消費者物価の上昇はアベノミクスが順調に効果をあげているから、という詐術的な説明をしているが、実態は違う。
物価を押し上げている主因は円安。
輸入インフレが起きている。
景気好転で物価が上がるのが「良いインフレ」とされるのは、物価と共に賃金も上がるからだ。賃金は上がらず輸入品が値上がれば富が海外に流出し、暮らしは悪化する。いま起きている物価上昇は「悪いインフレ」。日本経済を好循環に導くものではない。
景気は何によって計られるか。成長率、GDP、企業業績など分かりやすい指標がモノサシにされるが、21世紀に入りこれらの指標が豊かさにつながらないことが問題化している。
企業業績が好転しても給与が上がらない。賃上げところか雇用が不安定になっている。
正社員が減らされ非正規雇用が急増した。夫婦共稼ぎでも暮らしが成り立たない。
いま食べられても将来が不安、という家庭が増えている。
アベノミクスのメッキが剥がれるとき
安部首相は「日本を世界で一番企業が活動しやすい国に」と力説する。
企業の繁栄を通じて経済の底上げを図る政策だが、そのかげで弱い立場の労働者にしわ寄せが広がる。
4月から消費税が8%になる。電気代も上がる。物価の上昇が止まらない。
昨年末まで大幅に上昇した東証ダウも新年は下落から始まった。売っているのは外国人投資家だ。
円安と増税が日本経済を直撃すると見ているようだ。
円安になればドル建ての輸出価格が下がり輸出数量は増える、というのが常識だった。
ところが昨年からの円安でも自動車・家電などの輸出は増えていない。
企業の現地生産が進み、日本からの供給は円安であるにもかかわらず増えない。
日本経済の駆動力だった輸出と設備投資はいまや期待できない。
望みは個人消費だが、企業は人件費の切り詰めに必死だ。増税・物価高を乗り越えるのは賃上げしかないことは政府も知っている。
政府は財界に働きかけ、春からの賃上げを求めているが、応ずるのは一部の財界企業だけ。
新年度への移行と共に、アベノミクスのメッキが剥がれるだろう。高支持率が異変を起こすのは経済の実態が見えてきた時だ。
先取りするように政界で変化が始まっている。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ政策」。東京都知事選挙での細川護煕元首相擁立は、安倍以後を視野に入れた動きだ。
「ゆく川の流れは絶えずして……」と方丈記に書いた鴨長明の頃から、世の変転の速さは日本人の心情を揺さぶってきた。勝者必衰を吟じた平家物語、ものの哀れが込められた源氏物語も、人の世のはかなさを描いている。
強いニッポンを取り戻そう、と張り切る首相は衆参両院の大量議席をバックに、やりたい放題の活躍ぶりだが、「奢れるものは久しからず」という時空を超えたルールと無縁ではない。
アベノミクスは政治不信を募らせる庶民がすがったオマジナイだった。
「マネーをじゃぶじゃぶにすれば不況から脱することができる」という意味不明の説明に「なんでもいい、やってくれ」と破れかぶれの承認を与えた。
その途端、円安に弾みがついた。一方で急速に悪化する日本の国際収支があるにもかかわらず、すべてアベノミクスの手柄になった。
「ニセ薬効果」を支持と勘違いしたことが安倍政権の浅はかさである。
国民が期待したのは憲法改正でも特定秘密保護法でもなく、ましてや近隣と険悪な関係でもない。
暮らしを何とかしてほしい、と切実な期待と「民主党にお灸を」という憤りが相まって自民党を勝たせただけである。
暮らしは良くならない。プラシーボの幻想から覚めるのは時間の問題だ。
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ダイヤモンド・オンライン世論調査:アベノミクスはこのままに日本経済を立ち直らせると思いますか?

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※ 以下は勤労者賃金、所得の再配分と消費増税、デフレに関連するページ。
労働分配率の強制修正
世界で日本のみデフレ
日銀の金融緩和は誰のためか
信用創造と言えば聞こえは良いが
信用創造とは
公務員叩きとデフレ政策
通貨、金利と信用創造の特殊な性質
信用創造(3)無政府的な過剰通貨
デフレ脱却には賃金上昇が不可欠:根津
これからの経済生活はどうなるのか
なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
ゆでガエル!
消費増税でデフレ強行を目指すかいらい政権
日本の労働は封建主義の農奴農民か
窮乏化、3軒に1軒が貯金もなし
逆進課税とデフレ恐慌
消費増税を許すな!三党談合政権を倒そう
破滅の緊縮財政か、恐慌を断ち切る財政出動か
景気対策ではない、消費増税を通すためのGDP操作だ
安倍某の経済政策?恐怖のシナリオか
安倍の過激刺激策は過去のミス繰返し:人民網
家計、企業、政府の共倒れ破綻
生活と円安、アベノミクスが招くこと
アベノミクスが作り出す地獄の窮乏生活
通貨戦争(62)ゴロツキ右翼が口火で世界大戦:ペセック
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来年度成長率2.5%?参院選向けの国民騙し!
なぜ消費増税に固執するのか
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