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もうすぐ北風が強くなる

小沢、堀茂樹対談Vol3(5)堀質疑、八木、樋口他

  小沢、堀茂樹対談Vol3(4)からの続きです。
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【 質疑応答 】

参加者 A ; 民主主義って究極的に,全体意志って言うか特殊意志の総体みたいになっちゃわないのかなあっていうのと,「一般意志」が出てくる状態はほとんど,哲人君子が出てくる可能性と変わらないぐらいのレヴェルだったら,民主主義なんていう過程を踏まないでいいんじゃないかなあっていう気も僕はしてしまっている。

堀 茂樹 教授
 ですから,「一般意志」というのは,「これが一般意志だ」ってやった時は,実質はほとんど,独裁か,全体主義になっちゃいますね。ですから危険なんですね。
 民主主義の理論を支えるものでありながら,民主主義を裏切ってしまうことに為りかねないです。恐怖政治か,全体主義に走りかねないです。「これが,一般意志だ」っていうふうに,やるとね。
 しかしね,此処に「一般意志」があるんじゃなくて,「一般意志」を我々は探すんだ,と。模索して行くんだ,と。熟議を通して。選挙を通して。多党政治を通して。
 これが,民主主義
だと思うんですよ。

 正当な,例えば我々の国・ネイションは,こういう方針を採る,と。
 例えばバイオエシックス bioethics(生命倫理学)のことでも,「尊厳死」をどうするか,あるいは社会文化的なことで言えば,ホモ・セクシャルの結婚(同性婚)をどうするか,あるいはもちろん,原発をどうするか,と。
 色んなことを,共同体を組んで一体として生きて行こうとする以上は,分裂しないで行こうとする以上は,1つに決めなきゃならない時ありますよね。
 それを,恰も集団の,いわゆるベタな変な解釈をして,そこに「一般意志」があるかのようにすると,そうするとそれは,完全に排除の論理になりますから。
 そうじゃなくて「一般意志」は,地平線にあるものとして,それに近づく,できるだけ近づくという工夫が,多党制の政治であり,熟議の政治でありと。こういうふうに考えられる。
 そうでないと非常に民主主義は危険ですね。ですから,民主主義からヒットラーだって出て来たわけですから。

 民主主義は危険なものも秘めているっていうことを意識しながら,やって行くべきだなと,こう思いますけどね。

参加者 B ; 私は20年ほど自民党員でありながらずっと小沢さんを支持して,民主党政権になった少し前に小沢総理になると思って,民主党に移り,今は辞めていますが。
 堀先生が小沢さんを応援するということであれば,私は,1に政策2に政策3,4がなくて5に政策。それと発信力だと思う。
 一時の小沢さん,それから橋下さんもあるが,聞いてもらえる前提の具体的な政策を作り上げることに力を注いで頂いてですね。具体策なんですよ。
 「原発を止める」って言ったら,切りかえされるんですよ。「じゃあ稼働できなくなったら,工場どうすんだ」って。
 それをまた切りかえして,こうやればできるんじゃないですかということを,具体策を作り上げて行くというのが,小沢さんが総理になる近道だと思うんですね。
 今であれば,自民党と公明党が呑めないこと
 それは,円安ではなく円高の方が日本国民が豊かになるんだってことを,国民を説得できるような組み立てを,こちらが作っておいて,やるということが僕は大事だと思います。
 今は日本国民が,トヨタとか何かに補助金を与えてると同じだと,僕は思ってます。
 高い買い物をして,それで輸出企業とか大企業とかが儲かる,そういうことを世の中に知らしめて行って,今皆さんは大手輸出企業に補助金をあげてると同じだ。

堀 茂樹 教授
 質問は,何ですか。

参加者 B ; ですから,そういうことを やっていただきたいんですね。

堀 茂樹 教授
 お答えします。
 私が今小沢さんと(対談を)やらして頂いているのは,具体策ではありません。
 具体策の前に,原理原則をきちっと定める,考えるということも重要だと。具体策はもちろん重要です。
 実際の現場の政治で政策を実現して行かなきゃならない。政権を獲るためにも,仰る通り,具体策は重要だと思います。
 だけど,具体策は,何に裏打ちされるのか。何を土台にするのか。どういう哲学に基づいているのか。これもまた重要なんですね。

 ですから,具体策も,しかも本当にもっと具体策でなきゃいけませんよね,仰る通り。
 原発止めるのには,じゃあ何をやるのか。ガス・コンバインド・システムと生活の党では言ってますけれども,じゃあその天然ガスは何処から輸入するんだとか色んなことがあるでしょう。もちろん,仰る通り,それは重要です。

 しかし,私の考えは,人には,色々役割があって。私は,今,日本がこのようになっているのは,政治の文化がね,成熟してない(から)と思います。
 議論の文化が成熟していない(から)と思います。
 それから根本的に原理原則に立ち返って,政治とは何なのか,憲法って何なのか,民主主義って何なのか,っていうこともね,考えなきゃいかんと思います。 これを一般の市民がやらなかったらね(日本の状況はもっと酷くなる)。
 「良い政策を出す」仰る通りなんです。それは私は全く否定いたしませんが。
 それは,観念論をやってるわけじゃないんですよ。
 実践につながることなんです。
 実践のためには,この土台が必要
だと思って,私はやっております。

 従いまして,ちょっと今のご質問の趣旨と言うか,お気持ちはよく分かるけれども,これは無い物ねだりであって,それは私には,できないんで。
 また,政策に詳しい,1つ1つの政策に詳しい方に,やってもらえばいいと思います。そういうことなので,これが私のお答えです。

参加者 C(八木啓代氏) ; 日本の政権交代,民主党からまた自民党に戻ったことで1つ考えた。
 政権交代があった時に例えば中南米でも,また米英でも,政権交代があった時に,アメリカならホワイトハウスの職員が全部入れ替わる。 
 イギリスも,そうだ。まさに発展途上国である中南米は色々問題もあるが,大統領が交代し政権が大きく変わったら,それこそ学校の校長に至るまで全部入れ替わる。

堀 茂樹 教授 
 そうですね。(頷きながら)

参加者 C(八木啓代氏) ; そこまでやってしまうからこそ,逆に混乱が起きてという部分も,もちろんあるが,ただ,日本では政権交代が確かに起こった。起こったが,官僚はまったく,傷一つ受けなかった。全く変わらなかった。

堀 茂樹 教授 
 (つくづくと)そうですね。(頷く)

参加者 C(八木啓代氏) ; あれはたしかに政権交代ではあったけれども,本当の意味の政権交代ではなかったと私は考えている。
 日本は,三権分立と言いながら,司法,行政,立法の中で,行政が圧倒的に強い
 官僚の力が圧倒的に強い。(例えば)警察・検察という,司法ではなく,行政である官僚の力が圧倒的に強い。
 小沢さんが,検察にやられたというのも,ある意味,共和制の部分にメスを入れようとしたからという部分が相当大きいと思う。
 だからこそ,その後の菅内閣,野田内閣も続いて,徹底して行政と迎合する,官僚に迎合するような政策を打ち出すことで,自らの延命を図ろうとした。
 そして今の自民党政権も,まさに官僚に迎合する政権となってしまった。
 そうなると例え政権交代が起こったとしても,結果的に,官僚の力を弱めるようなことをやろうとした政権は潰されて,官僚に迎合する形でしか政権が延命できないのであれば,日本は,ある意味,永久に政権交代はできないことになってしまう
 その辺りはどうお考えでしょうか。 (会場・拍手)

堀 茂樹 教授
 さすがに論理的だ(笑)。私も常々思っている通りですね。まず最初に,2009年にいったん政権交代した時に,省庁のそれまでずっと自民党政権と共にやってきた局長クラスの方(の首の)挿げ替えは全くありませんでしたし,本当に当時,私一市民としては,高級官僚の人を替えるっていうのは,政治家でもできないのか,と。(苦笑)あまりにも素朴過ぎて,ナイーヴ過ぎて笑われるかも知れませんが,そんなに強力なのか,と思ったぐらいで。
 実際,仰る通り,戦争を越えて官僚制は生き残りましたし,ずっと,天皇制の頃から今日(こんにち)に続いてますよね。
 
 それについては,最近,小沢さんが若干語っているのを聞いたことあります。
 それは,アメリカのように全く完全に取り替える。アメリカの場合は大学教授だとか何とかいっぱい入ります。あれだと,余りにも継続性が失われるし,日本の場合,どうせできることではないので,現実性は薄い,と。
 しかしある程度は,それをできるようにすべきだ,と。そうでないと,変わることはできないだろうという点では,今仰って下さったことと一致した考えをお持ちなんではないかと思いますし私もそう思います。(※1)

 ただ,じゃあ,どうやって変えるかということですが,まず,官僚とひと口に言っても,優秀か優秀じゃないか(笑)色々あると思いますが,同じ日本人でありまして。
 日本の1つの大きな問題は,西欧と比べると,高級官僚や,省庁のキー・パースンみたいな人達が全員ひとつのコーポレィションを為しているということじゃないかと思うんですね。
 野党側と非常に親しい,野党側に付いてる,始めから公明正大に野党側のシンパだよと言う官僚なんていないわけです。
 これ,おかしくて。
 じゃあ,自民党のシンパかと言うと,そうじゃなくて何か,自民党のほうが官僚のシンパみたいなわけでしょ,今は。
 そこが何か,いわゆる動的な,民主主義のダイナミズムが働くシステムじゃなくて,硬直した,何かこう,やっぱり日本の古い家族・家父長制度のような,そういうものに国家全体がなってるって処に,問題があると思うんですね。

 それでじゃあ,どうしたら良いかですけど,私別に専門家じゃないんで私なりに考えてることを1つ言えば,僕はやっぱり,思想闘争だと思うんですね。イデオロギーだと思うんですね。
 つまり,価値観。何が,我々の信奉すべき価値かということは色々あって良いんですが,これをもっと,おおっぴらに(闘わせる必要がある)。
 だから,それこそ,原理原則の話しをして,何が我々の共有すべき価値か。政治目的は何なのか。それから,政治目標は何なのか。その目標を達成するためには,どういう手段が必要か。
 というように,レイヤー layer(地層・階層)を分けて考えていくことによって,そして,価値観の問題や思想の問題をパブリック・スペィスと言うかパブリック空間で議論をすることを,できるだけやって。

 最近,大学の先生等とか色んな方が声を上げ始めていますが,こういうのをもっと大きくして,それから言うまでもなく一般市民も参加して,そういう議論をして。
 そうすれば,官僚の中にも行政機関の中にも色々考える人はいるはずで。「既得権益,既得権益」って言うけれども,何もそれにしがみ付いてるだけの人じゃない。国益とは何処にあるんだと(色々考える人はいるはずだ)。
 おそらく今の官僚の方は,新自由主義で走るのが国益だと思ってるんでしょうし,あるいは自民党の非常に偏狭なナショナリズムに走るのが国益だと思ってるのかも知れませんが,そんなのも彼等は勉強した人達なんだから,議論すれば色々変わって行くんじゃないか,と。
 私としては,それに期待したい。

 そういうレヴェルでちょっと具体的なことを言えば,例えば樋口陽一さんとか。本当に国際級の憲法学者ですよ。あのレヴェルの人に教わった人達も官僚の中には,いると思うんですね。

樋口 陽一 ひぐち よういち 法学者。専門は比較憲法学
1934年9月10日 ~

 だから,フランクにオープンな議論の文化っていうものを作って行けば,色んな考え方が生まれてきて,体制に付いていないといけないんだって言う,この雁字搦めのメンタリティは克服したいな,っていう感じです。
 本当に答えになってませんけれども,問題の一番の核の処を仰って下さったんで,そのことの認識だけでも,重要なんじゃないかと。
 処方箋は考えなきゃいけないけど,診断書っていうものは重要なので,事実認識,今,我々はどういう状況にいるのかということを,希望的観測じゃなくて現実を直視する処から始まるんだろうと思います。
 答えになりませんけど,ご発言に感謝する次第です。

司会者 ; あと1問で終わりにいたしますが,どなたかございますか。

参加者 D ; 「日本人が自立しない」ということで,小沢先生からもご意見があったわけですが,堀先生から見て,日本人がこれから自立する可能性があるのかどうか。
 と言うのは,私は田舎に住んでいまして,どうも周りを見ると,自立という言葉自体をあんまり認識していない,そういう方がいる。
 私の偏見かも知れませんけれども,そういう方が非常に多いんじゃないか。
 本当に日本が民主主義社会にたどり着くには,前提としての個々の自立がしっかりして(そうした人が)多数にならなきゃいけないとした場合,堀先生から見て,この日本はまだ,救い道があるのかどうか,その辺をお聞きしたいんですけれど。

堀 茂樹 教授
 はい。我々こうやって日本の現状を嘆くことが多いですけれども,一方では,
私はちょっといい加減だけど,一般的に日本人は完璧主義だっていう問題もあるかと思います。
 民主主義を完璧にやらなきゃいけないと思うと,そりゃあ,なかなか到達しません。
 さっき話しの出た,イギリスであれアメリカであれフランスであれ民主主義の先進国と言われているけれども,もう本当に民主主義が機能しないという問題を,今,抱えています。全然,そんな上手く行ってるわけじゃないですね。

 民主主義というものが,1つのアイディア・理想としてそれを措定するとしても,そんなの100%実現してる国なんて,1つも無いですよ。多かれ少なかれなわけですね。ですから...
 ご質問の趣旨は良く分かります。一方では私もこういうこと言ってますが,,一方ではちょっとリラックスして,なるべくやって行けばいいんだっていう気持ちになることも重要かな,と。
 そうでないと,自由闊達な議論も始まらなくて,何かもうエライ大変なことをやること(と感じるが)そんなこと,ないですね。
 他の色んな生活,社会のあり方やなんか見ていれば,何も日本人が劣ってるなんてことは全然無いわけですから。まず,そのことが1つ言えると思います。

 一方で,とは言えなかなか,そういう個人の自立,と...小沢さんが仰ってる,あの自立。自ら立つ,のほうですね。
 先程,私が民主主義の地平としての自律と,個人的・集団的自律と言ったのは,自ら律するほうなんですけれども。
 まずは,自ら立たなきゃならない。その自立ですが,雲の椅子のように非常にこう真綿で包(くる)まれる様にできあがってる我々の,非常に綿密な日本社会の蜘蛛の糸のような関係性と言われるものですね,これを,私は,どっかで断ち切ることが必要だと思うんですね。それは,断絶することですね。それはもう,違うんだ,と。

 ところがですね,その真綿で包(くる)まれた蜘蛛の巣のように張り巡らされた我々の人間関係の,調和を大事にし,相手の立場をある意味では考え,そして,乱暴な突慳貪(つっけんどん)なことはしないで穏やかにやっていきましょう,と。
 こういう一体感のあり方っていうものが,一方では,日本の強みなんですね。

 世界にも色んな社会文化がありまして,やっぱり,ドイツ,スウェーデン等。特にドイツと日本は,そういう処は似ている所があって,そういう社会文化の中で,ものづくり産業とか,製造業などは,発展すると言われてます。そういう連携がなければできない,高度な富の創造だからだと言われています,製造業は。

 あっ,時間が!(司会者が,タイム・アップを告げた様子で)

 それに対して,金融業であっという間に儲けて,あっという間に買って売り逃げするというようなことは,そういう社会には向いてないと,言われている。
 だから,日本の,そういう連綿と繋がるような人間関係のあり方,連帯の仕方。これは,災害があった後も,ある程度規律が保てたということ,これにも繋がっていて,強みなんですね。

 強みなんですが,どっかで,1人ひとりの人間は,お母さんの御蔭だけど1人で生まれてきて,1人で死ぬんだし,どっかで1人なんだっていう...
 だから,その,どこかで断ち切るものが,必要だろうと思うんです。
(司会者に,もう時間ですと再度注意される) すいません(と言いながら,立ち上がる) (会場・困りましたねって感じの笑)
 それは,例えば西洋だと,宗教をもたらしてる。キリスト教は,その,断ち切るという力があるんですね。
 その,断絶というものをどこかで我々も取り込まないと,我々の持ってる横の連携の強さってものも,これから継続的に活かすこともできないんじゃないか,と。非常に重要な部分だと思っております。

司会者 ; それについてはまたいずれ。
 了
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