小沢、堀茂樹対談Vol3(2)前代未聞の野党、自己主張がなければ民主主義はない
2013-12-26
小沢、堀茂樹対談Vol3(1)からの続きです。
ーーーーーーーーーーーーーー
小沢 一郎 代表
その他では,はっきりとイエス・ノーを言ったのは,我々(=生活の党)だけです。
堀 茂樹 教授
そうですね。はい。
小沢 一郎 代表
そういう国会の状況は,数の問題じゃなくて,非常に僕は残念に思います。
ただ,1つ良いことは,第3極と称して自民党と対峙するかのように言っておられた維新の会とみんなの党が,ほぼ自民党と同じだと。
考え方,政治スタンスが(自民党と同じだ)ということが,はっきりしたことですね。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
秘密保護法は,自民党・公明党・維新の会・みんなの党の共同提案です。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
ですから私は国民の皆さんはね,何となく(維新の会・みんなの党は)第3党的なイメージで,自民党とは違う,こういうきちっとした,よりマシな主張と政治をやってくれるんのかなあ,という期待感で,多分ね,維新の会にもみんなの党にも(票を)入れたんだろうと思いますけれども。
まあ実態は,今度の国会で明らかになったことは,所詮,(彼等は)自民党と同じ,ということが分かったということ。
これは良かったですね。
堀 茂樹 教授
ああ,成程,分かります。
今日の本題じゃないですけど,参議院の議決の時にですね,いやいや,衆議院の議決のときもそうですが,維新の会は(秘密保護法の)提案者ですよね。
でね,議決・評決の時に棄権したんだ,と。
小沢 一郎 代表
前代未聞強調文ですよ。
堀 茂樹 教授
それも,議場から,いなくなって。
小沢 一郎 代表
共同提案者になっててね。
そんだったら,もっと自民党にね,開き直って文句言やあ,いいことを。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
共同提案者がねえ...(議場から)いなくなっちゃうってのはねえ...(全く呆れたという様子で)
堀 茂樹 教授
それから,参議院の(採決の)ときは...
小沢 一郎 代表
参議院のときは,両方ともいなくなっちゃった。
堀 茂樹 教授
両方ともいなくなっちゃった。
小沢 一郎 代表
ちょっと信じられないですね。どういう考え方しているかちゅうのが,まったく,僕なんか分かりませんね。
共同提案者っていうのの重みをね,まったく感じてないんじゃないですかね。「秘密保護法」の共同提案者ですよ。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
僕は本当にね,そこでビックリしたと言うか,何か...ほんとに唖然としました。
堀 茂樹 教授
いくつか委員会の委員長を解任して取り替えるとかですね,そういうことも含めて,異例のことが幾つか国会の中であったわけですね。
小沢 一郎 代表
ありました。
それから,野党,代表的なのは民主党ですが,民主党も最後になって,担当の国務大臣の不信任を出してたのが,直前になって内閣不信任に変えてきたんですね。
これも,僕等にも誰にも相談しないで,ピョーンと(=突拍子もなく単独で)出したもんですから。
普通は,内閣不信任案ですから,記名投票なんですよ。それぞれが皆な,あれ書いてね,札(議員名が予め書いてある)持って行くんですけれども。結局,起立採決で,チョーンと(=簡単に否決)されちゃったんです。
堀 茂樹 教授
はああ。
衆議院規則153条,参議院規則139条
記名投票は問題を可とする議員が白色の票(衆議院規則では白票,参議院規則では白色票という)を,問題を否とする議員は青色の票(衆議院規則では青票,参議院規則では青色票という)を投票する。それぞれの色の木札は各議席に用意されており,白票(白色票)には黒い字で,青票(青色票)には赤い字で予め議員の氏名が記名されている
小沢 一郎 代表
内閣不信任案が起立採決でケリ付けられたのは,これは30数年ぶりですよ。
戦後3例目の「内閣不信任決議案」起立採決
1975年 7月 3日
三木武夫内閣 不信任決議案(否決)
1982年 8月18日
鈴木善幸内閣 不信任決議案(否決)
2013年12月 6日
安倍晋三内閣 不信任決議案(否決)
(下部参考 ※1 )
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
それほどもう,歯牙にもかけない。バカにされちゃって,もう。(笑 )
記名投票もできないという話しでね。
これもまた,まあ,みっともない話しでしたねえ。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
そうするとね,やはりこの(特定秘密)保護法案が通って,成立してしまったことを,この経緯も含めて,やっぱり議会制民主主義が危うい,と。
日本に議会制民主主義がどの程度定着していたのかは,これはまた考えなきゃいけないけれども,しかし一層危機的な状況にあるということは確かだと。そう思われますか。
小沢 一郎 代表
そう思います。
ただ,そう思いますけれども,このまんまで推移すりゃあ本当に日本の将来はないと,僕は思いますが。
ただ私自身が非常に,ある意味期待してますのは,やはり4年前の夏の選挙で,半世紀以上も続いた自民党長期政権をね,国民は,変えましたよね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
私は,この政権交代というのはね,民主党の失敗で「なあんなの!もう,やる必要なかった」みたいなことを言う人も「意味無かった」と言う人もいますけど,そうではないと思います。
僕はやっぱり,国民・日本人自身がね,自民党政権というのはもう,ずうっと続くんだと思ってた,ほとんどの日本の国民がね,やっぱり,自分の意思で政権,変えられるんだ,という認識をね,持ったと,僕は思います。
ですから,その意味では非常に良かった。
それでまあ民主党政権が成功すりゃあ,もっと良かったんですけど。(笑)
堀 茂樹 教授
そうですね...私は...
小沢 一郎 代表
それでも,僕は良かったと思います。
堀 茂樹 教授
私は,あと1年か2年でも続いていたらと思いますね,ええ。
小沢 一郎 代表
その話しするとまた長くなるから。(笑)
堀 茂樹 教授
ご存知だと思いますが,ネットの方でツイッターっていうものがありますよね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ツイッターで知り合った,会ったこともない方ですが,ロンドンにいる若手のお医者さん,優秀な方だと思いますが,ロンドン大学(UCL)で医学部で研究室を持っている人で,小野(昌弘 おの まさひろ)さんという方がいらして,此間もそのことを振り返って,民主党政権の失敗で,何か,国民の間に「政治的自律」これに対する敵意さえ呼び起こしてしまった,と。それが今の状況につながったんじゃないかと言ってましてね。
だから今,小沢さんが仰った,やっぱり自分達の選挙によって政権交代を成し遂げたということの意義も,私も今も続いていると思うんですが,一方で民主党政権のいわゆる失敗と見做されているもの,まあ,見做さざるを得ないものに対して,国民が非常にですね..何て言うか,失望が...
小沢 一郎 代表
まあ,失望感がある。
期待が大きかっただけに,失望のほうがもの凄い大きい,その反動として。そりゃあ,その通りですけど。
私は,だけど,繰り返しますけど,国民皆さんは,その,政権を自分の手で変えられるという経験を積んだわけですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
これは,非常に,大きいと思います。
ですから,私はそう悲観的に見てません。
堀 茂樹 教授
そうですか。
小沢 一郎 代表
その1つの事実として,総選挙で,自民党の支持票は増えてません。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
参議院(選挙)でも同じです。
堀 茂樹 教授
確かに。はい。
小沢 一郎 代表
ただ,1割以上・1千万人以上の人が,棄権しました。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それからまあ,私共の責任ですけれども,票が,受け皿が分散しちゃって,それで自民党に大量の議席を与えたんですけど,私は現実を見ると,非常に国民皆さんなりに期待してますし,楽観してます。
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
と言うのは,総選挙後もね,ほとんど首長選挙・自公と 1対 1の首長選挙は,全部,自公以外が勝ってますよ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
つい此間の,川崎の(市長)選挙。 (※2 )
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
小沢 一郎 代表
これまた,民主党,何考えてんだろうと思うけど,(落選した候補者は)自公民で推薦ですよ。
堀 茂樹 教授
そうでしたね。
小沢 一郎 代表
それなのに,無所属候補に負けてんだから。
兵庫県神戸市もそうですよ。あと数千でもって,自公民(推薦候補)が負けるところだったんですよ。 ( ※2 )
ですから,それだけ民主党に対する失望がうんと大きかったですけども,だからと言って(国民は)自民党,自公の政治が良しとしているわけでは決してないと。
だから,私がさっき言ったように,維新とみんなの党は,もう自民党と同じ考え方・政治スタンスなんだということがハッキリしましたから,自公に対立する受け皿っていうのは,それ以外のグループで作ればいいんだし,
また,維新の中にもみんな(の党)の中にも自民党と擦り寄るっつうのは良くないと考えてる人達もきっといると思います。
そういう人達も含めて,あるいは政権党だから割れませんけれども自民党の中にも,安倍さんのね,やってること良いと思ってない人が,僕はいると思う。
だから,そういう意味で,今も基本的な(政策である)秘密保護法にしろ,原発にしろ,TPPにしろ,消費税にしろ,税制にしろ,本当に国民生活に直接大きな影響を及ぼす,大きなテーマが控えてますんで,そのテーマに対する意見・賛否で以って,ある程度色分けできるんじゃないかというふうに僕は思いますね。
堀 茂樹 教授
成程。
もちろん,そういう強い確信を持っていただいてるのは,私ももちろん,政治の方針,オリエンテーションは,まったくそちらの方に賛成なので,市民としては力強く感じるんですけれども。
まあ正直なところは,個人的には,いやあ,なかなか難しい(苦笑)と思ってるんですね。
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。ミッテランが大統領になった。あれはフランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。
ミッテランが大統領になった。あれは,フランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ミッテランという人,こう言っちゃ何だけど,なかなかの狐のような人で。
小沢 一郎 代表
かなりの < 聞き取り不明 > ですね。
堀 茂樹 教授
ええ。なかなか分からない人なんだけれども,とにかく政権交代が起こってですね,あん時バスティーユに,もう本当に,人びとが集まって,歌ったり演説したりっていう渦の中に,私,立ち会いましてね。
政権交代っていうのは,こういうふうにして起こるのかと思ったことあるんですね。
そして,その後のフランス社会党政権は,サッチャー・中曽根・リーガン時代の環境の中で,完全に失敗しましたけれども,
経済政策では失敗したけれども,政権は維持してですね,そしてその後,何度も政権交代が起こり得るという態勢に態勢に戻っているんですね,フランスは。
で,あん時に,選んだほうが正しいか正しくないかってのは,歴史が最終的には決めるだろうけれども,しかし自分達の意思で多数派を形成して,政治を,国政を動かせるんだっていう実感をね,あの時,フランス人達は改めて(持った)。
まあ歴史を遡れば,フランスには政権交代があったわけですけれども。それを感じただろうというふうに(見えた)。それを立ち会ったことがあるんです。
それから見ると,今,私にとって大事なのは何と言ったって日本なんですけれども,我々の社会生活においてもですね,やはりその異論を述べる,何か体制と違うことを異議を申し立てる,ということ自体を,割とまるで悪いことのように見られることが多くて,
それで,いっぱしの社会人の何か勉強もした人達の社会生活の社交の中で,実際のところ,政治や社会のことが話題になることは,無いんですね。
避けてる。
小沢 一郎 代表
うん。そうですね。うん。
堀 茂樹 教授
だから,そういう,政治文化そのものの未成熟っていう問題が根本にあるので,なかなか今仰ったことも一理あると思いながら,まあ難しいなあとか,私は思うんですけれども。
それで,そういうことから考えると,果たして我々この日本人,日本市民は,民主主義ってのをね...
1回,やっぱり 2009年には多数の日本人が,これは,希望を持ったと思うんですが。「やった!」とおもったと思うんですが。
つまり政治主導と仰った,小沢さん,リーダーでしたから。
それから,政治主導ってことは国民主導ってことですから。
言うまでもなく,取りも直さず,国民主権ということですから。
これでやって行こう,と。
別に官僚を敵視するとかいうことじゃないけれども,決定権は国民にあるんだっていうことで,やろうとしたわけですよね。それがちょっと上手く行かなかったことで...
もう一度ですね,やっぱり何か,上の人に,お上に任せた方が良いっていうふうな,そういうリアクションが起こってきているように思えてならず,ですね。
いったい,日本人が,その民主主義っていうものを本気でやる気があるのか,と。
それを確かめるためには,考えるためには,民主主義とは何ぞや。
何故,民主主義を採るべきか,と。
それから,その次の問題として,何故,議会制民主主義・代表民主主義を採るべきか,という問題もあると思うんですが,まずはその,やっぱり日本も色々な伝統・文化があるけれども,民主主義という,これ発祥は西欧近代ですけれども,これを採用してやって行くべきだと,小沢さんがお考えになっているんだと思いますけれども,それは,何のために,何故,そういうふうにお考えになりますか。
小沢 一郎 代表
日本にも,古来から民主主義が無かったということではないと私は思うんですね。
ただ日本は,何千年か何万年か分かりませんけれども,非常に古代は,より温暖な気候で,より豊かだったと言われてますし,
日本の歴史に大陸諸国家のように血みどろの争いというのは,ほとんど無いんですね。
権力者同士の争いはありましたけれども,一般の人が参加した民族と民族の争いとか,国と国の争いみたいなものは,ほとんど必要無かったんだと思うんですけれども,それだけ平和で豊かであったと思う。
だから,コンセンサス社会なんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
全会一致のコンセンサス社会で,それでやって来れたんですね。僕はそう思います。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
ですから,コンセンサス社会の中では,自己主張はできるだけしない方が良いんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
今の日本社会も,そうじゃないですか。
色んな会社でも何でも,何か意見一生懸命言うと,あの野郎ばっかり喋る,って言うでしょ。
堀 茂樹 教授
「空気を読めない」って言う...
小沢 一郎 代表
(両腕で丸く収める所作をしながら)そうすると「まあ,まあ,まあ」ってこうなるんですね,すぐね。
それでやって行けるならば,僕はそれは良いと思います。
日本的な民主主義で。
堀 茂樹 教授
はあ,はあ。
小沢 一郎 代表
だけどやっぱり特に世界が段々だんだん,グローバルな形になって来て,日本も明治維新を経て,という近代化の中でね,結局,単なる鎖国の,日本の鎖国政策で日本人だけで丸く丸くでは,もう納まらない。
近代社会の中で日本は生きていかなきゃなんない。
そういうことになって,最初は良かったんだけど,結局は,戦争というあれで失敗してしまったということなんですが。
堀 茂樹 教授
確かに戦争に突っ込んでしまったあの歴史は,あの過程は,自由な議論を,対立した勢力が自由に議論をすると言うか,そういうことではなくて,大政翼賛会になって,体制に迎合して行くっていうことになりましたので。
小沢 一郎 代表
非常に心情的なものごとに,日本人は動かされるんですね。
右というと右,左というと左,みたいな,その時の雰囲気。
まあ小泉さんがよく雰囲気って言葉使ったけど。それに流されるんですね。
要するに,自己主張というのが無い。
自分自身で考え,自分自身で判断し,自分自身で結論を持って行動をするという,いわゆる自立ですね。
僕がいつも言ってるんだけど。
自立心がまだまだ足りない。
ですから,民主主義というのは,個人個人の自立があって成り立つわけですよ。
だから,そういう意味でね,日本は,世の中が,地球社会が,世界が,変わっちゃってるんですから,それの中で生き延びていくためには,やはりきちんとした自己主張を持って,世界の国々・世界の人たちと接して行かなきゃならない。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
ですから,それはその即ち民主主義だということと同義語なんですね。ギリシャの昔にもね,民主主義というのは衆愚政治だと。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
要するに手続きは,メンドくさいしねえ。一々,皆なの話し聞いてたんでは,ロクな結論出ない,と。
衆愚政治だというふうに言われるんですが,確かに衆愚政治の面があって。ソクラテスでしたか? 哲人政治を...
堀 茂樹 教授
プラトンです。
小沢 一郎 代表
プラトンが,哲人政治を一番良いわけだと。神様がやってくれるんなら,一番良いわけですね。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
だけどそんな(神様のような)のは,人間はいないわけですから,結局皆なでやって,衆愚的な要素はあるけど,独裁よりも大きく間違うことはない,という処に,民主主義のね,良いとこあるわけですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,時間はかかる,手間暇かかる。まあ,さっぱ結論が出ない,という欠点あるんだけど,大きな間違いはしない,
という処に私は民主主義の良いところがあって,そのためには皆なが自分自身の考えをきちっと持って,それで自己主張しなきゃいけないんですね。
それが無いと,もう民主主義は成り立たないで,日本は今なお,僕はそうだと思ってるんです。
堀 茂樹 教授
そうですね。ええ。
それとね,こういうことは如何ですか。
もちろん私,小沢さんの本,全部読んでますからね。書いておられたのを思い出したから言うんですけれども,民主主義っていうのは,やっぱり,仰る通り,市民が皆な自分で考えて,自由な議論を通して合意形成をして,ですね。だから,最初にコンセンサスがあるんじゃなくて,コンセンサスを見つけるように議論をして行く,と。
コンセンサスは初めに無いというのが前提で,対立衝突があるのは当たり前と。
これを受け入れて,そしてフェアーに議論をして,最近はそれを熟議とか言ったりもしますけれども,それをして,合意形成をして行く,と。それでコンセンサスに至る,と。
で,このコンセンサスが強いんだ,ということを,仰ってたと思うんですよ,書いておられたと。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
つまり,自分たちが決めたんだと。自分たち,集団的に決めたんだ,ということが,これは強いよ,と。
やっぱり,その,権威に従って,上から言われるからって,従ってた,そういう集団は...
小沢 一郎 代表
弱いです。脆いです。
堀 茂樹 教授
戦争の時は言うまでもなく,ですね。平和の時も,脆いと。この点。これも 1つの理由なんじゃないですか,民主主義の。
小沢 一郎 代表
うん。私は,本当に,そう思います。
自分たちで議論し,自分たちで決めた,と。これほど強いものはないんですね。だからそこに民主主義の強さがあって。
僕,時々ね「話しせい」って言われた時に,昔『戦場にかける橋 』って(映画が)あったんですよ。(テーマ曲が)「クワイ河マーチ」のね。
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
戦場にかける橋
The Bridge on The River Kwai
1957年公開の英・米合作映画。主題歌:クワイ河マーチ
小沢 一郎 代表
あれは,日本人をバカにした映画だと言う人もいたけども...
堀 茂樹 教授
ははは(笑)
小沢 一郎 代表
そんな詰まんないことを見てないで。 あの時に,日本軍があそこ占領してて,アメリカやオーストラリアの兵隊を捕虜にしてましたね。
ある時,英国の部隊が捕虜としてやって来るんですね。ところがもう,整然として,それこそ「クワイ河マーチ」をね,口笛吹いて,指揮官は指揮官のままで,来るんですね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
そして,(日本軍が捕虜となった英国軍に)「橋造れ」って労働させるんだけど,これはジュネーブ条約によって,将校は労役を課せられない,ということを,その指揮官はね(主張し)もう絶対言うことを聞かないわけ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それでね,独房に入れられて1週間もやられたんだけど,それで頑張って...それに対して兵隊皆ながね,拍手喝采で迎える。
日本が敗れた時はね,日本人の捕虜の話しありますが。
堀 茂樹 教授
ええ。『 アーロン収容所 』。
小沢 一郎 代表
『 アーロン収容所 』から何から色んなのあるんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ,ありますね。
『 アーロン収容所 』 中公文庫
会田雄次(あいだゆうじ)歴学者
1916(大正5)年 3月5日(日)― 1997(平成9)年 9月17日(水)
小沢 一郎 代表
だけどもう,そうなった途端にね,世界一の軍規を誇った帝国陸軍,特に陸軍が,そうなっちゃうと,もうメチャクチャになって,上下関係もなけりゃ何も無いというようなことで,白人に笑われたんですけれども。
それは何故かと言うと,やっぱ,権力によって権威によって作られた階級なんですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,俺達認めたわけじゃないぞ,という意識がどうしてもありますから,権威がなくなった途端に烏合の衆になっちゃうんです。
ところがその『戦場にかける橋 』の英国人。僕は英国人ってあんま好きじゃないんですけども。
堀 茂樹 教授
はははは(笑)
小沢 一郎 代表
だけども,彼等はやっぱ,偉いんですね。自分たちで決めたルールだと。
堀 茂樹 教授
うん,そうなんですね。
小沢 一郎 代表
将校も,自分たちの決めたルールに従って将校になり指揮官になってるんだと。これは,捕虜になったって,このルールはきちんと守るんだと。
その意識の違いが,僕は,日本人と彼等の違いだと思いますね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから日本人はもう少しやっぱり,主権者って言われんだから。
自分たちも時々,私たちは主権者だ,なんて言うんだから。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
自分で言う限りはね,主権者らしく振舞わなきゃ駄目ですよ。
だから,そういう意味で,私は,日本にもう少し民主主義,即ち日本人の自立を,ぜひお願いしたい。
堀 茂樹 教授
成程。
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小沢、堀茂樹対談Vol3(3)へ続きます。
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小沢 一郎 代表
その他では,はっきりとイエス・ノーを言ったのは,我々(=生活の党)だけです。
堀 茂樹 教授
そうですね。はい。
小沢 一郎 代表
そういう国会の状況は,数の問題じゃなくて,非常に僕は残念に思います。
ただ,1つ良いことは,第3極と称して自民党と対峙するかのように言っておられた維新の会とみんなの党が,ほぼ自民党と同じだと。
考え方,政治スタンスが(自民党と同じだ)ということが,はっきりしたことですね。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
秘密保護法は,自民党・公明党・維新の会・みんなの党の共同提案です。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
小沢 一郎 代表
ですから私は国民の皆さんはね,何となく(維新の会・みんなの党は)第3党的なイメージで,自民党とは違う,こういうきちっとした,よりマシな主張と政治をやってくれるんのかなあ,という期待感で,多分ね,維新の会にもみんなの党にも(票を)入れたんだろうと思いますけれども。
まあ実態は,今度の国会で明らかになったことは,所詮,(彼等は)自民党と同じ,ということが分かったということ。
これは良かったですね。
堀 茂樹 教授
ああ,成程,分かります。
今日の本題じゃないですけど,参議院の議決の時にですね,いやいや,衆議院の議決のときもそうですが,維新の会は(秘密保護法の)提案者ですよね。
でね,議決・評決の時に棄権したんだ,と。
小沢 一郎 代表
前代未聞強調文ですよ。
堀 茂樹 教授
それも,議場から,いなくなって。
小沢 一郎 代表
共同提案者になっててね。
そんだったら,もっと自民党にね,開き直って文句言やあ,いいことを。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
共同提案者がねえ...(議場から)いなくなっちゃうってのはねえ...(全く呆れたという様子で)
堀 茂樹 教授
それから,参議院の(採決の)ときは...
小沢 一郎 代表
参議院のときは,両方ともいなくなっちゃった。
堀 茂樹 教授
両方ともいなくなっちゃった。
小沢 一郎 代表
ちょっと信じられないですね。どういう考え方しているかちゅうのが,まったく,僕なんか分かりませんね。
共同提案者っていうのの重みをね,まったく感じてないんじゃないですかね。「秘密保護法」の共同提案者ですよ。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
僕は本当にね,そこでビックリしたと言うか,何か...ほんとに唖然としました。
堀 茂樹 教授
いくつか委員会の委員長を解任して取り替えるとかですね,そういうことも含めて,異例のことが幾つか国会の中であったわけですね。
小沢 一郎 代表
ありました。
それから,野党,代表的なのは民主党ですが,民主党も最後になって,担当の国務大臣の不信任を出してたのが,直前になって内閣不信任に変えてきたんですね。
これも,僕等にも誰にも相談しないで,ピョーンと(=突拍子もなく単独で)出したもんですから。
普通は,内閣不信任案ですから,記名投票なんですよ。それぞれが皆な,あれ書いてね,札(議員名が予め書いてある)持って行くんですけれども。結局,起立採決で,チョーンと(=簡単に否決)されちゃったんです。
堀 茂樹 教授
はああ。
衆議院規則153条,参議院規則139条
記名投票は問題を可とする議員が白色の票(衆議院規則では白票,参議院規則では白色票という)を,問題を否とする議員は青色の票(衆議院規則では青票,参議院規則では青色票という)を投票する。それぞれの色の木札は各議席に用意されており,白票(白色票)には黒い字で,青票(青色票)には赤い字で予め議員の氏名が記名されている
小沢 一郎 代表
内閣不信任案が起立採決でケリ付けられたのは,これは30数年ぶりですよ。
戦後3例目の「内閣不信任決議案」起立採決
1975年 7月 3日
三木武夫内閣 不信任決議案(否決)
1982年 8月18日
鈴木善幸内閣 不信任決議案(否決)
2013年12月 6日
安倍晋三内閣 不信任決議案(否決)
(下部参考 ※1 )
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
それほどもう,歯牙にもかけない。バカにされちゃって,もう。(笑 )
記名投票もできないという話しでね。
これもまた,まあ,みっともない話しでしたねえ。
堀 茂樹 教授
ふうむ。
そうするとね,やはりこの(特定秘密)保護法案が通って,成立してしまったことを,この経緯も含めて,やっぱり議会制民主主義が危うい,と。
日本に議会制民主主義がどの程度定着していたのかは,これはまた考えなきゃいけないけれども,しかし一層危機的な状況にあるということは確かだと。そう思われますか。
小沢 一郎 代表
そう思います。
ただ,そう思いますけれども,このまんまで推移すりゃあ本当に日本の将来はないと,僕は思いますが。
ただ私自身が非常に,ある意味期待してますのは,やはり4年前の夏の選挙で,半世紀以上も続いた自民党長期政権をね,国民は,変えましたよね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
私は,この政権交代というのはね,民主党の失敗で「なあんなの!もう,やる必要なかった」みたいなことを言う人も「意味無かった」と言う人もいますけど,そうではないと思います。
僕はやっぱり,国民・日本人自身がね,自民党政権というのはもう,ずうっと続くんだと思ってた,ほとんどの日本の国民がね,やっぱり,自分の意思で政権,変えられるんだ,という認識をね,持ったと,僕は思います。
ですから,その意味では非常に良かった。
それでまあ民主党政権が成功すりゃあ,もっと良かったんですけど。(笑)
堀 茂樹 教授
そうですね...私は...
小沢 一郎 代表
それでも,僕は良かったと思います。
堀 茂樹 教授
私は,あと1年か2年でも続いていたらと思いますね,ええ。
小沢 一郎 代表
その話しするとまた長くなるから。(笑)
堀 茂樹 教授
ご存知だと思いますが,ネットの方でツイッターっていうものがありますよね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ツイッターで知り合った,会ったこともない方ですが,ロンドンにいる若手のお医者さん,優秀な方だと思いますが,ロンドン大学(UCL)で医学部で研究室を持っている人で,小野(昌弘 おの まさひろ)さんという方がいらして,此間もそのことを振り返って,民主党政権の失敗で,何か,国民の間に「政治的自律」これに対する敵意さえ呼び起こしてしまった,と。それが今の状況につながったんじゃないかと言ってましてね。
だから今,小沢さんが仰った,やっぱり自分達の選挙によって政権交代を成し遂げたということの意義も,私も今も続いていると思うんですが,一方で民主党政権のいわゆる失敗と見做されているもの,まあ,見做さざるを得ないものに対して,国民が非常にですね..何て言うか,失望が...
小沢 一郎 代表
まあ,失望感がある。
期待が大きかっただけに,失望のほうがもの凄い大きい,その反動として。そりゃあ,その通りですけど。
私は,だけど,繰り返しますけど,国民皆さんは,その,政権を自分の手で変えられるという経験を積んだわけですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
これは,非常に,大きいと思います。
ですから,私はそう悲観的に見てません。
堀 茂樹 教授
そうですか。
小沢 一郎 代表
その1つの事実として,総選挙で,自民党の支持票は増えてません。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
参議院(選挙)でも同じです。
堀 茂樹 教授
確かに。はい。
小沢 一郎 代表
ただ,1割以上・1千万人以上の人が,棄権しました。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それからまあ,私共の責任ですけれども,票が,受け皿が分散しちゃって,それで自民党に大量の議席を与えたんですけど,私は現実を見ると,非常に国民皆さんなりに期待してますし,楽観してます。
堀 茂樹 教授
ああ,そうですか。
小沢 一郎 代表
と言うのは,総選挙後もね,ほとんど首長選挙・自公と 1対 1の首長選挙は,全部,自公以外が勝ってますよ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
つい此間の,川崎の(市長)選挙。 (※2 )
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
小沢 一郎 代表
これまた,民主党,何考えてんだろうと思うけど,(落選した候補者は)自公民で推薦ですよ。
堀 茂樹 教授
そうでしたね。
小沢 一郎 代表
それなのに,無所属候補に負けてんだから。
兵庫県神戸市もそうですよ。あと数千でもって,自公民(推薦候補)が負けるところだったんですよ。 ( ※2 )
ですから,それだけ民主党に対する失望がうんと大きかったですけども,だからと言って(国民は)自民党,自公の政治が良しとしているわけでは決してないと。
だから,私がさっき言ったように,維新とみんなの党は,もう自民党と同じ考え方・政治スタンスなんだということがハッキリしましたから,自公に対立する受け皿っていうのは,それ以外のグループで作ればいいんだし,
また,維新の中にもみんな(の党)の中にも自民党と擦り寄るっつうのは良くないと考えてる人達もきっといると思います。
そういう人達も含めて,あるいは政権党だから割れませんけれども自民党の中にも,安倍さんのね,やってること良いと思ってない人が,僕はいると思う。
だから,そういう意味で,今も基本的な(政策である)秘密保護法にしろ,原発にしろ,TPPにしろ,消費税にしろ,税制にしろ,本当に国民生活に直接大きな影響を及ぼす,大きなテーマが控えてますんで,そのテーマに対する意見・賛否で以って,ある程度色分けできるんじゃないかというふうに僕は思いますね。
堀 茂樹 教授
成程。
もちろん,そういう強い確信を持っていただいてるのは,私ももちろん,政治の方針,オリエンテーションは,まったくそちらの方に賛成なので,市民としては力強く感じるんですけれども。
まあ正直なところは,個人的には,いやあ,なかなか難しい(苦笑)と思ってるんですね。
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。ミッテランが大統領になった。あれはフランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
で,それは...ちょっと話しが飛ぶようですけど,1981年にですね,フランスで政権交代が起こった。
ミッテランが大統領になった。あれは,フランスの保守政権が23年続いた後だったんですね。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
ミッテランという人,こう言っちゃ何だけど,なかなかの狐のような人で。
小沢 一郎 代表
かなりの < 聞き取り不明 > ですね。
堀 茂樹 教授
ええ。なかなか分からない人なんだけれども,とにかく政権交代が起こってですね,あん時バスティーユに,もう本当に,人びとが集まって,歌ったり演説したりっていう渦の中に,私,立ち会いましてね。
政権交代っていうのは,こういうふうにして起こるのかと思ったことあるんですね。
そして,その後のフランス社会党政権は,サッチャー・中曽根・リーガン時代の環境の中で,完全に失敗しましたけれども,
経済政策では失敗したけれども,政権は維持してですね,そしてその後,何度も政権交代が起こり得るという態勢に態勢に戻っているんですね,フランスは。
で,あん時に,選んだほうが正しいか正しくないかってのは,歴史が最終的には決めるだろうけれども,しかし自分達の意思で多数派を形成して,政治を,国政を動かせるんだっていう実感をね,あの時,フランス人達は改めて(持った)。
まあ歴史を遡れば,フランスには政権交代があったわけですけれども。それを感じただろうというふうに(見えた)。それを立ち会ったことがあるんです。
それから見ると,今,私にとって大事なのは何と言ったって日本なんですけれども,我々の社会生活においてもですね,やはりその異論を述べる,何か体制と違うことを異議を申し立てる,ということ自体を,割とまるで悪いことのように見られることが多くて,
それで,いっぱしの社会人の何か勉強もした人達の社会生活の社交の中で,実際のところ,政治や社会のことが話題になることは,無いんですね。
避けてる。
小沢 一郎 代表
うん。そうですね。うん。
堀 茂樹 教授
だから,そういう,政治文化そのものの未成熟っていう問題が根本にあるので,なかなか今仰ったことも一理あると思いながら,まあ難しいなあとか,私は思うんですけれども。
それで,そういうことから考えると,果たして我々この日本人,日本市民は,民主主義ってのをね...
1回,やっぱり 2009年には多数の日本人が,これは,希望を持ったと思うんですが。「やった!」とおもったと思うんですが。
つまり政治主導と仰った,小沢さん,リーダーでしたから。
それから,政治主導ってことは国民主導ってことですから。
言うまでもなく,取りも直さず,国民主権ということですから。
これでやって行こう,と。
別に官僚を敵視するとかいうことじゃないけれども,決定権は国民にあるんだっていうことで,やろうとしたわけですよね。それがちょっと上手く行かなかったことで...
もう一度ですね,やっぱり何か,上の人に,お上に任せた方が良いっていうふうな,そういうリアクションが起こってきているように思えてならず,ですね。
いったい,日本人が,その民主主義っていうものを本気でやる気があるのか,と。
それを確かめるためには,考えるためには,民主主義とは何ぞや。
何故,民主主義を採るべきか,と。
それから,その次の問題として,何故,議会制民主主義・代表民主主義を採るべきか,という問題もあると思うんですが,まずはその,やっぱり日本も色々な伝統・文化があるけれども,民主主義という,これ発祥は西欧近代ですけれども,これを採用してやって行くべきだと,小沢さんがお考えになっているんだと思いますけれども,それは,何のために,何故,そういうふうにお考えになりますか。
小沢 一郎 代表
日本にも,古来から民主主義が無かったということではないと私は思うんですね。
ただ日本は,何千年か何万年か分かりませんけれども,非常に古代は,より温暖な気候で,より豊かだったと言われてますし,
日本の歴史に大陸諸国家のように血みどろの争いというのは,ほとんど無いんですね。
権力者同士の争いはありましたけれども,一般の人が参加した民族と民族の争いとか,国と国の争いみたいなものは,ほとんど必要無かったんだと思うんですけれども,それだけ平和で豊かであったと思う。
だから,コンセンサス社会なんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
全会一致のコンセンサス社会で,それでやって来れたんですね。僕はそう思います。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
ですから,コンセンサス社会の中では,自己主張はできるだけしない方が良いんですね。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
今の日本社会も,そうじゃないですか。
色んな会社でも何でも,何か意見一生懸命言うと,あの野郎ばっかり喋る,って言うでしょ。
堀 茂樹 教授
「空気を読めない」って言う...
小沢 一郎 代表
(両腕で丸く収める所作をしながら)そうすると「まあ,まあ,まあ」ってこうなるんですね,すぐね。
それでやって行けるならば,僕はそれは良いと思います。
日本的な民主主義で。
堀 茂樹 教授
はあ,はあ。
小沢 一郎 代表
だけどやっぱり特に世界が段々だんだん,グローバルな形になって来て,日本も明治維新を経て,という近代化の中でね,結局,単なる鎖国の,日本の鎖国政策で日本人だけで丸く丸くでは,もう納まらない。
近代社会の中で日本は生きていかなきゃなんない。
そういうことになって,最初は良かったんだけど,結局は,戦争というあれで失敗してしまったということなんですが。
堀 茂樹 教授
確かに戦争に突っ込んでしまったあの歴史は,あの過程は,自由な議論を,対立した勢力が自由に議論をすると言うか,そういうことではなくて,大政翼賛会になって,体制に迎合して行くっていうことになりましたので。
小沢 一郎 代表
非常に心情的なものごとに,日本人は動かされるんですね。
右というと右,左というと左,みたいな,その時の雰囲気。
まあ小泉さんがよく雰囲気って言葉使ったけど。それに流されるんですね。
要するに,自己主張というのが無い。
自分自身で考え,自分自身で判断し,自分自身で結論を持って行動をするという,いわゆる自立ですね。
僕がいつも言ってるんだけど。
自立心がまだまだ足りない。
ですから,民主主義というのは,個人個人の自立があって成り立つわけですよ。
だから,そういう意味でね,日本は,世の中が,地球社会が,世界が,変わっちゃってるんですから,それの中で生き延びていくためには,やはりきちんとした自己主張を持って,世界の国々・世界の人たちと接して行かなきゃならない。
堀 茂樹 教授
ふむ。
小沢 一郎 代表
ですから,それはその即ち民主主義だということと同義語なんですね。ギリシャの昔にもね,民主主義というのは衆愚政治だと。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
要するに手続きは,メンドくさいしねえ。一々,皆なの話し聞いてたんでは,ロクな結論出ない,と。
衆愚政治だというふうに言われるんですが,確かに衆愚政治の面があって。ソクラテスでしたか? 哲人政治を...
堀 茂樹 教授
プラトンです。
小沢 一郎 代表
プラトンが,哲人政治を一番良いわけだと。神様がやってくれるんなら,一番良いわけですね。
堀 茂樹 教授
そうです。
小沢 一郎 代表
だけどそんな(神様のような)のは,人間はいないわけですから,結局皆なでやって,衆愚的な要素はあるけど,独裁よりも大きく間違うことはない,という処に,民主主義のね,良いとこあるわけですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,時間はかかる,手間暇かかる。まあ,さっぱ結論が出ない,という欠点あるんだけど,大きな間違いはしない,
という処に私は民主主義の良いところがあって,そのためには皆なが自分自身の考えをきちっと持って,それで自己主張しなきゃいけないんですね。
それが無いと,もう民主主義は成り立たないで,日本は今なお,僕はそうだと思ってるんです。
堀 茂樹 教授
そうですね。ええ。
それとね,こういうことは如何ですか。
もちろん私,小沢さんの本,全部読んでますからね。書いておられたのを思い出したから言うんですけれども,民主主義っていうのは,やっぱり,仰る通り,市民が皆な自分で考えて,自由な議論を通して合意形成をして,ですね。だから,最初にコンセンサスがあるんじゃなくて,コンセンサスを見つけるように議論をして行く,と。
コンセンサスは初めに無いというのが前提で,対立衝突があるのは当たり前と。
これを受け入れて,そしてフェアーに議論をして,最近はそれを熟議とか言ったりもしますけれども,それをして,合意形成をして行く,と。それでコンセンサスに至る,と。
で,このコンセンサスが強いんだ,ということを,仰ってたと思うんですよ,書いておられたと。
小沢 一郎 代表
はい。
堀 茂樹 教授
つまり,自分たちが決めたんだと。自分たち,集団的に決めたんだ,ということが,これは強いよ,と。
やっぱり,その,権威に従って,上から言われるからって,従ってた,そういう集団は...
小沢 一郎 代表
弱いです。脆いです。
堀 茂樹 教授
戦争の時は言うまでもなく,ですね。平和の時も,脆いと。この点。これも 1つの理由なんじゃないですか,民主主義の。
小沢 一郎 代表
うん。私は,本当に,そう思います。
自分たちで議論し,自分たちで決めた,と。これほど強いものはないんですね。だからそこに民主主義の強さがあって。
僕,時々ね「話しせい」って言われた時に,昔『戦場にかける橋 』って(映画が)あったんですよ。(テーマ曲が)「クワイ河マーチ」のね。
堀 茂樹 教授
はい,ありました。
戦場にかける橋
The Bridge on The River Kwai
1957年公開の英・米合作映画。主題歌:クワイ河マーチ
小沢 一郎 代表
あれは,日本人をバカにした映画だと言う人もいたけども...
堀 茂樹 教授
ははは(笑)
小沢 一郎 代表
そんな詰まんないことを見てないで。 あの時に,日本軍があそこ占領してて,アメリカやオーストラリアの兵隊を捕虜にしてましたね。
ある時,英国の部隊が捕虜としてやって来るんですね。ところがもう,整然として,それこそ「クワイ河マーチ」をね,口笛吹いて,指揮官は指揮官のままで,来るんですね。
堀 茂樹 教授
そうですね。
小沢 一郎 代表
そして,(日本軍が捕虜となった英国軍に)「橋造れ」って労働させるんだけど,これはジュネーブ条約によって,将校は労役を課せられない,ということを,その指揮官はね(主張し)もう絶対言うことを聞かないわけ。
堀 茂樹 教授
はい。
小沢 一郎 代表
それでね,独房に入れられて1週間もやられたんだけど,それで頑張って...それに対して兵隊皆ながね,拍手喝采で迎える。
日本が敗れた時はね,日本人の捕虜の話しありますが。
堀 茂樹 教授
ええ。『 アーロン収容所 』。
小沢 一郎 代表
『 アーロン収容所 』から何から色んなのあるんですよ。
堀 茂樹 教授
ええ,ありますね。
『 アーロン収容所 』 中公文庫
会田雄次(あいだゆうじ)歴学者
1916(大正5)年 3月5日(日)― 1997(平成9)年 9月17日(水)
小沢 一郎 代表
だけどもう,そうなった途端にね,世界一の軍規を誇った帝国陸軍,特に陸軍が,そうなっちゃうと,もうメチャクチャになって,上下関係もなけりゃ何も無いというようなことで,白人に笑われたんですけれども。
それは何故かと言うと,やっぱ,権力によって権威によって作られた階級なんですね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから,俺達認めたわけじゃないぞ,という意識がどうしてもありますから,権威がなくなった途端に烏合の衆になっちゃうんです。
ところがその『戦場にかける橋 』の英国人。僕は英国人ってあんま好きじゃないんですけども。
堀 茂樹 教授
はははは(笑)
小沢 一郎 代表
だけども,彼等はやっぱ,偉いんですね。自分たちで決めたルールだと。
堀 茂樹 教授
うん,そうなんですね。
小沢 一郎 代表
将校も,自分たちの決めたルールに従って将校になり指揮官になってるんだと。これは,捕虜になったって,このルールはきちんと守るんだと。
その意識の違いが,僕は,日本人と彼等の違いだと思いますね。
堀 茂樹 教授
ふむ,ふむ。
小沢 一郎 代表
だから日本人はもう少しやっぱり,主権者って言われんだから。
自分たちも時々,私たちは主権者だ,なんて言うんだから。
堀 茂樹 教授
はい,はい。
小沢 一郎 代表
自分で言う限りはね,主権者らしく振舞わなきゃ駄目ですよ。
だから,そういう意味で,私は,日本にもう少し民主主義,即ち日本人の自立を,ぜひお願いしたい。
堀 茂樹 教授
成程。
ーーーーーーーーーーーーーー
小沢、堀茂樹対談Vol3(3)へ続きます。
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