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秘密保護法で作られる公安警察国家:山田

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   日本を暗くする特定秘密保護法   11/21 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
   情報流出事件が示す公安警察の暗躍

 反対する世論の高まりを恐れるかのように安倍政権は特定秘密保護法案(以下、秘密保護法)の成立を急ぐ。
 修正協議でみんなの党を取り込み、次は日本維新の会。
 「野党の意見を反映した」という演出だが、修正は枝葉末節に過ぎない。
 秘密の妥当性を判断する「独立機関の設置」や「無期限の秘密は認めない」という大原則は骨抜きになる。

   ツワネ原則

 日本弁護士連合会は「国際的な取り決めであるツワネ原則から逸脱している」と異議を投げかけている。
 今年6月、南アフリカの都市ツワネに70ヵ国500人余の国際法専門家や法曹関係者が集い、国家が安全保障を理由に国民の知る権利を脅かすことが無いよう原則を定めた。
 「情報への権利に関する国際原則」(通称ツワネ原則)は、仮訳をネットで見ることができる。

諜報機関を含めたいかなる政府機関も情報公開の必要性から免除されない」と謳うツワネ原則は、敢えて核心を表現するなら「無期限の秘密は認めない」「秘密を審査する独立機関を設置する」が大原則だ。

 日本に秘密保護を迫った米国でさえ、一定期間後に情報公開を義務付け、さらに国立公文書館が秘密の妥当性を審査する。
 日本は「情報が漏れる」ことを恐れ、独立機関を認めず、大事な秘密は永遠に封印される仕組みだ。

 9.11の同時多発テロ以来、多くの政府が秘密保護に傾斜し、国民の知る権利が脅かされている。
 国家による監視活動が強まれば人権侵害が多発する。
 人権を守るべき司法が政府に配慮して後退していることへの危機感がツワネ原則を生みだした。

   国際テロ捜査情報流出事件

 さて秘密保護法ができたらどうなるか――。分かりやすい実例があった。
 2010年10月、警視庁公安部から流出した114点の機密情報で明らかになった秘密調査活動だ。


 テロに無関係な人々まで対象になり、個人情報が丸裸にされ、テロ情報データベースに記録された。
 罪なき人の人権が侵され、公安警察を肥大化させたモデルケースである。
 被害を受けたのは日本に住むイスラム諸国の人々だ。
 流出情報に「東京在住のイスラム教徒全調査」があった。イスラム教を国教とする国から日本に来て、警視庁管内に住む(営業する)人がすべて捜査対象になった。

「イスラム諸国人把握状況」という一覧表がある。
 57ヵ国の1万2848人の氏名、生年月日、旅券番号、出生地、家族構成、通っているモスクなどが調べられた。例えばバングラデシュは外国人登録者数3348人、把握件数3123人、把握率93.3%と記載されている。

 流出資料には「個人ファイル」もあり、顔写真付きで職業や活動状況、知人の証言による人物像などが記述されている。
 大使館員の銀行口座記録や東京にあるモスクも監視下にあり、信者数や一日の出入り記録も載っていた。

 留学生が通っている大学、日本語学校、国際交流会館、支援団体もすべて捜査対象。50団体あるNPO・NGO、宗教上の処理をされたハラール食品を扱う店やレストラン、中古車販売店、貿易会社、利用できるホテルも調べられた。爆薬との関係を疑ってか化学剤を取り扱う店も調査対象だ。
 どれもテロと関係があるとは思えない情報だ。

 ことさら問題のない日本のイスラム社会まで「テロとの関連」が疑われ、外事警察がテロリスト予備軍と見て、監視下に置いた。日本の警察が米国の諜報活動の下請けになっていたのである。

「捜査協力者に育成するまでの心得」や「米連邦捜査局(FBI)からの要請に基づく事情聴取」といった内部書類や捜査情報を英訳した報告書も流出している。

 中東などで「テロとの戦争」に明け暮れるアメリカと同じ視点で、日本の外事警察が捜査令状も無く、国会のチェックも働かないまま秘密裏に捜査を進めていたのだ。

 個人情報を流出させられたムスリム男性6人が「プライバシーを侵害されたばかりでなく、事実誤認や偏見に基づく情報を公開され不利益を受けた」と東京地検に告訴した。
 原告弁護団は「テロ対策の名を借りた違法な捜査、人権の侵害、信仰の自由を侵す憲法違反の捜査だ」と主張している。

 警視庁は、流出書類は自分たちが作成したことを認めていないが「仮にそうだとしてもテロ対策として正当な業務。違法性はない」と強弁する。

 裁判は9月に結審、来年の1月15日に判決が下る。裁判所がどんな判断を下すのか。基本的人権の尊重を謳う憲法の下で、人権侵害が疑われる捜査を司法がどう判断するが注目される。

   平穏だった日本のイスラム社会にひび

 そこで秘密保護法との関係だ。この法案は特定秘密を①防衛秘密、②外交秘密、③特定有害活動(スパイ)防止秘密、④テロ対策秘密の4分野に認めている。

 法案が国会を通れば、イスラム教徒への情報収集は「テロ対策」とされ、捜査は秘密のベールに隠される。実態をメディアが明らかにしようとすれば秘密漏えいで刑事罰を食らいかねない。
 捜査が基本的人権を侵すものでも、秘密の壁の中で行えば誰も分からない

 原告弁護団の一人井桁大介弁護士は、

「テロ対策で調べたとしても、テロと関わりがない人の情報は記録から外すべきだ。ところが警視庁はそうせず、税金を遣ってひたすらイスラム教徒のデータベースを作り続けている。
 テロ対策は口実で、市民の個人情報を捜査資料として蓄えているのが実態だ」

 と指摘する。

 日本で暮らす外国人は登録抹消やビザ更新に気を使う。警察ともめごとを起こしたくない、という弱みに付け込み、協力者に仕立て上げる
 捜査官は雑談を装って狙いをつけた個人の活動や人柄を聞き出すというやり方だ。

警察の期待に沿うような受け答えをしているうちに歪んだ人物像が形成される。
 それをもとにさらに交友関係の捜査が広がる、という悪循環が実際に起きた。

 顔写真付きの個人ファイルが流出した人は、自分とかけ離れた人物像で公安記録に載っていたことに驚き、怒った。
 テロリストとの関係を疑われ、家族の名前まで明らかにされた。インターネットの接続を断たれたり、取引を打ち切られたり実害をこうむった。

警察に情報を提供した人は信用を失い、仲間から排除された。
雑談でしゃべったことがもっともらしい証言として実名入りで捜査記録に残ってしまったからだ。
平穏だった日本のイスラム社会が捜査の手が入ることでひび割れ、壊れていった

 テロの予防を口実に公安が人々の暮らしの中に割り込んでゆく。
 特高が聞き耳を立て、迂闊に話もできない、という暗い社会の記憶が蘇る。「予防」と「情報活動」は市民社会を息苦しいものにするだろう。

   「縄張り拡張」のチャンス

 治安維持法と特高警察に象徴される戦前の「監視社会」は敗戦で終止符を打たれたが、米ソ対立が始まると「左翼」を監視する公安が復活した。
 共産党が暴力革命の路線を捨てると、「過激派対策」に重心を移し、過激派が影をひそめ、冷戦が終わると公安の仕事は激減した。
 存在理由が希薄になり「テロ防止対策」に生き残りをかける。新設されたのが外事3課。国際テロ対策が任務だが日常活動はイスラム社会の監視である。

 イスラム教徒にとっては迷惑な話だが、秘密保護法は公安警察にとって「縄張り拡張」のチャンスなのだ。

 秘密保護法案はテロの定義を「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、または重要な施設その他の物を破壊するための活動」としている。

 要するに、信念に基づいて世間が驚くような破壊活動をすればテロと見なされる

 捕鯨調査船に船で体当たりした戦闘的環境団体シーシェパードなどテロリストに分類されるかもしれない。
 シーシェパードと連絡を取ったり、取材をしたりすればテロ関係者として捜査の対象になるかもしれない。

調査や監視が身内にも及ぶのが秘密保護法の特徴だ。
 秘密を扱う担当者が外部に漏らすことを恐れるからだ。
 担当者は家族や交友関係から飲酒の節度、信用状態、経済的状況まで「身体検査」を受ける。

 イスラム捜査では、警視庁の巡査部長クラスまで秘密に関与していた。現場の捜査員である巡査部長まで「身体検査」して適性を判断するのだろうか。
 飲酒の節度や経済状況まで調べれば、不適格となる人も出るだろう。自分が不適格となったら、職場の同僚や、飲み仲間など友達の誰かが悪い情報を伝えたのではないか、と疑う。職場や暮らしが暗くなる。

 秘密の指定や、取り扱い担当者の適性評価など重要な項目は「行政の長」が行う、となっているが、これと並んで県警本部長が秘密指定や適性評価に重要な役割を担っている。
 秘密と言えば防衛機密や外交機密が思い浮かぶが、今回の特徴である「テロ対策」は公安警察が舞台だ。
 だから政府は、野党から「秘密の範囲を防衛と外交に限定しよう」と提案されても応じない。秘密保護法は警察組織と一体になっている。

「テロの予防」を錦の御旗に市民社会を標的にするのが秘密保護法だ。
 並行して内部告発を防止するため組織内部を監視する。
 公安を肥大化させ、日本を暗くする法律である。
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