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「戦前を取り戻す」特定秘密保護法案:東京新聞、道新

   社説「戦前を取り戻す」のか 特定秘密保護法案   10/23  東京新聞

 特定秘密保護法案が近く提出される。「知る権利」が条文化されても、政府は恣意(しい)的に重要情報を遮蔽(しゃへい)する。市民活動さえ脅かす情報支配の道具と化す。
 「安全保障」の言葉さえ、意図的に付けたら、どんな情報も秘密として封印されかねない。
 最高十年の懲役という厳罰規定が公務員を威嚇し、一般情報も公にされにくくなろう。何が秘密かも秘密だからだ。
 情報の密封度は格段に高まる。
 あらゆる情報が閉ざされる方向に力学が働く。情報統制が復活するようなものだ。一般の国民にも無縁ではない。

  ◆米国は機密自動解除も

 秘密保護法案の問題点は、特段の秘匿を要する「特定秘密」の指定段階にもある。行政機関の「長」が担うが、その妥当性は誰もチェックできない
 有識者会議を設け、秘密指定の際に統一基準を示すという。でも、基準を示すだけで、個別案件の審査はしない
 監視役が不在なのは何ら変わりがない。

 永久に秘密にしうるのも問題だ。三十年を超えるときは、理由を示して、内閣の承認を得る。だが、承認さえあれば、秘密はずっと秘密であり続ける
 米国ではさまざまな機会で、機密解除の定めがある。一九六六年には情報公開を促す「情報自由法」ができた。機密解除は十年未満に設定され、上限の二十五年に達すると、自動的にオープンになる。
 五十年、七十五年のケースもあるが、基本的にずっと秘密にしておく方が困難だ。
 大統領でも「大統領記録法」で、個人的なメールや資料、メモ類が記録され、その後は公文書管理下に置かれる。
 機密指定の段階で、行政機関の「長」は常に「説明しなさい」と命令される状態に置かれる。
 機密指定が疑わしいと、行政内部で異議申し立てが奨励される。外部機関に通報する権利もある。

  ◆名ばかりの「知る権利」

 注目すべきは、機密は「保護」から「緩和」へと向かっている点だ。機密指定が壁になり、警察の現場レベルに情報が届かず、テロを招くことがある-。つまり情報は「隠す」のではなくて、「使う」ことも大事なのだ。
 日本は「鍵」をかけることばかりに熱心だ。防衛秘密は公文書管理法の適用外なので、国民に知らされることもなく、大量に廃棄されている。特定秘密も同じ扱いになる可能性がある。

 特定秘密の指定事項は(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動の防止(4)テロリズムの防止-の四つだ。自衛隊の情報保全隊や公安警察などがかかわるだろう。
 四事項のうち、特定有害活動とは何か。条文にはスパイ活動ばかりか、「その他の活動」の言葉もある。どんな活動が含まれるのか不明で、特定有害活動の意味が不明瞭になっている。いかなる解釈もできてしまう。

 テロ分野も同様である。殺傷や破壊活動のほかに、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」する活動も含まれると解される。
 これが「テロ」なら幅広すぎる。さまざまな市民活動も考えているのか。原発がテロ対象なら、反原発運動は含まれよう。まさか軍事国家化を防ぐ平和運動さえも含むのだろうか。

 公安警察などが社会の幅広い分野にも触手を伸ばせるよう、法案がつくられていると疑われる。
 「知る権利」が書かれても、国民に教えない特定秘密だから名ばかり規定だ。「取材の自由」も「不当な方法でない限り」と制約される。
 政府がひた隠す情報を探るのは容易でない。そそのかしだけで罰する法律は、従来の取材手法さえ、「不当」の烙印(らくいん)を押しかねない。

 公務員への適性評価と呼ぶ身辺調査は、飲酒の節度や借金など細かな事項に及ぶ。親族ばかりか、省庁と契約した民間業者側も含まれる。膨大な人数にのぼる。
 主義主張に絡む活動まで対象範囲だから、思想調査そのものになってしまう。
 警察がこれだけ情報収集し、集積するのは、極めて危険だ。国民監視同然で、プライバシー権の侵害にもあたりうる。
 何しろ国会議員も最高五年の処罰対象なのだ。
 特定秘密を知った議員は、それが大問題であっても、国会追及できない。国権の最高機関を無視するに等しい。

  ◆目を光らせる公安警察

 根本的な問題は、官僚の情報支配が進むだけで、国民の自由や人権を損なう危うさにある。
 民主主義にとって大事なのは、自由な情報だ。それが遠のく。

 公安警察や情報保全隊などが、国民の思想や行動に広く目を光らせる。
 国民主権原理も、民主主義原理も働かない

 まるで「戦前を取り戻す」ような発想がのぞいている。
 ーーーーーーーーーーーーーー
  特定秘密保護法案 成立後シミュレーションしてみると・・市民生活脅かす恐れ  10/26 北海道新聞

 国家機密を漏らした公務員らに厳罰を科す「特定秘密保護法案」が25日、国会に提出された。
 法案が成立すると、国民の「知る権利」や報道の自由が脅かされるだけでなく、市民生活にも重大な影響を及ぼしそうだ。
 どのような事態が想定されるのか。札幌弁護士会が「法案成立後に起こりうる」(秘密保全法制対策本部)とする三つのケースをシミュレーションしてみた。

●ケース1 同窓会で~防衛システム概要を恩師に話し、本人も恩師も逮捕

 システムエンジニアのAさんは、大学の同窓会で「自衛隊向けのシステム開発に関わっている」とあいさつ。
 恩師から内容を聞かれ、つい大まかな仕組みなどを話した。
 3カ月後、Aさんは特定秘密の漏えい、興味本位で聞いただけの恩師も教唆(そそのかし)の容疑で逮捕された。

 法案は不当な方法で特定秘密を入手しようとした側にも罰則を設け、「教唆」や「扇動」も罰せられる。
 不当や教唆の線引きはあいまいな上、何が秘密指定されたかは公表されない
可能性が高い。

 札幌弁護士会秘密保全法制対策本部事務局の竹之内洋人弁護士(43)は「特定秘密は防衛や外交に限らず、広い範囲に適用できる。この恩師のように興味本位で聞いただけでも、逮捕される事態が起こりうる」と解説。
 本部長代行の藤本明弁護士(65)も「処罰対象が秘密を保持する国家公務員に限らず、受注業者やマスコミ、一般市民にも及ぶのは問題だ」と指摘する。

●ケース2 自衛隊と米軍の共同訓練~誤射事故発生も詳細公開されず

 法案成立から数年後。自衛隊と米軍の共同訓練中、演習場外に砲弾が飛び出す誤射事故が発生。砲弾の性能など詳しい状況が「特定秘密」を理由に公開されなかった。地元からは「以前はもっと情報が出ていたのに」と戸惑いの声が上がる。

 矢臼別演習場(根室管内別海町など3町)では6月、米海兵隊による砲弾誤射事故が発生。8月と9月には恵庭市の北海道大演習場でも陸上自衛隊の戦車の砲弾が行方不明になった。

 防衛省は「法案成立後も今までと対応は変わらない」(広報課)とする。だが、防衛に関して特定秘密に指定される事項は「自衛隊の運用」などと法案には漠然と書かれているだけ。解釈拡大を懸念する声もある。

 住民団体「矢臼別平和委員会」の吉野宣和事務局長(81)は「現状でも事故の原因を問い合わせると簡単な回答しか返ってこない。そそのかしなどが違法となれば、しつこく問い合わせることもできない。結果的にますます情報が出てこなくなるのではないか」と疑問を投げ掛ける。

●ケース3 適性評価~肉親の逮捕歴、借金有無などプライバシーが人事に影響

 特定秘密を扱う部署への異動が内定した国家公務員のBさん。
 特定秘密を扱うのにふさわしいかを調べる「適性評価」を受けたところ、父親がかつて学生運動で逮捕されたことが判明し、不適格と判定された。Bさんの代わりに同期がその部署に配属され、Bさんは外郭団体に出向を命じられた。

 特定秘密を扱うには借金などの経済状況や飲酒の節度、家族の状況などを調べる適性評価で「情報を漏らす可能性がない」と認められる必要がある。

 ある自衛隊員は「今でも内部では(同様の調査を)しているが、借金の有無や飲酒の程度まで調べるのはちょっと…」と表情を曇らせた。
 適性評価の対象は自衛隊員などの国家公務員だけでなく、国と契約を結んだ民間業者の社員らも対象
 市民のプライバシーが侵害される恐れが強い。
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