アベノミクスの危険が現れてきた
2013-10-24
消費増税の前に、すでに20%円安の弊害が現れ始めている。
所得の上がらないどころか、窮乏化するインフレ。スタグフレーションが顕著になってきた。
行き着く先は投機市場ののバブル崩壊と国債下落(金利上昇)。
対米売国奴どもによる暗い展望。
なお、いつもどおり(※ )はもうすぐ北風の注釈。
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日銀・岩田副総裁の講演から感じること 10/21 闇株新聞
日銀の岩田規久男・副総裁が10月18日に中央大学で講演しました。読者の方から「紛れ込んで、突っ込んだ質問をしてみたら?」とのコメントをいただいていたのですが、ちょっと八王子は遠すぎて行けませんでした。
日銀のHPに講演内容が出ていますので、ご興味のある方は下記よりご参照ください。
【講演】「量的・質的金融緩和」の目的とその達成のメカニズム
4月4日の「異次元」金融緩和の実施から半年以上経過しているので、その後の状況の変化も織り込んで副総裁が直々に「講演」してくれると思っていたのですが、かなり期待外れでした。
当初の日銀の説明からは「全く」何も変わっておらず、要するに「現在の政策の効果に何の疑問も懸念も抱いておらず、状況の変化による軌道修正の必要性を全く想定していない」ことになります。
まず、なぜ日銀は2%というインフレ率の達成を目指すのか?ですが、これは当初からの「デフレは価格下落を通じて企業収益を圧迫し、結果として経済全体の生産や雇用を減退させるから」であり、日銀は2%というインフレ目標を達成するために、これまでと次元の違う「量的・質的緩和」を行っていると繰り返しています。
「量的」とはマネタリーベースを2014年末までに(2012年末の2倍の)270兆円とすることで、「質的」とは買い入れる国債の平均残存年数をこれまでの2倍以上の7年程度にすることで、「イールドカーブ全般を引き下げるため」と説明しています。
そして最後に、「名目金利の引き下げ効果」と「期待インフレ率の上昇効果」で、実体経済に重要な影響を及ぼす「予想実質金利」を引き下げる効果があるとしています。
当初から「違和感」を感じていたのですが、現在も日銀の「基本的な理論構成」がそのまま維持されていることになります。
「違和感」を順番に挙げていくと、インフレ率の上昇とは経済活動が活発化した結果(※あくまで結果)であり、インフレ率をまず無理に上昇させても経済活動が活発化しているとは限らないこと、
そしてインフレ率の上昇には円安やエネルギー価格の上昇による「経済活動にマイナスでしかない」ものが含まれているのですが、特に区別していないことです。
つまり、まさに現在の足元で加速中の「経済活動にマイナスでしかないインフレ」でも、日銀はそのまま好ましいことと「喜んで」いることになります。
何よりも不思議なのは「量的・質的金融緩和」により「名目金利の引き下げ効果」と「期待インフレ率の上昇効果」が長期間にわたって共存すると信じきっていることです。
その結果、国債の予想実質金利が(たぶん)マイナスになり、国債から株式などのリスク商品に資金が移動すると期待しているのですが、
「期待インフレ率の上昇効果」の結果として「名目金利がいずれ上昇予想に転じて」国債市場が下落することを全く心配していないことです。
国債市場全体の下落(利回りの上昇)が経済に及ぼすマイナス効果を、全く気にしていないことになります。
現時点では、たまたま国債の名目金利(名目利回り)が低下しており、講演のあった10月18日には5年国債利回りが0.20%(講演では、5年の期待インフレ率が1.5%なので予想実質金利がマイナス1.3%まで下落しているとのグラフが添付されています)、10年国債利回りが0.61%まで低下しています。
これは国債利回り(特に長期国債利回り)の低下は、近い将来の経済活動の低下を暗示しているなどの可能性を全く排除し、すべて日銀の「量的・質的緩和」のおかげであるとする大変に危険な考えです。
逆に状況が少し変化し、長期国債利回りが上昇を始めたときの対応が、全く取れないことを意味します。
また量的緩和で供給された資金が日銀当座預金に滞留したままでも、十分に期待インフレ率が上昇するとの岩田副総裁の「持論」も繰り返されています。
(※日銀当座にブタ積みの分はマネーストックにならない。通貨供給増にならない。信用増にもならない。
せいぜいが投機市場と米国債にまわる。
国民の所得増(勤労家計の可処分所得増)がなければ消費需要は増加せず、設備投資は増えない。
公共事業の分が建設業の設備投資になるくらいしか期待できない。)
その是非はともかくとしても、「弊害」については全く考慮していないことは立場的に問題があります。
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インフレ目標は宗教か脅しか:中原
インフレ目標政策の眼目は「インフレになるぞ!」「物価が上がるぞ!」と国民全体に信じ込ませることです。
信じ込ませることができれば、消費者はモノを安いうちに買おうと思うに違いない。
消費が増えれば、企業の利益が増えるに違いない。
リフレ派の人々の根拠のひとつでもある「インフレ期待」というもので、要するに「信じる者は救われる」というような宗教みたいな学説なのです。
少しきつい言い方に換えれば、「早くしないとインフレになるぞ!」「現金を持っていても物価が上がれば目減りするぞ!」「今のうちに株を買ってしまえ!」「家も買ってしまえ!」と国民を脅しているだけです。
金融市場は「思惑」で動くことが多いです。為替にしたって株価にしたって、実体経済とはまったく違う思惑で乱高下することが多すぎると言ってもいいかもしれません。
というのも、欧米の金融機関やヘッジファンドの運用担当者は、上がるにしろ、下がるにしろ、市場が大きく動くことを望んでいるからです。
彼らは市場が大きく動かないことには、大きく儲けることができないのです。
ですから、彼らは相場が大きく動く材料にアンテナを張っていますし、ひとたび市場が大きく動き始めれば、強気でガンガン攻めてきます。
ユーロ危機以降、大きく動き、かつ流動性が高い市場がなかったために、アベノミクスによる金融緩和は彼らにとって絶好の投資材料と映ったことでしょう。
しかし、国民の消費行動が「思惑」だけで動くことはごく稀なことです。
(略)
仮にインフレを起こすことができたとしても、大多数の労働者の賃金が上がることはありません。
(※ 特に労働力市場の機能が無きに等しい、日本の場合は上がりません。)
物価だけが上がり、賃金が上がらない社会がやってくるだけのことです。
デフレ以上にひどい時代がやってくるのです。
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黒田日銀は己の失敗を願うべき:Rchard Koo
■野村のリチャード・クーから
・ 貨幣乗数...そしてインフレ...
(※ いきなり貨幣乗数ときたが簡単な話で、中央銀行が発行した通貨+銀行準備金(ベースマネー)に対して、銀行が信用創造で貸し出し増量した通貨(マネーサプライ)が何倍か、と言う比率のこと。与信なので信用乗数とも言う。)
黒田氏が日銀総裁に任命される前、量的緩和の下で FRB により供給されたベース・マネーは法定準備金の16.0倍に積み上がった。
他の中央銀行における同様の比率は、BOE で9.7倍、日銀で4.8倍、そして ECB で3.8倍であった。
もしも貨幣乗数が正常に機能していた場合、マネー・サプライは、米国において現在の値よりよりも16倍大きく、英国において9.7倍大きく、日本において4.8倍大きく、そしてユーロ圏において3.8倍大きくなっていたであろう。
(※ 消費と設備投資の有効需要が資金需要となる、成長循環経済の正常な信用創造ならば、このようなマネーサプライとなるだろう。)
そのようなマネー・サプライが実際に短期間で実行された場合、通常それは同様の価格の上昇を伴い、米国において1,600%、英国において970%、そして日本では480%という前例の無いインフレに繋がっていたであろう。
(※ 通貨も当然需要と供給で価格が決まるため、通貨下落=物価上昇となる。)
これが起きなかった理由を、以下で詳細に説明する。
しかし、要約すると、金利がゼロへ低下してさえ、これらの国の経済において企業及び家計が借りる事を止めたのだ。
そしてマネーを借りる者が誰もおらず、多くが実際には債務を返済している中で、貨幣乗数は僅かなマイナスへと転じたのである。
(略)
・ 意図せぬ結果...
恐らく、更に重要だったのは何故日本の金利がそれ程に低かったのかという事であろう。
本質的に、バランス・シートの問題、その結果としての債務のトラウマ、そして国内での投資機会の不足により、民間部門がマネーの借り入れを停止したのである。
(※ 言い方を変えればバランスシート、債務のトラウマは勤労賃金の減少となった。消費需要が上がらないのに設備投資はできない。)
民間部門の借り手がおらず、日本国債を0.6%の利回りで日銀へ売却している日本の銀行は、選択肢が不足する中で収益を日本国債に再投資する事を余儀無くされている事に気付いているかもしれない。
もし置き換える債券に僅か0.4%の利回りしか無さそうであれば、正しい選択は(※せめて)0.6%の利回りの債券(日本国債)を保有し続ける事である。
その意味において、日本における量的緩和は既に限界に達しているのだ。
・ そしてQEは自らの道を駆けた...
しかし、ゼロ金利にも拘わらず両国の企業及び家計が現在借り入れを拒否しているという事実は、長期利率を引き下げる効果自体が使い果たされたかもしれないという事を示唆しているのだ。
(略)
「もし十分な程頻繁に繰り返したならば、人々は嘘を信じるようになる」と、ある悪名高いプロパガンダの手先が語ったと言われている。
今日(こんにち)の日本では、メディア - 特に至る所に存在するTVのバラエティ番組 - がインフレについて語る事を止められないのだ。
これらのコメンテーター達は、金利がゼロに落ち込んでいながらも日本における貨幣乗数が僅かながらマイナスであるという事に全く気付いていないのである。
彼等は単に日銀による積極的な緩和がいつかはインフレを生み出すという単純化された見方を繰り返しているのだ。
これを朝から晩まで聞けば、日銀の政策が直接インフレを作り出せる方法など無いにも拘わらず、インフレについて一部の人々を心配させ始める事になるであろう。
もしも彼等が価格の上昇を予想し、それに応じて彼等の振る舞いを変更した場合、インフレが現実となる可能性がある。
更に、日本のメディアは一斉に同じ方向へ動く傾向があり、その嘘を更に頻繁に繰り返す原因となるのだ。 従って、もしも多くの人々が将来のインフレに対する期待で彼等の振る舞いを変えたとしても驚くには値しないのである。
・ 問題は - もしも人々が信じ始めたらどうなるかという事である...
ここでのリスクは、借り手達だけで無く、貸し手達も嘘を信じ始める事である。
インフレを予想しながら現在の利率でマネーを貸し出す金融機関など存在しないのだ。
水平線上に突然インフレを見た金融機関は、0.6%の利回りの10年物国債を保有し続けないかもしれない。
結果として生じる売りへの殺到は日本国債市場の崩壊を引き起し、国内の金融機関に大きなダメージを与えるかもしれないのだ。
疑問なのは、如何に黒田の日銀がそのような暴落に対応するのかという事である。
もし彼等が更に日本国債を買い始めた場合、マネタリー・ベースが拡大し、資金に対する民間需要が既に回復して貨幣乗数が僅かながらプラスに転じた時に、インフレの懸念を焚き付ける事になるのだ。
しかし、インフレ懸念を鎮めようと日銀が自ら保有する日本国債を売却したら国債(価格)は更に下落し、金融機関及び政府のバランス・シートに大きな穴をあける事となってしまうのである。
(※ 供給した過剰流動性を吸い上げなければならないが、そんな巨額の吸い上げは国債を売るしかない。もちろん買う人が無ければ売れない。買う人が少なければ暴落し、吸い上げもできず信認毀損の奈落である。)
その時点までに、言うなれば法定準備金の15倍という具合に、マネタリー・ベースは簡単に増大している可能性がある。
その場合、中央銀行が現在の水準の1/15程度にマネタリー・ベースを縮小しない限り、マネー・サプライは増大し続け、インフレを制御不能なスパイラルにしてしまうのだ。
(略)
そして、インフレへの懸念及び中央銀行の大きな損失に関する話題は、日本の通貨に対する信頼を損なわせる可能性がある。
日本の国家債務は今や GDP の240%となり、国内産業は空洞化し、低下しつつある出生率の中で人口は高齢化して縮小しており、そして貿易収支が赤字へと陥ってさえいるのである。
これらの気の滅入るようなファンダメンタルズにも拘わらず、人々が円を使用し続けている第一の理由は、日銀の反インフレ的な行動によって彼等への信頼を得ていたからである。
日銀が無謀にもインフレを焚き付け、日本国債市場の崩壊及び銀行の債券ポートフォリオ上の大きな損失を引き起こした場合、通貨及び中央銀行に対する国民の信頼は一夜にして消滅しかねないのだ。
(略)
・ お前達が願っている事に注意しろ...
緩和プログラムの効果が無い限り、実際のダメージは無い。
(※ 仮にマスコミの煽動が弱く、国民が騙されなく、インフレ効果がない場合はこうした家計、企業、政府の共倒れ破綻は起こらない。
ただ、その場合は勤労者、零細業者の窮乏化のみが起こる。
デフレ対策としての勤労家計へ再配分をしなければ、さらなるバブル崩壊とさらなるデフレ恐慌。)
しかし、一旦心理的に影響し始めた場合、法定準備金の大きさに合わせて日銀は迅速に方針を反転させてマネタリー・ベースを元の水準に戻す必要が生じるのだ。
政策転換が遅れた場合、法定準備金の何倍にもなったベース・マネーが跳ね回る時に日本経済は制御不能なスパイラルに陥る可能性があるのだ。
更に、マネタリー・ベースを縮小するという行動は、日本国債市場のダメージを最小化すべく慎重に準備されなければならないのである。
緩和が円及び債券市場の崩壊を引き起こすという出来事に対し、日銀、財務省、そして金融庁も偶発的な事象への対応計画を持つべきなのである。
(※ 前にも書いたが、スタグフレーションとなり本当の円売り、日本売に入った場合の戦略は何もない。広い意味での出口戦略であるが、ベースマネーを吸い上げようにも、その時点では国債を買うものが居ないことになる。ドルと異なり円建て国債は世界の基軸通貨でもなければ、世界需要も無いのである。)
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※ 以下は勤労者賃金、所得の再配分と消費増税、デフレに関連するページ。
労働分配率の強制修正
世界で日本のみデフレ
日銀の金融緩和は誰のためか
信用創造と言えば聞こえは良いが
信用創造とは
公務員叩きとデフレ政策
通貨、金利と信用創造の特殊な性質
信用創造(3)無政府的な過剰通貨
デフレ脱却には賃金上昇が不可欠:根津
これからの経済生活はどうなるのか
なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
ゆでガエル!
消費増税でデフレ強行を目指すかいらい政権
日本の労働は封建主義の農奴農民か
窮乏化、3軒に1軒が貯金もなし
逆進課税とデフレ恐慌
消費増税を許すな!三党談合政権を倒そう
破滅の緊縮財政か、恐慌を断ち切る財政出動か
景気対策ではない、消費増税を通すためのGDP操作だ
安倍某の経済政策?恐怖のシナリオか
安倍の過激刺激策は過去のミス繰返し:人民網
家計、企業、政府の共倒れ破綻
生活と円安、アベノミクスが招くこと
アベノミクスが作り出す地獄の窮乏生活
通貨戦争(62)ゴロツキ右翼が口火で世界大戦:ペセック
アベノミクスは現実を欠いた宗教:ペセック
勤労者の地獄と国際金融資本の高笑い
賃上げが無ければ経済成長は無い
来年度成長率2.5%?参院選向けの国民騙し!
なぜ消費増税に固執するのか
アベノミクス、勤労者窮乏化の効果だけは必ずある
アベノミクスの展開と帰結:吉田繁治
企業内労組連合の腐敗とブラック企業、アベノミクスの茶番
安倍の犯罪、早くも生活苦が始まった
失業、窮乏、貧富の拡大を目指す安倍政権
通貨戦争(64)キプロスにみる、金融緩和という火薬庫
スタグフレーションとバブル:藻谷
狂気のアベノミクス、マネタリーベースと長期国債
注意!大マスコミが好景気を「演出」している
小沢氏4/1経済も安倍政権もこのままでは持たない
出口もリスクも無視、空気に従う委員たち
通貨戦争(65)アベノミクスに潜む「日米密約」
黒田日銀は己の失敗を願うべき:Richard Koo
黒田「異次元金融緩和」は米国とFRBの意向
目算違いの金利高騰、荒れる債券市場は何故か
アベノミクスと国際金融資本
円安は賃金低下と一部企業の利益増:野口
破綻早めるアベノミクス
インフレ目標は宗教か脅しか:中原
アベノミクスは米国と国際金融の草刈り場
デフレ脱却ではなくスタグフレーション:野口
中原圭介インタビュー:通説経済学に騙されるな
アベノミクス、米国に大流出している日本の資金
法人減税で賃上げ?景気回復?の馬鹿話
よくわかる?消費税
所得の上がらないどころか、窮乏化するインフレ。スタグフレーションが顕著になってきた。
行き着く先は投機市場ののバブル崩壊と国債下落(金利上昇)。
対米売国奴どもによる暗い展望。
なお、いつもどおり(※ )はもうすぐ北風の注釈。
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日銀・岩田副総裁の講演から感じること 10/21 闇株新聞
日銀の岩田規久男・副総裁が10月18日に中央大学で講演しました。読者の方から「紛れ込んで、突っ込んだ質問をしてみたら?」とのコメントをいただいていたのですが、ちょっと八王子は遠すぎて行けませんでした。
日銀のHPに講演内容が出ていますので、ご興味のある方は下記よりご参照ください。
【講演】「量的・質的金融緩和」の目的とその達成のメカニズム
4月4日の「異次元」金融緩和の実施から半年以上経過しているので、その後の状況の変化も織り込んで副総裁が直々に「講演」してくれると思っていたのですが、かなり期待外れでした。
当初の日銀の説明からは「全く」何も変わっておらず、要するに「現在の政策の効果に何の疑問も懸念も抱いておらず、状況の変化による軌道修正の必要性を全く想定していない」ことになります。
まず、なぜ日銀は2%というインフレ率の達成を目指すのか?ですが、これは当初からの「デフレは価格下落を通じて企業収益を圧迫し、結果として経済全体の生産や雇用を減退させるから」であり、日銀は2%というインフレ目標を達成するために、これまでと次元の違う「量的・質的緩和」を行っていると繰り返しています。
「量的」とはマネタリーベースを2014年末までに(2012年末の2倍の)270兆円とすることで、「質的」とは買い入れる国債の平均残存年数をこれまでの2倍以上の7年程度にすることで、「イールドカーブ全般を引き下げるため」と説明しています。
そして最後に、「名目金利の引き下げ効果」と「期待インフレ率の上昇効果」で、実体経済に重要な影響を及ぼす「予想実質金利」を引き下げる効果があるとしています。
当初から「違和感」を感じていたのですが、現在も日銀の「基本的な理論構成」がそのまま維持されていることになります。
「違和感」を順番に挙げていくと、インフレ率の上昇とは経済活動が活発化した結果(※あくまで結果)であり、インフレ率をまず無理に上昇させても経済活動が活発化しているとは限らないこと、
そしてインフレ率の上昇には円安やエネルギー価格の上昇による「経済活動にマイナスでしかない」ものが含まれているのですが、特に区別していないことです。
つまり、まさに現在の足元で加速中の「経済活動にマイナスでしかないインフレ」でも、日銀はそのまま好ましいことと「喜んで」いることになります。
何よりも不思議なのは「量的・質的金融緩和」により「名目金利の引き下げ効果」と「期待インフレ率の上昇効果」が長期間にわたって共存すると信じきっていることです。
その結果、国債の予想実質金利が(たぶん)マイナスになり、国債から株式などのリスク商品に資金が移動すると期待しているのですが、
「期待インフレ率の上昇効果」の結果として「名目金利がいずれ上昇予想に転じて」国債市場が下落することを全く心配していないことです。
国債市場全体の下落(利回りの上昇)が経済に及ぼすマイナス効果を、全く気にしていないことになります。
現時点では、たまたま国債の名目金利(名目利回り)が低下しており、講演のあった10月18日には5年国債利回りが0.20%(講演では、5年の期待インフレ率が1.5%なので予想実質金利がマイナス1.3%まで下落しているとのグラフが添付されています)、10年国債利回りが0.61%まで低下しています。
これは国債利回り(特に長期国債利回り)の低下は、近い将来の経済活動の低下を暗示しているなどの可能性を全く排除し、すべて日銀の「量的・質的緩和」のおかげであるとする大変に危険な考えです。
逆に状況が少し変化し、長期国債利回りが上昇を始めたときの対応が、全く取れないことを意味します。
また量的緩和で供給された資金が日銀当座預金に滞留したままでも、十分に期待インフレ率が上昇するとの岩田副総裁の「持論」も繰り返されています。
(※日銀当座にブタ積みの分はマネーストックにならない。通貨供給増にならない。信用増にもならない。
せいぜいが投機市場と米国債にまわる。
国民の所得増(勤労家計の可処分所得増)がなければ消費需要は増加せず、設備投資は増えない。
公共事業の分が建設業の設備投資になるくらいしか期待できない。)
その是非はともかくとしても、「弊害」については全く考慮していないことは立場的に問題があります。
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インフレ目標は宗教か脅しか:中原
インフレ目標政策の眼目は「インフレになるぞ!」「物価が上がるぞ!」と国民全体に信じ込ませることです。
信じ込ませることができれば、消費者はモノを安いうちに買おうと思うに違いない。
消費が増えれば、企業の利益が増えるに違いない。
リフレ派の人々の根拠のひとつでもある「インフレ期待」というもので、要するに「信じる者は救われる」というような宗教みたいな学説なのです。
少しきつい言い方に換えれば、「早くしないとインフレになるぞ!」「現金を持っていても物価が上がれば目減りするぞ!」「今のうちに株を買ってしまえ!」「家も買ってしまえ!」と国民を脅しているだけです。
金融市場は「思惑」で動くことが多いです。為替にしたって株価にしたって、実体経済とはまったく違う思惑で乱高下することが多すぎると言ってもいいかもしれません。
というのも、欧米の金融機関やヘッジファンドの運用担当者は、上がるにしろ、下がるにしろ、市場が大きく動くことを望んでいるからです。
彼らは市場が大きく動かないことには、大きく儲けることができないのです。
ですから、彼らは相場が大きく動く材料にアンテナを張っていますし、ひとたび市場が大きく動き始めれば、強気でガンガン攻めてきます。
ユーロ危機以降、大きく動き、かつ流動性が高い市場がなかったために、アベノミクスによる金融緩和は彼らにとって絶好の投資材料と映ったことでしょう。
しかし、国民の消費行動が「思惑」だけで動くことはごく稀なことです。
(略)
仮にインフレを起こすことができたとしても、大多数の労働者の賃金が上がることはありません。
(※ 特に労働力市場の機能が無きに等しい、日本の場合は上がりません。)
物価だけが上がり、賃金が上がらない社会がやってくるだけのことです。
デフレ以上にひどい時代がやってくるのです。
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黒田日銀は己の失敗を願うべき:Rchard Koo
■野村のリチャード・クーから
・ 貨幣乗数...そしてインフレ...
(※ いきなり貨幣乗数ときたが簡単な話で、中央銀行が発行した通貨+銀行準備金(ベースマネー)に対して、銀行が信用創造で貸し出し増量した通貨(マネーサプライ)が何倍か、と言う比率のこと。与信なので信用乗数とも言う。)
黒田氏が日銀総裁に任命される前、量的緩和の下で FRB により供給されたベース・マネーは法定準備金の16.0倍に積み上がった。
他の中央銀行における同様の比率は、BOE で9.7倍、日銀で4.8倍、そして ECB で3.8倍であった。
もしも貨幣乗数が正常に機能していた場合、マネー・サプライは、米国において現在の値よりよりも16倍大きく、英国において9.7倍大きく、日本において4.8倍大きく、そしてユーロ圏において3.8倍大きくなっていたであろう。
(※ 消費と設備投資の有効需要が資金需要となる、成長循環経済の正常な信用創造ならば、このようなマネーサプライとなるだろう。)
そのようなマネー・サプライが実際に短期間で実行された場合、通常それは同様の価格の上昇を伴い、米国において1,600%、英国において970%、そして日本では480%という前例の無いインフレに繋がっていたであろう。
(※ 通貨も当然需要と供給で価格が決まるため、通貨下落=物価上昇となる。)
これが起きなかった理由を、以下で詳細に説明する。
しかし、要約すると、金利がゼロへ低下してさえ、これらの国の経済において企業及び家計が借りる事を止めたのだ。
そしてマネーを借りる者が誰もおらず、多くが実際には債務を返済している中で、貨幣乗数は僅かなマイナスへと転じたのである。
(略)
・ 意図せぬ結果...
恐らく、更に重要だったのは何故日本の金利がそれ程に低かったのかという事であろう。
本質的に、バランス・シートの問題、その結果としての債務のトラウマ、そして国内での投資機会の不足により、民間部門がマネーの借り入れを停止したのである。
(※ 言い方を変えればバランスシート、債務のトラウマは勤労賃金の減少となった。消費需要が上がらないのに設備投資はできない。)
民間部門の借り手がおらず、日本国債を0.6%の利回りで日銀へ売却している日本の銀行は、選択肢が不足する中で収益を日本国債に再投資する事を余儀無くされている事に気付いているかもしれない。
もし置き換える債券に僅か0.4%の利回りしか無さそうであれば、正しい選択は(※せめて)0.6%の利回りの債券(日本国債)を保有し続ける事である。
その意味において、日本における量的緩和は既に限界に達しているのだ。
・ そしてQEは自らの道を駆けた...
しかし、ゼロ金利にも拘わらず両国の企業及び家計が現在借り入れを拒否しているという事実は、長期利率を引き下げる効果自体が使い果たされたかもしれないという事を示唆しているのだ。
(略)
「もし十分な程頻繁に繰り返したならば、人々は嘘を信じるようになる」と、ある悪名高いプロパガンダの手先が語ったと言われている。
今日(こんにち)の日本では、メディア - 特に至る所に存在するTVのバラエティ番組 - がインフレについて語る事を止められないのだ。
これらのコメンテーター達は、金利がゼロに落ち込んでいながらも日本における貨幣乗数が僅かながらマイナスであるという事に全く気付いていないのである。
彼等は単に日銀による積極的な緩和がいつかはインフレを生み出すという単純化された見方を繰り返しているのだ。
これを朝から晩まで聞けば、日銀の政策が直接インフレを作り出せる方法など無いにも拘わらず、インフレについて一部の人々を心配させ始める事になるであろう。
もしも彼等が価格の上昇を予想し、それに応じて彼等の振る舞いを変更した場合、インフレが現実となる可能性がある。
更に、日本のメディアは一斉に同じ方向へ動く傾向があり、その嘘を更に頻繁に繰り返す原因となるのだ。 従って、もしも多くの人々が将来のインフレに対する期待で彼等の振る舞いを変えたとしても驚くには値しないのである。
・ 問題は - もしも人々が信じ始めたらどうなるかという事である...
ここでのリスクは、借り手達だけで無く、貸し手達も嘘を信じ始める事である。
インフレを予想しながら現在の利率でマネーを貸し出す金融機関など存在しないのだ。
水平線上に突然インフレを見た金融機関は、0.6%の利回りの10年物国債を保有し続けないかもしれない。
結果として生じる売りへの殺到は日本国債市場の崩壊を引き起し、国内の金融機関に大きなダメージを与えるかもしれないのだ。
疑問なのは、如何に黒田の日銀がそのような暴落に対応するのかという事である。
もし彼等が更に日本国債を買い始めた場合、マネタリー・ベースが拡大し、資金に対する民間需要が既に回復して貨幣乗数が僅かながらプラスに転じた時に、インフレの懸念を焚き付ける事になるのだ。
しかし、インフレ懸念を鎮めようと日銀が自ら保有する日本国債を売却したら国債(価格)は更に下落し、金融機関及び政府のバランス・シートに大きな穴をあける事となってしまうのである。
(※ 供給した過剰流動性を吸い上げなければならないが、そんな巨額の吸い上げは国債を売るしかない。もちろん買う人が無ければ売れない。買う人が少なければ暴落し、吸い上げもできず信認毀損の奈落である。)
その時点までに、言うなれば法定準備金の15倍という具合に、マネタリー・ベースは簡単に増大している可能性がある。
その場合、中央銀行が現在の水準の1/15程度にマネタリー・ベースを縮小しない限り、マネー・サプライは増大し続け、インフレを制御不能なスパイラルにしてしまうのだ。
(略)
そして、インフレへの懸念及び中央銀行の大きな損失に関する話題は、日本の通貨に対する信頼を損なわせる可能性がある。
日本の国家債務は今や GDP の240%となり、国内産業は空洞化し、低下しつつある出生率の中で人口は高齢化して縮小しており、そして貿易収支が赤字へと陥ってさえいるのである。
これらの気の滅入るようなファンダメンタルズにも拘わらず、人々が円を使用し続けている第一の理由は、日銀の反インフレ的な行動によって彼等への信頼を得ていたからである。
日銀が無謀にもインフレを焚き付け、日本国債市場の崩壊及び銀行の債券ポートフォリオ上の大きな損失を引き起こした場合、通貨及び中央銀行に対する国民の信頼は一夜にして消滅しかねないのだ。
(略)
・ お前達が願っている事に注意しろ...
緩和プログラムの効果が無い限り、実際のダメージは無い。
(※ 仮にマスコミの煽動が弱く、国民が騙されなく、インフレ効果がない場合はこうした家計、企業、政府の共倒れ破綻は起こらない。
ただ、その場合は勤労者、零細業者の窮乏化のみが起こる。
デフレ対策としての勤労家計へ再配分をしなければ、さらなるバブル崩壊とさらなるデフレ恐慌。)
しかし、一旦心理的に影響し始めた場合、法定準備金の大きさに合わせて日銀は迅速に方針を反転させてマネタリー・ベースを元の水準に戻す必要が生じるのだ。
政策転換が遅れた場合、法定準備金の何倍にもなったベース・マネーが跳ね回る時に日本経済は制御不能なスパイラルに陥る可能性があるのだ。
更に、マネタリー・ベースを縮小するという行動は、日本国債市場のダメージを最小化すべく慎重に準備されなければならないのである。
緩和が円及び債券市場の崩壊を引き起こすという出来事に対し、日銀、財務省、そして金融庁も偶発的な事象への対応計画を持つべきなのである。
(※ 前にも書いたが、スタグフレーションとなり本当の円売り、日本売に入った場合の戦略は何もない。広い意味での出口戦略であるが、ベースマネーを吸い上げようにも、その時点では国債を買うものが居ないことになる。ドルと異なり円建て国債は世界の基軸通貨でもなければ、世界需要も無いのである。)
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※ 以下は勤労者賃金、所得の再配分と消費増税、デフレに関連するページ。
労働分配率の強制修正
世界で日本のみデフレ
日銀の金融緩和は誰のためか
信用創造と言えば聞こえは良いが
信用創造とは
公務員叩きとデフレ政策
通貨、金利と信用創造の特殊な性質
信用創造(3)無政府的な過剰通貨
デフレ脱却には賃金上昇が不可欠:根津
これからの経済生活はどうなるのか
なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
ゆでガエル!
消費増税でデフレ強行を目指すかいらい政権
日本の労働は封建主義の農奴農民か
窮乏化、3軒に1軒が貯金もなし
逆進課税とデフレ恐慌
消費増税を許すな!三党談合政権を倒そう
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