ガンダーセン:フクシマの危険、現在(3)
2013-10-17
「ガンダーセン:フクシマの危険、現在(2)」からの続きです。
ーーーーーーーーーーーーーー
『進行中の福島の危機』、本当は何が起きているのか フェアウィンズ 翻訳「星の金貨」氏から
汚染水問題、事故直後から今日の状態を、誰もが予見できたはず
いずれ事故は免れない、その場所で1~4号機は稼働していた
『生き残った』原子炉5号機、6号機が証明している事とは…
これから東京電力が行おうとしている対策は、原子炉・タービン建屋群の地下に、大量の、一日あたり400トンという量の地下水が流れ込んでいることに起因するものです。
東京電力は1~4号機の周り全てに遮水壁を巡らそうとしています。
配管を巡らせて敷地の周囲に冷却溶剤を流し込み、地面を凍結させ、地下水の流れ込みを遮ろうとする計画を実施しようとしています。
この凍土壁は遮水壁と名づけられました。
計画通りに進めることができれば、2.5キロ以上に渡る遮水壁が出来上がることになります。
しかしその遮水壁が、想定通りの効果を発揮するかどうかは保証の限りではありません。
まずこれほど大規模に地中を凍結させるという事業が、実際に行われたことが無いのです。
(※ 軟弱地盤、湧水などを防ぐためにせいぜい百m、数週間くらい。圧密コンクリートに置き換える。)
次に、仮に凍土壁=遮水壁の造成に成功したとしても、底の部分が開いているために将来再び汚染水漏れが発生する可能性があるのです。
そしてその遮水壁も完成までには2年の月日を要し、それまでは現在と変わらず汚染水が太平洋に流れ込む懸念が続くことになります。
凍土壁の問題を検証していて、思い出したことがあります。
私が福島第一原発の事故発生後、その年のうちに出版した著作[福島第一原発 – 真相と展望 (集英社新書)]についてお話したいと思います。
2年前のその時点で、この福島第一原発の敷地の汚染は、充分に予見が可能でした。
なぜなら事故発生直後の4月には、福島第一原発の管理者である東京電力はすでに増え続ける汚染水の問題に直面していたのです。
これら建屋群の地下部分がいずれ浸水してしまうだろうことは、誰にでも予見できたことなのです。
私は上記の著作の中で、建屋群の山側、すなわち水が流れ込んでくる側にゼオライトを敷き詰めた排水溝を掘る必要性について述べました。
私がこうした対策が必要だと判断した理由は、福島第一原発の敷地内に流れ込む地下水を汚染させずにそのまま海に流してしまうこと、すなわち放射性物質が海に流れ出さないようにするためでした。
この原子力発電の地下部分をバスタブだと考えてみてください。
このバスタブには栓がされており、水を排水できないようになっています。
このバスタブに水が貯まり続けているため、東京電力はこれ以上水が入らないよう、バスタブよりも背の高い壁を築こうとしているのです。

私が考える対策は違います。
私はこのような高い壁は作りません、栓を外すのです。
私が考える対策の要点は、水が海に流れ込むのを防ぐことではありません。
要点は、流れ込む地下水を汚染させない事です。
もし2年半前、汚染のひどい建屋群がある場所を迂回するようにゼオライトを敷き詰めた排水溝を作っていれば、福島第一原発の技術者たちは丘陵地帯から流れ込む地下水を、汚染されないまま海に放水することが出来たはずです。
しかし今ではもう手遅れです。
地下水は汚染されてしまいました。
福島第一原発の敷地内で地下水をくみ上げれば、汚染された水があふれ出すことになります。
東京電力が行おうとしている地下凍結による遮水壁、それが想定通りの効果を発揮するかどうか、私たちはその目撃者になることになります。
それでは最後に福島第一原子力発電所の現状について、改めて総合的な観察をすることにしましょう。
今回のお話を始めるに当たり、私は福島第一原発の1~4号機をどこにどのように建造するかの決定を行ったのはアメリカの企業、ゼネラル・エレクトリックとEBASCOという名前の会社の技術者たちであったことをお伝えしました。

そして少し離れた場所に原子炉5号機と6号機があります。
この2基は1~4号機と同じ場所にはありませんね?
海岸線から離れた場所に建造されました。
しかも物理的にも高い場所にあります。
そうです。
東京電力は解っていたのです。
ゼネラル・エレクトリックの1~4号機の設計が誤りであったことを。
1~4号機はまるでカーボンコピーのように同じ場所に作られました。
しかし原子炉5号機と6号機は海岸線から充分離れた場所に、しかも1~4号機と比べ、約3メートル高い場所に建造されました。
その結果、2011年3月、津波が福島第一原発を襲った際、1~4号機と5号機6号機の運命は全く異なったものになったのです。
5号機と6号機については、著しい損傷というものは発生しなかったのです。
つい最近、日本の安倍政権は5号機と6号機についても、廃炉は免れないとする意思表示を行いました。
実際に5号機と6号機の周辺においても高い放射線量が計測されています。

しかしメルトダウンが進行したり、爆発が起きたりはしませんでした。
ほぼ建造された状態を保っており、廃炉などの作業も計画的に進めることが出来るはずです。
日本の技術者たちは1~4号機の誤りに気づいたからこそ、5号機と6号機は海岸線から離れた、もっと高い場所に建造したのです。
〈 完 〉
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、この国の隠蔽体質は今も変わらず、ガンダーセン氏の真摯な姿勢も変わりません。
下に、このブログ内のガンダーセン及びカルディコット氏関係記事のリンク一覧。
・ 第一原発、絶えず新たな危機、現場は限界に
・ 3号機は核燃料プールが臨界爆発
・ グンダーセン:最も危険な4号機、そして3号機
・ ガンダーセン:インタビュー(1)原発の状況
・ ガンダーセン:インタビュー(2)4号機の危険
・ ガンダーセン:インタビュー(3)被曝と汚染
・ ガンダーセン:インタビュー(4)汚染と除染
・ 3号機の使用済み核燃料プールは空っぽ
・ ガンダーセン:深刻な放射能汚染、黒い雨
・ 車のエアフィルターと呼吸による被曝
・ 10シーベルト超の致命的な放射線:ガンダーセン
・ ガンダーセン:日本に重要な警告
・ ガンダーセン:日本政府は重大さを認識せよ
・ ガンダーセン:原発の欠陥と過小コスト計算の欠陥
・ ガンダーセン:マーク1型原発の全て閉鎖を提言
・ ガンダーセン:フィルターや靴紐の汚染が示すこと
・ ガンダーセン2/20会見「事故の真相と展望」
・ 放射性廃棄物の焼却は原発事故の再現だ
・ 福島の子どもたちが危ない:Business Insider
・ 36%に甲状腺異常、見解と提言:カルディコット
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(1)
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(2)
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(3)
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(4)
・ ガンダーセン:40年の幻想
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『進行中の福島の危機』、本当は何が起きているのか フェアウィンズ 翻訳「星の金貨」氏から
汚染水問題、事故直後から今日の状態を、誰もが予見できたはず
いずれ事故は免れない、その場所で1~4号機は稼働していた
『生き残った』原子炉5号機、6号機が証明している事とは…
これから東京電力が行おうとしている対策は、原子炉・タービン建屋群の地下に、大量の、一日あたり400トンという量の地下水が流れ込んでいることに起因するものです。
東京電力は1~4号機の周り全てに遮水壁を巡らそうとしています。
配管を巡らせて敷地の周囲に冷却溶剤を流し込み、地面を凍結させ、地下水の流れ込みを遮ろうとする計画を実施しようとしています。
この凍土壁は遮水壁と名づけられました。
計画通りに進めることができれば、2.5キロ以上に渡る遮水壁が出来上がることになります。
しかしその遮水壁が、想定通りの効果を発揮するかどうかは保証の限りではありません。
まずこれほど大規模に地中を凍結させるという事業が、実際に行われたことが無いのです。
(※ 軟弱地盤、湧水などを防ぐためにせいぜい百m、数週間くらい。圧密コンクリートに置き換える。)
次に、仮に凍土壁=遮水壁の造成に成功したとしても、底の部分が開いているために将来再び汚染水漏れが発生する可能性があるのです。
そしてその遮水壁も完成までには2年の月日を要し、それまでは現在と変わらず汚染水が太平洋に流れ込む懸念が続くことになります。
凍土壁の問題を検証していて、思い出したことがあります。
私が福島第一原発の事故発生後、その年のうちに出版した著作[福島第一原発 – 真相と展望 (集英社新書)]についてお話したいと思います。
2年前のその時点で、この福島第一原発の敷地の汚染は、充分に予見が可能でした。
なぜなら事故発生直後の4月には、福島第一原発の管理者である東京電力はすでに増え続ける汚染水の問題に直面していたのです。
これら建屋群の地下部分がいずれ浸水してしまうだろうことは、誰にでも予見できたことなのです。
私は上記の著作の中で、建屋群の山側、すなわち水が流れ込んでくる側にゼオライトを敷き詰めた排水溝を掘る必要性について述べました。
私がこうした対策が必要だと判断した理由は、福島第一原発の敷地内に流れ込む地下水を汚染させずにそのまま海に流してしまうこと、すなわち放射性物質が海に流れ出さないようにするためでした。
この原子力発電の地下部分をバスタブだと考えてみてください。
このバスタブには栓がされており、水を排水できないようになっています。
このバスタブに水が貯まり続けているため、東京電力はこれ以上水が入らないよう、バスタブよりも背の高い壁を築こうとしているのです。

私が考える対策は違います。
私はこのような高い壁は作りません、栓を外すのです。
私が考える対策の要点は、水が海に流れ込むのを防ぐことではありません。
要点は、流れ込む地下水を汚染させない事です。
もし2年半前、汚染のひどい建屋群がある場所を迂回するようにゼオライトを敷き詰めた排水溝を作っていれば、福島第一原発の技術者たちは丘陵地帯から流れ込む地下水を、汚染されないまま海に放水することが出来たはずです。
しかし今ではもう手遅れです。
地下水は汚染されてしまいました。
福島第一原発の敷地内で地下水をくみ上げれば、汚染された水があふれ出すことになります。
東京電力が行おうとしている地下凍結による遮水壁、それが想定通りの効果を発揮するかどうか、私たちはその目撃者になることになります。
それでは最後に福島第一原子力発電所の現状について、改めて総合的な観察をすることにしましょう。
今回のお話を始めるに当たり、私は福島第一原発の1~4号機をどこにどのように建造するかの決定を行ったのはアメリカの企業、ゼネラル・エレクトリックとEBASCOという名前の会社の技術者たちであったことをお伝えしました。

そして少し離れた場所に原子炉5号機と6号機があります。
この2基は1~4号機と同じ場所にはありませんね?
海岸線から離れた場所に建造されました。
しかも物理的にも高い場所にあります。
そうです。
東京電力は解っていたのです。
ゼネラル・エレクトリックの1~4号機の設計が誤りであったことを。
1~4号機はまるでカーボンコピーのように同じ場所に作られました。
しかし原子炉5号機と6号機は海岸線から充分離れた場所に、しかも1~4号機と比べ、約3メートル高い場所に建造されました。
その結果、2011年3月、津波が福島第一原発を襲った際、1~4号機と5号機6号機の運命は全く異なったものになったのです。
5号機と6号機については、著しい損傷というものは発生しなかったのです。
つい最近、日本の安倍政権は5号機と6号機についても、廃炉は免れないとする意思表示を行いました。
実際に5号機と6号機の周辺においても高い放射線量が計測されています。

しかしメルトダウンが進行したり、爆発が起きたりはしませんでした。
ほぼ建造された状態を保っており、廃炉などの作業も計画的に進めることが出来るはずです。
日本の技術者たちは1~4号機の誤りに気づいたからこそ、5号機と6号機は海岸線から離れた、もっと高い場所に建造したのです。
〈 完 〉
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、この国の隠蔽体質は今も変わらず、ガンダーセン氏の真摯な姿勢も変わりません。
下に、このブログ内のガンダーセン及びカルディコット氏関係記事のリンク一覧。
・ 第一原発、絶えず新たな危機、現場は限界に
・ 3号機は核燃料プールが臨界爆発
・ グンダーセン:最も危険な4号機、そして3号機
・ ガンダーセン:インタビュー(1)原発の状況
・ ガンダーセン:インタビュー(2)4号機の危険
・ ガンダーセン:インタビュー(3)被曝と汚染
・ ガンダーセン:インタビュー(4)汚染と除染
・ 3号機の使用済み核燃料プールは空っぽ
・ ガンダーセン:深刻な放射能汚染、黒い雨
・ 車のエアフィルターと呼吸による被曝
・ 10シーベルト超の致命的な放射線:ガンダーセン
・ ガンダーセン:日本に重要な警告
・ ガンダーセン:日本政府は重大さを認識せよ
・ ガンダーセン:原発の欠陥と過小コスト計算の欠陥
・ ガンダーセン:マーク1型原発の全て閉鎖を提言
・ ガンダーセン:フィルターや靴紐の汚染が示すこと
・ ガンダーセン2/20会見「事故の真相と展望」
・ 放射性廃棄物の焼却は原発事故の再現だ
・ 福島の子どもたちが危ない:Business Insider
・ 36%に甲状腺異常、見解と提言:カルディコット
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(1)
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(2)
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(3)
・ ガンダーセン、カルディコット対談「福島の現実」(4)
・ ガンダーセン:40年の幻想
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