ガンダーセン:フクシマの危険、現在(2)
2013-10-17

「ガンダーセン:フクシマの危険、現在」からの続きです。
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『進行中の福島の危機』、本当は何が起きているのか フェアウィンズ 翻訳「星の金貨」氏から
(3)
核燃料ペレットが散乱していたはずの3号機周辺、事故直後にブルドーザーで『地ならし』
4号機使用済み核燃料プール内でのメルトダウン、日本破滅へのシナリオ
さて、3号機の内部でどれほど恐ろしい出来事があったのか、その点も大きな疑問のひとつです。
解っていることは3号機ではデトネーション()が起き、この世の中にはデトネーションが作り出す衝撃波に耐えられる原子炉は存在しないという事です。
(※ 爆轟(ばくごう)、またはデトネーション : 爆発物の燃焼速度が音速を超えること。衝撃波が作られ、大きな破壊力を持つ。)
アメリカの原子力規制委員会は、デトネーションが作り出す衝撃波の問題には触れたがりません。
したがってここアメリカにおけるこの問題の解決のための結論は、問題の存在自体を無視する、という事なのです。
しかしここにはひとたびデトネーションが発生し、衝撃波が作りだされれば原子炉はどうなるのかという、はっきりした証拠が画像として残っています。
原子炉建屋の内側部分では、驚くほど高い放射線量が計測され、外側には爆発によって破壊された核燃料棒の一部であるペレットが散乱していました。

現在、それらはすべて取り片づけられました。
しかしこの事実が指摘するのは、3号機の使用済み核燃料プールの中身はどうなったのかということに対する深刻な懸念です。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私は3号機についてはこれまで、使用済み核燃料プール内で臨界が発生した可能性のある事を何度も指摘してきました。
3号機の周辺に核燃料棒の一部が散乱していたという事実は、臨界が実際に発生したことを証拠立てるものだと考えられるのです。
もしこの核燃料の一部が原子炉そのものから出てきたと考えるなら、原子炉の格納容器が破壊されるか、あるいは実際には起きる可能性がきわめて低い、何か全く別の経路を考えなければなりません。
事故直後、3号機の周囲にあったきわめて高い放射線を発するこれらの物質があった地面はブルドーザーによって地ならしされました。
従って、この核燃料の一部は未だに地面の浅い部分に埋もれている可能性があります。
東京電力や日本政府はこの3号機の問題を、いったいどうするつもりなのでしょうか?
使用済み核燃料プール内には核燃料が残されたままになっていますが、これらをすべて取り出す必要があります。
しかし3号機周辺は放射線量が突出して高く、危険過ぎて人間が近づける状況にはありません。

この状況で再び大きな地震が発生したら、いったいどうなってしまうか、それが目下の私の最大の懸念です。
マグニチュード9.0までの地震ではなくとも、再び大惨事になる危険性があるのです。
マグニチュード8.5の地震が発生すれば、私の懸念は現実のものになってしまうでしょう。
3号機の原子炉建屋は最も損傷がひどく、大きな地震が発生すれば倒壊してしまう恐れがあります。
現在3号機原子炉建屋は、それをすっかり覆い隠すように外壁が作られつつあり、年末までにはこの工事は完了するでしょう。
しかし今はまだ、露出した状態にある事を忘れてはなりません。
では通路を横切って、4号機に行ってみましょう。(ビデオ 12:00~)
福島第一原発の事故が発生した時、4号機は稼働していませんでした。
しかし他の原子炉同様、爆発を起こしました。
4号機について最も危険な問題は、事故発生時、核燃料が格納容器内に入ってはいなかったという点なのです。
核燃料のすべてが格納容器から取り出され、使用済み核燃料プール内に入っていました。
全ての専門家の懸念がこの一点に集中しています。
事故発生当時日本国内にいたアメリカ人に対し、福島第一原発の半径80キロ圏内から退去するよう勧告が行われたのも、この核燃料の存在が理由でした。

例え福島第一原発の原子炉1号機、2号機、3号機すべてが爆発したとしても、日本人全体に対する大きな脅威とはなりえませんでした。
問題は4号機です。
事故当時、その核燃料の温度は上昇していました。
物理的に熱くなっていたのです。
当時4号機の使用済み核燃料プールには、充分な量の水がありませんでした。
もしその水も流れ出てしまっていたら、核燃料プールでメルトダウンが発生したはずでした。
そしてこの核燃料プールと大気の間には、どんな障害物も存在しませんでした。
1~3号機ではメルトダウンが発生しましたが、放射性物質の漏出があったにせよ、核燃料は格納容器内にあり、何もかもがだめになった訳ではありませんでした。
最も深刻な問題、それは4号機の使用済み核燃料プール内の水が無くなった場合、発生するはずだったのです。

事故直後の様子を思い出してください。
事故後真っ先に行われたのは、放水による注水作業でした。
ヘリコプターによる空中散布すら試みられましたが、これはほとんど効果がありませんでした。
ヘリコプターでは、使用済み核燃料プールを水で満たすことは不可能なことは解っていたはずです。
しかしどのような方法を用いても、まずは4号機の使用済み核燃料プール内を水でいっぱいにしなければならなかったのです。
現在は4号機使用済み核燃料プールは水で満たされており、内部の核燃料の安定化が実現できています。
(4)
4号機の使用済み核燃料の取り出し作業、想像できない程の『危険』
海岸に沿って散乱していた、冷却システムの残骸が物語るもの
4号機の爆発後、現場に入った東京電力は使用済み核燃料プールの床の部分の強化を行いました。
これは大きな余震が起きた場合、別の大きな懸念がある事を証拠立てるものです。
事故直後の4月、あるいは5月時点に戻って考えると、核燃料プールの床が崩落する危険性があったことは明らかです。
現在4号機建屋は全体に覆いが掛けられた状態になっており、間もなく核燃料の取り出し作業が始まろうとしています。
現在4号機の核燃料は、パッケージに入ったタバコのような状態になっています。
たばこのパッケージが新しいままなら、タバコは一本ずつ簡単に引き抜くことが可能です。
しかしパッケージがひしゃげてしまっていたり、乱暴に引き抜いたりすれば、タバコは引きちぎられてしまうでしょう。
同じようなことが、4号機の核燃料プール内で発生する可能性があるのです。
核燃料の収納ユニットはすでに変形しており、万が一にも核燃料を力任せに引き抜くようなことをすれば、核燃料が破損してしまう恐れがあります。

4号機原子炉建屋は爆発によって崩落し、当然ながら最上階にあった核燃料プール内のユニットは変形しました。
ですから4号機核燃料プール内の使用済み核燃料の取り出しが来年いっぱいまでかかるという予定は、別に驚くには値しないのです。
原子炉建屋の右側に排煙塔があるのがお分かりですか?
この排煙塔は現在4号機とつながっています。
そこで作業としては核燃料プールのガスを抜き、フィルターを介して排煙塔から大気中にこのガスを放出することになるでしょう。
その際、再びクリプトンが放出されることになります。
クリプトン85(不活性の放射性ガスで、半減期は10.76年。ウランやプルトニウムの核分裂反応により生成し、核実験や原子炉の中で作られる。燃料棒の再処理の過程で、全量が環境に放出される : ウィキペディア)です。
これは核燃料プールの内部が損傷してしまっている以上、避けられない事態なのです。
こうした作業は、国内の原子力発電所で定期的に行われています。
通常使用済み核燃料プールで行われるのは、排煙塔を使ってガスを吸いだし、大気中に放出する作業です。

4号機の今後の作業を注視してください。
環境に負荷をかけざるを得ない作業が必ず行われることになると思います。
ともかくも今は、3号機と4号機の使用済み核燃料プールからすべての使用済み核燃料が取りだされるまで、再び大地震が発生しないことを祈らなければなりません。
4号機建屋は3号機に比べると構造的な強度に優れていますが。3号機爆発による破壊によって、危ない状況であることにかわりはありません。
青い色の4号機建屋の地面に近い部分に、内側から押されたようなふくらみが認められます。
青色の部分はコンクリート壁ですが、その上は鉄骨がむき出しになり、先ほど申し上げたようにシアーズ・ローバックで売っている鉄製物置のような強度しかありません。
しかし、その青色のコンクリート部分にも、3~5センチほどのゆがみが出来ています。
これはオイラー・ストラト・バックルといわれる物理現象の第一段階で、原子炉4号機が地震の揺れによって損傷を起こしたものと考えられます。
そして海沿いに原子炉建屋とは別の、一並びの建物があります。

これがタービン建屋です。
原子炉建屋と同程度の面積を占めていますが、内部には原子力発電所の安全にかかわるような重要な設備は存在しません。
しかしその建物の基礎部分には、高濃度の核廃棄物で汚染されています。
タービン建屋と海岸線の間には、未だに破壊によるがれきの一部が散乱しています。
実はこれらは津波によって機能を完全に破壊された冷却システムが、元あった場所に散乱しています。
このシステムはディーゼル装置を冷却する働きをするはずでした。
しかし私が以前にも申しあげたとおり、この装置は津波によって水没しなくとも、正常に機能するはずの無いものだったのです。
海岸線に散乱するこの装置の破片が、すべてを物語っているのです。
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ガンダーセン:フクシマの危険、現在(3)へ続きます。
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