小出:9/1さようなら原発講演会
2013-09-05
さようなら原発講演会 小出裕章 9/1 日比谷公会堂 書き起こし「kiikochan.blog」から
小出裕章氏:
みなさんこんにちは
みなさんが今日
福島のことを忘れないでこの場所に集まって下さっているという事は大変ありがたいことだと思います。
今日私は、福島を忘れないという事を一つお伝えしたいというか、
みなさんと共有したいと思いますし、
福島の事、それは全てに繋がっているという話をさせていただきたいと思っています。
これはみなさんご存じのとおりの福島原発の写真です。
原子炉が1号機2号機3号機4号機と並んでいましたが、
1号機2号機3号機は運転中に事故に遭遇しまして、全て炉心という部分が溶け落ちてしまいました。
いまその炉心がどこにあるのかもわからない。どうしたらいいのかもわからないという中で、
?におよぶ下請け孫請けという労働者たちが、今この瞬間も作業に当たっているという状態です。
4号機の方は当日運転はしていませんでした。
それでもこのように爆発して建物が吹き飛んでしまいましたし、
未だに使用済み燃料プールという中に大量の放射性物質を抱えたまま、
何時プールが落ちてしまうかもわからない困難な状況の中にあります。
2011年の暮れに当時首相だった野田さんが、事故の収束宣言なんていうものを出したのですけれども、
残念ながら事故は全く収束していないのです。
今現在も危機は続いています。
運転中だった1号機から3号機、それは溶けた炉心がどこにあるかもわからない。
ただ、ひたすら水を入れ続けて冷やすしかないということを2年半にわたって、今日までやってきました。
しかし、水を入れてしまえば汚染水なんてあふれるのは当たり前なのであって、
マスコミは最近になって「汚染水が大変だ」って言い始めたわけですが、
私としては「なにをいまさら」と思いました。
2011年3月11日から、ずーーっと汚染水は流れ出ていたのです。
これからもそうですし、ずっとこれまでも何とか汚染を食いとどめようとして戦いが続いてきて、
労働者が被ばくをしていってしまうという状態が続いています。
これからも何十年もその作業を続けなければいけない、困難なものです。
そしてすでに大量の放射性物質がまき散らされてしまって、
今日も福島から来て下さっている方がいらっしゃると思いますけれども、
何10万人もの人々が故郷を追われてしまったのです。
生活もコミニティーも生活も全部が破壊されて流浪化してしまうという、
こんなことは戦争が起きても起きないという位の事が今現在も続いている。
そしてこれがまだ何十年も続かざるを得ないという状態になってしまっています。
そして、先ほど見ていただいた4号機ですけれども、
建屋が爆発しまして、
炉心の中にあった使用済み燃料も使用済み燃料プールというところに入れられていたのですが、
そのプールは宙づりのような状態になって、今存在しています。
そして、そのプールの底には、
広島原爆に換算すれば多分1万4000発というぐらいに相当する膨大な放射性物質が、
まだ、宙づりのプールの中に眠っているという状態です。
なんとかそれを、一刻も早く何とかしなければいけないのですが、
いかんせん、なにかをしようと思えば労働者が被ばくをするしかない。
そういう状態の中で、今でも苦闘が続いています。
では今まで一体どれだけの放射性物質が環境に漏れてきたかというと、
今から私が皆さんに見ていただこうと思うのはIAEAが行っている、
国際的な原子力推進団体、原子力マフィアの一つの組織であるIAEAという組織があるんですが、
その組織に日本国政府が報告書を出しました。
その報告書の中に大気中に放出したセシウム137という放射性物質の量が書き込まれています。
どの程度だったかという事をお見せします。
まず左の下に黄色い四角を書きました。
これは広島原爆が大気中にまき散らしたセシウム137の量です。
数字も書き込んでありますが(8.9×10の13乗)
多分皆さんピンとこないと思いますので、数字は無視していただいて結構です。
ただしこの黄色い四角の大きさだと思って下さい。
では、福島の第一原子力発電所から、どれだけのセシウムが噴き出してきたかというと、
1号機だけで広島原爆の6発分から7発分(5.9×10の14乗)噴き出させました。
なんと言っても悪いのは2号機なんです。(1.4×10の16乗)
こんなに噴き出した。
そして3号機もやはり噴出させて、(7.1×10の14乗)
当日運転中だった1号機から3号機を合わせると、
広島原爆の168発分をすでに大気中にばら撒いたと、日本国政府が言っているのです。
しかし私はこの数字は必ず過小評価だと思っています。
何故かと言えばこの事故を引き起こした直接の責任は東京電力という会社にありますが、
その東京電力に「お前のところの原子力発電所は安全だ」
「安全性を確認した」といってお墨付きを与えたのは日本国政府なのであって重大な責任があるし、
私は「責任」という言葉は甘いと思います。
「犯罪」と呼ぶべきことをやったのです。
犯罪者が自分の罪を軽く申告する道理はないのです、出来る限り、
あ・・・ごめんなさい。
「重く申告するど道理はない」ですね。
「できる限り軽く見せたい」と言ってはじき出した数字がこの168発。
多分これの2倍か3倍だと私は思います。
つまり、広島原爆がまき散らした放射性物質の
400倍とか500倍がすでにまき散らしてしまったという事故だったのです。
大変な事故なのです、これは。
そのためにどんな汚染が生じたかという事を日本国政府が地図に示しました。
福島原子力発電所はこの位置にあります。
西側は土地ですし、東側は海です。
そして日本というこの国は北半球温帯というところにありますので、
基本的には偏西風という西風が吹いているのです。
福島原子力発電所から大気中に放出された放射性物質は、
ほとんどが西風に乗って太平洋に流れたのです。
日本というこの国にとってはありがたいことだと思います。
しかし、風ですから、北風の日もあった、南風の日もあった、
という事で、日本の国土もこんなふうに汚れたのですね。
今日はこの汚染を詳しく皆さんに聞いていただく時間はありませんが、
福島第一原子力発電所の北西の方に赤と緑の帯がずーっと延びているのを分かって頂けると思います。
ここが猛烈な汚染地帯です。
民主党が政権をとっていた時代に、
一番初めは
福島第一原子力発電所から3kmの範囲の人たちに、万一のことを考えて避難しろという指示を出しました。
しばらくしたら10kmの人達に対して万が一のことを考えて避難しろと支持を出しました。
その次にまた、半径20kmの人に対して、万が一のことを考えて避難しろという指示を出しました。
そしてバスを差し向けて、住民を避難所に連れていった。
それっきりもう住民は帰れなくなってしまったわけです。
しかし、猛烈な汚染を受けたのは、20kmでもとどまらない、30kmでもとどまらない
なんと、40km、50kmという離れたところまでが猛烈な汚染を受けてしまいました。
この40km、50km離れたところには、福島県の飯舘村という村があります。
原子力発電所からは何の恩恵も受けないで、「自分たちの村は自分たちでつくる」と言って
長い年月苦闘を続けて日本一美しい山村と自他ともに認める程の村を作り上げました。
しかしその村が何の警告も受けないまま猛烈な汚染地帯に巻き込まれて、
住民たちはその汚染地帯の中で被ばくをしてしまって、
数カ月経ってから「お前のところが汚れている」と教えられて、今は全損離村です。
こんなことが起きていい事なんでしょうか?
この赤、黄、緑のところは面積にすると約1000キロ平方メートルあります。
琵琶湖が1.5個入ってしまうという、それほどの広大な土地がすでに無くなってしまったのです。
かつての戦争で日本は負けました。
負けたけれども「国破れて山河あり」だった。
国家なんていうものが負けたって、大地があれば人々は生きられる。
この範囲はもう人々が生きることすらが出来ないという事にされてしまったのです。
戦争が起きたって、こんなひどいことは起きないという事が、今もうすでに発生してしまっています。
そして福島県を中心にして青く塗ったところが
東北地方、関東地方にずっと広がっているのが分かって頂けると思います。
そしてその青の周りにくすんだ緑があります。
福島県で言えば会津の方がそうですし、群馬県の西部、宮城県の南部も北部も
岩手県の一部もあります。
茨城県の南部、千葉県の北部、東京の一部にもありますけれども、
こういう色のところは現在の法律に照らしあわせるのならば、
「放射線の管理区域」にしなければなりません。
普通のみなさんは入れないんです。
私のようなごく特殊な人間だけが立ち入ってもいいと許されるのが放射線管理区域です。
が、その場所に私は立ち入った途端に水すらが飲めなくなる。
というのが放射線管理区域です。
それがこんな広さですでに生じてしまった。ということになりました。
こういう状態を見て、日本の国は一体何をしたでしょうか?
これまで日本は法治国家だと自分のことを呼んできました。
国民がなにか悪いことをすれば、国家がちゃんと処罰すると
「しょっ引いていって処罰するから、日本の国の中には悪いやつはいないから安心しろ」と言ってきました。
それなら、法律をつくった国家が法律を守るのは最低限の義務だと私は思います。
そして国家が被ばくとか放射能について決めた法律だってたくさんあります。
例えば一般の人々。
今日この会場にいらっしゃるほとんどの方々は
1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくはしてはいけないし、させてもいけないという法律があったのです。
そして今、放射線管理区域のことを聞いていただきましたけれども、
放射線管理区域からなにか物を持ちだす時には、
1平方メートル当たり4万ベクレルを超えているような汚染物は、
どんな物でも持ち出してはいけないという法律で決まってたのです。
しかしさっき見ていただいた地図で、
青いところは1平方メートル当たり6万ベクレルを超えてすでに汚れている。
くすんだ緑のところも3万ベクレルを超えて汚れているんです。
それも放射線管理区域の中で汚れた私の実験道具では無い、
私の実験着でもない、
「大地そのものが全部汚れてしまった」と言っているのです。
それを見て日本の国は何をしたか?
私は先程犯罪者だと呼んだわけですけれども、
その犯罪者の日本の国は自分が決めた法律を一切反故にしてしまい、
「1ミリシーベルトなんていう基準はもう守れない、20ミリシーベルトの被ばくまでは我慢しろ」という。
「放射線管理区域の基準は超えているけれども、そこにみんな住め」ということにしてしまいました。
今逃げている人に対しても、「帰還しろ」というようなことを言っているわけです。
あるいは「勝手に逃げるなら国はなんにも知らない」というような事を言っています。
犯罪なんじゃないですか?これは。
ここまできてなぜ罪を裁けないかと、わたしは思いますし、
絶対にこの事故を起こした責任のある人たちを処罰していかなければならないと思います。
先ほどもおっしゃっていたけれども、東京には原発はないんですね。
これは東京電力のパンフレットから取ってきた図ですけれども、
東京電力は東京湾に沢山の火力発電所をつくりました。
当り前ですね。東京湾周辺で沢山の電力を使う訳ですから、電気をそこでつくるのが一番効率がいい。
送電のロスもなにもいらないわけですから、東京湾につくったわけです。
そしてみなさんも東京電力の電気を使っていた方々だと思いますが、
東京電力は、では原子力発電所をどこに作ったかと言えば、
福島第一第二、そして柏崎刈羽という、
これは、東京電力とは何の関係もない地域なんです。
この関東地方のこの部分が東京電力が給電の責任を負っている範囲ですけれども、
それとは全然関係のないところに原子力発電所を建てたんですね。
「万が一でも事故が起きたら大変だ」という事でこんなところに建てた。
そして事故が起きてしまえば、
こういうところの人達が苦難のどん底に突き落とされるという事になってしまっているわけです。
そして今彼らは、この事故をなかった事にしようとしています。
日本ではこれまで58基の原子力発電所がつくられてきました。
その全ては自民党政権が「安全性を確認した」と言って建てたのです。
福島第一原子力発電所もそうです。
安全性を確認して建てたのです。
その原子力発電所が事故を起こしているのに、いま自民党政権、安倍さんですけれども、
「安全性を確認して、いま止まっている原発を再稼働させる」と言っているんですね。
真に正気の沙汰ではないと私は思いますし、
安倍さんはさらには「新しい原発をつくる」そして
「海外に原発を輸出する」というようなことまで言っているわけです。
そしてそれをやるためには、
「福島の原発の事故を忘れさせる」という事が彼らにとって必要になっているのだと思います。
マスコミもそれにどうも乗っているようですし、
福島のニュースはどんどん少なくなってきて、
被災者の方々がどれだけ苦しんでいるのかという事についても、
報道はほとんどなされなくなってきているとおもいます。
そうであれば私たちに必要なことは「福島を忘れない」という事だと思いますし、
私もそうしたいと思いますし、
今日この会場にいらっしゃって下さっている方は
その思いでここに集まって来て下さっていると思いますし、
これからも福島を忘れないという事で、是非ともお願いしたいと思います。
これからですが、
福島の問題はもちろんとてつもなく重大な問題です。
しかし、原子力の問題というのは、単に安全か危険かという問題ではありません。
もともと日本が原子力をやろうとした動機は、「核開発」です。
ここに我が国の外交政策大綱という文書があるんですが、その中の1説を紹介したいと思います。
こう書いてある。
核兵器については,
NPTに参加すると否とにかかわらず,当面核兵器は保有しない政策をとるが,
核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともに
これに対する掣肘(せいちゅう)をうけないよう配慮する。
また、核兵器の一般についての政策は、国際政治、経済的な理解特質の計算に基づくものである。
との趣旨を国民に啓発する
すでに1969年にこういう方針を建てて原子力を進めてきたのです。
ある時には外務省の幹部が新聞のインタビューでこんなことを答えています。
(朝日新聞 1992年1月19日)
個人としての見解だた、日本の外交力の裏付けとして、
核武装の選択の可能性を捨ててしまわない方がいい。
保有能力はもつが、当面政策として持たないという形でいく。
そのためにもプルトニウムの蓄積と、
ミサイルに兼用できるロケット技術は開発しておかなければならない。
というのです。
まことに見事だと私は思います。
原子力の平和利用だと言いながらプルトニウムはどんどんどんどん蓄積して懐に入れてきました。
すでに日本には45トンの分離されたプルトニウムがありますが、
それで原爆をつくれば4000発作れてしまいます。
そしてつい先日はイプシロンというロケットの打ち上げようとしました。
その前にはH2ロケットは沢山打ち上げているんですね。
それも全てミサイルに転用できるロケット技術を開発できるという事でやってきたのです。
日本国内では、たとえば朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星を打ち上げる、
そのために「ロケットを打ち上げるんだ」と言って、イカオ(ICAO)という国際的な団体に申請しました。
申請した通りにロケットを朝鮮民主主義人民共和国が打ち上げた。
それに対して日本という国は「実質的なミサイルを打ち上げた」というんですね。
「撃墜する場合もある」というような事を言う国でした。
何のことはない、日本は沢山H2ロケットでもなんでも打ち上げている。
「それはじゃあ、実質的なミサイルではないのか?」と、むしろ私は聞きたくなります。
朝鮮民主主義人民共和国が核兵器をつくった作らないということがありますけれども、
私は実はまだ、彼らは作ってないと今でも思っているのですが、
どうせ出来たとしてもするはずです。
それなのに日本はもうすでに4000発もつくれるだけの材料を懐に入れているという、そういう国なのです。
今、世界を支配しているのは国連です。
国連というのは英語で言えばUnited Nationsです。
かつて日本と戦った連合国が今世界を支配している訳です。
日本は戦争で戦った国ですから、国連憲章の中には敵国条項というのがあって
悪い国には特別のやり方、制裁をとっていいという事がいまだに国連憲章の中に残っているのです。
その国連の常任理事国は、米国、ロシア、英国、フランス 中国ですけれども
沢山の連合国があった中で、なんでこの5カ国だけが常任理事国になっているのかと言えば、
核兵器を持っているからです。
核兵器を持つという事は現在の世界を支配するために決定的に重要なファクターになってしまっているという、
そういう世界があります。
そして、その5カ国には核兵器を製造するための中心3技術というのがあります。
ウラン濃縮、原子炉、再処理、という3つの技術ですけれども、
その3つをもちろん持っています。
で、自分は持っているけれども他の国にはそれは持たせないというので、核不拡散条約をつくって、
自分たちだけが独占できるようにする。
そして、さっきもちょっと出ました
IAEAという国際的な原子力マフィアを使って、他の国を監視するという、
そういう体制をずーーっと作ってきました。
しかしそういう体制の中で、
核兵器保有国ではなくて中心3技術の全てを持っている国が世界で1カ国だけあるんです。
どこですか?
日本ですよね。
日本という国は平和利用だという事を言いながら、
実質的な核保有国にすでになったという、非常に特殊な国なのです。
そのためまた日本は、さらなる悪事を働こうとしています。
昨年の6月に原子力基本法というものが改定されました。(2012年6月20日成立)
もともと基本方針にはこう書いてありました。
「原子力利用は平和の目的に限り、安全の確保を旨として、
民主的な運営のもとに実質的にこれを行うものとし、その成果を公開し、
進んで国際協力に資するものとする」と書いてあります。
なんとなく文言は綺麗に読めますけれども、
「平和の目的に限り」なんてあっても
「実質的には核兵器を開発するためにやってきた」というのは今聞いていただいた通りです。
そして去年の6月にこんな文言を付け加えました。
前項の安全の確保については確立された国際的な基準を踏まえ、
国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全、
並びに我が国の安全保障に資することを目的として行うものとする。
「安全保障」という言葉はみなさんよくご存じだと思いますけれど、
「日米安全保障条約」という名前がある通り、軍事的な専門用語です。
つまり日本は原子力をやるにあたって、
「安全保障を目的としてやるんだ」というところにまで、日本の政府は踏み込んできている。
つまり、日本というこの国が核兵器を持つか持たないかという事は、
政策の問題だし、利害確執に基づくものだという事を、国民にちゃんと知らせようという事を
多分やり始めたという事だと思います。
私は原子力にいる人間として、
原子力は徹底的に危険だと思います。
こんなものはやってはいけないと思いますけれども、
私が原子力に反対しているのは単に危険だからではありません。
原子力というのは他者の犠牲の上にしか成り立たないという、そういうものです。
差別に基づかなければできないという、そういうものに私は反対しています。
もともと原子力発電所で働いている労働者の被ばくは、
9割以上は下請け孫請けの労働者が担ってきました。
そこで事故が起きたら大変だという事で、都会を離れて過疎地に押し付けた。
過疎地で事故が起きてしまえば、そこの人達が本当に苦難のどん底に突き落とされて、
そして事故の収束に行くのは
下請け孫請けの労働者たちがまた被ばくをさせられてしまうということになります。
仮に事故が起こらなくても、原子力を使ってしまう限りは、
核分裂生成物という放射性物質を生み出してしまって、
その放射性物質を私たちが無毒化する力を持っていないのです。
100万年にもわたってどこかに隔離をしなければいけない。
そんな事が出来る道理が無いのです。
私が死んでも、皆さんが死んでも、自民党政権なんてなくなっても、
無くならない毒を残していくという事になります。
今私たちが原子力を選択するという事に、何の決定権も持たない子どもたち。
未来の子どもたちが毒物だけを押し付けられるという事になります。
「未来犯罪」とでも呼ぶべきだと私は思います。
その上で今聞いていただいたように、
原子力というのは核です。
核兵器そのものなのです。
皆さんは原子力と核は違うものだと思い込まされてきたかもしれませんが、同じものなのです。
その核を持つ事が世界を支配するための力なのだと、
要するに自民党政権もみんな思っているわけですけれども、力の論理で平和が築ける筈はないのです。
その事に気付かなければいけないと思うし、
私たちは他の人々を犠牲にするという、そういう原子力、
原子力的なものというものを捨てるということが必要なのだと思います。
これはお分かりになりますね。
では、私たちがいる日比谷公会堂です。
私は日比谷公会堂のこの壇上にいます。
そして、53年前、この壇上でなにが起きたかというとこういう事でした。
今見て下さった通りですけれども、
当時社会党の副委員長だった浅沼稲次郎さんが、こういう姿で殺されました。
犯人は防共挺身隊(ぼうきょうていしんたい)の山口二矢(おとや)という、17歳の少年でした。
この事件を受けて、大江さんが小説を書いて、「政治少年死す」という小説でしたけど書いてくれました。
大変困難の多い時代であったと思います。
自由とか平和とかを守るという事は、大変難しい。
自由や平和をつくっていくことも大変難しいことだと思います。
今私はここに、日本国憲法の前文を書こうと思っているのですけれども、
初めの方にこういう事が書いてあります。
政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こる事が無いようにする事を決意し、
ここに主権が国民に存することを宣言する。
つまり、政府がバカなことをやらないように私たち国民がちゃんとチェックして政府を監視するんだと、
それを決意したというのが日本国憲法なのです。
私たち一人一人がしっかりしなければならない。
そうしなければ自由も平和も作れない。
また戦争になってしまうよという事が憲法前文に書いてある。
そして、こう書いてある。
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意した。
というのです。
軍事力によってわれらの安全を保障しようというのではないのです。
軍隊では無い、諸国民の公正と信義に信頼して、自分の安全を守ると決意したというのです。
これは大変な事なのです。
簡単なことではない。
とても大変なことを私たち国民が請け負うという事を書いているのです。
そしてこうです
全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、
平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
というのです。
日本だけでは無いんです。
世界中全部の国の人々が平和のうちに生存する権利があるということを認める。
一国平和主義でもなんでもないんです。
世界全体を平和にするために自分たちは軍隊を捨てると言っているわけですし、
諸国民の公正と信義に信頼すると言っているんです。
大変素晴らしい憲法だと私は思います。
なんとしてもこれを守るという事も同時に考えています。
かつて戦争がありました。
大本営の発表ばかりで、一般の人々はほとんど真実を聞かされませんでした。
いつも勝っている、戦争で勝っていると聞かされて、
日本は神国だ。
天皇陛下がいるから絶対に戦争は勝てると言われました。
実際の軍隊は選別されて無くなっちゃっている時は今度は転戦だと言うことばで報道したわけです。
ほとんどの日本人は戦争は勝てるだろうと思いこまされた。
そして中に反対する人がいると、国家がその人たちを虐殺していくという事をやったわけですし、
それどころか住民自身がそういう人を村八分という形で虐殺して言ったという歴史もあるんです。
そんな歴史が一応は終わったけれども、
その後で、「いや、悪かったのは軍部だ」と。
「俺たちはちゃんとしたところを聞かされなかったからこうなった」
と言い訳をする人は多分沢山いたと思います。
でもそれで本当にいいのか?と私は思います。
福島の事故が起きた今もそうです。
今日この会場を埋め尽くして下さっている人たちにしても、
福島の事故が起きるまでは原子力がこれほどのものだと言う事に気がつかないでこられた方は多いと思います。
もちろん日本の国は安全だと言って、
マスコミ全てが安全だという宣伝を流してきたわけですから、
普通の方々がそう思っても不思議ではないし、
皆さんが騙されたと思っても私は不思議でなありませんけれども、
「騙されたから無罪だ」というんなら、またきっと騙されてしまいます。
騙された事に関しては、騙された責任があるだろうと思っています。
そして未来を私たちは子どもたちから問われるのです。
福島の事故が起きて以降、お前たちはどうやって生きたか?
わたしは必ず問われると思います。
憲法が今危機に存している時に、その憲法を守ろうとしている人たちももちろんいるけれども、
「一人一人はどうやって生きたか」という事を必ず見られ、子どもたちから問われるだろうと思います。
その問いにきちっと答えられるように私は生きたいと思います。
私もそうですし、皆さんもそうですけれども、
たった一度しか生きられません、人生は。
どんなな事を言ったって一度きりです。
みなさんも一度、私も一度。
そのたった一度の人生ですから、歴史と事実をしっかりと見つめて、騙されないようにする。
そして自分のやりたいことの思いに忠実に生きていたいと私は願います。
ありがとうございました、終わります。
小出裕章氏:
みなさんこんにちは
みなさんが今日
福島のことを忘れないでこの場所に集まって下さっているという事は大変ありがたいことだと思います。
今日私は、福島を忘れないという事を一つお伝えしたいというか、
みなさんと共有したいと思いますし、
福島の事、それは全てに繋がっているという話をさせていただきたいと思っています。
これはみなさんご存じのとおりの福島原発の写真です。
原子炉が1号機2号機3号機4号機と並んでいましたが、
1号機2号機3号機は運転中に事故に遭遇しまして、全て炉心という部分が溶け落ちてしまいました。
いまその炉心がどこにあるのかもわからない。どうしたらいいのかもわからないという中で、
?におよぶ下請け孫請けという労働者たちが、今この瞬間も作業に当たっているという状態です。
4号機の方は当日運転はしていませんでした。
それでもこのように爆発して建物が吹き飛んでしまいましたし、
未だに使用済み燃料プールという中に大量の放射性物質を抱えたまま、
何時プールが落ちてしまうかもわからない困難な状況の中にあります。
2011年の暮れに当時首相だった野田さんが、事故の収束宣言なんていうものを出したのですけれども、
残念ながら事故は全く収束していないのです。
今現在も危機は続いています。
運転中だった1号機から3号機、それは溶けた炉心がどこにあるかもわからない。
ただ、ひたすら水を入れ続けて冷やすしかないということを2年半にわたって、今日までやってきました。
しかし、水を入れてしまえば汚染水なんてあふれるのは当たり前なのであって、
マスコミは最近になって「汚染水が大変だ」って言い始めたわけですが、
私としては「なにをいまさら」と思いました。
2011年3月11日から、ずーーっと汚染水は流れ出ていたのです。
これからもそうですし、ずっとこれまでも何とか汚染を食いとどめようとして戦いが続いてきて、
労働者が被ばくをしていってしまうという状態が続いています。
これからも何十年もその作業を続けなければいけない、困難なものです。
そしてすでに大量の放射性物質がまき散らされてしまって、
今日も福島から来て下さっている方がいらっしゃると思いますけれども、
何10万人もの人々が故郷を追われてしまったのです。
生活もコミニティーも生活も全部が破壊されて流浪化してしまうという、
こんなことは戦争が起きても起きないという位の事が今現在も続いている。
そしてこれがまだ何十年も続かざるを得ないという状態になってしまっています。
そして、先ほど見ていただいた4号機ですけれども、
建屋が爆発しまして、
炉心の中にあった使用済み燃料も使用済み燃料プールというところに入れられていたのですが、
そのプールは宙づりのような状態になって、今存在しています。
そして、そのプールの底には、
広島原爆に換算すれば多分1万4000発というぐらいに相当する膨大な放射性物質が、
まだ、宙づりのプールの中に眠っているという状態です。
なんとかそれを、一刻も早く何とかしなければいけないのですが、
いかんせん、なにかをしようと思えば労働者が被ばくをするしかない。
そういう状態の中で、今でも苦闘が続いています。
では今まで一体どれだけの放射性物質が環境に漏れてきたかというと、
今から私が皆さんに見ていただこうと思うのはIAEAが行っている、
国際的な原子力推進団体、原子力マフィアの一つの組織であるIAEAという組織があるんですが、
その組織に日本国政府が報告書を出しました。
その報告書の中に大気中に放出したセシウム137という放射性物質の量が書き込まれています。
どの程度だったかという事をお見せします。
まず左の下に黄色い四角を書きました。
これは広島原爆が大気中にまき散らしたセシウム137の量です。
数字も書き込んでありますが(8.9×10の13乗)
多分皆さんピンとこないと思いますので、数字は無視していただいて結構です。
ただしこの黄色い四角の大きさだと思って下さい。
では、福島の第一原子力発電所から、どれだけのセシウムが噴き出してきたかというと、
1号機だけで広島原爆の6発分から7発分(5.9×10の14乗)噴き出させました。
なんと言っても悪いのは2号機なんです。(1.4×10の16乗)
こんなに噴き出した。
そして3号機もやはり噴出させて、(7.1×10の14乗)
当日運転中だった1号機から3号機を合わせると、
広島原爆の168発分をすでに大気中にばら撒いたと、日本国政府が言っているのです。
しかし私はこの数字は必ず過小評価だと思っています。
何故かと言えばこの事故を引き起こした直接の責任は東京電力という会社にありますが、
その東京電力に「お前のところの原子力発電所は安全だ」
「安全性を確認した」といってお墨付きを与えたのは日本国政府なのであって重大な責任があるし、
私は「責任」という言葉は甘いと思います。
「犯罪」と呼ぶべきことをやったのです。
犯罪者が自分の罪を軽く申告する道理はないのです、出来る限り、
あ・・・ごめんなさい。
「重く申告するど道理はない」ですね。
「できる限り軽く見せたい」と言ってはじき出した数字がこの168発。
多分これの2倍か3倍だと私は思います。
つまり、広島原爆がまき散らした放射性物質の
400倍とか500倍がすでにまき散らしてしまったという事故だったのです。
大変な事故なのです、これは。
そのためにどんな汚染が生じたかという事を日本国政府が地図に示しました。
福島原子力発電所はこの位置にあります。
西側は土地ですし、東側は海です。
そして日本というこの国は北半球温帯というところにありますので、
基本的には偏西風という西風が吹いているのです。
福島原子力発電所から大気中に放出された放射性物質は、
ほとんどが西風に乗って太平洋に流れたのです。
日本というこの国にとってはありがたいことだと思います。
しかし、風ですから、北風の日もあった、南風の日もあった、
という事で、日本の国土もこんなふうに汚れたのですね。
今日はこの汚染を詳しく皆さんに聞いていただく時間はありませんが、
福島第一原子力発電所の北西の方に赤と緑の帯がずーっと延びているのを分かって頂けると思います。
ここが猛烈な汚染地帯です。
民主党が政権をとっていた時代に、
一番初めは
福島第一原子力発電所から3kmの範囲の人たちに、万一のことを考えて避難しろという指示を出しました。
しばらくしたら10kmの人達に対して万が一のことを考えて避難しろと支持を出しました。
その次にまた、半径20kmの人に対して、万が一のことを考えて避難しろという指示を出しました。
そしてバスを差し向けて、住民を避難所に連れていった。
それっきりもう住民は帰れなくなってしまったわけです。
しかし、猛烈な汚染を受けたのは、20kmでもとどまらない、30kmでもとどまらない
なんと、40km、50kmという離れたところまでが猛烈な汚染を受けてしまいました。
この40km、50km離れたところには、福島県の飯舘村という村があります。
原子力発電所からは何の恩恵も受けないで、「自分たちの村は自分たちでつくる」と言って
長い年月苦闘を続けて日本一美しい山村と自他ともに認める程の村を作り上げました。
しかしその村が何の警告も受けないまま猛烈な汚染地帯に巻き込まれて、
住民たちはその汚染地帯の中で被ばくをしてしまって、
数カ月経ってから「お前のところが汚れている」と教えられて、今は全損離村です。
こんなことが起きていい事なんでしょうか?
この赤、黄、緑のところは面積にすると約1000キロ平方メートルあります。
琵琶湖が1.5個入ってしまうという、それほどの広大な土地がすでに無くなってしまったのです。
かつての戦争で日本は負けました。
負けたけれども「国破れて山河あり」だった。
国家なんていうものが負けたって、大地があれば人々は生きられる。
この範囲はもう人々が生きることすらが出来ないという事にされてしまったのです。
戦争が起きたって、こんなひどいことは起きないという事が、今もうすでに発生してしまっています。
そして福島県を中心にして青く塗ったところが
東北地方、関東地方にずっと広がっているのが分かって頂けると思います。
そしてその青の周りにくすんだ緑があります。
福島県で言えば会津の方がそうですし、群馬県の西部、宮城県の南部も北部も
岩手県の一部もあります。
茨城県の南部、千葉県の北部、東京の一部にもありますけれども、
こういう色のところは現在の法律に照らしあわせるのならば、
「放射線の管理区域」にしなければなりません。
普通のみなさんは入れないんです。
私のようなごく特殊な人間だけが立ち入ってもいいと許されるのが放射線管理区域です。
が、その場所に私は立ち入った途端に水すらが飲めなくなる。
というのが放射線管理区域です。
それがこんな広さですでに生じてしまった。ということになりました。
こういう状態を見て、日本の国は一体何をしたでしょうか?
これまで日本は法治国家だと自分のことを呼んできました。
国民がなにか悪いことをすれば、国家がちゃんと処罰すると
「しょっ引いていって処罰するから、日本の国の中には悪いやつはいないから安心しろ」と言ってきました。
それなら、法律をつくった国家が法律を守るのは最低限の義務だと私は思います。
そして国家が被ばくとか放射能について決めた法律だってたくさんあります。
例えば一般の人々。
今日この会場にいらっしゃるほとんどの方々は
1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくはしてはいけないし、させてもいけないという法律があったのです。
そして今、放射線管理区域のことを聞いていただきましたけれども、
放射線管理区域からなにか物を持ちだす時には、
1平方メートル当たり4万ベクレルを超えているような汚染物は、
どんな物でも持ち出してはいけないという法律で決まってたのです。
しかしさっき見ていただいた地図で、
青いところは1平方メートル当たり6万ベクレルを超えてすでに汚れている。
くすんだ緑のところも3万ベクレルを超えて汚れているんです。
それも放射線管理区域の中で汚れた私の実験道具では無い、
私の実験着でもない、
「大地そのものが全部汚れてしまった」と言っているのです。
それを見て日本の国は何をしたか?
私は先程犯罪者だと呼んだわけですけれども、
その犯罪者の日本の国は自分が決めた法律を一切反故にしてしまい、
「1ミリシーベルトなんていう基準はもう守れない、20ミリシーベルトの被ばくまでは我慢しろ」という。
「放射線管理区域の基準は超えているけれども、そこにみんな住め」ということにしてしまいました。
今逃げている人に対しても、「帰還しろ」というようなことを言っているわけです。
あるいは「勝手に逃げるなら国はなんにも知らない」というような事を言っています。
犯罪なんじゃないですか?これは。
ここまできてなぜ罪を裁けないかと、わたしは思いますし、
絶対にこの事故を起こした責任のある人たちを処罰していかなければならないと思います。
先ほどもおっしゃっていたけれども、東京には原発はないんですね。
これは東京電力のパンフレットから取ってきた図ですけれども、
東京電力は東京湾に沢山の火力発電所をつくりました。
当り前ですね。東京湾周辺で沢山の電力を使う訳ですから、電気をそこでつくるのが一番効率がいい。
送電のロスもなにもいらないわけですから、東京湾につくったわけです。
そしてみなさんも東京電力の電気を使っていた方々だと思いますが、
東京電力は、では原子力発電所をどこに作ったかと言えば、
福島第一第二、そして柏崎刈羽という、
これは、東京電力とは何の関係もない地域なんです。
この関東地方のこの部分が東京電力が給電の責任を負っている範囲ですけれども、
それとは全然関係のないところに原子力発電所を建てたんですね。
「万が一でも事故が起きたら大変だ」という事でこんなところに建てた。
そして事故が起きてしまえば、
こういうところの人達が苦難のどん底に突き落とされるという事になってしまっているわけです。
そして今彼らは、この事故をなかった事にしようとしています。
日本ではこれまで58基の原子力発電所がつくられてきました。
その全ては自民党政権が「安全性を確認した」と言って建てたのです。
福島第一原子力発電所もそうです。
安全性を確認して建てたのです。
その原子力発電所が事故を起こしているのに、いま自民党政権、安倍さんですけれども、
「安全性を確認して、いま止まっている原発を再稼働させる」と言っているんですね。
真に正気の沙汰ではないと私は思いますし、
安倍さんはさらには「新しい原発をつくる」そして
「海外に原発を輸出する」というようなことまで言っているわけです。
そしてそれをやるためには、
「福島の原発の事故を忘れさせる」という事が彼らにとって必要になっているのだと思います。
マスコミもそれにどうも乗っているようですし、
福島のニュースはどんどん少なくなってきて、
被災者の方々がどれだけ苦しんでいるのかという事についても、
報道はほとんどなされなくなってきているとおもいます。
そうであれば私たちに必要なことは「福島を忘れない」という事だと思いますし、
私もそうしたいと思いますし、
今日この会場にいらっしゃって下さっている方は
その思いでここに集まって来て下さっていると思いますし、
これからも福島を忘れないという事で、是非ともお願いしたいと思います。
これからですが、
福島の問題はもちろんとてつもなく重大な問題です。
しかし、原子力の問題というのは、単に安全か危険かという問題ではありません。
もともと日本が原子力をやろうとした動機は、「核開発」です。
ここに我が国の外交政策大綱という文書があるんですが、その中の1説を紹介したいと思います。
こう書いてある。
核兵器については,
NPTに参加すると否とにかかわらず,当面核兵器は保有しない政策をとるが,
核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともに
これに対する掣肘(せいちゅう)をうけないよう配慮する。
また、核兵器の一般についての政策は、国際政治、経済的な理解特質の計算に基づくものである。
との趣旨を国民に啓発する
すでに1969年にこういう方針を建てて原子力を進めてきたのです。
ある時には外務省の幹部が新聞のインタビューでこんなことを答えています。
(朝日新聞 1992年1月19日)
個人としての見解だた、日本の外交力の裏付けとして、
核武装の選択の可能性を捨ててしまわない方がいい。
保有能力はもつが、当面政策として持たないという形でいく。
そのためにもプルトニウムの蓄積と、
ミサイルに兼用できるロケット技術は開発しておかなければならない。
というのです。
まことに見事だと私は思います。
原子力の平和利用だと言いながらプルトニウムはどんどんどんどん蓄積して懐に入れてきました。
すでに日本には45トンの分離されたプルトニウムがありますが、
それで原爆をつくれば4000発作れてしまいます。
そしてつい先日はイプシロンというロケットの打ち上げようとしました。
その前にはH2ロケットは沢山打ち上げているんですね。
それも全てミサイルに転用できるロケット技術を開発できるという事でやってきたのです。
日本国内では、たとえば朝鮮民主主義人民共和国が人工衛星を打ち上げる、
そのために「ロケットを打ち上げるんだ」と言って、イカオ(ICAO)という国際的な団体に申請しました。
申請した通りにロケットを朝鮮民主主義人民共和国が打ち上げた。
それに対して日本という国は「実質的なミサイルを打ち上げた」というんですね。
「撃墜する場合もある」というような事を言う国でした。
何のことはない、日本は沢山H2ロケットでもなんでも打ち上げている。
「それはじゃあ、実質的なミサイルではないのか?」と、むしろ私は聞きたくなります。
朝鮮民主主義人民共和国が核兵器をつくった作らないということがありますけれども、
私は実はまだ、彼らは作ってないと今でも思っているのですが、
どうせ出来たとしてもするはずです。
それなのに日本はもうすでに4000発もつくれるだけの材料を懐に入れているという、そういう国なのです。
今、世界を支配しているのは国連です。
国連というのは英語で言えばUnited Nationsです。
かつて日本と戦った連合国が今世界を支配している訳です。
日本は戦争で戦った国ですから、国連憲章の中には敵国条項というのがあって
悪い国には特別のやり方、制裁をとっていいという事がいまだに国連憲章の中に残っているのです。
その国連の常任理事国は、米国、ロシア、英国、フランス 中国ですけれども
沢山の連合国があった中で、なんでこの5カ国だけが常任理事国になっているのかと言えば、
核兵器を持っているからです。
核兵器を持つという事は現在の世界を支配するために決定的に重要なファクターになってしまっているという、
そういう世界があります。
そして、その5カ国には核兵器を製造するための中心3技術というのがあります。
ウラン濃縮、原子炉、再処理、という3つの技術ですけれども、
その3つをもちろん持っています。
で、自分は持っているけれども他の国にはそれは持たせないというので、核不拡散条約をつくって、
自分たちだけが独占できるようにする。
そして、さっきもちょっと出ました
IAEAという国際的な原子力マフィアを使って、他の国を監視するという、
そういう体制をずーーっと作ってきました。
しかしそういう体制の中で、
核兵器保有国ではなくて中心3技術の全てを持っている国が世界で1カ国だけあるんです。
どこですか?
日本ですよね。
日本という国は平和利用だという事を言いながら、
実質的な核保有国にすでになったという、非常に特殊な国なのです。
そのためまた日本は、さらなる悪事を働こうとしています。
昨年の6月に原子力基本法というものが改定されました。(2012年6月20日成立)
もともと基本方針にはこう書いてありました。
「原子力利用は平和の目的に限り、安全の確保を旨として、
民主的な運営のもとに実質的にこれを行うものとし、その成果を公開し、
進んで国際協力に資するものとする」と書いてあります。
なんとなく文言は綺麗に読めますけれども、
「平和の目的に限り」なんてあっても
「実質的には核兵器を開発するためにやってきた」というのは今聞いていただいた通りです。
そして去年の6月にこんな文言を付け加えました。
前項の安全の確保については確立された国際的な基準を踏まえ、
国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全、
並びに我が国の安全保障に資することを目的として行うものとする。
「安全保障」という言葉はみなさんよくご存じだと思いますけれど、
「日米安全保障条約」という名前がある通り、軍事的な専門用語です。
つまり日本は原子力をやるにあたって、
「安全保障を目的としてやるんだ」というところにまで、日本の政府は踏み込んできている。
つまり、日本というこの国が核兵器を持つか持たないかという事は、
政策の問題だし、利害確執に基づくものだという事を、国民にちゃんと知らせようという事を
多分やり始めたという事だと思います。
私は原子力にいる人間として、
原子力は徹底的に危険だと思います。
こんなものはやってはいけないと思いますけれども、
私が原子力に反対しているのは単に危険だからではありません。
原子力というのは他者の犠牲の上にしか成り立たないという、そういうものです。
差別に基づかなければできないという、そういうものに私は反対しています。
もともと原子力発電所で働いている労働者の被ばくは、
9割以上は下請け孫請けの労働者が担ってきました。
そこで事故が起きたら大変だという事で、都会を離れて過疎地に押し付けた。
過疎地で事故が起きてしまえば、そこの人達が本当に苦難のどん底に突き落とされて、
そして事故の収束に行くのは
下請け孫請けの労働者たちがまた被ばくをさせられてしまうということになります。
仮に事故が起こらなくても、原子力を使ってしまう限りは、
核分裂生成物という放射性物質を生み出してしまって、
その放射性物質を私たちが無毒化する力を持っていないのです。
100万年にもわたってどこかに隔離をしなければいけない。
そんな事が出来る道理が無いのです。
私が死んでも、皆さんが死んでも、自民党政権なんてなくなっても、
無くならない毒を残していくという事になります。
今私たちが原子力を選択するという事に、何の決定権も持たない子どもたち。
未来の子どもたちが毒物だけを押し付けられるという事になります。
「未来犯罪」とでも呼ぶべきだと私は思います。
その上で今聞いていただいたように、
原子力というのは核です。
核兵器そのものなのです。
皆さんは原子力と核は違うものだと思い込まされてきたかもしれませんが、同じものなのです。
その核を持つ事が世界を支配するための力なのだと、
要するに自民党政権もみんな思っているわけですけれども、力の論理で平和が築ける筈はないのです。
その事に気付かなければいけないと思うし、
私たちは他の人々を犠牲にするという、そういう原子力、
原子力的なものというものを捨てるということが必要なのだと思います。
これはお分かりになりますね。
では、私たちがいる日比谷公会堂です。
私は日比谷公会堂のこの壇上にいます。
そして、53年前、この壇上でなにが起きたかというとこういう事でした。
今見て下さった通りですけれども、
当時社会党の副委員長だった浅沼稲次郎さんが、こういう姿で殺されました。
犯人は防共挺身隊(ぼうきょうていしんたい)の山口二矢(おとや)という、17歳の少年でした。
この事件を受けて、大江さんが小説を書いて、「政治少年死す」という小説でしたけど書いてくれました。
大変困難の多い時代であったと思います。
自由とか平和とかを守るという事は、大変難しい。
自由や平和をつくっていくことも大変難しいことだと思います。
今私はここに、日本国憲法の前文を書こうと思っているのですけれども、
初めの方にこういう事が書いてあります。
政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こる事が無いようにする事を決意し、
ここに主権が国民に存することを宣言する。
つまり、政府がバカなことをやらないように私たち国民がちゃんとチェックして政府を監視するんだと、
それを決意したというのが日本国憲法なのです。
私たち一人一人がしっかりしなければならない。
そうしなければ自由も平和も作れない。
また戦争になってしまうよという事が憲法前文に書いてある。
そして、こう書いてある。
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意した。
というのです。
軍事力によってわれらの安全を保障しようというのではないのです。
軍隊では無い、諸国民の公正と信義に信頼して、自分の安全を守ると決意したというのです。
これは大変な事なのです。
簡単なことではない。
とても大変なことを私たち国民が請け負うという事を書いているのです。
そしてこうです
全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、
平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
というのです。
日本だけでは無いんです。
世界中全部の国の人々が平和のうちに生存する権利があるということを認める。
一国平和主義でもなんでもないんです。
世界全体を平和にするために自分たちは軍隊を捨てると言っているわけですし、
諸国民の公正と信義に信頼すると言っているんです。
大変素晴らしい憲法だと私は思います。
なんとしてもこれを守るという事も同時に考えています。
かつて戦争がありました。
大本営の発表ばかりで、一般の人々はほとんど真実を聞かされませんでした。
いつも勝っている、戦争で勝っていると聞かされて、
日本は神国だ。
天皇陛下がいるから絶対に戦争は勝てると言われました。
実際の軍隊は選別されて無くなっちゃっている時は今度は転戦だと言うことばで報道したわけです。
ほとんどの日本人は戦争は勝てるだろうと思いこまされた。
そして中に反対する人がいると、国家がその人たちを虐殺していくという事をやったわけですし、
それどころか住民自身がそういう人を村八分という形で虐殺して言ったという歴史もあるんです。
そんな歴史が一応は終わったけれども、
その後で、「いや、悪かったのは軍部だ」と。
「俺たちはちゃんとしたところを聞かされなかったからこうなった」
と言い訳をする人は多分沢山いたと思います。
でもそれで本当にいいのか?と私は思います。
福島の事故が起きた今もそうです。
今日この会場を埋め尽くして下さっている人たちにしても、
福島の事故が起きるまでは原子力がこれほどのものだと言う事に気がつかないでこられた方は多いと思います。
もちろん日本の国は安全だと言って、
マスコミ全てが安全だという宣伝を流してきたわけですから、
普通の方々がそう思っても不思議ではないし、
皆さんが騙されたと思っても私は不思議でなありませんけれども、
「騙されたから無罪だ」というんなら、またきっと騙されてしまいます。
騙された事に関しては、騙された責任があるだろうと思っています。
そして未来を私たちは子どもたちから問われるのです。
福島の事故が起きて以降、お前たちはどうやって生きたか?
わたしは必ず問われると思います。
憲法が今危機に存している時に、その憲法を守ろうとしている人たちももちろんいるけれども、
「一人一人はどうやって生きたか」という事を必ず見られ、子どもたちから問われるだろうと思います。
その問いにきちっと答えられるように私は生きたいと思います。
私もそうですし、皆さんもそうですけれども、
たった一度しか生きられません、人生は。
どんなな事を言ったって一度きりです。
みなさんも一度、私も一度。
そのたった一度の人生ですから、歴史と事実をしっかりと見つめて、騙されないようにする。
そして自分のやりたいことの思いに忠実に生きていたいと私は願います。
ありがとうございました、終わります。
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