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もうすぐ北風が強くなる

原発事故をきっかけに、腐り壊れる国

フクシマの悪夢〉 ―増え続ける小児甲状腺がん―  8/28 三上英次 janjanblog

 この国では、24時間コンビニが開いていて必要なものはすぐ買える。映画も見られるし、DVDショップのラインナップも豊富だ。
119番をすれば消防車は来てくれる。子どもは学校に通える。国会議事堂はあるし、最高裁の建物も立派だ。

 だが…、それらはうわべだけのことで、本当はこの国はすでに〈国家〉の体(てい)を成していないのではないだろうか――。

 ふとそんな思いにとらわれるのも、〈3.11〉による原発事故以降、

  ○ 10数万人の人たちがふるさとを追われ

  ○ 除染対策とやらで大手ゼネコンだけが潤い、原発労働者は使い捨て、

  ○ 復興予算が不正流用され

  ○ 形だけの「子ども被災者支援法」は作られたまま放置

  ○ 原発の汚染水流出には、有効な手立てが見つからない

 というのが、2年5ケ月前から今までの状況だからである。
さらに、「脱原発」の声をあげる国民(主権者)に、公務員ら(下僕)がSLAPP訴訟をしかける。
「美しい国」を標榜する総理大臣が、放射能にまみれた国土をそのままに海外での原発“訪問販売”に奔走する。
そして、一部報道に見られるように、「巨悪を眠らせない」はずの検察が、原発事故の責任を問われるべき原子力ムラの関係者らを不起訴にしようとしている。
もし〈国〉といったものがあるのならば、その〈国〉が他のすべてを投げ打ってでも最優先で取り組まなければならない原発問題に、何ひとつ有効な手が打たれず時間だけが過ぎて行っているようにも思われる。

 いくつかの放置されたままの問題の中で最も許しがたいのは、〈年間1ミリシーベルト〉までという被ばく基準が、原発事故後に20倍の〈年間20ミリシーベルト〉にまで引き上げられたことだろう。
そのために、チェルノブイリ原発事故の場合ですら〈年間5ミリシーベルト〉で人々は強制避難となったのに、日本では「放射線管理区域」と同レベルの場所で、人々がものを食べ、そこで眠り、日々被ばくを繰り返しているのである。

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 バスに分乗して上京し、東京地検前で、起訴を求めるボードを掲げる福島の人たち〔2013年2月22日〕 (撮影・三上英次 以下同じ)

 その結果、どうなったか――。

 それは、とどまることのない小児甲状腺がんの発生である。
福島県「県民健康管理調査」検討委員会が8月20日に発表したデータによれば、同調査で小児甲状腺がんと診断された子どもは、前回6月の12人から6人増えて18人になり、「がんの疑いが強い」とされた子どもは15人から10人増えて25人にまで増加してしまった。

 これは検査対象36万人のうち、7月までに検査を終えた21万7千人の中からの〈18人/25人〉であるが、「小児がんの確定者とその疑いのある者」は「3人/7人」(2013年2月)から「9人/15人」(2013年6月)、そして8月発表の「18人/25人」と、増加の一途をたどっている。

 ちなみに、チェルノブイリ原発事故(1986)での小児甲状腺がん発生件数は、
1986年に2件、
1987年に4件、
1988年が5件、
翌年7件(1989)と微増していき、
事故後4年で【29件】に激増する。
そして、その後も59件(1991)、
66件(1992)、
79件(1993)、
82件(1994)
と増加を続けていくが、日本は、2年数ケ月で、小児甲状腺がんが(その疑いの強い者を含めて)【43件】である。
福島県立医科大学の鈴木眞一教授らは「チェルノブイリでは小児甲状腺がんの発生は4年後」といった、事実ではないことを口にして、いまの時期の小児甲状腺がんと原発事故による被ばくの因果関係を否定するのに躍起になっている――。
では、あと1年半経ってからの―つまり原発事故後4年の―小児甲状腺がんについては、「原発事故後の被曝の影響によるもの」だと、因果関係(とその責任)を認めるのだろうか?

 こうした危機的な状況に対して、8月24日、安倍総理大臣に「非常事態宣言」を求める人たちが現れた。その中の、港区から官邸前に駆けつけた女性(65)はマイクを握って次のように呼びかけた。

 ――福島にまつわることを聞いて座り込みに来ました。どうして私たちが、このような行動に出なくてはいけないのでしょうか。
いま、漏れ出た放射能の汚染水が、そのまま海に流れ出ています。
340基もある汚染水タンク(注:汚染水タンクは全体で1000基あるが、汚染水漏れが疑われているタイプのタンクが約340基ある)、東電はいったい何をしているのですか?

 ――レベル7以上の原発事故を起こして、原因追求や補償等が終わらないままに再稼動を企てて…
まずは、事故の収束や補償が(再稼動よりも)先ではないですか? 
そして何よりも、汚染地域から子どもたちを逃がすことが、最優先されるべきではありませんか?

 ――事故は、現在進行形でいまも起きています。いまも起きていることについて、目をつぶらないで下さい。
耳をふさがないでください。
年間の被曝基準を、それまでの20倍にも引き上げて、政府は子どもたちを殺す気ですか!

 ――このような現実を、私たちは見過ごしてはいけないと思います。
汚染地域の子どもたちを気にかけなくなったら、私たちはヒトではなくなってしまいます。
前回の発表から、およそ3ケ月で、小児甲状腺がんは6名増えて18名になってしまいました。
原発事故が起きるまでは、子どもの甲状腺がんは「きわめてまれ」と言われて来たのです。
2年ちょっとで、甲状腺がんと確定した子どもたちが、18人もいるのです。
いまの事態を放っておくということは、子どもたちの〈見殺し〉に他なりません。

 同じく24日、東京・有楽町では「ふくしま集団疎開裁判の会」のメンバーが、やはり子どもたちの放射能汚染地域からの避難の必要性を訴えていた。

 ――福島の子どもたちにもうこれ以上被ばくをさせてはいけないという思いでやって来ましたが、福島では、もう小児甲状腺がんが18名も出てしまいました。
こんな危機的な状況なのに、「除染」「安全」「復興」キャンペーン等で人々が、危険な地域に帰されようとしています。
危険は去ったというキャンペーンのもとで、人々を避難させず、“彼ら”はデータだけをとっているのです。
福島の子どもたちを、モルモット実験の餌食にさせてはいけません。

 さて、福島県「県民健康管理調査」検討委員会が8月20日に「福島で小児甲状腺がん18名」を発表した翌21日、お昼のNHKニュースは、これまで通り、そのニュースには一切ふれず、むしろ次のような“時間つぶし”としか思えないニュースを流し続けていた。

  ○ 松阪投手、自由契約に
  ○ 海外の学生対象の就職面接会開催
  ○ パキスタンの神学校、アメリカの制裁対象に
  ○ サバの水揚げ、昨年の倍近くに

 子どもたちを見殺しにするような〈国〉、いまだ何ひとつ収束していない中で、なお原発「再稼動」を画策するような〈国〉、これが本当に「美しい国」などと呼べるのだろうか。

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 8月24日、官邸に向けてマイクを握る女性(右)

  《関連》

「福島原発告訴団」

「ふくしま集団疎開の会」

「原発利権には屈しない」―吉沢さんの呼びかけ―

◎ 「あさこはうす」の闘い
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