エジプトクーデター、ダブル基準で偽善だらけの欧米
2013-08-07

エジプト軍の弾圧:民主主義と偽善 英エコノミスト誌 翻訳JBPress
カイロで起きた非武装のイスラム教徒に対する銃撃を欧米が非難しなかったことは、臆病であり、短絡的だった。
この6月にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相が自国民に対して催涙ガスや放水銃を使用したことで受けた激しい非難を覚えておいでだろうか?
ウラジーミル・プーチン氏がロシア軍にモスクワの路上のデモ隊に実弾を発砲するよう命じたら、どんな憤激を招くか想像してみてほしい。
だが、7月最後の週末、エジプト軍が大勢のデモ隊を殺害し始めた時、欧米はしかめ面をして見せ、暴力を自制するようすべての当事者に訴えるだけだった。
そうした控えめな対応は、道徳的な勇気の欠如だけでなく、エジプトの、そして欧米の真の利益がどこにあるか分かっていないことを露呈している。
銃撃事件が起きたのは7月27日早朝、30年前にアンワル・サダト大統領が暗殺された練兵場の近くだった。
7月初めに軍事クーデターで追放されたムハンマド・モルシ氏の支持者らは、軍に対してモルシ氏の大統領職復帰を要求するためにデモ行進していた。
そこへ武装警官(および民間の軍支持者)が発砲した。
モルシ氏が所属するムスリム同胞団のメンバー80人以上が死亡し、それを上回る負傷者が出た。
殺害の後、バラク・オバマ米大統領は自身の考えを明らかにしなかった。
意見を述べる役目はジョン・ケリー国務長官に任され、ケリー氏は単にエジプトの指導者たちに「崖っぷちから一歩下がるよう」求めただけだった。
同様に、英国ではデビッド・キャメロン首相がウィリアム・ヘイグ外相にエジプトの将官たちに警告する仕事を委ねた。
西側諸国のダブルスタンダード
モルシ氏の追放に対する米国の抗議は、エジプトに対するF16戦闘機の供与を遅らせることだった。
しかし、その控えめなジェスチャーも、銃撃事件の直前に台無しになった。
エジプトでクーデターがあったことを認めると、エジプトに対する援助が自動的に打ち切られる可能性があったために、オバマ政権はエジプトでクーデターがあったと言うことを拒み、賢明でない前例を作ってしまったのだ。
ムスリム同胞団、そして中東全域のイスラム教徒たちは一連の経緯から、欧米は世俗主義者が攻撃を受けている時にはある基準を適用し、イスラム教徒が攻撃されている時は別の基準を適用するという結論を下すだろう。
彼らとしては、民主主義は普遍的な政体ではなく、世俗派を権力の座に就かせるためのトリックだと考える。
欧米が、ムスリム同胞団がエジプトの政治プロセスに復帰するのを思いとどまらせたいのであれば、これ以上良い方法はなかなか思いつかない。
いずれにせよ、たとえムスリム同胞団が政界復帰を望んでいると仮定しても、軍がそれを許すかどうかは分からない。将官たちは今、欧米が自分たちに多かれ少なかれフリーハンドを与えてくれたことが分かっている。
アブデル・ファタフ・アル・シシ国防相は、7月26日のデモ行進によって「潜在的なテロ」と戦う「権限」が与えられたと主張している。
新政府は既に、ホスニ・ムバラク政権において嫌われていた治安機関を復活させている。
モルシ氏を追放するために軍に協力したリベラルなエジプト人は、その熱意を悔やむことになるだろう。
確かにムスリム同胞団による統治はひどかった。同胞団は自分たちの権力基盤を固めることに着手し、経済を無視した。彼らは無秩序で党派に偏っていた。
だが、イスラム主義者はエジプトの人口の大半を占めている。彼らを政治から排除する方法は唯一、治安部隊が大半の権限を握ることだ。それが実現すると、エジプトは自由な国として機能しない。
利口過ぎて嫌われる
欧米は民主主義の普及に関心がある。しかも、それはエジプトに限ったことではない。
民主化のプロセスは容易でもなければ、不可避でもない。
現実政治を学ぶ賢い人たちが、エジプトでは軍が権限を掌握しているのだから将官たちと良い関係を保つべきだとオバマ、キャメロン両氏に助言したに違いない。
しかし、まずクーデターに対して、そして今度は非武装の民間人への銃撃に対して非難することを露骨に避けることで、欧米は随所にいる民主主義の敵の見解を裏付けてしまった。
すなわち、欧米の説教は偽善だらけだということだ。
オバマ氏が次に権威主義者に対して公民権を尊重するよう迫る時、その分だけ正当性を主張することが難しくなったと感じるだろう。
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