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もうすぐ北風が強くなる

日銀短観を捏造歪曲するマスコミ報道

 昨年秋以来、マスコミのアベノミクス宣伝と景気回復宣伝はとどまるところを知らない。
 小沢、鳩山失脚謀略から大震災、原発報道の隠蔽、捏造によって国民は騙しても、騙してもまだ騙せると、すっかり味を覚えててしまった。
 経済記事も同様である。

 マスコミのそんな経済記事を読めば読むほどに、「経済が解らなくなる」のは当然なのだ。
 以下に示す日銀短観の報道は、いかにも契機が回復しつつあるかのように、報道の小見出しどころか中身の記事までをまずい箇所は隠し、好都合な箇所のみをつないだ記事で各紙が同一の示し合わせ記事であった。

 自分たちの所得は減るばかりなのに、何かしら株価が上がれば景気が良くなったのかと漠然と感じ、高級品の売れ行きが僅かに上がると自分たちは高級品を買える身分ではないのに、何かしらこれまた漠然と世の中が明るくなった日のように感じる。

 常軌を逸するほどのテレビによる思わせ宣伝、刷り込み宣伝でしかないのだが、多くの人がテレビもしくは大新聞、テレビに倣った思わせ宣伝ばりの情報に埋もれてしまっている。

 なぜマスコミは日銀短観の事実を曲げて伝えるのか。
 まだまだ騙せる国民を騙し、極右ゴロツキの橋下、石原、安倍、石破、黒田日銀などがあたかもまともな経済政策、景気対策をやっているかのように見せかけてるために他ならない。
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  景気が良いのは、円安で潤う大企業のみ
  なぜマスコミは日銀短観の事実を曲げて伝えるのか
 野口悠紀雄 7/22 東洋経済オンライン

日本銀行の6月短観(全国短期経済観測調査)は、「企業の景況感が大幅に改善されたことを示す」と報道された。そして、安倍政権が参院選で政策効果をアピールする材料に使われるだろうとも報道された。
しかし、内容を詳細に見ると、こうしたトーンの報道とは大分異なる姿が浮かび上がる。

上の報道は、業況判断指数(DI)が、大企業製造業で4となったことを根拠としている。3月調査ではマイナス8だったので、12ポイントの改善だ。2期連続で改善し、2011年3月調査(6)以来の高水準になった。

これは事実である。しかし、大企業製造業は全体の中の一部分であることに注意しなければならない。
中小企業のDIは、製造業がマイナス14、非製造業がマイナス4だ。

日本経済全体の姿を示す「全産業、全規模」で見ると、6月のDIはマイナス2だ。
3月のマイナス8に比べれば改善したものの、マイナスである。
つまり、景気が「悪い」と答えた企業のほうが、「良い」と答えた企業より、依然として多い。

業況判断の3項目からの選択肢別社数構成比で見ると、さらにはっきり分かる。
圧倒的に多いのは、「さほど良くない」との回答なのである。この選択肢が、製造業でも非製造業でも、大企業で74%となっている。
「さほど良くない」と「悪い」を合わせると、製造業では大企業で85%、中小企業で86%、非製造業では大企業で81%、中小企業で84%だ。

つまり、6月の短観を虚心坦懐に読めば、「日本企業経営者の圧倒的多数は、景気の先行きについて悲観している」ということだ。新聞等の報道は、ミスリーディングだ。

なお、3月短観の際にも、新聞の見出しは「景況感が大幅に改善」というものだった。
この時は、改善したのは事実だが、ほとんどの指数がマイナスだった。
この時も虚心坦懐には、「DIは依然マイナス」というべきだったのである。
短観をめぐる報道には、意図的なバイアスがあるように思えてならない。多くの人は、新聞やテレビの報道だけを見て、原資料を確かめない。そうすると、誤った判断を持つことになる。

 円安恩恵を受ける企業と受けない企業の大きな差

大企業製造業のDIがプラスになった原因は、円安が進んだため、輸出企業を中心に利益が増加したことだ。
なおこの背景を、「輸出の回復」としていた報道が多いが、輸出量は減少していることに注意しなければならない。
円安によって、円建ての輸出価額が増加しただけのことだ。他方で中小企業は、円安の恩恵をあまり受けない。DIがマイナスなのは、そのためだろう。

大企業製造業のDIがプラスになるのは、建設、不動産の影響が大きい。
これは消費税引き上げ前の駆け込み需要のためと考えられる。だからアベノミクスの効果ではない。

13年度の経常利益(計画値)の前年度に対する増加率を見ると、全規模では、全産業5.2%、非製造業1.2%であるのに対し、製造業が11.9%となっている。
輸出産業を中心として製造業が利益を伸ばしているのが分かる。

ただし、その傾向が著しいのは大企業である。
製造業を規模別に見ると、大企業が14.6%(うち素材産業6.0%、加工産業18.8%)、中堅企業が3.4%、中小企業が6.1%だ。規模によってこうした著しい差が生じるのは、円安による売上増を享受できるのが主として大企業であること、円安による原材料価格高騰の影響を受けるのが中堅、中小企業であることを示している。

業況判断とDI

 この点を確かめるために価格判断を見ると、次のとおりだ。

業種や規模によらず、仕入れ価格については「上昇」が「下落」を上回り、販売価格については逆になっている。つまり、円安によって原材料価格が高騰したが、それを販売価格に転嫁できないのだ。

ただし、詳しく見ると、「上昇」-「下落」は、仕入れ価格で中小企業の数字が大企業を上回る。
また、販売価格の差の絶対値は、大企業ほど小さい。製造業、素材産業の大企業は、販売価格について「上昇」が上回っている。

つまり、円安による原材料価格の高騰を、大企業は中小企業に対してある程度転嫁できるが、中小企業は販売価格に転嫁できないのだ。

雇用の面を見ると、円安で利益が増えた大企業製造業も、雇用を増やす姿勢を見せていない。
12年3月と13年6月を比較すると、雇用人員判断(「過剰」-「不足」)は11から8に低下している。
つまり、過剰感が減少しているものの、依然として過剰判断だ。新卒採用計画(前年比)は、12年度の6.5%から13年度2.6%に低下している。

中小企業は原材料価格の上昇を価格に転嫁できにくいので、企業収益が大きく改善せず、これが賃金、雇用減につながるだろう。
中小企業・小規模事業者は国内企業全体の99.7%を占め、雇用者数は7割に達するので、影響は大きい。これは、法人企業統計に見られる状況と同じだ。中小企業が多い地域では、景況感は改善しないだろう。

これから大企業と中小企業の「二極化」が拡大する可能性がある。

政府は、飼料や漁船用燃料の価格高騰に補助策を講じることとした。これは、円安が問題だと認めたことを意味する。今後、原料価格高騰対策の政治的要求が強まるだろう。

  設備投資総額が増加するとは考えにくい

設備投資計画は、大企業製造業で13年度は前年度比6.7%増、中小企業では10.5%増だ。これを見て、「今後設備投資が増加する」とする考えもあるのだが、次の4点に注意が必要だ。

第一に、例年6月調査の数字は、年内で最高の値を示す傾向がある。大企業製造業の6月の値を12年6月と比べると、かなり低い(ただし、中小企業の値は、12年より13年が高くなっている)。
つまり、円安によって利益が大幅に増えた大企業製造業も、設備投資を本格的に増やそうとはしていないわけである。

第二に、生産・営業用設備は依然として過剰判断だ。「過剰」-「不足」の指数が、製造業は規模によらず10以上のプラスだ(全規模は12)。

したがって、製造業における設備投資は、生産能力増強や新規事業のための本格的な設備投資でないと考えられる。
これまで先送りしてきた古い設備の更新や、省エネルギー化や防災に関する投資が増えたためだと言われる。
製造業の多くの企業が海外シフトを既定方針にしている。こうした中で企業が収益を国内の設備投資に向けるか、大きな疑問だ。

第三に、非製造業の13年度計画は前年度比マイナス0.2%だ。中小企業はマイナス17.1%だ。
現在の日本では、非製造業の設備投資が製造業の約2倍になっている。設備投資の総額が増加するとは考えにくい。

第四に、資金の借入金利水準判断が上昇している(全産業、全規模で、「上昇」-「低下」が、3月のマイナス8から6月にはマイナス1になり、「先行き」は13になった)。
金利の先高観が意識され始めたわけである。
貸付金利が今後上昇すれば、設備投資に対して抑制的な効果が生じるだろう。
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コメント

こんばんは 2010年ころのエントリーでは
日本のデフレ不況や公共事業悪玉論を痛切に嘆く記事が多く
私もたいへん共感して拝読した所存です

…が、どうして13年現在、リフレ政策や財政出動政策を主軸とする
アベノミクス叩きに転向されたのか…理解に苦しむほど残念な気持ちです
この度の記事で野口悠紀雄氏のような、デフレ派の本家大元の
人物を引用してまでアベノミクス批判を繰り広げるとは…
野口氏や、WEBで幅を利かせている池田信夫氏の主張する
経済政策こそ、あなたが10年台に熱心に批判されていた
デフレ不況の根本なのではないでしょうか…?

Re: タイトルなし

> 2010年ころのエントリーでは日本のデフレ不況や公共事業悪玉論を痛切に嘆く記事が多く 私もたいへん共感して拝読した所存です
> リフレ政策や財政出動政策を主軸とするアベノミクス叩きに転向されたのか…
・ 小泉竹中時代から長らく続いた市場原理主義のマスコミ独占によって、「通貨の発行量調整で国債購入と景気回復つまりデフレ脱却が可能性をもつ」ということ自体が報道タブーとされ、2年前まで岡田某の「禁じ手」などという発言がまかり通ってきました。
 マスコミは新自由主義(市場原理主義)者以外を追放し、御用エコノミストばかりによる実に奇怪な経済解説が10年以上も続いたわけです。
 リフレ政策論は財政出動論と共にそうした財政破綻論、消費増税、円高、ゼロ金利、金融緩和の不足などの政策に抗して主張されてきましたので、私の主張も財政破綻論、消費増税、円高、ゼロ金利、金融緩和の不足に反対するものとして引用していたわけです。

 そこでアベノミクスですがインフレ目標と財政出動に消費増税とTPPがセットになっている点に注目しなければならないでしょう。
 インフレ目標と財政出動が宙に浮かんでいるのではありません。
 また、私が重要と考えているのは勤労家計の可処分所得ですが、これは安倍氏が経団連に賃上げ要請をするという行動で重大なポイントであることが露わになりました。
 勤労賃金が上がらなければデフレ循環からの脱却はあり得ないわけですから、実は問題はインフレ目標よりも賃上げが必要と考えています。

 「世界で日本のみデフレ」http://bator.blog14.fc2.com/blog-entry-21.html
 「なぜデフレなのか、なぜ放置するのか」http://bator.blog14.fc2.com/blog-entry-642.html
 「逆進課税とデフレ恐慌」http://bator.blog14.fc2.com/blog-entry-1035.html

> この度の記事で野口悠紀雄氏のような、デフレ派の本家大元の人物
・ 野口氏をデフレ派と呼ぶかどうかは知りませんが、資本主義が信用創造と金利によって回転している以上マネーサプライの拡大は必要条件で、その拡大する信用循環を作る環境が絶対条件です。
 縮小循環のほうが良いとは野口氏はいっていないはずで、産業構造の改革転換を主張しているはずです。
 最も重要なデフレ循環からの脱却論としては、彼は残念ながら勤労家計の可処分所得ではなく、産業転換論の立場を貫こうとしているようです。
 私との共通点はリフレ派マネタリストというべきか、「通貨価値の上下動は通貨発行量による」という考えに反対している点です。
 何故か。
 現代の不換紙幣である各国通貨はもともと裏付けのない証券ですが、金融機関の信用創造によるマネーサプライの増加と貸出金利による拡大循環によって為される経済成長が事実上の担保となっています。
 だからこそ好景気が続いている間、つまり信用が拡大を続けている間は、銀行は金利さえ貰えば元金はいくらでも延滞して構わなかったのです。
 企業に資金需要がなければ貸出は拡大しないので、マネーサプライは増加しません。
 預金準備にブタ積みと高金利の投機、外債に向かうわけですが、投機は自己資本率を毀損するので外債に多くが向かいます。
 つまり、国債購入などで中銀がいくら通貨を増発しても、使われる分までしか通貨は増量しない。
 従って、例えば通貨価値の下落は使われる分までしか下落しない。
 しかも7月現在続いている円安は住宅ローン以外は貸出が増えていないわけですから、使われた分が通貨の増量となって設備投資にまわっていない、勤労賃金にも回っていない、ということは現在の円安は「無制限金融緩和」の大宣伝による「期待安」、国際金融ファンドの売りによるものと考えられます。
 売って下げて買って利益をあげる、そういう市場操作力は彼らしか持っていません。
 「無制限金融緩和」は危険なつけこまれやすい方策です。
 
 では、一時的にでも円安になればデフレは解消するのか。
 2%のインフレ目標が仮に一時的に達成されたら、勤労家計の可処分所得が増加し、消費が拡大して、設備投資が増えて資金需要も増えて、拡大循環の経済成長のうねりが始まるのか。
 まずは勤労家計の可処分所得が15年間減り続けて、一般小売の値下げ競争が厳しい中で2%の物価上昇は目標としても困難だが、仮に2%上昇するなら工業原材料、食品、独占公共料金、燃料などの分野で10%近い値上げが起きることを意味するでしょう。
 これは家計と中小企業の窮乏、破綻を意味します。
 勤労者の7割は中小企業ですから、消費が伸びると考えるのは正常な話ではありません。
 企業の社内留保が300兆円にもなっているので資金需要は起こらないでしょう。
 結局、仮にうまくいっても大衆窮乏化しか残らず、円安から日本売りになるでしょう。

 長くなりましたが、野口氏は勤労家計を注目せず、産業転換論ではあるものの、大震災から貿易構造が入超に転換したこと、今後数十年は続きそうな輸入額増加に円安が致命的なダメージとなるだろうし、実体経済が回復せずして、回復していないからこそ社内留保が300兆円にも膨らむわけですが、資金需要すなわち信用拡大にはつながらない。という点を強く指摘しており、私も評価するものです。

 「家計、企業、政府の共倒れ破綻」http://bator.blog14.fc2.com/blog-entry-1539.html
 「アベノミクスの展開と帰結:吉田繁治」http://bator.blog14.fc2.com/blog-entry-1592.html

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