「橋下発言」は米国からどう見えるか:冷泉
2013-05-17
橋下某の社会犯罪暴言については世界でも報道されている。もちろん日本のマスコミが批判もせずにただ垂れ流していることも知られており、日本の少なくとも一部には同様の見解があるように思われているようだ。
確かに一部に同様の連中がいる。自民党と政権幹部、経団連、米国軍産複合体のかいらいマスコミなどだ。
冷泉氏がこの橋下暴言が米国からはどのように見えるか、ということで箇条書きのメモを公表したので紹介します。
橋下某批判するものでも、氏の考えを述べたものでもありません。
現代アメリカの報道と言論の中で、支配階層から中間階層までのWASPを中心とする中心的な社会感覚、政治感覚としてのアメリカ。そこから見ると橋下を始めとする、石原、安倍、石破などの連中の発言がどんな様子に見えるか、ということを書いたものです。
従って、米国など欧米の対日外交は、この社会的なそして政治的な感覚の範囲から逸脱することはない。可能ならばその感覚をぶつけてくるだろう。
ということです。
問題は売買春、人身売買などの反社会的な犯罪性。それともうひとつは第二次世界大戦の戦後処理を歴史否定する、国際社会への犯罪性です。
そして、この2つはバラバラに主張されているのではなく、一つの潮流として受けとめられています。
つまり、どちらもひとつの根であり、どちらも「説明して誤解が解ける」ようなものではありません。
暴言自体がすでに犯罪行為なので、後から弁解は効きません。
「弁解して済むなら、神は要らない」というかどうかはわかりませんが、だから彼ら欧米も中国も下手な弁解や「説明」などはしないのです。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「橋下発言」はアメリカからどう見えるか 5/16 冷泉彰彦 NewsWeek日本語版
所用でニュージャージー州外に行っていたのですが、その間にこの問題がどんどん拡大していたのには驚きました。
現在の事態は、この欄で過去に申し上げた「管理売春は現代の基準では性奴隷」という指摘、また「国境を越えたコミュニケーションでは理念型の発信しか通用しない」というコメントが生かされなかった点、何とも残念に思います。
以下は、とりあえず、現時点で気づいたことを箇条書きにしておこうと思います。
(1)アメリカなど欧米諸国はキリスト教国だから性的なタブーの強い「偽善的な国」だという主張があります。
もしかしたら問題の奥の背景にはそうした宗教やカルチャーもあるのかもしれません。
ですが、アメリカがいい例ですが、買春行為に対して社会が厳しい目で見ているのは宗教や文化のためではないと思います。
核家族のイデオロギーが確立する中で、買春行為というのは、妻と子への裏切りであり、社会の最小単位である核家族を破壊し、自分以外の家族のメンバーの幸福を奪う行為だからです。
(2)同時に買春行為というのは、売春をする側の女性の尊厳を金銭を背景とした暴力で踏みにじる行為だとも言えます。
勿論、価値観の多様化の中で自身の意志でそうしたビジネスに関与する女性も存在するわけで、そうした人々への不必要な蔑視はなくなっていますし、こうした問題に厳しいアメリカでも州や都市によっては規制の緩い場所もあります。
ですが、本人の意志に反して行われた場合は、社会的には厳しい指弾を受けるのが通常です。
(3)この点に関しては、日本のいわゆる「風俗産業」に関しては、芸能活動や通常の接客業と偽って採用した女性に、借金を背負わせたりする中で売春行為を事実上強制するということが根絶できていないようです。
このうち、対象が外国人の女性となるケースに関しては、例えば米国の国務省が「事実上の人身売買行為」として監視対象に入れています。
(4)日本人の場合は国内問題であり、米国国務省は特に言及していませんが、今回の「発言」のような要人の「不規則発言」が続くようですと、国連の機関などが調査に乗り出す可能性はあると思います。
改めて確認したいのですが、「自己破産を妨害して風俗営業に女性を送り込む」というような行為が、仮に現在でも横行しているのなら、それは現代の国際的な常識であれば人身売買であり、そうした行為や産業の存在は許されるものではありません。
(5)この問題の報道ですが、アメリカに関して言えば、橋下市長の個人的な問題という文脈で語られるだけだはありません。
むしろ「安倍政権には超国家主義者(ウルトラナショナリスト)的な懸念がある」ということがあり、その延長で「アジア諸国との関係が悪化している」という問題と絡めて解説されることが主です。
その場合には、この「橋下発言」と「高市早苗自民党政調会長の村山談話否定コメント」が同列視された上で、日本の保守派の「ホンネ」だとされ、全体としては安倍政権への疑念という形に集約されています。
(6)ところでこの「超国家主義者(ウルトラナショナリスト)」という表現ですが、安倍首相は「誤解であり、説明して誤解を解きたい」と言明しているようですが、この認識自体に誤解があります。
国際社会での定義ということで言えば、「超国家主義者」というのは「自国中心主義が過度になり、周辺諸国との摩擦を煽っている」ような人物だけでありません。
第二次大戦を引き起こした「ナチス・ドイツ」がまずあり、その信奉者である現在の「ネオナチ」だけでなく、戦前の日独伊三国同盟と、この同盟を背景に行われた戦争の正当化をする人間はやはり「超国家主義者」になるのです。
(7)それは、日独伊三カ国を「旧敵国」として蔑視しているからではありません。
第二次大戦を「最後の世界大戦」として位置づけ、その再発を防止するために国際連合を組織しているのが「戦後体制」である以上、日独伊三国同盟による戦争遂行の肯定というのは、現在の国際社会の安全保障の大前提を否定することになるからです。
(8)いずれにしても、今回の一連の経緯により、売買春に関する価値観という問題と、第二次大戦の評価という問題で、日本という国のイメージは大きく傷ついています。
今回の「飯島訪朝」問題もこれに絡む可能性があり、これからの日本の外交は選挙を控えて難しい局面に向かう可能性があります。
ーーーーーーーーーーー
※ 例えばあなたがアジア欧米の国の、少なくともマスコミに報道されるような政権幹部や大使などだったらどうでしょう。
日本のこのような人たちとは実務会談はしても、会食などはできるだけ避けたいだろうと思います。
オバマもケリーも日本側と会食すらしなかったのは、このような人と「親しくしたと思われたくない」からでしょう。
下は米国のネオナチと日本のBUAKAMONO。

確かに一部に同様の連中がいる。自民党と政権幹部、経団連、米国軍産複合体のかいらいマスコミなどだ。
冷泉氏がこの橋下暴言が米国からはどのように見えるか、ということで箇条書きのメモを公表したので紹介します。
橋下某批判するものでも、氏の考えを述べたものでもありません。
現代アメリカの報道と言論の中で、支配階層から中間階層までのWASPを中心とする中心的な社会感覚、政治感覚としてのアメリカ。そこから見ると橋下を始めとする、石原、安倍、石破などの連中の発言がどんな様子に見えるか、ということを書いたものです。
従って、米国など欧米の対日外交は、この社会的なそして政治的な感覚の範囲から逸脱することはない。可能ならばその感覚をぶつけてくるだろう。
ということです。
問題は売買春、人身売買などの反社会的な犯罪性。それともうひとつは第二次世界大戦の戦後処理を歴史否定する、国際社会への犯罪性です。
そして、この2つはバラバラに主張されているのではなく、一つの潮流として受けとめられています。
つまり、どちらもひとつの根であり、どちらも「説明して誤解が解ける」ようなものではありません。
暴言自体がすでに犯罪行為なので、後から弁解は効きません。
「弁解して済むなら、神は要らない」というかどうかはわかりませんが、だから彼ら欧米も中国も下手な弁解や「説明」などはしないのです。
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「橋下発言」はアメリカからどう見えるか 5/16 冷泉彰彦 NewsWeek日本語版
所用でニュージャージー州外に行っていたのですが、その間にこの問題がどんどん拡大していたのには驚きました。
現在の事態は、この欄で過去に申し上げた「管理売春は現代の基準では性奴隷」という指摘、また「国境を越えたコミュニケーションでは理念型の発信しか通用しない」というコメントが生かされなかった点、何とも残念に思います。
以下は、とりあえず、現時点で気づいたことを箇条書きにしておこうと思います。
(1)アメリカなど欧米諸国はキリスト教国だから性的なタブーの強い「偽善的な国」だという主張があります。
もしかしたら問題の奥の背景にはそうした宗教やカルチャーもあるのかもしれません。
ですが、アメリカがいい例ですが、買春行為に対して社会が厳しい目で見ているのは宗教や文化のためではないと思います。
核家族のイデオロギーが確立する中で、買春行為というのは、妻と子への裏切りであり、社会の最小単位である核家族を破壊し、自分以外の家族のメンバーの幸福を奪う行為だからです。
(2)同時に買春行為というのは、売春をする側の女性の尊厳を金銭を背景とした暴力で踏みにじる行為だとも言えます。
勿論、価値観の多様化の中で自身の意志でそうしたビジネスに関与する女性も存在するわけで、そうした人々への不必要な蔑視はなくなっていますし、こうした問題に厳しいアメリカでも州や都市によっては規制の緩い場所もあります。
ですが、本人の意志に反して行われた場合は、社会的には厳しい指弾を受けるのが通常です。
(3)この点に関しては、日本のいわゆる「風俗産業」に関しては、芸能活動や通常の接客業と偽って採用した女性に、借金を背負わせたりする中で売春行為を事実上強制するということが根絶できていないようです。
このうち、対象が外国人の女性となるケースに関しては、例えば米国の国務省が「事実上の人身売買行為」として監視対象に入れています。
(4)日本人の場合は国内問題であり、米国国務省は特に言及していませんが、今回の「発言」のような要人の「不規則発言」が続くようですと、国連の機関などが調査に乗り出す可能性はあると思います。
改めて確認したいのですが、「自己破産を妨害して風俗営業に女性を送り込む」というような行為が、仮に現在でも横行しているのなら、それは現代の国際的な常識であれば人身売買であり、そうした行為や産業の存在は許されるものではありません。
(5)この問題の報道ですが、アメリカに関して言えば、橋下市長の個人的な問題という文脈で語られるだけだはありません。
むしろ「安倍政権には超国家主義者(ウルトラナショナリスト)的な懸念がある」ということがあり、その延長で「アジア諸国との関係が悪化している」という問題と絡めて解説されることが主です。
その場合には、この「橋下発言」と「高市早苗自民党政調会長の村山談話否定コメント」が同列視された上で、日本の保守派の「ホンネ」だとされ、全体としては安倍政権への疑念という形に集約されています。
(6)ところでこの「超国家主義者(ウルトラナショナリスト)」という表現ですが、安倍首相は「誤解であり、説明して誤解を解きたい」と言明しているようですが、この認識自体に誤解があります。
国際社会での定義ということで言えば、「超国家主義者」というのは「自国中心主義が過度になり、周辺諸国との摩擦を煽っている」ような人物だけでありません。
第二次大戦を引き起こした「ナチス・ドイツ」がまずあり、その信奉者である現在の「ネオナチ」だけでなく、戦前の日独伊三国同盟と、この同盟を背景に行われた戦争の正当化をする人間はやはり「超国家主義者」になるのです。
(7)それは、日独伊三カ国を「旧敵国」として蔑視しているからではありません。
第二次大戦を「最後の世界大戦」として位置づけ、その再発を防止するために国際連合を組織しているのが「戦後体制」である以上、日独伊三国同盟による戦争遂行の肯定というのは、現在の国際社会の安全保障の大前提を否定することになるからです。
(8)いずれにしても、今回の一連の経緯により、売買春に関する価値観という問題と、第二次大戦の評価という問題で、日本という国のイメージは大きく傷ついています。
今回の「飯島訪朝」問題もこれに絡む可能性があり、これからの日本の外交は選挙を控えて難しい局面に向かう可能性があります。
ーーーーーーーーーーー
※ 例えばあなたがアジア欧米の国の、少なくともマスコミに報道されるような政権幹部や大使などだったらどうでしょう。
日本のこのような人たちとは実務会談はしても、会食などはできるだけ避けたいだろうと思います。
オバマもケリーも日本側と会食すらしなかったのは、このような人と「親しくしたと思われたくない」からでしょう。
下は米国のネオナチと日本のBUAKAMONO。


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コメント
Re: タイトルなし
そのとおりと思います。
マスコミはその後の弁解やら説明やらをまだ垂れ流し、根本からの批判をしていません。
橋下、石原、安倍、石破などと同根とみなされます。
「当時はみんなやっていた」と言う発想は、ことの善悪を無視して、どんな世界にしてゆくのかという「社会性」がまったくありません。
世界大戦は敗北した国が形のうえで当然「悪」となりましたが、ただ単に「悪」として終わったわけではなく、二度と悲惨な殺戮と人権無視を復活させないための「戦後処理」だったとの考えと思います。
だから、この戦後処理はネオナチなどの極右思想を大量殺戮や人身売買を引き起こす犯罪とみなす社会思想として、戦勝国側をも規制していると考えます。
今も当時の互いに戦った兵士同士の交流などがあるのはそのためでしょう。
マスコミはその後の弁解やら説明やらをまだ垂れ流し、根本からの批判をしていません。
橋下、石原、安倍、石破などと同根とみなされます。
「当時はみんなやっていた」と言う発想は、ことの善悪を無視して、どんな世界にしてゆくのかという「社会性」がまったくありません。
世界大戦は敗北した国が形のうえで当然「悪」となりましたが、ただ単に「悪」として終わったわけではなく、二度と悲惨な殺戮と人権無視を復活させないための「戦後処理」だったとの考えと思います。
だから、この戦後処理はネオナチなどの極右思想を大量殺戮や人身売買を引き起こす犯罪とみなす社会思想として、戦勝国側をも規制していると考えます。
今も当時の互いに戦った兵士同士の交流などがあるのはそのためでしょう。
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>買春行為に対して社会が厳しい目で見ているのは宗教や文化のためではないと思います。
>核家族のイデオロギーが確立する中で、買春行為というのは、>妻と子への裏切りであり、社会の最小単位である核家族を破壊>し、自分以外の家族のメンバーの幸福を奪う行為だからです。
ここのところをわからずに、日本人(=飲み会参加の日本人男性)なら云々、アメリカ人だって××戦争の時は、云々という形で橋下さんのみならず、色々な立場の人たちが売買春を平気で擁護しています。強く反対するのは「左翼系女性団体」云々。
この件は売買春に対する考え方だけでなく、おっしゃるように、もっと複合的にとらえる問題ですが、上記の一点についての境界線のどちら側に立つかが全体的議論においても譲れない大原則だと思います。今回以外の議論においても同じです。