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吉田繁治:金融・経済・仕事への質問回答集

 ペーパーマネー
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 吉田繁治氏が2012年3月に行った講演のレジュメ(スライド)を無料公開されています。
 その中に質問回答集があるので、紹介します。
 質問者はいわゆる「個人投資家」が多いので、やはり証券、為替市場の予測に関する質問が多いのですが、その中からもこれからのマクロ経済、世界経済の動向といったものが読み取れます。

 例によって(※ )は私の注釈です。 意見、補足説明、その後の情勢変化などです。
 なお、音声とレジュメはここです(150分)。
 ーーーーーーーーーーーーーー
   金融・経済・仕事への質問への回答集

金融資産の運用に関する質問が多い
理由を書けば、回答がとても長くなるので、 結論のみを書いています。

Q1:世界の金融危機の時期はいつか?
A : 2012年8、9月から、2013年でしょう。損からの負債には、 政府・中銀が貸したにせよ、金利が累積するからです。

Q2:金融資産の防衛には?
A:高い利益率を狙ってはダメです。10%の利益で満足する。

Q3:日銀の40兆円の国債買いの目的と、副作用は?
A:ガイジンが日本国債を買い越しているからです。 円が売られ、円安、株安になる恐れが高い。 最も多く、国債を買う国の通貨が下がります
(※ 黒田日銀によって進行中!)

Q4:国債暴落時の、生保、不動産への影響
A: 基金と金融資産の価値が、下がります。 不動産は、人口が増える地帯は上がり、
他は下げます。

Q5:国家破産後の、ハイパーインフレは?
A:ハイパーインフレの可能性は、小さいと見ています。 他方で、資源価格、食品価格は上がります。

Q6:国家破産では、預金、債券は国が没収するのか?
A: 預金引き出し額の制限の可能性は、残るでしょう。 預金税、資産税、相続税の増税が考えられます。 相続税を無税にする国債を発行するかも知れませ ん。
でもこうした荒技は、実行できない気もします。

Q7:円の価値は下がるのか?
A:GDP比で、中央銀行が最も多く国債を買う国の、 通貨が下がります
日本がそれなら、円が下がります。 ユーロ→円→ドルの順に、思えます。

Q8:今からでも金を買うべきか?
A:上がっても下がっても、毎月、財布に合わせ、長期 で、現物や金証券を一定額買うことは、奨められます。 金鉱山株や、短期の利益を狙う買いは、奨めません。
上がっても、利益確定売りはせず、保有し続けることを 推奨。売れば、利益に分離課税のケースでは20%の税金がかかります。現物売りなら、総合課税です。
現金が必要なときは、金を担保に、銀行から借りれば いいのです。時価のほぼ70%には、評価されます。
(※ 2012年秋から金価格が下がっています。金融寡頭勢力の売り抜けならば、米ドルベース見合いの1,400ドルくらいまで下がるでしょう。)

Q9:ドル資産はどうすればいいか?
A:米ドルベースで、ほぼ同額を借りて、保有リスクを無効化します。 下がると利益が出る先物売りやオプション売りでも、借りたのと同じ効果です。

Q10:米国の不動産は上がるか?
A:ベビーブーマー・ジュニアが買う数年後から、上がると見ます。

Q11:米国は成長するか?
A: 日本に比べれば、若い世代と4000万人と移民が多いので、 成長します。
しかし、医療費と財政赤字から、ドルが低下する インフレ型の経済成長です。
(※ かなり緩やかな「成長」でしょう。)

Q12:中国は成長するか?
A: 2012年から2013年は、上がりすぎた不動産バブルの崩壊です。
中国の成長は、人口構成から、2015年頃まで続きますが、 その後は、普通の成長率に落ちます。数%の成長はします。
(※ 習近平政権になってから成長率を押さえ込んでいます。)

Q13:これから投資すべき対象は何か?
A:資源、ゴールド、穀物、食品、飲用水もはいるでしょう。

Q14:中央銀行が、マネーを刷って、過剰流動性相場になる時期を、
知る方法はあるか?
A:中央銀行のバランスシートを、毎月、観察・比較してください。 FRBには、嘘が混じっていますが、毎月、比較すれば嘘も分ります。

Q15:ドル、ユーロ、円が同時破産すると、どうなるのか?
A: IMFのSDRのような、通貨バスケットが、国際通貨になると見ます。

Q16:ヘッジファンドの、3ヶ月サイクルの売買の時期は?
A: 決算日の関係で3月、6月、9月、12月が多い。

Q17:金の底値を、見極める兆候はあるか?
A: 短期では、ヘッジファンドが他のもので損をし、利益確定の換金売 りが増えたとき、底値を作ります。

Q18: 日本の製造業は残るのか? 海外進出すべきか?
A:円安に振れる時期もあります。海外進出は、行ったほうがいい。 国内製造業の売上の50%が輸出です。 中国、韓国と、同価格&高品質ならOKです。

Q19:数年後には大幅な、円安になると思うが、ヘッジ方法は?
A:国債の中央銀行買いの少ない国の通貨を買うことです。 例えば、スイスフラン。 経常収支が黒字国の通貨です。
人民元は外貨交換が自由化されていないので、リスクがあります。 (注)ドル基軸通貨の崩壊は、金を高騰させます。

Q20:米欧の、大量のマネー供給に伴い、 資産インフレが発生するか?
A:米国は可能性がありますが、欧州は日本と似た高齢化な ので、不動産インフレの可能性は、低いと見ています。
ただし、アジアからの投資で、上がるリゾートは出ます。

Q21:日本がデフレから、インフレに転じる時期はいつか?
A:2012年冬か、2013年からと見ています。
(※ まさしく。その期待の波に乗ったのがアベノミクス。実体経済ではない。) 

Q22:極度のインフレになったとき、株価はどう動くか?
A:インフレで売上が増える、生活必需の会社の株価は上が るでしょう。
他方で、贅沢品、選択財の会社の株価は、上 がりません。
(※ 10%近いインフレになった場合、生活必需品の価格が上がり、贅沢品、選択材は買い控えの可能性。実体の利益とは限らない。)

Q23: 国債が暴落したときの、有効な投資は何か? 住宅ロー ンの固定金利は有効か?
A:住宅ローンは30年です。負債がどこまでも追いかけてくる 日本では、固定金利で借りるべきです。

Q24:消費税の増税が必要ないとする、政治家の根拠は何か?
A:世論の人気取りでしょう。
ただし、消費税を上げても、 財政赤字は、さほど減りません。
30%なら別ですが、 消費税30%にすれば、日本はデフレ型恐慌になります。

Q25:いろんなところから数値を出されていますが、ウォッチン グすべき数字は、どこにあるか?
A:新聞では、論説を読まず数値のみを見て、ファイリングし ます。
日経新聞、FT紙、英国エコノミスト、週刊エコノミスト、 東洋経済です。1ヶ月に、A4のファイリング2冊分です。
後は、インターネットでのBIS、FRB、日銀、財務省、厚労 省、経産省、総務省の数値情報です。膨大な数値があります。それらの、集計の根拠を見ることです。
主要なものは、書いているうちに、記憶します。記憶していないと、変化や注目すべきことが、分かりません。
あれ、この数字は変だな』と思うとき、論考を書きます。

Q26:国債がデフォルトしたとき、今の医療体制は維持できる か?
A:医療費、医薬品費は、削減に向かわざるを得ません。
政府の税金で補填しているのが、公的医療費36兆円の 40%もあるからです。70歳未満の個人負担は30%です。

Q27:国債がデフォルトしたとき、食品のサプライチェーンへの影響は?
A: 食品、生鮮は、仕入れ価格が、上がるでしょう。

Q28:日本の成長の機会は、どこにあるか?
A: 自社の技術革新で、1人当たりの生産性を上げることです。 日本のGDP成長には、人口増が欠かせません。
そのために、フランスのような子どもの数によるN分のN乗の税制 をとって、子どもを生めば生むほど、税金が下がるようにすること。
子どもが生まれないのは、2人分、3人分は払えない教育費・生活費 が原因です。フランスでは、公的教育は、大学も無料です。

Q29:これからの日本と世界を考えたとき、どんな育て方をしたらいい か? アメリカが参考になるか?
A : 知識詰め込みの教育を、行うことです。 韓国の、現在の経済成長は、20年前の受験戦争からでした。 教える量を減らすゆとり教育が、日本国を衰退に向かわせました

Q30:海外に行くか日本に留まるか?
A : 私は、日本に留まります。旅行は海外です。長女は、NY在住です。

Q31:外進出ができない、中小企業卸売業の業態変革は?
A : 1人当たりの生産性を上げるための、業務の改革・改善です。

Q32:日本にこだわらなければ、どこの国に住めばいいか?
A : 年金20万円と預金2000万円で、豊かな生活ができる国です。
気温が温かく、人々が優しく、自然の美しい国がいいですね。 所得水準が5万円くらいの国では、リッチな生活ができます。 中国は、マネー主義で情報統制です。奨めることはできません。

Q33:中東に戦争はあるか?
A:シリアがすでに内戦です。イラン-イスラエルは、2012年6月か ら危機が深まり、戦争があるとすれば、2013年と見ています。

Q34:輸出製造業の将来について?
A:中国、韓国と、同価格・高品質で、競争ができることです。

Q35: 吉田の情報収集力と、週間スケジュールは?
A:情報収集は、数値がほとんどです。論説や本は、流し読みです。 週間スケジュールは、不規則です。徹夜が、1日は必ずあります。
時々、よく眠って、運動もしています。 眠るとき、最近は、小説(夏目漱石が中心)の朗読を聞きます。
インターネットの朗読を聞き場面をイメージします。古典がいい。

Q36:日本は、経常収支が黒字であるので、GDPの2倍以上の累 積債務があっても、国債暴落による国家破綻、国民の窮乏はない。
A: 経常収支の黒字は、2011年で9.6兆円でした。前年比で7. 5兆円減っています。貿易収支が1.6兆円の赤字になったからで す。
所得収支が黒字ですが、これは、対外資産(560兆円)の、ドル安 による目減り(為替差損100兆円)を入れていないものです。
今後、 資源輸入が増えるので、経常収支の黒字縮小の傾向は続くと見ま す。数年後に、赤字になる可能性が高いと見ます。
(※ 為替の金融緩和期待円安が続き、輸入超のため貿易赤字がさらに拡大している。)

Q37:国家のバランスシート上、膨大な資産があり、純粋な負債は たいしたことはない・・・等の議論がありますが、本当でしょうか。
A:資産とは言っても橋、官庁の公共設備、道路です。これは売れ ません。皇居や財務省の建物、道路、本四架橋、空港等を買う人 はいないでしょう。
年金基金は、国家が管理していますが、これは 国家のものではなく、国民のものです。
政府には、売れるめぼしい 資産はありせん。 ・・・・売れる資産は、あと数十兆円しかないでしょう。

Q38:デフレが全ての根源であり、日銀が国債を買い取って、紙幣 をばらまけば解決するような議論がありますが本当でしょうか?
A:インフレになると、期待金利が上がります。
このため、国債が値 下がりして、金利が1%のデフレより却って、財政にとっては危機に なります。

(※ 現在の黒田日銀政策は、ほぼ国債の日銀買い占めに近い「異次元緩和」となった。そのために民間の国債需要圧力が強まり、価格が上がり、金利が下がっている。その代わり、財政ファイナンスと見做されれば出口(ベースマネーの吸い上げ)は無い。)

Q39:国債の暴落は、突然来るのか、予兆の期間があり、軌道修正 をする余地は残っているのか?
A1: 国債をもつ金融機関(銀行、保険、郵貯)が、インフレ気味に なって国債下落に危機を感じ始めるときです。
予兆は長期金利の 上昇です。
いったん上がり始めると、数ヶ月で、PIIGSのように、な ります。
海外ヘッジファンドが、先物売り、オプション売りを仕掛け るためです。
(※ ここで問題になるのが黒田日銀の異次元緩和が国債の7割もの買い上げであることだ。つまり、正常な債券市場の金利調節機能がなくなり、長期金利上昇という目安が働かなくなる。出口戦略の無い鉄砲玉異次元金融緩和であり、予兆なき破綻が可能となっていることに注意。)
A2: 財政の軌道修正には、政府予算(1年に220兆円)の20%縮減、 公務員の30%リストラです。これは、今、PIIGS5ヵ国が行おうと計 画していることです。PIIGSには、計画の実行ができないと思えます。

Q40:高齢化と少子化が加速度的に進む日本に、今の若者、これ から生まれてくる、子供たちに明るい未来の展望を開く手立ては 何でしょうか?
A: 奇策はありません。
技術革新で、産業の生産性を上げること です。フランスのような、子どもの数によるN分のN乗の税制で、生 まれる子どもを、現在の100万人から150万人に増やすことです。
奇策としては、イスラエルを、そっくり受け入れることです。これは、 世界から、感謝されます。米国も歓迎するでしょう。
日本人も、国 際的に変わります。イスラエルには、マネー力と技術力があります。
ユダヤ人のアインシュタインは、かつて、日本が世界を救うと言っ ていました。優しく、実直な人が多いからです。
村社会では、ドロ ボーもなかった。トルコの人々は、日本人の「もやい」を尊敬してい ます。もやいは、分け与えること。沖縄に、今も、残っています。
戦 後の個人主義で崩れましたが、会社(集団主義)の中には、その 精神が残っています。孔子が言った「仁」です。義理人情とも言え ます。
個人主義のマネーではない。
英米風の成果主義は日本人 には合いません。日本人は和歌のように感覚で世界をとらえます。

Q41: 直近のユーロの動向
A: ECBのユーロ印刷で、表面上、銀行危機が去ったと、見られ て、ユーロ債が買われています。また、実はそうではなかったと、 ユーロ債が売られる時期が来ます。6月以降でしょうか。

Q42:国内都心部の優良不動産に対する投資は国家破産に対して のヘッジとなりますか?また中小食品スーパーに出来る対策は何 ですか?中小企業のM&Aは増えますか?
A:東京、神奈川、沖縄、滋賀は、30年後も人口が減らないので、 不動産については、強含みで見ていいと思えます。
食品スーパー は、特に、生鮮の1人当たり生産性を30%は上げることです。
M&A は増えます。
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コメント

海外へ放射能を懸念されて避難される方が増えていますが日本円が通用する今のうちということでしょうか。埼玉在住ですが福島県同様、土地の価値はないかもしれません。東京はどうでしょうか。ホットスポットといわれる高濃度汚染帯にマンションが建っているとか。外国の方は東京の土地に資産価値はないとみているようですが。

Re: タイトルなし

余程の金持ちならいざしらず、英語がわからないうえに円が安くなれば、海外移住もできませんね。
黒田日銀の異次元金融緩和で株などの資産バブルが起きていますが、首都圏の不動産価格がどうなるかで、どの程度放射能の危険が認識されているか、覚醒されているかの目安になりそうですね。
私は1,2年で、海外からの投資は日本売りと底値買いに行き着くと思いますが。
不動産といえば、一時期もてはやされた屋上植栽などは除染もできず、どうなっているのでしょう。

イスラエルを受け入れる、なるほど。良い案じゃないでしょうか?もう、これしかないと思うほどに。

Re: タイトルなし

吉田氏はそう言ってますが、現実のイスラエルはシオニスト国家として中東に緊張と混乱を作り出すことで、国際金融資本とりわけ軍産複合体系統と協調しています。
地政学的にアラブ、イスラムの中央であり、聖地であることが存立の条件なはず。
だから東京には特段の魅力は無いでしょう。
シオニストとして生きるのでなければ、イスラエル国家は不要です。
イスラエル人口は世界ユダヤ人の1/3か1/4くらいだったように思います。

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