出口もリスクも無視、空気に従う委員たち:山田
2013-04-12
黒田日銀の異次元の金融緩和は、正統な金融政策、それともギャンブル? ダイヤモンド・オンライン

原発」に学ぶ「異次元」の死角 アベノ日銀はリスクが満載 4/11 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
黒田日銀が打ち出した大胆な金融緩和策は、人体に例えれば心臓を2倍にして2倍の血液を送りだすようなものだ。日本経済は興奮し株式市場は大商いである。
たいした効果だが、強い薬には副作用がある。異次元の金融政策は異次元のエネルギーとされた原発と重なる部分がある。
リスクを軽視した「強者の慢心」は危うい。
景気好転で世間の関心が「経済」に移っている最中、福島第一原子力発電所では放射能汚染水が漏れ、制御不能の事態に陥っている。
政府の収束宣言にもかかわらず、フクシマの現場ではいまも危機の綱渡りが続いている。
「出口戦略」の不在
金融政策と原発政策は意外にも共通点がある。違和感を持つ人もいると思うが、「危機管理」の観点から見ると、両者には共通する欠落点がある。
第一は「出口戦略」の不在。原発はすさまじいエネルギーを発生させる代償に放射性廃棄物を生み出す。
「核のゴミ」といわれるが捨てられないゴミである。人体や生態系を破壊する猛毒の処理方法さえ決めず、発電を始めた。
長い時間軸で考えるべき経営が短絡的採算を重視し、先のことは考えない。事故はその中で起きた。
黒田日銀の大胆緩和は、株式・債券・外国為替の市場に大きなインパクトを与えた。目先の利益を追う人には嬉しいことだ。
しかし、こんなことはいつまでも続かない。株式市場の最大のテーマは、どこまで上がるか、いつ売ればいいのか、である。
資産価格の膨脹は「適正水準」でピタリと止めることができない。ハンドルさばきを誤ると破裂するまで膨脹する。
「異次元」とまで総裁自らがいう過激な金融膨脹は副作用を覚悟すべきだろう。その副作用を見据えて「出口戦略」が用意されているとは思えない。
「デフレ脱却に着手したばかりなのに、出口を云々する時ではない」と麻生財務相は国会で答弁したが、お膝元の財務省では、「国債バブル」が心配のタネになっている。
今は国債が買われ、長期金利がどんどん低下しているが、いつもでも続かない。
金利の反転が急激に起きたら大変なことになる。困ったことに、それがいつ起こるか、何がきっかけになるか分からない。
その時、どう対処するか。「出口戦略」を持たないまま「異次元の金融政策」に突入した。
「政府が新規に発行する国債の7割は日銀が市場を通じて買うことになる」と黒田総裁は明言した。そこまでやるのか、という大胆な金融緩和だ。
本来、国債市場には「大量発行の歯止めをかける自律的機能」がある。消化能力を超える大量発行になれば、国債が売れなくなり(金利は上昇し)「警鐘」を発する。
だが日銀がどんどん吸い上げれば、その機能が損なわれ、ある日突然、金利はね上がる(価格暴落)という事態が起きかねない。
「有事」になってわかるコスト
第2は「有事」になってはじめて政策コストが明らかになることだ。
原子力は安全運転が続く「平時」なら、一番コストの安い発電方法とされてきた。
だが運転をやめて廃炉にする時のコストや、突然の事故で賠償やら汚染対策などの費用が発生する「有事」になると、とんでもなく割高の発電方法であることが分かる。
異次元の金融政策は、アナウンス効果が絶大で、何も始まっていないうちから株価は上がり、円は安くなり、金利が低下した。
極めて効果的な政策に見えるが、「事故」が起きた時、どうなるのか。首尾よく安全運転を続ける可能性はゼロではないが、「資産価格」を膨脹させる政策だけに、「暴落」という事故と隣り合わせの政策である。
黒田総裁は「現時点では資産バブルの心配は全くない」と強調する。危ないことを承知の上で「安全神話」を煽ってはいないか。
政策のコストは、失敗の可能性を織り込んで計算した方がいい。
リスクが大きい政策はなるべく避ける、というのが日銀の伝統的手法だった。だが、白川前総裁は「リスクがあるからやらない」ということではなかった。
国債を買い上げて市場に資金を流し込む、株を買い上げる、J-REITを買う、という「非伝統的」な政策は、白川時代に始まった。
黒田総裁との違いは「リスクある政策だから、市場の様子を見ながらやる」という姿勢だった。
そんなやり方を黒田総裁は「戦力の逐次投入」と批判した。「政策は小出しにせず、有効と考えることは全て投入する」という。
危険承知で突き進む、という蛮勇のコストはどれほどになるのか。リスクが現実化して分かる、という事態になる恐れは十分ある。
日和見主義
第3は、御用学者・日和見エコノミストの跋扈だ。
原発の安全神話を振りまき、怠慢なリスク管理の温床となったのが、「原子力ムラ」で権勢を振るう御用学者たちだった。
有名大学の偉い先生は原発推進の「お飾り」になっていた。金融政策に「御用学者」がいないのか。
白川方明前総裁の政策に不満だった安倍首相は、「私の政策に理解がある総裁を選ぶ」と宣言し、お眼鏡にかなった正副総裁を選んだ。
だが、金融政策は総裁だけで決まらない。金融政策決定会合という場で多数決で決まる。メンバーは総裁と副総裁二人、そのほか6人の審議委員がいて、計9人の多数決で政策を決める。白川総裁の時も同じである。
ということは3人代わっただけでは政策は変わらない、はずだ。
(※ところが)黒田日銀の初会合で、「異次元の金融緩和」は全員一致で決定された。白川総裁の時と正反対の決定がトップが代わっただけで実現した、ということである。
日銀の審議委員は大学教授、企業経営者、民間のエコノミストなど金融の専門家によって構成される。それぞれご自分の意見をもった人であるはずだ。それが白川が黒田に代わった途端、クロがシロになったというのか。
3月に行われた金融政策決定会合の議事録に、興味深い事実が載っている。
白井さゆり審議委員が「2014年から始まる無期限の金融緩和をすぐに始める」など、黒田日銀の政策を先取りしたような提案をしていた。ところが審議の結果、多数の委員は「様々な選択肢の一つだが、現状維持が適当」と反対し、提案は退けられた。
一ヵ月後に開かれた黒田総裁の初会合で、ほぼ同じ提案は全員一致で決まった。この一ヵ月で大多数の委員の意見が代わるような市場変動は起きていない。総裁が代わっただけだ。
日銀の政策決定会合も政府の審議会と同じように、官僚が決めた政策を追認する「儀式」で、高名なセンセイたちは「イエスマン」なのか、と思わせる風景である。
今回、副総裁に就任した金融学者の岩田規久男氏は独自の金融論で日銀を批判していたので、これまで審議委員になることはなかった。6人の審議委員は穏当な意見で、日銀の意向に沿う「空気が読める人」が選ばれてきたと思わざるを得ない。
政治主導で白川氏が黒田氏に代わり、委員たちは「空気」を察知したのだろうか。それにしても前月に反対した委員は、今月どんな理屈で賛成に回ったのか。来月公開される4月の議事録が興味深い。
審議委員は官庁の審議会委員と違い、常勤である。日銀の内部関係者によると2000万円前後の年俸が支払われているいう。たんなる名誉職ではない。その実態が「ゴム印を押すだけ」というのでは預金者に対する背信である。
問題なのは御用学者の人格云々でなく、制度を空洞化させるからだ。専門の有識者が決定に加わることで多重のチェックを働かせ、システムのリスクを軽減する。それが委員会方式の使命である。
原発が御用学者によって杜撰な管理に置かれ、取り返しの付かない悲劇を招いた教訓は他人事でない。
審議委員だけではない。銀行や証券会社などのエコノミストやアナリストにも「空気を読む」が広がっている。
「当局に批判的はコメントは出しにくい」と銀行の広報担当者はいう。アベノミクスの危うさを指摘すると、「こんなに巧くいっているのに、景気に冷や水を浴びせるのか」
という批判にさらされる、というのだ。
参議院選挙まで「ともかく景気を」という政権の意向を、金融界は十分に感じ取っている。
「株高や円安など市場が賑わっている時に、敢えてネガティブな見方は出しにくい。自民党が選挙に大勝し、これからも力を持つだろう、ということは無視できない」
銀行の人たちは言う。当局から免許をいただき、理念より利益の金融界は体質的に日和見なのかもしれない。危ないと思いながらも口を拭う金融界の空気が、アベノ日銀を暴走させることにならないか。
責任を負いきれないほどのリスク
第四は、責任を負いきれないリスクを抱えていることだ。
「日銀総裁は原発を運転する電力会社の社長と同じ覚悟がいる」
日銀OBの一人はそう言った。原発のリスクに平然としていた東京電力の経営者は、フクシマで大変な責任を負った。その自覚があるかは不明だが、個人が一生をかけても償いきれない犠牲を社会に与えたのである。
「私の責任で再稼働します」などと首相が言っても、もし事故が起きたら、責任を負いきれるものではない。
日銀総裁も「なにも起こらないで経済が順調に進む」ことが最良の仕事で、狂乱物価やバブル経済を発生させた総裁は、責任を負いきれない打撃を世間に与える。
アベノミクスは政治的野心を伴った政策である。「中央銀行の政治的独立」に疑義を唱え、政治力で金融政策を変えた。
そのとっかかりが「緩和政策」をバナナの叩き売りのように競わせた総裁選びだった。
御用学者や安全神話に寄りかかり、やみくもに異次元にのめり込むことで大丈夫なのか。アベノ日銀は、一見無関係な原発事故から学ぶべきことが多いはずだ。事故が起きたときは手遅れである。
ーーーーーーーーーーーー
※ 以下は勤労者賃金、所得の再配分と消費増税、デフレに関連するページ。
労働分配率の強制修正
世界で日本のみデフレ
日銀の金融緩和は誰のためか
信用創造と言えば聞こえは良いが
信用創造とは
公務員叩きとデフレ政策
通貨、金利と信用創造の特殊な性質
信用創造(3)無政府的な過剰通貨
デフレ脱却には賃金上昇が不可欠:根津
これからの経済生活はどうなるのか
なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
ゆでガエル!
消費増税でデフレ強行を目指すかいらい政権
日本の労働は封建主義の農奴農民か
窮乏化、3軒に1軒が貯金もなし
逆進課税とデフレ恐慌
消費増税を許すな!三党談合政権を倒そう
景気対策ではない、消費増税を通すためのGDP操作だ
安倍某の経済政策?恐怖のシナリオか
安倍の過激刺激策は過去のミス繰返し:人民網
家計、企業、政府の共倒れ破綻
生活と円安、アベノミクスが招くこと
アベノミクスが作り出す地獄の窮乏生活
通貨戦争(62)ゴロツキ右翼が口火で世界大戦:ペセック
アベノミクスは現実を欠いた宗教:ペセック
勤労者の地獄と国際金融資本の高笑い
賃上げが無ければ経済成長は無い
来年度成長率2.5%?参院選向けの国民騙し!
なぜ消費増税に固執するのか
アベノミクス、勤労者窮乏化の効果だけは必ずある
アベノミクスの展開と帰結:吉田繁治
企業内労組連合の腐敗とブラック企業、アベノミクスの茶番
安倍の犯罪、早くも生活苦が始まった
失業、窮乏、貧富の拡大を目指す安倍政権
通貨戦争(64)キプロスにみる、金融緩和という火薬庫
スタグフレーションとバブル:藻谷
狂気のアベノミクス、マネタリーベースと長期国債
注意!大マスコミが好景気を「演出」している
小沢氏4/1経済も安倍政権もこのままでは持たない
出口もリスクも無視、空気に従う委員たち

原発」に学ぶ「異次元」の死角 アベノ日銀はリスクが満載 4/11 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
黒田日銀が打ち出した大胆な金融緩和策は、人体に例えれば心臓を2倍にして2倍の血液を送りだすようなものだ。日本経済は興奮し株式市場は大商いである。
たいした効果だが、強い薬には副作用がある。異次元の金融政策は異次元のエネルギーとされた原発と重なる部分がある。
リスクを軽視した「強者の慢心」は危うい。
景気好転で世間の関心が「経済」に移っている最中、福島第一原子力発電所では放射能汚染水が漏れ、制御不能の事態に陥っている。
政府の収束宣言にもかかわらず、フクシマの現場ではいまも危機の綱渡りが続いている。
「出口戦略」の不在
金融政策と原発政策は意外にも共通点がある。違和感を持つ人もいると思うが、「危機管理」の観点から見ると、両者には共通する欠落点がある。
第一は「出口戦略」の不在。原発はすさまじいエネルギーを発生させる代償に放射性廃棄物を生み出す。
「核のゴミ」といわれるが捨てられないゴミである。人体や生態系を破壊する猛毒の処理方法さえ決めず、発電を始めた。
長い時間軸で考えるべき経営が短絡的採算を重視し、先のことは考えない。事故はその中で起きた。
黒田日銀の大胆緩和は、株式・債券・外国為替の市場に大きなインパクトを与えた。目先の利益を追う人には嬉しいことだ。
しかし、こんなことはいつまでも続かない。株式市場の最大のテーマは、どこまで上がるか、いつ売ればいいのか、である。
資産価格の膨脹は「適正水準」でピタリと止めることができない。ハンドルさばきを誤ると破裂するまで膨脹する。
「異次元」とまで総裁自らがいう過激な金融膨脹は副作用を覚悟すべきだろう。その副作用を見据えて「出口戦略」が用意されているとは思えない。
「デフレ脱却に着手したばかりなのに、出口を云々する時ではない」と麻生財務相は国会で答弁したが、お膝元の財務省では、「国債バブル」が心配のタネになっている。
今は国債が買われ、長期金利がどんどん低下しているが、いつもでも続かない。
金利の反転が急激に起きたら大変なことになる。困ったことに、それがいつ起こるか、何がきっかけになるか分からない。
その時、どう対処するか。「出口戦略」を持たないまま「異次元の金融政策」に突入した。
「政府が新規に発行する国債の7割は日銀が市場を通じて買うことになる」と黒田総裁は明言した。そこまでやるのか、という大胆な金融緩和だ。
本来、国債市場には「大量発行の歯止めをかける自律的機能」がある。消化能力を超える大量発行になれば、国債が売れなくなり(金利は上昇し)「警鐘」を発する。
だが日銀がどんどん吸い上げれば、その機能が損なわれ、ある日突然、金利はね上がる(価格暴落)という事態が起きかねない。
「有事」になってわかるコスト
第2は「有事」になってはじめて政策コストが明らかになることだ。
原子力は安全運転が続く「平時」なら、一番コストの安い発電方法とされてきた。
だが運転をやめて廃炉にする時のコストや、突然の事故で賠償やら汚染対策などの費用が発生する「有事」になると、とんでもなく割高の発電方法であることが分かる。
異次元の金融政策は、アナウンス効果が絶大で、何も始まっていないうちから株価は上がり、円は安くなり、金利が低下した。
極めて効果的な政策に見えるが、「事故」が起きた時、どうなるのか。首尾よく安全運転を続ける可能性はゼロではないが、「資産価格」を膨脹させる政策だけに、「暴落」という事故と隣り合わせの政策である。
黒田総裁は「現時点では資産バブルの心配は全くない」と強調する。危ないことを承知の上で「安全神話」を煽ってはいないか。
政策のコストは、失敗の可能性を織り込んで計算した方がいい。
リスクが大きい政策はなるべく避ける、というのが日銀の伝統的手法だった。だが、白川前総裁は「リスクがあるからやらない」ということではなかった。
国債を買い上げて市場に資金を流し込む、株を買い上げる、J-REITを買う、という「非伝統的」な政策は、白川時代に始まった。
黒田総裁との違いは「リスクある政策だから、市場の様子を見ながらやる」という姿勢だった。
そんなやり方を黒田総裁は「戦力の逐次投入」と批判した。「政策は小出しにせず、有効と考えることは全て投入する」という。
危険承知で突き進む、という蛮勇のコストはどれほどになるのか。リスクが現実化して分かる、という事態になる恐れは十分ある。
日和見主義
第3は、御用学者・日和見エコノミストの跋扈だ。
原発の安全神話を振りまき、怠慢なリスク管理の温床となったのが、「原子力ムラ」で権勢を振るう御用学者たちだった。
有名大学の偉い先生は原発推進の「お飾り」になっていた。金融政策に「御用学者」がいないのか。
白川方明前総裁の政策に不満だった安倍首相は、「私の政策に理解がある総裁を選ぶ」と宣言し、お眼鏡にかなった正副総裁を選んだ。
だが、金融政策は総裁だけで決まらない。金融政策決定会合という場で多数決で決まる。メンバーは総裁と副総裁二人、そのほか6人の審議委員がいて、計9人の多数決で政策を決める。白川総裁の時も同じである。
ということは3人代わっただけでは政策は変わらない、はずだ。
(※ところが)黒田日銀の初会合で、「異次元の金融緩和」は全員一致で決定された。白川総裁の時と正反対の決定がトップが代わっただけで実現した、ということである。
日銀の審議委員は大学教授、企業経営者、民間のエコノミストなど金融の専門家によって構成される。それぞれご自分の意見をもった人であるはずだ。それが白川が黒田に代わった途端、クロがシロになったというのか。
3月に行われた金融政策決定会合の議事録に、興味深い事実が載っている。
白井さゆり審議委員が「2014年から始まる無期限の金融緩和をすぐに始める」など、黒田日銀の政策を先取りしたような提案をしていた。ところが審議の結果、多数の委員は「様々な選択肢の一つだが、現状維持が適当」と反対し、提案は退けられた。
一ヵ月後に開かれた黒田総裁の初会合で、ほぼ同じ提案は全員一致で決まった。この一ヵ月で大多数の委員の意見が代わるような市場変動は起きていない。総裁が代わっただけだ。
日銀の政策決定会合も政府の審議会と同じように、官僚が決めた政策を追認する「儀式」で、高名なセンセイたちは「イエスマン」なのか、と思わせる風景である。
今回、副総裁に就任した金融学者の岩田規久男氏は独自の金融論で日銀を批判していたので、これまで審議委員になることはなかった。6人の審議委員は穏当な意見で、日銀の意向に沿う「空気が読める人」が選ばれてきたと思わざるを得ない。
政治主導で白川氏が黒田氏に代わり、委員たちは「空気」を察知したのだろうか。それにしても前月に反対した委員は、今月どんな理屈で賛成に回ったのか。来月公開される4月の議事録が興味深い。
審議委員は官庁の審議会委員と違い、常勤である。日銀の内部関係者によると2000万円前後の年俸が支払われているいう。たんなる名誉職ではない。その実態が「ゴム印を押すだけ」というのでは預金者に対する背信である。
問題なのは御用学者の人格云々でなく、制度を空洞化させるからだ。専門の有識者が決定に加わることで多重のチェックを働かせ、システムのリスクを軽減する。それが委員会方式の使命である。
原発が御用学者によって杜撰な管理に置かれ、取り返しの付かない悲劇を招いた教訓は他人事でない。
審議委員だけではない。銀行や証券会社などのエコノミストやアナリストにも「空気を読む」が広がっている。
「当局に批判的はコメントは出しにくい」と銀行の広報担当者はいう。アベノミクスの危うさを指摘すると、「こんなに巧くいっているのに、景気に冷や水を浴びせるのか」
という批判にさらされる、というのだ。
参議院選挙まで「ともかく景気を」という政権の意向を、金融界は十分に感じ取っている。
「株高や円安など市場が賑わっている時に、敢えてネガティブな見方は出しにくい。自民党が選挙に大勝し、これからも力を持つだろう、ということは無視できない」
銀行の人たちは言う。当局から免許をいただき、理念より利益の金融界は体質的に日和見なのかもしれない。危ないと思いながらも口を拭う金融界の空気が、アベノ日銀を暴走させることにならないか。
責任を負いきれないほどのリスク
第四は、責任を負いきれないリスクを抱えていることだ。
「日銀総裁は原発を運転する電力会社の社長と同じ覚悟がいる」
日銀OBの一人はそう言った。原発のリスクに平然としていた東京電力の経営者は、フクシマで大変な責任を負った。その自覚があるかは不明だが、個人が一生をかけても償いきれない犠牲を社会に与えたのである。
「私の責任で再稼働します」などと首相が言っても、もし事故が起きたら、責任を負いきれるものではない。
日銀総裁も「なにも起こらないで経済が順調に進む」ことが最良の仕事で、狂乱物価やバブル経済を発生させた総裁は、責任を負いきれない打撃を世間に与える。
アベノミクスは政治的野心を伴った政策である。「中央銀行の政治的独立」に疑義を唱え、政治力で金融政策を変えた。
そのとっかかりが「緩和政策」をバナナの叩き売りのように競わせた総裁選びだった。
御用学者や安全神話に寄りかかり、やみくもに異次元にのめり込むことで大丈夫なのか。アベノ日銀は、一見無関係な原発事故から学ぶべきことが多いはずだ。事故が起きたときは手遅れである。
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ゆでガエル!
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