狂気のアベノミクス、マネタリーベースと長期国債
2013-04-06

「マネタリーベース」と「長期国債」4/5 闇株新聞
本日(4月4日)発表された日銀の「異次元緩和」のキーワードです。この2つに絞って解説します。
直感的に「FRB型の金融緩和に近づけた」と考えます。
まずマネタリーベースとは「日銀券発行高」+「貨幣流通量」+「日銀当座預金」のことです。2013年3月の月中平均では、日銀券が82.8兆円、貨幣が4.5兆円、日銀当座預金が47.8兆円で、マネタリーベースは134.7兆円となります(季節調整前).
このマネタリーベースを今後は金融調節の操作目標にして、2013年末に200兆円、2014年末に270兆円(つまり今の倍)にします。
ただ日銀の発表した資料では、2012年末で87兆円だった日銀券発行高が、2013年末に88兆円、2014年末に90兆円にしかならないところ、2012年末で47兆円だった日銀当座預金が、2013年末に107兆円、2014年末に175兆円に急増すると想定されています。
つまり現時点では、積極的な資産買入れ(後述)により供給される資金の「ほとんど全部」が、日銀当座預金に「滞留」することを想定しています。
今まで日銀は、特にFRBと比較して金融緩和に消極的であると批判されていたのですが、FRBも3月28日現在で1兆1776億ドル(112兆円)の紙幣発行に対し、1兆8296億ドル(174兆円)もの準備残高(日銀当座預金に相当)があります。現在の1ドル=95.50円で計算してあります。
つまりFRBも積極的な資産購入によって供給した資金の「かなりの部分」がFRBに準備残高として「滞留」したままなのです。リーマンショック以前は、この準備残高は1000億ドル(当時の1ドル=100円として10兆円)未満しかありませんでした。
突き詰めて考えればFRBと日銀の金融緩和の違いは、このFRBにある174兆円の準備残高と、日銀に47兆円「しか」ない当座預金残高の違い「だけ」なのです。
だからこの当座預金残高を、2年後に175兆円にするのです。数字がほとんど同じなのは偶然ですが、「日銀として出来るのはここまでですよ」と言っていることになります。
次は「長期国債」です。日銀では発行時に1年未満の短期国債でなければ、すべて残存年数にかかわらず「長期国債」と呼びます。「残存年数が長い国債」という意味ではありません。
しかし本日の決定では、この「残存年数が長い国債」をかなり買入れることになりました。
残存年数が3年未満の国債だけを買入れていた「資産買入等の基金」を廃止し、月額1.8兆円の国債を買入れている「通常の国債買入れ」と統合し、合計で月額7.5兆円程度を買入れることになりました。
金額も大幅に増えているのですが、重要なことは従来3年弱だった買入れる国債の平均残存年数を、7年程度まで延長したことです。2013年度に新規発行される国債の平均年数が7年11カ月なので、それに近づけたようです。
その月額7.5兆円の内訳は、残存年数1年以下が0.22兆円、1年以上5年以下が3兆円、5年以上10年以下が3.4兆円、10年超(40年まで)が0.8兆円などとなります。
従来の買入れとの比較は省きますが、「残存年数の長い国債」が大幅に増額されています。この結果、3月20日現在で日銀が保有している94兆円の国債残高(短期国債を除く)が、償還分を考慮しても2013年末に140兆円、2014年末に190兆円に急増します。
因みに2013年度の国債市中発行計画では、2~40年債が合計で118.8兆円新規に発行されるので「国債が無くなってしまう」と心配することはないのですが、それでもその新規発行の42%に相当する国債が日銀に吸収されることになります。
つまり日銀は、あくまでも金融緩和目的では「資金供給の連続線上で短い国債」だけを買入れていた従来型の資産購入を、すべての年限の国債を買入れることに「大転換」したことになります。
これも残存年数30年までの米国国債と長期債であるMBSを積極的に買い入れているFRB型の資産購入に近づけたことになります。ただFRBの主目的が、長期金利(特に住宅ローン金利)を低下させることによる景気刺激なのですが、日銀の本日の決定は、既に十分すぎるほど低下している長期金利を、さらに低下させることになります。
既に本日、10年国債利回りは2003年の史上最低利回りを更新する0.425%となりました。
国債先物価格も夜間取引で146円30銭台となっていますが、これはまだまだ割安で大幅な水準訂正があるはずです。
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※ 解説というわけです。
氏の主張ではありませんので主張は別稿になると思います。
で、FRBの米国は金融は外形的に持ち直っているものの、実体経済は依然としてほとんど回復していません。
また、米国や欧州とは異なる日本特有の基礎的条件があります。
1.日本の国債はGDP比較で米国とは比べられないくらいの巨額を背負っていること。
2.基軸通貨でないために流動性を過激に乱発すると通貨下落によるインフレが非常に起きやすいこと。
3.対外的に通貨信用に陰りがでると「日本売り」に直結すること。
4.企業内労組であるため、労働側の賃上げ交渉力が無きに等しいこと。
といった特有の条件が存在します。
米国のエコノミストは1.2.4をよく理解していないし、欧州のエコノミストは3.4を理解していません。
日本のエコノミストは何派の場合でも共通に、世界汎用の経済論も持ちだす習癖を持っているので、当て嵌めが好きなのですが、それでは通用しないわけです。
労働市場、行政と経済政策、人口構造など日本特有の諸条件をしっかり理解しているエコノミストはあまり多くはいません。
勤労者の立場として言うなら、「賃金所得が上がると物価は応分に上昇するが、その逆、つまり物価上昇が賃上げを促すことはあり得ない」に尽きるわけです。
このことの具体的な解説「家計、企業、政府の共倒れ破綻」を御覧ください。
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狂気のアベクロミクスで日本沈没 4/5 「陽光堂主人の読書日記」から
日銀は昨日、金融政策決定会合を開き、お金の総額を2年間で2倍に増やす新たな量的緩和に踏み切ることを賛成多数で決めました。黒田新総裁は記者会見で、今回の緩和を「常識を超えて巨額だ」と強調していますが、長期国債の購入を約100兆円増やすそうですから、まさに常識外れです。
日銀内ではリフレ派は少数派で、巨額の量的緩和は難しいのではと囁かれていましたが、予想を覆す展開となりました。それだけ安倍内閣の圧力が強かったのでしょう。甘利も出席していましたし…。日銀の独立性など吹っ飛んだ形です。
尤も日銀は株式会社でありながら実質的にはお役所同然ですから、今回の金融政策も見かけ通りではありません。テクニカルな点に興味がある人は、本日付の「日刊闇株新聞」を御覧下さい。
要は、米国のFRBと同様の政策を行なっているわけです。日銀の当座預金残高は、87兆円から2014年末に175兆円に急増すると予想されますが、FRBの現在の準備残高は174兆円で、ほぼ同じ水準となります。偶然だとされていますが、本当にそうなのでしょうか?
日銀は国債の買い入れも大々的に行い、直接買い入れこそしませんが、銀行から買い取るので実質的には直接引き受けと同じです。
その割合は7割ということですから、歯止めが効かなくなっており、非常に危険です。金利が上昇したら膨大な含み損を抱えることになります。
日銀は株式会社で、資本金は僅か1億円しかありません。政府の銀行ですから潰れることはないと思われていますが、損失が拡大したら通貨の信認が失われます。
円の価値が暴落したら、エネルギーなどの輸入も困難になり、国民生活が破壊される恐れがあります。
今後の展開ですが、銀行は量的緩和で積み上がった資金を融資に回さざるを得なくなりました。これまでは国債を購入して利ざやを稼いでいましたが、日銀が7割買ってしまうのでもうその手は使えません。
政府も、銀行に対して融資するよう圧力をかける模様です。(イオンの岡田社長ではないですが、これでは全体主義国家と同じです)
しかし、融資しようにも企業は設備投資に消極的です。それはそうでしょう。国内はこれ以上消費が伸びる余地はありません。
生産人口が減っていますし、皆買いたいものは買ってしまって、購買意欲をそそる商品やサービスは余りありません。
日本国民は、世界で最もシビアな消費者で、価値のないものに手を出したりしません。輸入品も、優れているものしか売れません。米国がどう騒いでも、ポンコツのアメ車など売れるはずがないのです。
そうすると銀行は、個人事業者やサラリーマンに無理やり借金させるしか手立てがありません。
地価が上昇しつつありますから、マンション等の購入を勧めるようになるでしょう。事業者に対しては、節税対策という名目で攻めて来るはずです。
しかし、グローバル経済下では賃金は下がることはあっても上がりません。(もちろん、例外はあります) 無理して資産投資するのはリスクが大き過ぎます。
参院選が終わって消費増税の道筋がついたら、後は野となれ山となれで、金融大崩壊を起こす恐れがあります。
そうなってからでは遅いので、慎重な国民はアベノミクス(アベクロミクス)には簡単に踊らないでしょう。それが正解だと思います。(アベとクロダによる金融緩和ですから「アベクロミクス」とも言われています)
金融ジャブジャブは、お金の価値が失われるということで、何もしなければ損失を被ることも事実です。
過剰な流動性は金利上昇を生みますが、資金が銀行に積み上がって投機にしか使われない状況では、物価は上昇せず、金利も低いままです。
現状では、大半の国民が損失を被ることにます。(いつの時代もそうでしたが…)
それを避けようと、株に手を出す人が多いのですが、外資の餌食になる公算が高く、それを覚悟で臨む必要があります。
一般庶民が損失を出しても、誰も損失補填してくれませんから。
このままではバブルが再び到来し、また弾けることになります。
前回と同じ轍を踏む公算が大ですが、後遺症は一層深刻なものになります。
狂気とも言うべき金融政策で、この国の終わりも近いと思わざるを得ません。
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※ 早速リスクの追い打ち。
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ドル96円前半、国債先物の急落で円買い戻し 4/5 ロイター
[東京 5日 ロイター] 午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点とほぼ変わらずの96円前半。午後、国債先物が急落すると円が買い戻された。ドル/円は96.13円まで下げ、午前に付けた3年8カ月ぶりの高値97.20円から1円を超える下落となった。
ただ、黒田東彦日銀総裁のもとで打ち出された新たな緩和策を受けて円安基調は続くとの見方から、96円前半ではドル買いが入り、ドル/円はサポートされた。
午前には、日銀が前日打ち出した「量的・質的金融緩和」を受けた株高・金利低下が意識される中で円売りが続いた。ドル/円は97.20円まで上昇し、2009年8月以来3年8カ月ぶりの高値を付けた。市場では、黒田東彦日銀総裁の手腕に対する評価から、今後も円買いはしにくいとの見方が広がっていた。
しかし、午後になるとムードは一変した。国債先物が急落し始め、東証は2度にわたってサーキットブレーカーを発動した。ドル/円は96.13円まで急落し、午前に付けた高値から1円を超す下げとなった。もっとも、95円台への下落が意識される場面ではドル買いが流入し、ドル/円は下げ渋った。
大手邦銀の関係者は「前日の金融政策決定会合後に金利が大きく低下してから円売りを仕掛けた向きが、債券が大きく売られたことを受けてポジションを投げた」と話す。主に短期筋が円を買い戻したとみられ、きょうは為替マーケットの流動性が少ない分、値幅が大きくなったという。
この関係者によれば、海外勢は前日、日銀の会合結果を高く評価してリアルマネーを含めて非常に積極的に円を売っていたという。きょうは3月米雇用統計が最注目になるが、この関係者はドル/円が早期に100円を回復するとみている。
前日は米週間新規失業保険申請件数が市場予想より弱い結果となり、円を除く主要通貨に対してドルは下落したが、今晩の米雇用統計への「目線は下がっている」(同関係者)として、市場予想より悪くてもドル安/円高の反応は限られ、円安基調そのものは変わらないとみている。
黒田日銀総裁は5日午前の衆議院議運委員会で、現時点で株・債券はバブルではなく、直ちにバブルが生じるとはみていないとの認識を示したが、午後になると国債先物は急落に見舞われ、前日の日銀会合の結果公表直後から4円30銭近い急騰を演じてきたドル/円も急落を余儀なくされた。市場では、しばらくは値幅の大きい展開が続くリスクがあると警戒する向きが出ている。
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※ 以下は勤労者賃金、所得の再配分と消費増税、デフレに関連するページ。
労働分配率の強制修正
世界で日本のみデフレ
日銀の金融緩和は誰のためか
信用創造と言えば聞こえは良いが
信用創造とは
公務員叩きとデフレ政策
通貨、金利と信用創造の特殊な性質
信用創造(3)無政府的な過剰通貨
デフレ脱却には賃金上昇が不可欠:根津
これからの経済生活はどうなるのか
なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
ゆでガエル!
消費増税でデフレ強行を目指すかいらい政権
日本の労働は封建主義の農奴農民か
窮乏化、3軒に1軒が貯金もなし
逆進課税とデフレ恐慌
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