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もうすぐ北風が強くなる

ドイツ脱原発報告(5)会談・視察3-8、9、10

 ドイツ脱原発報告(4)会談・視察3-5、6、7からの続き。
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   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-8)
   メルケンドルフ村(再生エネルギー電力自給率247%)村長との会談


【村長】
 ポップ

メルケンドルフはアンスバッハ郡にあり、ニュルンベルクから南西に約40km 離れている。人口は約2,900 人で、城壁が完全に残存する古い町である。
 市内には950 人の雇用があるが、その内400 人が再生可能エネルギーに関係するものである。

 再生可能エネルギーによる電力自給率については、データを取り始めた2006年には81%であったが、現在は247%を達成している。
 施設の内訳は、太陽光発電施設が295 箇所、バイオガスが9 箇所、水力が1 箇所である。再生可能エネルギーに関し、国連のアジェンダ21 の取り組みの一環として、周辺の5 つの自治体とエネルギー共同体(Energieforum)を構成している。
 近隣のトリスドルフ(Trisdorf)単科大学も近く参加する予定である。
 同フォーラムでは、地元の企業家、職人が協力して市の公設物のエコハウス化も行っている。

 2005 年にはエネルギーパークを開設し、2006 年に第2 期の工事を実施した。現在は第3 期の工事を行っている。
 エネルギーパークは400 人の雇用を提供しており、パーク内でエネルギーを自給している。

 再生可能エネルギー促進の取り組みとして、2003 年には、当地の企業であるアーノルドグラス社製の太陽光発電パネルを、学校や民家の屋根に設置した。
 2008 年には空き地に太陽追尾機能付きの大型太陽光発電設備を設置し、これにより出力を50%アップし、CO2 排出削減に大いに貢献している。

  バイオガスに関し、2007 年にバイオガス発電の廃熱利用を開始し、熱の利用率を向上させた。熱供給網を通じ、広いエリアに熱を供給している。
 11 月から3月にかけては、バイオガス発電の廃熱だけでは必要な熱量を確保できないのでウッドガスボイラを併用するが、それ以外の時期はウッドガスボイラは不要である。

 その他のエネルギー節約策として、パークアンドライドや照明の高効率化も実施している。
 街灯の25%はLED に置き換えたし、線路脇左右110m は地元自治体に使用を任されている(Buerger-Freiflaechenanlage)ので、ここに太陽光発電パネルを置こうとしている。
 また、将来に向けた取り組みとして、電気自動車用の充電スタンドをトリスドルフ駅に設置し、カーシェリングの実施も検討している。

 住民の意識改革のための各種催しや、学校でのエネルギー教育、更には「エネルギー・アカデミー」と称する職人訓練も行っている。
 エコノミーとエコロジー、伝統とイノベーションは相容れないものではなく、そのためには、まずエネルギー節約とエネルギー効率の追求、そして再生可能エネルギーの開発という手順で改革を進めてゆくことが重要だと考える。
 再生可能エネルギーは地域の価値を創造し、雇用を増やし、所得を高め、税収を高める。さらには、村のイメージアップにつながる。環境に優しく資源を保護し、持続可能社会にも貢献する。

Q.【視察団】太陽光パネル市場では、中国製の廉価販売が問題となっているが、同パネルのアーノルドグラス社は誘致したのか。

A.【村長】同社は1990 年にメルケンドルフに移転してきた。もともと断熱ガラス会社で、今でもガラスを作っている。
 通常のガラスであれば、ポーランドで安く作れるが、同社は特殊なものを作成するノウハウを持っているので、納期を短くできる。
 太陽電池機能を有するガラスについては、大きいものを作るのは難しいが、大型の建造物では1 枚5~6 平方メートルのものが必要。このようなものを製造するノウハウが優れている。
 他に、紫外線を遮るコーティングによって、鳥の衝突を防ぐガラスや、電気的に透明度を調整できるガラスなども製造している。

 メルケンドルフ

 ボップ一同

   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-9)
   「アグリコンブ社」(バイオガス設備)視察


【会社】アグリコンプ社は10 年前に創業したバイオガス専門の会社である。比較的新しい会社であるが、国内のみならず海外への輸出も行っている。
 午前中にもケニアから視察団が来た。同地では、パイナップル果樹園への応用を検討している。
 昨年はカナダでもプロジェクトを立ち上げた。
 再生エネルギー関連産業は急速に伸びており、将来的には自動車産業を超えるのではないかと感じている。
 再生可能エネルギーによる発電量の増加により、夜間電力が余る状況が生じているが、バイオガス発電では、ガス貯蔵により発電を控えることも可能で、電力需要と供給の乖離を緩和することができる。
 必要なときに電力インフラを強化することにより、従来型発電所による予備電力を減らすことができる。

Q.【視察団】バイオガスの原料は何か。

A.【会社】農業廃棄物、食品加工時の廃棄物、植物由来の原料、家畜の糞尿等が利用可能だが、ここでは糞尿と植物原料の混合物を用いている。
 経済的効率性や発電量あたりのCO2 排出量等を考え、それらの混合比を調整する。

Q.【視察団】バイオガスの生成が終わったあとの廃棄物はどうするのか。

A.【会社】農業の肥料にする。100%再利用である。

Q.【視察団】太陽光や風力等の再生可能エネルギーは、蓄電池を用いないとピーク時の対応が困難だと思われるが、バイオガスの場合はどのように発電量を平滑化できるのか。

A.【会社】日単位での平滑化と年単位での平滑化が考えられるが、年単位の方が困難である。
 日単位での平滑化については、ガスの使用量を調整することで発電量を平滑化できる。
 年単位でガスを蓄積することも不可能ではないが、その場合ガスの浄化を行う必要がある。年単位での平滑化には木材のような固形のものが適している。

Q.【視察団】バイオマスとバイオガスはどう違うのか。

A.【会社】バイオマスとは、木、とうもろこし、草などの育つものからエネルギーを取り出すという概念であり、バイオガスは生物由来のものからガスを分離してエネルギーを取り出すという概念である。

Q.【視察団】ゲッペル連邦議員に脱原発に向けた行政・政治・企業の協力についてお話をお伺いしたい。

A.【議員】
 ゲッベル

 かつてキリスト教社会同盟(CSU)のメンバーで原発反対派は私1人だった。
 日本では、脱原発を主唱する貴「国民の生活が第一」党に60名もの議員が賛同されていることを非常に嬉しく思う。
 当地は私の選挙区であるが、再生可能エネルギーでは最も進んでいる町である。太陽光設備のない家はほとんどない。
 脱原発を実現するためには、具体的な可能性を示す必要がある。メルケンドルフはその非常にいい例である。

 現在、時間帯によっては再生可能エネルギーによる発電量が多すぎるという議論がある。
 しかし、既に脱原発への道を歩んできたCDU/CSU にとって、引き返す意思はないし、引き返せば政治的に取り返しがつかない。
 今ほど、自分個人の政策と党の政策とが一致していたことはないと感じている。
 再生可能エネルギーの中でバイオガスは非常に重要である。技術的な問題もあるが、風力や太陽光の役割の隙間を埋めることができる。
 アグリコンプ社は家畜の糞尿を利用する新技術を開発した。農家のすべての廃棄物を利用することを目標としたい。

 メルケル首相はエネルギー転換を必ずやりとげる。
 再生可能エネルギーに反対の動きもあるが、再生可能エネルギーのシェアが25%に達しているということは、市民が従来型の電力会社のシェアを奪ったということに等しい。
 これらのシェアは小さな農家の収入源となる。
 再生可能エネルギーには政治的なパワーがある。
 日本での脱原発政策は間違いなく成功し、あなた方に多くの支援者が集まると確信する。

   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-10)
   「有限会社saferay」太陽光発電施設視察


 セイフレイ

 ベルリン市中心部から車で1時間弱のところにある有限会社saferay の太陽光発電施設を視察した。
 saferay でマネージングディレクターを務めるマルコ=シュルツ博士より施設の案内を受けた。
 この施設は40 ヘクタール(甲子園球場の約40個分)の土地に1年前に建てられた。建設にはすべてドイツの技術が取り入れられ、およそ100 人の人員で2~3か月間の工期で完成した。
 総工費は当時で4,500 万ユーロ(約47 億円)。現在は技術の向上、パネルの普及に伴い、より低価格で建設が可能である。

 施設のメンテナンスは、風雨によりパネルの表面の汚れが落とされるため、清掃の必要がなく、パネルにかぶさるほど雑草が伸びたら刈る程度必要である。
 そのためこの施設で働いている者はいない。
 太陽光発電施設というのは、技術そのものは複雑でないため、短い期間で建設が可能である。例えば100 メガワット規模の施設であれば3か月で完成できる。
 この工期の短さは他の再生可能エネルギー施設との大きな違いである。

 この施設では6,000 戸の家庭に供給できるほどの電気を発電している。
 ドイツは1年を通してあまり天気がよくなく、発電量は1時間あたり1,000 キロワット、1年あたり23 ギガワットである。晴れの日ばかりであれば年間で50 ギガワット発電できる。
 もし日本であれば、同じ設備で35 ギガワット発電できるだろう。
 こちらの施設ではパネルは位置・角度ともに固定である。太陽の位置によりパネルを自動可動させた方が発電量は増えるが、修理等より高度な技術が必要になるため、あえて固定している。

 ドイツの電力供給会社では、太陽の影響を大きく受け、電力供給が不安定な太陽光にはあまり頼らない傾向にある。
 しかしドイツ人は自然への関心が大きく、風力発電は風車が景観を損ねるとして疎まれている。そこで太陽光に目を向けてもらうため、様々な努力をしている。
 その一つとして、この施設では大きなパネルとパネルの間を空け、施設内に住んでいる生物の生態系を守るようにしている。

 最後に、日照時間が長い日本では、太陽光発電が最も合った発電の一つであると推奨された。
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 ドイツ脱原発報告(6)小沢代表記者懇談へ続く
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