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もうすぐ北風が強くなる

ドイツ脱原発報告(4)会談・視察3-5、6、7

 ドイツ脱原発報告(3)会談・視察3-1、2、3、4からの続き。
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   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-5)
   ブーリング・シュレーター連邦議会環境委員長との会談

   同席:ヘーン緑の党連邦議員・院内総務代行、マイヤーホーファー自民党連邦議員

Q.【委員長】
 シュレータ

 まず、東日本大震災の被災者の方にお見舞い申し上げる。
 福島での原発事故は制御不能のものであり、これが独の考え方にも大きな影響を及ぼし、脱原発及び再生可能エネルギー促進への流れがさらに強まったと言える。
 福島の原発事故からは独も学ぶべき点が多かったが、日本の政策の今後のあり方について伺いたい。

A.【視察団】東日本大震災の被災者の方に対するお心遣いに感謝申し上げる。
 我が党は与党民主党から分離して結党し、10 年後の脱原発を掲げている。日本では福島原発事故が起こったが、脱原発の期限を明示しているのは我が党のみである。
 政府はまだ原発を稼働させる方針であり、野党の自民党も同様の立場である。
  他方、国民の間では原発に対する不安は強く、これを踏まえて我が党として10年後の脱原発を実現させたい。
 今年の夏は記録的な猛暑であり、国内の原発は2基しか稼働していなかったが電力不足にはならなかった。
 このように国内では十分な発電能力はあるが、石油やガスはコストがかかる上、CO2 排出問題があるので、今後はクリーンエネルギーを促進させたいと考えている。

Q.【視察団】独は既に2022 年までの脱原発を決定しているが、議会における政党間の議論や今後の方向性を伺いたい。

A1.【委員長】独政府は、野党の反対にもかかわらず2010 年のエネルギーコンセプトにおいて原発稼働延長を決定した。
 しかし、福島の原発事故を踏まえ8 基の原発を停止し、その後2022 年までの脱原発を決定した。
 与野党間では、再生可能エネルギーによる電力の送電網、電力価格上昇への対策、蓄電技術開発コスト等様々な議論がなされているが、2022 年までの脱原発そのものについては全会一致である。
 世界各国は独における脱原発の行方を注目しており、独としてもぜひこれを成功させねばならない。
 こうした状況を踏まえ、高度な技術を有する日独両国は協力し、再生可能エネルギー促進といった分野で協力していきたい。

A2.【自民党議員】
 マイヤーホーファ

 独議会における脱原発のコンセンサスを確立するまでには長い時間がかかった。
 一時は原発稼働延長という方針を決定したが、政府として,福島原発事故を踏まえ右方針を変更する必要性に迫られ,電力会社に対する補償問題等に対応することとなった。
 また、再生可能エネルギーについては、風力、太陽光、バイオマス等様々な技術があるが、どの技術を選択するのか、これに加えコストの問題もある。電力価格については賦課金が5.3 セントkWh に上昇することが見込まれるが、最終的には国民の理解を得られると考えている。
 日独両国は高度な技術を有しており、再生可能エネルギー分野での協力を強化し、輸出国として成果を得られるようにし、他国の手本となるよう努力したい。

Q.【緑の党議員】
 ヘーン

 貴議員団の訪問を歓迎する。民主党から分離した貴党は、市民のことを第一に考え、脱原発に関し一貫した態度をとっており、脱原発という国民の立場をしっかり代表している。
 自分(「ヘ」院内総務代行)は最近数回にわたり日本を訪問し、東京や京都での脱原発デモに参加した。
 再生可能エネルギーは経済的なポテンシャルを有する分野であり、独は約40 万の雇用を創出しており、海外からの石油やガスに依存する必要もない。
 日本の状況については,海岸線が長いので風力発電を実施しやすいし、日照時間も長く太陽光促進のポテンシャルがある。地震は多いが、地熱の開発可能性も高い。
 こうした状況を踏まえると、日本は再生可能エネルギー促進のための環境が整っていると言える。 他方、日本の原子力産業、経済界、メディア等原発促進勢力は強力であるが、貴党として脱原発を進める上でどのような戦略を考えているのか。

A.【視察団】いわゆる原発村の力は強大であり、これを踏まえ日本政府は依然として原発利用を継続しようとしている。他の野党も脱原発の期限を明示して反対していない。
 ただし、福島の原発事故以降6 割の国民は脱原発を支持しており、その数は今後増加すると考えられる。

Q.【視察団】我が党としては、近く実施される衆参議院選挙で国民の支持を得て脱原発を実現したい。
 また、再生可能エネルギーにより電力需要を十分カバーできると考えており、その参考とするためにも独の戦略を伺いたい。

A.【委員長】独には4 つの電力大手が存在するが、2010 年のエネルギーコンセプトで原発稼働期間が延長されたことからも業界の強さが理解できると思う。
 脱原発及び再生可能エネルギー促進を実現するために重要なのは、そのための法的枠組みを作り、政権交代が起こっても政策が逆戻りしないようにすることである。

Q.【委員長】日本の政策について伺いたいが、実際には原発がなくとも電力を十分供給できているにもかかわらず、核兵器に転用できるプルトニウムが発生する原発をなぜ利用するのか。

A.【視察団】ご指摘のとおり、今年の夏は記録的な猛暑だったが、原発を2 基しか稼働しなくても電力供給は可能だった。
 他方、原発を停止した分の電力供給を賄うために石油や石炭による火力発電のコストが上昇し、当面は電力会社や経済界は経済的に厳しい状況に直面している。
 プルトニウムについては、確かに日本にはかなりの分量があるが、これを核兵器に転用するとの意見は少数派にすぎない。

【緑の党議員】独における再生可能エネルギー促進の成功の鍵は再生可能エネルギー法(EEG)であり、日本でもこの夏に導入されたと承知している。
 独では再生可能エネルギーを生産した者から電力を買い取り、20 年間買い取り価格を保障している。
 これは、大規模な発電会社から小口の発電企業にも幅広く売電の機会を提供するという民主的な政策である。
 地方公共団体や私人等を含めて100 万か所で発電されており、特に個人の発電施設への投資に必要な資金を地元の銀行が貸付け、農業従事者が土地を貸すという流れが上手くつながれば、大きな価値を生み出すことになる。

Q.【視察団】本日説明頂いた議論の内容を日本に持ち帰り、ぜひ日本で脱原発を実現する参考にしたい。最後に確認するが、独は議会の全ての党派が脱原発に賛成と理解して良いか。脱原発という点でいずれの党と今後協力していけるかについてお伺いしたい。

A.【委員長】方法の詳細については意見の相違はあるが、脱原発という方向性については概ね一致している。
 我々は本日のような形も含めて,脱原発に関して日本側といつでも情報・意見交換等を通じて協力していく用意がある。

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  小沢ヘーン


   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-6)
   ボレイ・ドイツ商工会議所エネルギー気候政策課長との会談


【課長】
 本日は皆様をお迎えできることができ、大変光栄である。
 脱原発政策をめぐるDIHKの考えを述べさせていただく前に、まずは貴国の優秀な技術者たちの尽力により、福島原発事故以降も日本で停電が起こらなかったということに敬意を表したい。
 独では同じような状況に陥っていたならば、おそらくそのように対処することはできなかったであろう。あの時の対応は、日本の技術力と市民の協力の証明であったと言えよう。

Q.【視察団】
 本日は時間を割いていただいて感謝申し上げる。
 我々の政党は3ヶ月前に現政権と袂を分かった形となるが、この新党の最重要政策課題としているのが脱原発政策である。
 残念ながら福島原発事故にもかかわらず、日本では与野党ともに原発の再稼働、更なる推進を主張しているのが現状である。事実上の国民の反対により原発の稼働が停止されている中、今年は猛暑であったがそれでも東京での停電などは起こらなかった。 
 他方、不足する電力を火力発電で補うためのコストがかかっていることやCO2排出削減の観点からも様々な議論がなされているが、原発については仮に事故がなかったとしても、放射性廃棄物や最終処分等に要する時間とコストは大きく、また事故が起こった場合には更なる膨大なコストが必要となり、人命が危険にさらされることを考慮すれば、我々としては脱原発という決断が正しく、将来の国と国民にとって大切なことと考えている。
 独では2022年までの脱原発の方針が決定され、再生可能エネルギーへの取り組みがなされているが、そこに向けた議論、実施されている措置、そして課題などについて商工会議所からお聞きし、我々の政策を検討してきたい。

A.【課長】
(1)まず脱原発後の独における電力状況について説明すると、昨年に停止された8基の原発はハンブルク周辺及び独南部に集中していたことが分かる。
 また、100メガワット以上の発電所の情報に注目すると、独の工業の中心地域と言える南部では未だ稼働している原発が多く所在しており、2022年に原発が無くなった時には南部において電力供給の不足が生じることになると予測される。
 ここにおいて日本と独とで大きく異なるのは、独は他国から電力を融通できるという点であり、必ずしも使用する分の電力を自国で発電しなければならないというわけではない。
 しかし、それでもなお2022年に原発ゼロを目指すのは難しい課題であることは確かである。

(2)DIHKが会員企業に行った2012年1月のアンケートの結果を紹介させていただくと、エネルギー価格が上昇したと回答している企業は86%に上っている。
 もっともこのエネルギー価格の上昇傾向自体は福島原発事故以前から存在していたものではあるが。また、58%の企業が電力供給の安定性に関するおそれを抱いていることが分かる。
 この二つの問題については、脱原発という決定が企業の懸念を助長することになったと言えるであろう。

(3)他方、今後どのように対応していくかの点については、企業が単に受け身となるだけではなく、自分から主体的に活動しようとしている傾向が見て取れる。
 まず、エネルギー効率の向上を図っている企業は75%に上る。また、我々にとっても驚きだったのは29%の企業が自家発電の能力を備えようとしていることであった。
 この点については、再生可能エネルギーによる発電は追加的な設備増強が比較的容易となっていることも大きな要因と言えよう。
 すなわちエネルギー価格の上昇の中、太陽光をはじめとする発電施設のコストが安くなってきていることから、自家発電を進めていくことのインセンティブが生じてきていると考えられる。
 また、7%の企業からは、生産施設を国外へとシフトするとの回答があった。

(4)更に企業が求める要望として挙げられていたのは、まずEUの共通電力市場の促進であり、4分の3以上(76%)の企業が要求していた。
 独だけの電力市場だけではなく、EUレベルにおいて、より値段が安い電力を自由に取引できるようにすべきというものである。
 また、二つ目に重要な点としては、電力価格、中でも賦課金などによって課せられるコストの低減に関する要望であり、3分の 2(64%)の企業がこれを求めていた。

(5)電力自由化以降の1998年からの電力価格の推移をみると、本来の電力の値段に追加負担として課されているコストは2012年までに約10倍にまで膨れあがっている。
 特に負担が大きいものとして電力税(約70億ユーロ)、そして再生可能エネルギーに係る賦課金(約140億ユーロ)であり、賦課金の額は来年には200億ユーロ以上に上ると予測されている。
 これらの追加負担の結果、独の電力価格は仏の1.5倍以上となってしまっている。
 米国などは仏よりも更に安い電力価格であって、生産過程における設備の自動化の進展に伴い、電力需要が増大する中、これは独の国際的な競争力の観点から大きな問題である。

(6)これらを踏まえ、日本が何を独から学べるかと考えたならば、まず一点目として明確な計画の策定と提示であり、この計画は政権が変わっても維持されるべきであると考える。
 独においても2000年時点で脱原発政策を決定した当初は多くの人々がすぐに原発維持路線に戻ると考えていたため、新たな天然ガスを利用した発電設備への投資が遅れることとなったという反省点がある。

(7)また、2番目として、日本は否応なく一度に原発を停止するという状況となったわけだが、本来のエネルギー供給安定化の観点からは同じスピードでゆっくりと、例えば一年に一基停止というような形で進めるべきではないかと考えられる。
 独においても2022年までの目標達成にあたっては、様々な問題を抱えている。

(8)3点目となるが、そのうちの再生可能エネルギーの拡大について日本は独と同じ固定価格買取制度というやり方を導入したと承知しているが、独においてはこの手法による太陽光への過剰助成が大きなコストの上昇を招いてしまった。
 この影響は20年に亘って残るし、年間200億ユーロものコストと言われている。固定価格制度の早期廃止という議論も出ている現状である。

(9)4点目として、送電網の拡充に関し独において問題となっており、おそらく日本でもそうであると思う。
 助言として申し上げるならば、送電網の整備については国家レベルの権限において政策として進めていく必要があると考える。
 独では送電網の整備に10年以上要すると言われており、その原因の一つは独が分権的な国家であり州の権限が強いという所にある。
 最初から国の単位での送電網整備を進めていくことをお薦めしたい。

(10)また、5点目としては、エネルギーの全体的なバランスを踏まえた市場デザインをまず描くことが重要である。
 独においては脱原発への急激な決定に対して充分に議論することができず、DIHKとして全体としては賛成であってもいくつかの点において課題があると感じている。
 小沢代表も述べられたとおり、核廃棄物処理や最終処分場の問題についてはまだ最終的な決定は得られておらず、それに要するコストも産業界が負担することを余儀なくされているのが現状である。

(1)ドイツ産業界の脱原発への反応等

Q.【視察団】日本商工会議所は脱原発に反対の立場を示しているが、独においてはそのような意見はなかったのか。

A.【課長】福島原発事故までは産業界は原発の稼働期間の延長を求めてきていた。
 しかし、事故以降、現在では産業界において、多少異なる意見もあるものの、既に脱原発という決定に関するコンセンサスが存在していると考える。
 日本の産業界のように、一度に原発を無くすことにつき反対するのは理解できるが、全般的に反対という立場は自分としては理解できない。重要なのはその過渡期をどのように乗り越えていくかである。

Q.【視察団】産業界でも色々異なると思うが、競争力の維持の観点からは大口の需要家に対する優遇措置も行われていると承知しており、その点において利害調整などはどのように行われているのか。

A.【課長】その質問はまさに痛いところを付くものである。独でのコスト負担に関し、例外や特別規定が存在しているのは確かである。
 先般、電力料金に関する内容だけで35ページに上る報告を作成したが、それほど複雑な状況となっている。再生可能エネルギー法に基づく賦課金においてもこの例外規定は大きな効力を有しており、目下約2000の企業が電力を大量に要するという理由から同法に基づく優遇措置を受けている。
 これらは主に鉄鋼、セラミック、化学産業などであり、その措置のおかげで仏との比較においても電力価格の格差はまだ50%で済んでいるといえる。
 しかしながら、これらの企業は独の約13万の企業の中のほんのわずかなものでしかない。独が金融危機の影響からいち早く抜け出せたのは、鉄鋼、アルミ、銅など幅広い産業が独国内に立地し、蓄積してきていることによるものであり、大企業が海外にシフトしてしまった場合には、それに不随して関連する産業、サービス産業などにも大きな影響が及ぶことも事実である。
 他方で、その負担を実質的には中小企業が担わなければならなくなっているという面もあり、様々な意見が存在する。

(2)原発廃止ペースについて

Q.【視察団】ボレイ課長の考えの大半につき共感を有するものの、一点だけ考えが異なるものとして、1年に1基というペースでの原発停止という提案であり、そのやり方では日本では50年を要することになる。
 我々の党としては、独と同じく2022年には原発をゼロにと考えており、日本では独と比べ再エネの導入は遅れているものの、高効率のLNG火力発電において先を行っているため、このLNGを用いたコンバインドサイクル発電によって、過渡期の10年間で代替しようと考えているが如何。

A.【課長】早期の脱原発という考えに対立する意図はなく、1年に1基というペースも独の残りの原発が9基となっているところから、あくまで例として示したに過ぎない。
 しかし、現実として昨年停止した8基は老朽化した原発であって、現在稼働している9基の発電量とは比較できない。仮に残りを一度に停止したならば、独は今年の冬を乗り越えることはできないだろう。
 自分は日本の事情はわからないが、日本の電力消費、人口、GDPは独よりも多いため、それらを考えた場合のペースについては独とは異なる前提となるため、何基ずつ止めていくのかというのも産業界の意向にもよると考える。
 (これを受けて、松崎副幹事長より、日本の電力事情を考慮した上で代替エネルギーの導入を考えていくべきと思っているが、日本での水力以外の再生可能エネルギーの比率は1.4%程度であり、LNGの活用等で産業界ともよく議論していきたいと考えていると述べたところ、)
 産業界との対話は独においては不十分であったという印象を持っている。しかしながら、日本においても脱原発が可能であるという点については、自分としても異論はなく賛成できる。

(3)企業の国外移転について

Q.【視察団】アンケートの結果を拝聴した限りでは、多くの企業がエネルギー効率化に向けた投資や自家発電への可能性を示しており、海外への生産拠点の移転を考えている企業も7%に過ぎないことから、自分の印象として独企業はエネルギー転換につき、エネルギーの自給自足化及び新たな投資を通じてEU経済をリードしていくという観点から、むしろプラスと考えているように思われるのだが如何。

A.【課長】その見方には少し異義があり、7%の企業が移転の可能性を示唆していることは、必ずしも少ない数字とは言えないと考えている。
 この数字はエネルギー転換に向けたプロセスのまだ最初の段階でのものにすぎず、来年には電力コストの大幅な上昇が予測されている中、今後上昇していく可能性は高い。独企業の中には、独に拠点を維持しつつも、実際の投資の対象は海外に移していくという傾向も存在しており、投資が独ではなく、海外に流れていくという可能性は小さくない。
 また、29%の企業が自家発電を行っているという点についても、必ずしも企業が望んで行っているわけではなく、危機的状況に置かれてやむを得ずそれを強いられているという面も存在する。
 自家発電も原発の代替になるわけではなく、仏などの国に比べ、競争力の観点で不利な立場に置かれることへの懸念が解消されるわけではない。
 他方で、エネルギー転換に伴う風力発電などの拡大を通じて、鉄鋼、銅産業などの従来型の産業においても新たな需要が増大しているという面も存在する。
 今年の末までには、それらも踏まえた最新のアンケート結果を発表したいと思っている。

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   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-7)
   エッセンバッハ町(原発立地自治体)町長との会談


ヴィットマン

(1) エッセンバッハ町長との会談

Q.【視察団】我々「国民の生活が第一」の議員は、与党、民主党に所属していたが、政策の違いから7 月に与党を離れて新党を結成した。
 福島第一原発の当事者国である日本において、期限を区切って脱原発を実現すべしとの政策を掲げているのは、我々の党だけである。
 この政策を実現する上で参考とするため、2022年の脱原発を決めたドイツにあって、原発が立地するエッセンバッハの様々な課題や取り組みについてお伺いしたい。
 私自身の選挙区には、世界最大の柏崎原発が立地しており、脱原発後の産業政策は重要であると感じている。

A.【町長】喜んで協力したい。まずは、エッセンバッハについて簡単に述べる。
 同町は人口1 万1 千人を少し超えており、面積は84 平方キロ。34 年前に6 つの自治体が合併してできた。規模は小さいものの、幼稚園、小学校、デイケア等、生活に必要なインフラは全てそろっている。
 地域全体の75%が農地であるが、経済圏としての立地は優れている。25 年前から、積極的に企業の誘致を開始しており、中小企業が多く立地する。
 これにより、農業以外に4 千人を超える雇用が確保されている。地方都市としては失業率は低く、2~3%程度である。

 同町には、バイエルン州の主要な原子力発電所であるイザール発電所が立地し、2 基の原子炉がある。
 1 号機は77 年、2 号機は88 年に稼働を開始した。1 号機の出力は、ほぼミュンヘンの消費電力に相当する。1 号機は、昨年稼働を停止した。
 停止の数ヶ月前に、稼働延長が決定されたところだったが、福島の事故により2022 年までに脱原発を実現することが決定され、稼働を停止することとなった。
 2 号機は、2022 年に稼働を停止する予定で、ドイツ国内で1 番最後まで稼働が続くことになる。
 使用済み核燃料の中間貯蔵施設については、40 年間の使用が許可されているが、その後即ち、最終処分場の問題がドイツでは最大の問題となっている。

Q.【視察団】ドイツの原発立地地域を訪問できて嬉しく思う。
 日本では、原発が立地する自治体が脱原発に懸念を示している。エッセンバッハの税収のうち、原発関連のものはどの程度か。

A.【町長】エッセンバッハには負債がない。
 税収の内事業税が占める割合は比較的高い。
 事業税の多くは原発関連のものだが、税収には変動がある。事業税は当該企業の原発に伴う利益ではなく、同企業グループ全体の収益から算出される。イザール原発を運用するE.ON 原子力社の本社はハノーヴァにあるが、発電所の立地地域が徴収する事業税は、従業員の給与等に関連するある比率で配分される。
 ちなみに、2011 年は同社が連結決算で利益を上げられなかったため、原発関連の税収はない。
 バイエルン州にある2,056 の自治体の中で、原発が立地するのは3 つの自治体のみである。それ以外の自治体は、原発がなくても生き残れる。

 我々は、脱原発の動きを左右することはできない。
 脱原発政策は、福島での事故の後、急遽政治的に決定された。2022 年までの猶予はあるが、それまで再生可能エネルギーを大幅に拡充する必要がある。
 ドイツでは化石燃料への依存が高く、例えば発電量の40%を石炭から得ている。原発をとりまく状況変化に対応すべく、町議会でもエネルギー転換に取り組んでいる。
 例えば、再生エネルギーを普及させるための公社を設立し、市民組合もできた。高速道路の遮音壁に沿って2kmにわたり、合計2MW の太陽光パネルを設置した。再生可能エネルギーの普及には、適合性の調査も必要。バイエルン州政府は、2020 年までに1,500 基の風力発電機を設置することを計画しており、風力発電の適否も調査中であるが、
(1)エネルギー転換のコンセプトが固まっていないこと、
(2)それほど急速な設置ができるか、
(3)配電網の整備が間に合うか
等の問題を考えると、個人的にはあまりに大胆な構想だと思う。エネルギー転換に対する批判もあるが、関係者は皆対応のために努力をしている。

 再生可能エネルギーについては、利用拡大だけではなく、電力系統の整備も必要。
 化石燃料には限りがあるので、長期的にはエネルギー転換は避けられない。ドイツはエネルギー転換の加速に向けて、根本的な政策転換を実現したが、欧州内には脱原発に対する姿勢が十分でない国もある。
 その結果、ドイツが孤島になる可能性はあるが、この決定はもう引き返すことはできず、再度方向転換することはあり得ない。
 エネルギー転換そのもののは問題でないが、電力料金の大幅な値上げなく実現することが重要。

Q.【視察団】日本では、原発が立地する自治体に対し、電力会社の収益に対する税収ではなく、原発が存在すること自体に対して税収が入る仕組みがある。
 したがって、原発がなくなると、その税収が全てなくなってしまう。そのため、原発が立地する自治体の住民には、原発を残したい人が比較的多い。
 ドイツでは、原発が存在すること自体に対する自治体への交付金はないのか。

A.【町長】原発がなくなれば、税収が低下するのは確か。
 エッセンバッハは最も税収が高い自治体の一つだが、原発がなくなることにより、他の自治体と同程度の水準になるかもしれない。
 しかしながら、他の分野の税収により、自治体が破綻する心配はないと考えている。
 原発が廃炉になった場合、代わりとなる企業を誘致しないと負債を抱えることになるかもしれないが、エッセンバッハには財政が良かったときに蓄積した準備金が財政上十分な猶予を備えており、現時点では税収が下がることをそれほど心配していない。
 太陽光発電装置の設置には、多くの初期投資が必要。それでも、電力買取制度を利用すれば、大きな収入を得ることができる。
 エネルギー転換について文句を言うのでなく、自ら手を打ってエネルギー転換を自分の手で進めるべきと考えている。

Q.【視察団】地元の住民から原発撤退に反対する運動や意見はないのか。

A.【町長】近隣地方の人から批判を聞くことはあるが、地元からの反対はない。
 今、700 人の雇用を産んでいる原発に関する仕事は稼働停止後もすぐなくなる訳ではなく、電力会社は社会的に問題とならないよう、解雇ではなく新規雇用の抑制という形でリストラを行うと予想されるが、少なくとも若い人には職のチャンスが減ることになる。

Q.【視察団】日本だと、議会や市長が原発の廃炉に反対している。当地ではそのような動きや気持ちはないのか。

A.【町長】原発をかかえる自治体の町長や市長にも、色々な考えを持った人がいる。
 エネルギー政策の転換が急に決まったことに対する批判はあるが、自治体レベルではどうしようもないことなので、できることをやろうというのが多くの自治体の考えではないか。

Q.【視察団】脱原発に対し肯定的に反応し、自然エネルギーの普及に皆で取り組んでいることに感動した。
 ドイツの人は脱原発と再生可能エネルギーをワンセットで考えている。日本にもこのような動きを呼びかけて欲しい。

A.【町長】再生可能エネルギーへの転換は簡単ではない。電力価格は間違いなく上昇する。
 再生可能エネルギー法により、来年は1kWh あたり1.4 セント電力価格が上がる。ただし、電力価格は原発を使っている時期でも常に上がってきた。
 いずれにしてもコストなしのエネルギー転換は無理。

Q.【視察団】中間貯蔵施設の許可期間は40 年とのことだが、その期間が過ぎたあとはどうなるのか。

A.【町長】中間貯蔵が始まったのは4~5 年前。許可期間はそれから40 年である。
 全ての原発が停止した後、20~25 年も中間貯蔵を継続しなければならない。その間に最終処分場の問題が解決しないことを懸念している。
 ドイツで原発が稼働を開始した77 年(ママ)には既に中間貯蔵施設は機能していたのに、その後最終処分場について進展がない。自分(「ヴ」町長)はそこを批判したい。
 最終処分の問題は政治的には取り上げたくないテーマで、どの自治体もうちには来ないで欲しいと思っている。
 しかし、最終処分場については、どこに作るのかを決めてから建設まで15~20 年はかかるので、無言のうちに、中間貯蔵が最終処分になることを心配している。

Q.【視察団】中間貯蔵施設があることに対して、固定資産税のような税収はあるのか。

A.【町長】中間貯蔵施設を有することによる税収は全くない。

Q.【視察団】中間貯蔵施設は現在稼働しているのか。

A.【町長】稼働している。使用済み核燃料をカストールと呼ばれる容器に入れて、更に複数のカストールをコンクリートで覆った状態で貯蔵されている。
 使用済み核燃料はまず数年間冷却し、落ち着いたところで容器に入れて中間貯蔵し、そこで更に放射能を減衰させて最終処分場に移動するという考え方である。
 昔は集中的な中間貯蔵施設があったが、メルケル首相が環境大臣のころに使用済み核燃料の移動を禁止する法律が制定されたことにより、各地に中間貯蔵施設を作らざるを得なくなった。

Q.【視察団】中間貯蔵施設は原子力発電所敷地内にあるのか。

A.【町長】発電施設のすぐ隣にある。

Q.【視察団】日本では、原発があることに対して、国から自治体に交付金という支援がある。自治体は、原発がなくなることで、交付金もなくなるのではないかと心配している。
 ドイツでは、そのような心配を払拭するための支援をしているのか。

A.【町長】原発の立地について補助はなく、財政上の利益は事業税のみである。
 この税収がなくなっても、「今まで事業税で潤ってきたではないか」ということで、国からの保証はいずれにせよないと予想している。

Q.【視察団】住民から原発を止めろとの要求はなかったのか。

A.【町長】そういう批判もあった。月曜日に住民からの反対デモが行われていた。デモがあっても人数は少ない。原発反対運動は昔からあるが、他の地域に比べても反対の声は少ないと感じる。

Q.【視察団】反対運動の主体は、地元なのか。

A.【町長】反対運動の大部分は、地元以外からきている。

Q.【視察団】日本では、原発は嫌われるので、国は自治体に補助金を出している。電力会社も自治体の財政に貢献している。原発をやめると、これらのお金が全部なくなることになる。
 そのため、原発が立地する自治体から脱原発反対の声が上がる。町長として、このような動きにどのような感想を持たれるか。

A.【町長】そもそもドイツと日本とはシステムが異なる。日本では、国からの補助金が自治体に直接入るが、ここでは事業税を通じて間接的に税収を得るため、原発があれば確実に税収が入るという訳ではない。
 現に2000 年から2003 年までは、原発から全く事業税が入らなかったが、そのために国から何らかの保証があったわけではない。
 これは、BMW が赤字になって工場からの事業税が入らなくなったからといって、その保証を国に求めることができないのと同じである。

Q.【視察団】ドイツが脱原発で孤立するとの可能性については、よく理解できる。
 ドイツだけ脱原発を実現しても、隣国に原発があれば結局原発の影響は免れない。これについて、ドイツ国民はどう思っているのか。

A.【町長】もちろん心配している。
 福島原発での事故の後、欧州全体の原発でストレステストが行われ、その結果が公開された。その結果、多くの原発の状態が、ドイツであれば即停止となるほど悪いことが判明した。
 原発の安全性については、他国が危険な状態を放置すれば、ドイツだけ脱原発を実現しても効果はない。例えば、チェコとの国境付近の原発で事故があれば、南ドイツは大きな影響を受ける。
 脱原発は高く険しい道のりであるが、誰かが始めなければ世界中で認められるようにはならない。

Q.【視察団】日本でも5~7 月まで原発の稼働はゼロであった。与党、民主党は脱原発を決めかねている。
 夏に原発ゼロでも大丈夫であったように、法的に脱原発を確定したい。日本は水力以外の再生可能エネルギーの割合が1.4%しかないが、ドイツは昨年20%、今年25%(水力含む)であると聞いている。
 再生可能エネルギーを増やすのは難しいかもしれないが、日本もこれから増やしていく。脱原発は待つのではなく、誰かが始めなければならない。
 天然ガスのコンバインドサイクル等効率の高い設備を用いれば、化石燃料を用いてもCO2 を低く抑えることができる。再生可能エネルギーが十分広がるまで、ガス発電所の増設により、脱原発を実現したい。
 脱原発を考える上で、電力の自由化、そして「発・送」電の分離が必要。ドイツでは2004 年に自由化されたと聞いているが、日本では10 社がそれぞれの地域を独占している。
 ドイツでは、4 大電力会社で70%、20-30%は各自治体のエネルギー供給会社が電力を供給していると聞くが、エッセンバッハの自前の電力会社の状況はどうか。

A.【町長】公営供給会社(Stadtwerk)との関係では、たしかにE.ON の電力シェアは大きいが、再生可能エネルギーについては、95~100%が、E.ON 社ではなく同公営供給会社からの供給となっている。
 町自身は発電会社を持っていないが、周辺自治体が共同で「地域供給会社」(Regional Versorger)を有し、供給を目指している。

Q.【視察団】イザール原発でこれまでに事故はあったか。

A.【町長】大きなものはない。報告義務違反があったが、事故の重大性を示す0~7 までのランクの中でレベル1 に相当する。E.ON 社の報告は率直であったし、稼働についての不安は感じなかった。
 原発職員も責任感のある有能な人材ばかりである。

Q.【視察団】事故の防災訓練を行っているか。

A.【町長】エッセンバッハが属するニーダーバイエルン県主催で、ある程度の関係者向けの対応訓練を行っており、定期的な演習も実施されているが、対象は住民全体ではない。
 住民は事故後の対応について理解をしていない。

【視察団】「誰かが始めなければ始まらない。再生エネルギーの拡大に貢献したい。」 という町長の言葉に感銘を受けた。
 脱原発を必ず実現する勇気をもらった。感謝したい。

【町長】個人として日本の国民がどのように反応するのか関心がある。
 地震が多いという自然環境により、ドイツより条件は困難だと思う。エネルギー転換は簡単でなく、忍耐も必要。
 ご成功をお祈り申し上げる。

エッセンバッハ

(2)イザール原子力発電所立ち寄り

イザール原子力発電所インフォメーションセンター(Infozentrum)のJohann Seidl 広報課長より簡単な説明を受けた後、同インフォメーションセンター内の 各種展示を自由に視察した。
 ーーーーーーーーーーーーー
 ドイツ脱原発報告(5)会談・視察3-8、9、10へ続く。
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