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もうすぐ北風が強くなる

ドイツ脱原発報告(3)会談・視察3-1、2、3、4

 ドイツ脱原発報告(2)総括からの続き
 ーーーーーーーーーーーーーー
   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-1)
   アルトマイヤー連邦環境・自然保護・原子力安全大臣との会談


 アルトマイヤ
 
  (1)独における脱原発政策等

Q.【視察団】民主党から独立して結党した国民の生活が第一は、10 年後の脱原発を党是として掲げており、与野党を通じて脱原発の年限を明示しているのは我が党のみである。
 独政府は2022 年までの脱原発を決定したが、独政府としての立場をお聞かせいただきたい。

A.【大臣】新党結成をお祝い申し上げる。
 自分(「ア」大臣)は再生可能エネルギー等の分野における日独交流強化に大きな関心を抱いており、貴代表一行の来訪を歓迎する。
 福島の原発事故後、独では2022 年までの脱原発が決定されたが、この結論に達するまでに過去30 年にわたる様々な議論があった。
 現在では独国民の80%が脱原発を支持している。2022 年までの脱原発は段階的に進めることとなっており、代替エネルギー源として再生可能エネルギーを拡充するとともに、環境への負荷を考慮した政策を進めていく。
 日独両国は高度な技術を有しており、再生可能エネルギーの開発で協力し、国際市場における競争力を強化していきたい。

Q.【視察団】脱原発の取組みに関し、日本では脱原発は不可能であるとの意見もあるが、我が国へのご意見があれば伺いたい。

A.【大臣】独においては脱原発は可能である。
 電力消費に占める原発の割合は約25%であったが既に8 基の原発を停止することができた。安定的なエネルギー供給は確保できている状態であり、ネットで見ると独はエネルギー輸出国である。
 また、再生可能エネルギーに投資してきており、電力消費の約25%を占めるまでになった。その他はガス、石炭等でカバーしている。
 電力価格については、少なくとも産業界の負担はそれほど多くはなっておらず、過去数年の傾向を見ても10%程度低下している。
 これらを踏まえれば、脱原発は経済的にも技術的にも可能である。

Q.【視察団】確かに独はネットではエネルギー輸出国と言えるが、電力不足の時には仏からの原発電力を購入しており、独の脱原発は仏に依存しているとの批判もあるが、貴見如何。

A.【大臣】欧州は共通の電力市場を有しており、独仏間で電力を売買しているが、独から仏への電力輸出の方が多い。
 特に仏では冬の暖房に電力を使用するので電力不足となり、輸出できる状態ではない。
 また、欧州全体として原発を制限する傾向にあり、例えば仏は電力消費に占める原発の割合を75%から50%に削減する方針を決定しており、スイスやベルギーでも原子力を削減していく政策を進めている。

Q.【視察団】独の脱原発は10 年後としているが、なぜ即時停止ではないのか。
 また、欧州において独がより早く脱原発を進めるのはなぜか。

A.【大臣】独における脱原発は2 段階に分けて考えることができる。
 まず、8 基の古い原発は福島の原発事故後にすぐ停止した。
 残りの原発は今後10 年間で段階的に停止することとなるが、それには法的理由がある。2010 年の段階では原発稼働を延長する方針だったが、福島の原発事故後に2022 年までの脱原発を決定するという方針転換をしたので、原子力発電企業に対して賠償する必要が生じた。
 この原発停止によって生じる損失を埋め合わせるために10 年間の時間的猶予を与えたのである。
 また、原子力発電所は独南部等産業が集積している場所に集中していたが、脱原発による電力不足を補うための再生可能エネルギーによる電力の送電網整備に時間がかかるため、即刻停止を見合わせた。
 電力供給の安定確保は必要不可欠の要素である。米国等で生じたような大規模停電は絶対に回避しなければならない。

 独が脱原発を率先して実行している背景を理解するためには、これまでの歴史的プロセスに注目する必要がある。
 1980 年代に緑の党が登場し、脱原発政策を掲げて注目を集めた。また、1986 年にはチェルノブイリ原発事故が発生し、独全体で反原発の声が高まり国民の約40%が反原発を支持するようになった。
 福島の原発事故後には支持率は約80%にまで高まっている。
 更に、独では再生可能エネルギー法(EEG)に基づき風力、太陽光等を助成しており、過去10 年にわたる政策が成果を得ていることも、国民の多くが脱原発を支持する理由の一つである。
 また、原発稼働により発生する放射性廃棄物の処理という大きな課題が残っており、60 年代から議論が継続しているが、この問題も原発が国民の間で幅広い支持を得られない背景の一つにある。

Q.【視察団】独では放射性廃棄物の再処理は中止したと承知しているが、現状如何。

A.【大臣】独には現在中間貯蔵地しかない。
 当然ながら周辺住民はこれに反対している。最終処分場の候補にはニーダーザクセン州のゴアレーベンが挙げられたが、これについても結論は出ていない。
 今後、最終処分場選定の作業を継続していくが、実際に場所を決定し最終処理作業ができるようになるまでには20 年から30 年の時間が必要であり、それまでの間は中間貯蔵地に保存しておくしかないのが現状である。

  (2)再生可能エネルギー,電力価格等

Q.【視察団】日本では、特に福島の原発事故以降,脱原発の動きが強まっている。
 独では再生可能エネルギーの割合は20%を超えているが、日本では1%程度であり今後この割合を高めていく必要がある。
 他方、日本では電力会社の発送電の自由化が進んでおらず、電力市場は10 の電力会社に占められているが、独の状況如何。
 また、再生可能エネルギーは高コストであり、独では来年から一般家庭の年間電気料金が約7 千円上昇する見込みであることが日本でも注目されているが、これに対する貴見如何。

A.【大臣】再生可能エネルギー拡充のためにはEEG による買い取り制度が必要となる。
 独では風力、太陽光、バイオマス等による発電による利益率は5~10%となり、これが20 年間保障されている。
 再生可能エネルギー発電施設も拡充され、特に太陽光施設は3 万メガワットkWh に達した。
 例えば、朝11 時の太陽光発電による電力は原発約20 基分に相当する。夜間は従来型の発電により代替することとなる。
 こうした電力分野において、高度の技術力を有する日独での協力・意見交換を促進したい。

 電力市場自由化についてはEU 指令で規定されている。
 独では自由化以降も発送電企業数は増えてはいないが、例えば仏のように仏電力公社(EDF)がほぼ独占状態に近いのと比較すると関連企業数は多く、地方自治体レベルでも様々な経営形態により発電が行われている。
 電力料金については確かに上昇が抑えられないという面はあった。
 しかし、2050 年までに再生可能エネルギーの割合を80%にするという目標は継続させ、今後30 年かけてコストを上手く配分していく方針であり、これに対する国民の支持は得られると考えている。

 自分から一点伺いたい。日本国民の原発に対する考えと脱原発の時期如何。

Q.【視察団】独での脱原発支持率は約8 割とのことだが、福島原発事故の発生した日本ではこれより低い約6 割にとどまっている。
 冒頭にお話ししたとおり、10年後の脱原発を明示的に表明しているのは我が党のみである。
 日本の電力関連企業は脱原発には反対しており、メディアも脱原発には消極的な姿勢をとっている。
 独の立場を再確認したいが、議会では脱原発は全会一致で合意を得ており,反対の立場はないのか。

A.【大臣】幾人か反対の議員はいるがこれは少数派であり、95%の議員は脱原発に賛成しており党としても脱原発を支持していないところはない。

 アルトマイヤーと小沢

    Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-2)
    クリーガー・エネルギー事業連合国際関係特別代表との会談


 クリーガー

  (1)脱原発,再生可能エネルギー促進等

Q.【視察団】我が党は7 月に民主党から独立して結党し、日本でのエネルギー転換の必要性及び国民の要望を踏まえて脱原発を主張している。
 民主党も自民党も原発依存から脱しておらず、我が党として脱原発という選択肢を国民に示さなければならないと考えており、次の選挙で国民の信を問うつもりである。
 政府与党は経済的・技術的観点から脱原発は困難としているが、国民の立場を踏まえた理想的政策とは言えない。
 他方、独は2022 年までの脱原発に関するロードマップを示しており、これを我が国として検証するとともに、脱原発に代わる再生可能エネルギー開発、発送電の問題、原発の既得権益に固執する業界の説得等どのようにして問題を解決したかを伺いたい。

A.【エネ代】福島の原発事故以前の2010 年秋に独ではエネルギーコンセプトが作成され、原発政策の方向性が議論されていた。
 同コンセプトでは2020 年までにCO2を90 年比で40%削減し、再生可能エネルギーの電力消費に占める割合を35%、2050 年までにはこの割合を80%まで高めると決めた。かなり野心的な高い数値であるが、実現は不可能ではない。
 90 年代当初は再生可能エネルギーは水力発電以外はまだ開発が進んでいなかったが、次第に陸上風力や太陽光発電が増加し、将来は洋上風力もこれに加わる。
 ただし、風力や太陽光発電は不安定性を伴うものである。
 福島の原発事故が発生し、エネルギー転換が始まったと言える。
 事故直後に8 基の原発が停止され、5 月には倫理委員会が設置され脱原発の方向性が議論された。
 我が連合も脱原発を提言し、政府は右提案及びそれまでの議論を踏まえ2022年末までの脱原発を決定したのである。

 脱原発のプロセスは、まず旧式の原発8基を停止し、残りの原発は2015 年から2022 年までに順次停止することとなっている。
 しかし、脱原発はエネルギー転換の一側面に過ぎない。脱原発で不足する電力供給を再生可能エネルギー等により如何に補足するかというのが大きな課題である。
 独の発電設備容量は約160GW で、確実に供給できるのは不安定な再生可能エネルギーの分を考慮して低めに見積もると約93GW となる。実際のエネルギー消費量が約80GW なので、依然として約13GW の余裕はある。
 また、一週間の間での供給調整にも配慮しなければならない。月曜日から金曜日までは経済活動が行われているため電力消費が多く、週末に消費量がやや減少し、月曜日には再び消費量が増加する。
 一度下がった消費量が再び増加する場合の電力供給を上手く確保する必要がある。
 2009 年の風力発電の様子を観察すると、発電能力は約25GW で、月曜日から金曜日に比較的発電量が多い傾向にあった。
 2020 年には風力発電能力は45GW を超えると予想されており、他の再生可能エネルギー発電が少ないとしても供給は賄えると見込まれている。

 独における電力の地産地消はなかなか機能しない。
 なぜなら、風力発電は独北部に集中しているため独南部に送電する必要がある。
 また、独南部では日照時間が長いため消費量を超える太陽光発電が供給されることがある。
 このように電力需給バランスが安定しないことが想定されるため、将来的に電力網を拡充し必要な所に電力を送電しなければならない。

Q.【視察団】日本の2010 年8 月の電力需要は159GW だったが、日本の発電設備容量は237GW であり、ここから原発の設備容量約49GW を差し引いても188GW となり、原発がなくても電力需要を賄える状態である。
 実際、原発は2 基しか稼働していないが、記録的な猛暑であった今夏を乗り切ることができ、これを踏まえれば2022 年までの脱原発は可能と考えるが貴見如何。

A.【エネ代】まず、日独では経済、設備容量、消費量等の規模が異なるので単純比較はしにくいが、日本の再生可能エネルギーの割合が低いということは、現在は電力供給に対する天候の影響が少ないと考えられる。
 いずれにせよ、脱原発を進めるならば、それによって生じる供給不足を再生可能エネルギーで賄わざるを得ないのではないか。

  (2)原子力関連産業との関係,電力価格等

Q.【視察団】日本では脱原発に対する経済界の反対の立場が強固である。
 また、貴連合が福島原発事故後すぐに脱原発方針を表明したことを評価したい。独では脱原発に伴い、原発関連企業への賠償問題はなかったか。

A.【エネ代】独でも脱原発に関しては様々な議論があり、我が連合の会員企業は自由に入会・脱会できるが、最終的には経済界も脱原発という基本方針を受け入れた。
 原発関連企業に関する賠償問題は発生したが、これは同関連企業の株を有する投資家の財産を巡る問題であり、脱原発の可否そのものに関する訴訟ではない。
 2010 年のエネルギーコンセプトが策定された当時は、原発稼働延長を踏まえて核燃料税が課されることとなったが、脱原発の方針が確定したので原発関連企業はこの税に反対しているのである。

Q.【視察団】独で再生可能エネルギー促進に付随して、1 年間で一般家庭の電力価格が7千円から1万円近く増加すると聞いたが、貴見如何。

A.【エネ代】電力生産コストは最近それほど増加していないが、税金が増加しているため全体としては価格は上昇傾向にある。また、来年は再生可能エネルギーの開発に約200 億ユーロのコストがかかると見積もられている。

Q.【視察団】電力価格上昇に対する独国民の反対はないのか。
 また、原発産業と再生可能エネルギー産業とどちらがより効率的で雇用を創出すると考えられるか。

A.【エネ代】来年は連邦議会選挙が実施されるので、電力価格は争点になるだろうし、特に消費者団体の反対が見込まれる。
 エネルギー転換が進む中で、その他にも注意すべき点がいくつかある。
 例えば、再生可能エネルギー施設の中には電力供給に使われていない無駄なものがあることやコスト高であること。
 原発産業と再生可能エネルギー産業のどちらがより効率的で多くの雇用を創出するかはまだ分からない。
 現在の独の失業率は比較的低く抑えられているので雇用の論点は前面には出ていない。
 しかし、独には輸出業者が多いため、競争力の観点からエネルギー価格には敏感に反応する。
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   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-3)
   クラヴィンケル独消費者保護連合エネルギー・環境局長との会談


クラヴィンケル

  (1)脱原発、再生可能エネルギー等

Q.【視察団】「国民の生活が第一」は民主党から分離して7 月に結党し、脱原発を表明した。
 独は官民が一体となって脱原発を目指していることに驚きを覚える。
 福島の原発事故を契機として、独は脱原発を前倒しで実施することを決定したが、日本では年限を区切って脱原発を表明しているのは我が党のみである。
 日本では発送電制度が地域独占的であり、大手電力会社がこの利権を守るため原発を維持している。
 脱原発は経済的にも技術的にも不可能との論調が強い。
 そこで、我々は独の現状を検証し脱原発は実現できることを確認したい。
 日独では脱原発へのプロセスは異なるかもしれないが、独における課題は日本でも参考になると考える。

A.【局長】本機関の主な課題は二つある。
 一つは省エネや再生可能エネルギー等に関する情報を国民に提供することであり、年間約10 万件の問い合わせに対応している。要望があれば技術者が各家庭を訪問するサービスも提供している。
 二つ目は政治への働きかけであり、電力価格の上昇を抑えつつ、公正な負担分担がなされるよう努力している。
 脱原発を実現するためには、その過渡期においてエネルギーコストの過度の上昇を抑え、エネルギー転換を緩やかに進めることが重要である。
 独では来年は再生可能エネルギーコストが約200 億ユーロと見込まれているが、大口企業はこの負担を免除されている。その分の負担を一般家庭や中小企業が背負うこととなる。
 再生可能エネルギー促進のための重要な道具が再生可能エネルギー法(EEG)であり、この制度はオーストリアやデンマークでも機能している。
 例えば、デンマークでは再生可能エネルギーの電力消費に占める割合は約40%に達しており、国民は約1.5 セントkWh を支払っている。
 独における再生可能エネルギーの割合は約25%であるが、来年の負担コストは約5 セントkWh となる見込みであり、デンマークの約3 倍となっている。

 エネルギー転換の方法、コスト、利用する技術は多様であり、例えば陸上風力のコストは低めである。
 独で問題となっているのは太陽光発電である。太陽光発電施設の設置コストの低下を踏まえると、買取り価格が高すぎであり、これが消費者負担を重いものとしている。
 市場における従来型の発電コストとのバランスを考慮しないと、再生可能エネルギーコストは高すぎとなってしまう。
 もう一つの問題は、新たな電力網拡充が当初の計画のように進捗していない上、周辺住民の反対が強いことである。
 独では既に2000 年の時点で脱原発の大まかな方向性は決定されていたが、それから約10 年の間に送電網整備が進まなかったことが現在まで影響を及ぼしている。

 独政府は4 つの大手電力会社とエネルギー転換について議論してきたが、地方自治体も再生可能エネルギーを開発しエネルギー転換の一翼を担うためには、交渉力を強化することが重要である。
 現状は地方自治体の法的な権限があまり強くないことが交渉力の弱さの原因である。
 例えば、医療・保険分野において医者、病院、製薬会社等多くの関係者が複雑な議論をしていることを踏まえれば、エネルギー業界でも多くの当事者を交えた議論が必要なのは明らかである。

  (2)電力価格、再生可能エネルギーに対する賦課金、電力市場自由化の影響等

Q.【視察団】再生可能エネルギーに関する賦課金は3.59 セントkWh から5.27 セントkWh に上昇すると承知しているが、賦課金決定のプロセス如何。

A.【局長】賦課金上昇の数値についてはご指摘のとおりである。賦課金は10 月中旬に翌年分を決定し、翌年1 月1 日からその額が適用される。
 主に大手電力会社4 社が再生可能エネルギーを買取り、賦課金を上乗せして市場で売却する。
 この上乗せされた賦課金は消費者が負担することとなる。

Q.【視察団】賦課金の上昇により電力価格が上昇する旨は日本でも話題となっているが、一般家庭の1 か月の電気代は来年どの程度上昇するのか。国民はこれを受け入れるのか。

A.【局長】一般家庭の年間消費電力量が約4000kWh とすると、1 か月で約340kWhであり、1 か月の電気料金は約6.5 ユーロ上昇することとなる。
 電力価格の上昇はメディアでも議論されており、国民の脱原発支持はやや後退傾向にあるが、2週間後には別の政治的テーマが浮上して国民の態度はまた変化するかもしれない。
 いずれにせよ、再生可能エネルギーの割合が25%に達した現在、適正な電力価格を維持するためにはEEG を改正する必要が生じるだろう。
 再生可能エネルギーは時間帯によって電力需要を100%以上満たしてしまう時もあれば、全く満たせない場合もあり、その場合にこれをカバーする別の手段が必要である。例えば、風量が多い場合には蓄電するといった工夫が必要である。

Q.【視察団】独では再生可能エネルギーの割合を2050 年までに80%とする目標を掲げているが、長期的には賦課金はどうなるのか。

A.【局長】市場の動向にもよるが、今後10 年間で賦課金は7~8 セントkWh まで上昇する可能性がある。今後はオフショア風力発電も開発されていくが、この技術もコストを押し上げる可能性がある。なぜなら、独におけるオフショア風力施設は様々な規制のために海岸から約70km から100km の沖に設置しなければならないからである。英国やデンマークのオフショア風力施設は岸に近い所に設置できるので、低コストに抑えられる。

Q.【視察団】なぜ独国民は北部から南部に電力を送る送電網に反対するのか。また、独国民は即時脱原発を望んでいないのか。

A.【局長】電力網は中部の山脈や森を通過するため自然を破壊することとなり、これが国民の反感を買っている。
 脱原発を支持する国民は53%程度であり、やや減少傾向にある。ま
 た、賦課金が高すぎで、特に太陽光発電に対する過去3年間の助成は多すぎであり、これは政治的失策であった。
 即時の脱原発を支持する国民は多くない。脱原発までの10 年間という時間的猶予は妥協の末に決められたものであり、この期間に対する支持率は高い。

Q.【視察団】独では1998 年の電力自由化により発送電会社の数が減少したと承知している。

A.【局長】これは興味深い現象であり、自由化により競争が高まり企業数が増加すると予測されていたが、実際はその逆で減少した。
 自由化以前には発電施設が過剰だったためこれを削減した結果、その後の電力価格は1~2 年の間は低下した。
 また、電力価格は自由化以前は原発や火力発電の平均コストを考慮して設定されていたが、自由化以降は再生可能エネルギー等の発電コストが高いものを踏まえて設定された。
 これは再生可能エネルギーの投資を促進するためである。
 ただし、再生可能エネルギーの影響を除いても電力価格は過去10 年間で約60%上昇した。
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   Ⅳ 「ドイツ脱原発視察」会談・視察概要(3-4)
   シュッツ再生可能エネルギー協会会長との会談


シュッツ

 (1)再生可能エネルギー協会概要及び再生可能エネルギーの将来・コスト等

Q.【視察団】我が党は7 月に民主党から独立して結党した。2022 年と年限を明示して脱原発を表明しているのは我が党のみである。
 独は2022 年までの脱原発を決定し再生可能エネルギーを促進していくと承知しており、我が方の政策実施の参考とするため独の事情を聞かせていただきたい。

A.【会長】ご来訪を歓迎する。貴党が日本において脱原発を実現できることをお祈りする。
 自分は1987 年から2001 年まで約14 年間連邦議会議員を務め、2008年から本協会の会長職に就いた。自分の使命は、長期的に再生可能エネルギーにより電力需要を100%賄うことである。
 本協会は約3 万人の個人会員、25 の関連団体及び5 千の会員企業を有しており、太陽光、風力、バイオ等による発電を促進している。
 独における再生可能エネルギー促進の鍵は再生可能エネルギー法(EEG)である。EEG では、再生可能エネルギーによる電力を優先して買い取ることとなっており、発電様式ごとに買い取り価格が細かく設定されており、投資の安定性を確保している。
 独における2011 年の数値を見ると、グロスの電力消費が6120 億kWh で、その内の再生可能エネルギーが占める割合は20%に達し、2012 年には25%まで上昇した。

 技術的な発展プロセスに注目すると、風力発電については1990 年に1 基当たりの発電能力は160KW に過ぎなかったが、現在は2MW と約12 倍まで拡大した。
なお、現在の総発電能力の累積値は約3 万MW となっているが、オフショア風力の設置はまだ進んでいない。
 太陽光発電のモジュール能力については、2003 年当時から2010 年までに約14%~23%増加した。
 本協会では2020 年までに設置される発電能力を約122GW と見込んでおり、これは政府予想を上回る数値である。
この数値は電力消費の約50%を賄うことに相当する。

 2020 年に原発が全て停止した場合、減少する発電能力は約20.5GW に相当するが、これをどのようにカバーするかが課題である。
 我々の予測では、ガス発電が約1.7GW 増加、褐炭発電が約2.5GW 減少、石炭が約4.6GW 増加する。この数値を踏まえると、2020 年に必要となる発電能力は約84GW、実際に設置が見込まれる発電能力は約92GW であり、約8GW の余裕がある。
 つまり,原発なしでも十分に発電能力は確保されていることとなる。
 なお、この92GW のうち、再生可能エネルギー分は約16.6GW を占めている上、全体として太陽光及び風力がほとんどない状態を想定した控え目な数字であり、太陽光や風力発電がフル稼働する場合には、先程述べたとおり再生可能エネルギーで電力消費の約50%を賄うことが可能である。
 ただし、今後重要な技術として注目される蓄電については、まだコスト高であり、その開発が今後の再生可能エネルギー促進の鍵を握ることとなる。

Q.【視察団】日本は再生可能エネルギーの占める割合が低く、脱原発を実現するためにはその割合を35%程度まで引き上げる必要があるが、そのためのコストが高く賄いきれないのではないかとの意見がある。
 しかし、電力需要が高まれば経済効果も上がると考えるが、独の状況如何。

A.【会長】独では再生可能エネルギー分野では約38 万人の雇用が確保されており、2020 年には50 万人台まで増加すると見込まれており、特に設備生産に関わる中小企業社員や手工業者の数が増加すると考えられる。
 関連施設の輸出増加も期待でき、独の風力発電施設は世界の市場でも強さを発揮する。
 太陽光施設については中国との厳しい競争に直面しているが、コンバーターでは独製品は優位を保っている。日本は高い技術力を有しており、このように市場で優位を保つことが期待されるので、長期的には国民の支持を得られると考える。

 また、再生可能エネルギーへの転換により、国民経済的効果が生まれる点も指摘したい。
 その詳細は数字に換算しにくいものであるが、例えば原発を継続した場合に発生する環境破壊コスト低減、再生可能エネルギー発電に関わる地方自治体にもたらされる利益、化石燃料輸入コスト削減等を合わせれば、再生可能エネルギー導入コストを上回るはずである。

Q.【視察団】再生可能エネルギーへのコストはどの程度となるか。

A.【会長】再生可能エネルギーへの投資コストは2011 年には約260 億ユーロと見積もられているが、これには発電コストのみならず熱利用できる部分も含まれている。
 このコストは過去数年約250 億ユーロで推移している。

 (2)蓄電技術等

Q.【視察団】先程、2020 年までに設置する再生可能エネルギーの能力については、政府予想より野心的な目標であると述べられ、それと合わせて蓄電技術の重要性を指摘されたが、蓄電技術開発のための今後の戦略如何。

A.【会長】再生可能エネルギーで最も多く使われている蓄電技術は揚水式蓄電である。
 この他、バイオマスをガスにしてタンクに保存する方法や、本協会会員企業も開発している水素を利用してメタンガスを作る水素蓄電がある。

Q.【視察団】日本では蓄電技術としてリチウムイオン電池を商品化しているが、コスト高である。
 現在、日本の買い取り制度では、一般家庭の場合1kWh で42円の買い取り価格となっているが、リチウムイオン電池を利用すると買い取り価格が32 円に下がってしまうという例があり、インセンティブを下げかねない。
こうした制度についての貴見如何。

A.【会長】リチウムイオン電池は短期的に利用するもので、長期的利用には適していない。
 家庭における蓄電のインセンティブがまだ十分与えられておらず、その他の方法を考える必要があり、独でも何らかの助成が必要である。

Q.【視察団】独では15 日に、来年の再生可能エネルギーに関する賦課金が上昇する旨が報道され、この上昇が急激すぎるとの批判があるが、国民の理解を得るための方策如何。

A.【会長】一般家庭の電力価格が24 セントkWh で、その内の5 セントが賦課金に相当する。以前は3.5 セントだったので、約1.5 セントの上昇であり、確かにこれは多すぎである。
 しかし、再生可能エネルギーの初期コストは高いが、長期的には化石燃料による発電より安くなっていく。
 むしろ問題なのは、電力の大口消費企業が賦課金を免除されていることであり、免除する金額を削減すべきである。

 大企業は賦課金があると国際競争力が低下するというが、それならば低所得者の電力料金を一部税金で賄う等公正さを確保するための政策が必要である。
 なお、原発には事故のリスクがあり、化石燃料による発電はCO2 排出が多くなる一方、風力や太陽光発電は初期投資費用がかかるのみで燃料コストは不要であり、他国からの輸入に依存する必要がないという利点にも注目すべきである。

Q.【視察団】日本の再生可能エネルギー関連企業の勢力が小さく団結力も弱いが、独の同関連企業は団結し影響力があると考えるが、現状如何。
 また、日本の企業の中には再生可能エネルギーは割に合わないと述べるところもあるが。

A.【会長】独環境省には専門家から成る諮問委員会があり、我が協会からも6、7名のメンバーが出席し、自分(「シュ」会長)も意見を述べている。
 同委員会で再生可能エネルギーに関する鑑定書が必要な場合には、我が協会にも意見が求められるので、その場合我々は自らコストを負担して専門家の意見を聴取し、委員会に回答することもある。
 再生可能エネルギーで利益を出す企業は当然存在し、自分(「シュ」会長)も相当裕福になった人を個人的に知っている。

Q.【視察団】独は福島の原発事故を踏まえて脱原発を前倒ししたが、日本政府として脱原発政策をしっかり示していないことに対する貴見如何。

A.【会長】自分はチェルノブイリ原発事故が発生した時から脱原発派である。
 原発事故は人間には制御不能だからである。
 自分は以前、化学プラント建設に関する許可を取り付ける仕事をしていたことがあるが、確かに事故が発生する可能性は100 万分の1程度である。
 原発事故の可能性は100 万分の1 から1000 万分の1 に過ぎないかもしれないが、原発は人口が多い所に建てられているケースが多い。
 また、放射性廃棄物処理という大きな課題も存在する。
 日本においてもこうした危険を踏まえ、様々な観点を議論すべきである。
 自分(「シュ」会長)は、再生可能エネルギーは支払い可能だと考えており、最終的には国民にも受け入れられると期待している。
 再生可能エネルギーは多くの地域に利益をもたらし、雇用を創出し、環境にも優しい技術である。
 ーーーーーーーーーーーーーーー
 ドイツ脱原発報告(4)会談・視察3-5、6、7へ続く。
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