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もうすぐ北風が強くなる

生活と円安、アベノミクスが招くこと

 日銀との共同声明が為されて、アベノミックスとやらが確定した。
 途端に新聞には懐疑論が現れる。いつものとおり決まるまでは碌な報道をせずに、決まった後であれこれの意見を紹介すると言ういつものパターンだ。
 選挙前に懐疑論を多少とも紹介していれば、かなり様相は変わっただろう。

 反論の典型は次の二つである。
 1 賃金が上がらず、物価が上がったら貧困になる。
 2 賃金が上がらなければ物価は上がらない。

 このうち、賃金が上がらないのは誰しも思うこと。
 公共事業をばら撒いても上がるのは土木の労務単価くらいなものだ。
 他は上がらないどころか、下がる。
 何故なら既に公務員の賃下げが決定されているが、これは政府が強制しようがしまいが、地方公務員に波及する。それだけではない。

 公務員賃金の切り下げは地方公務員、行政法人、特殊法人などの公共部門全体と農協、漁組、商工会、公益社団などおよそ営利法人以外のすべての勤労賃金に波及する。
 そして、さらに一般株式会社など民間部門の賃金に波及する。
 敗戦後のドッジ・プランとそれが民間大手にまで波及したことは、すでに経験則と言って良い。
 賃金切り下げの波及を免れるのは超大手企業くらいだろうが、逆に上がるのは稀と考える。
 従って勤労家計は所得減少、消費減少となる。内需はさらに縮小する。

 では物価は上がるのだろうか。
 所得減少は内需の縮小を招くので一般的には物価は下がらざるを得ない。実際に食料、エネルギーなどを除くコアは普通は下がる。
 だから、安倍某の希望する「物価上昇」は一般的には上がらない、のだが。

 ところが、ここに金融緩和なる過剰流動性供給の人偽的円安政策である。
 2008年の世界的な商品価格上昇はリーマンショックによって沈んだものの、今度は円安がエネルギー、食料、原材料の価格上昇を招き、これがサービス価格をとおして物価コアに跳ね返ることを想定せざるを得ないわけである。

 公共料金を含む上昇となるので、食料などの値下げせざるを得ない生活必需品目以外は物価上昇の危険がある。
 一般製造品は小売がどこまで耐えられるかにかかる。
 物価上昇により、ここに金利上昇が始まる。
 
 こうした内需減少と物価上昇の同時進行は、まったく「デフレ脱却」ではないことは言うまでもない。
 デフレは「所得-消費-生産」が縮小循環するからであり、金利はその将来期待値です。その逆は成り立ちません。
 つまり正常なデフレ脱却は所得、賃上げでも、再配分でも福祉でも良いわけですが、その所得から強行に改善しなければ正常な成長経済には戻れません。

 そこに消費増税であるから、勤労家計は窮乏化し、企業は非正規雇用をさらに増やして耐えられないところから倒産、失業を生み、政府は国債金利上昇と税収減少の局面に立たせられるわけだ。

 私がやたらと気になるのは、こうした正気の沙汰とも思われない「対策」が、「間違い」とか「知能が低い」とか「狂っている」とかではない場合、つまり正気の経済ブレーンたちがマスコミの国民洗脳を道具にして意図的に進めようとしているように感じることである。
 誰かさんたちのために。
 
 参照してほしい「家計、企業、政府の共倒れ破綻」。

 下に中原圭介氏の円安物価分析を紹介します。
 所得の増加は物価の上昇に結びつくが、物価の上昇が所得の増加になど結びつきません。
  ーーーーーーーーーーーーーーーー
  過度な円安にご用心(1) 1/17 中原圭介

みなさんもご存知の通り、日本では安易に原子力発電所に頼れなくなったために、火力発電所による発電が急増しています。
そこで、液化天然ガスを中心としたエネルギー資源の輸入が膨大に膨らみ、日本の貿易収支は2011年に2兆5000億円の赤字に転落しました。
これは、第2次石油危機で2兆6000億円の赤字を計上した1980年以来、31年ぶりのことでありました。

さらに悪いことに、2012年の貿易収支は赤字額が6兆8000億円にまで拡大する見通しにあります。多少は今後の液化天然ガスや原油の価格が下がったとしても、2013年の赤字額はドル円相場が2011年~2012年と同じ水準という前提で、6兆円超の額は免れない情勢になってきています。

小泉政権の時とは違い、今の日本ではエネルギー事情がひっ迫しているため、売り手の国々からも足元を見られています。特に液化天然ガスは東南アジアや中東、オーストラリアなどから法外な高値で買わされています。
日本の2011年~2012年における液化天然ガスの輸入価格は100万BTUあたり16台ドル~18ドル台で、液化していないとはいえ米国の天然ガス指標価格の2ドル台~3ドル台や英国(欧州)の天然ガス指標価格の9ドル台~10ドル台と比べても突出して高い状況にあるのです。

2012年における日本の液化天然ガスの輸入量は9000万トンで、日本が世界の液化天然ガスの供給量の約3分の1を買った計算になっているので、高値で買わされるのはある程度やむをえないのかもしれません。

しかし、ドル円相場が1円安くなるごとに、液化天然ガスや原油の輸入コストが2700~2800億円ほど増加することを考えると、円安が急激に進むことは一昔前と違って決して喜べるものではありません。
2011年の平均為替レートが1ドル79円であるので、仮に90円まで下落すれば、貿易赤字がエネルギーだけで2兆9700億円~3兆800億円も増加する計算になってしまうのです。

輸出企業の経営者の中には「100円まで行ってほしい」などとコメントしている方が多いようですが、そんなことになったらエネルギーだけで5兆6700億円~5兆8800億円ものコスト負担が増加してしまいます。
現在の原油価格は2005年~2007年の円安期よりも平均して2倍近く高いのに加え、液化天然ガスは2倍超にも急騰している状況にあります。
おまけに、液化天然ガスの輸入量は数倍にも増加しています。エネルギーや原材料を輸入に頼る日本企業にとって、120円~130円の円安期と比べても、現在のほうがエネルギーコストの負担が大きく増えているのです。

だから、90円からさらに100円まで円安が進んでしまうと、一部の輸出企業が競争力を高めて輸出を増やしても、その他の企業は人件費を引き上げることがいっそう難しくなってしまうのです。
大多数の企業が従業員の給料を増やすことができない中で、過度な円安によりエネルギーをはじめ、すべての輸入品の価格が上昇してしまうと、国民の生活が苦しくなるのは避けられないでしょう。

グローバル経済下では、「所得の増加→物価の上昇」というプロセスは成り立ちますが、その逆の「物価の上昇→所得の増加」という順序立ては決して成り立ちません。
日本でインフレが起こるとすれば、それは、国民の所得が伸びない中での悪いインフレしかないでしょう。
金融緩和に過度に依存しようとしている安部政権には、この当たり前の考えが完全に抜け落ちてしまっています。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
舞う札
 舞い散るペーパーマネー 

 以下は勤労者賃金、所得の再配分とデフレに関連するページ。

労働分配率の強制修正
世界で日本のみデフレ
日銀の金融緩和は誰のためか
信用創造と言えば聞こえは良いが
信用創造とは
公務員叩きとデフレ政策
通貨、金利と信用創造の特殊な性質
信用創造(3)無政府的な過剰通貨
デフレ脱却には賃金上昇が不可欠:根津
これからの経済生活はどうなるのか
なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
ゆでガエル!
消費増税でデフレ強行を目指すかいらい政権
日本の労働は封建主義の農奴農民か 
窮乏化、3軒に1軒が貯金もなし
逆進課税とデフレ恐慌
消費増税を許すな!三党談合政権を倒そう
景気対策ではない、消費増税を通すためのGDP操作だ
安倍某の経済政策?恐怖のシナリオか
安倍の過激刺激策は過去のミス繰返し:人民網
家計、企業、政府の共倒れ破綻
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