FC2ブログ

もうすぐ北風が強くなる

ブリューゲル

 昨年の秋からこの新年にかけて、神戸市立博物館で「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画展」が開催され、フェルメール初期作品の他にレンブラント、ヤン・ステーン、フランス・ハルス、ライスダールなどが展示された。
 これが契機となって、日本では静かなフェルメールのブームがおきているようである。

 17世紀オランダはスペインの没落と相まって、海上商業の最盛期となる。
 同時期の北ドイツ、イングランドなどは未だ産業革命前の貧困農業国であったが、オランダとフランドル地方は世界の海運と富の集散地となり富裕な金融商人は文化、芸術作品も扱いスペインをはじめとするヨーロッパ王族に売ったわけである。
 フェルメールが使う青色「フェルメール・ブルー」は黄金ほどの価格だったと言われる。

 そんなネーデルラント・フランドル派の絵画は欧米各地の美術館で大きな地位を占めています。
 美術館をあちこち多く廻ったわけではありませんが、印象派の前で写真機が存在しない時代の絵画は遠近法以来非常に克明な描画が要求され、17世紀はその頂点であったかとも思うのです。
 一面では客観描写においても写真機以上の精密さとモチーフの訴える力がバランスしています。

 ここでフェルメールの絵画を紹介するわけではありません。
 17世紀フランドル絵画を見ると、なぜか私が思い起こす画家はブリューゲルなのです。
 ブリューゲルは16世紀アントウェルペン(現ベルギー)の作家なので、17世紀フランドル画家はほとんどがその影響を大なり小なり受けています。

 私が思い起こすブリューゲルのイメージで最も強烈なのは次の絵です。

65雪狩人
 雪中の狩人と言う名前ですが、当時今より寒冷だった北西ヨーロッパはベルギー地方でも積雪と結氷がありました。
 どんよりと曇った午後の日暮れに山から降りてきた猟師たちの前方では、湿地や水路でスケートをしている人々が細かく克明に描かれています。

 彼が描いた絵はほとんどが神でも金持ちでもありません。
 寒さと労働、寒さと遊び、貧富と喜怒哀楽の人間(庶民)をあくまで中心テーマにしており、当時としては極めて珍しい立場です。
 
ブリューゲルi
 ピーテル・ブリューゲルの死後発掘された肖像画

 当時の画家、画商、図書などの同業組合は現在の職能組合の機能も併せ持ったギルド組織で、聖ルカ組合と称していた。
 生地、血筋来歴は不明。
 1551年アントウェルペン(仏語でアンベルス、英語でアントワープ)の聖ルカ組合にブリューゲルの名が現れる。
 その後イタリアに修行したらしく、1555年に組合に戻っている。
 版画の下絵(版下)を描いていたが、1660年ころから油彩となる。63年にブリュッセルに移り、結婚。

 5年後1669年に幼い息子二人を残して亡くなる。40歳の前後だったと推定されている。
 ブリューゲルは子どもたちには何の手ほどきもできなかったと思われる。
 だが、子どもたちは成長と共に父の絵を模写するようになり、画風はかなり異なるが画家となった。
 ピーテル・ブリューゲルの息子二人、孫と玄孫の各一人が画家となった。
 
 ブリューゲルの油彩はわずか9年ほどの間に描かれた。
 その極めて精細克明な技法は70年前の初期フランドルの画家、ヒエロニムス・ボッシュ(ボス)の影響との意見があり、私も同意である。

59諺
 1559年ネーデルラントの諺。集落で様々な行為をしている人々と家屋、道具なども極めて丹念精密に描く、と同時に幻想的超現実的でシュールな感覚。ブリューゲルの一貫したスタイル。

60子ども遊戯
 1560年子どもの遊戯。
 遥か遠くまでを遊ぶ子どもで埋め尽くしている。この幻想とリアル。
 ブリューゲルは遊ぶ子どもたちに、「救い」を感じたのかも知れません。
 様々な遊びがすべて丹念に描かれ、歴史資料としてこの絵の「遊び」を解明解説した本が出ているという。

63バベル
 1563年バベルの塔。

67怠け者
 1567年怠け者の天国。独特のシュールなリアリズムを感じる作品。

68農家の婚礼
 1568年農家の婚礼。農民への愛情を感じる絵。

68農民踊り
 1568年農民の踊り。祭りの広場に集まってくる農民、飲食し、踊る農民。
 日本では最もよく知られていると思われる作品。

 ブリューゲルは、「股の間から景色を覗いて農村風景のスケッチをとる習慣があり、その姿勢の最中に死んだ」という伝え話があるが、もちろん真偽は明らかではない。

 ブリューゲルの70年ほど前の画家にヒエロニムス・ボッシュがいます。
Bosch.jpg
 ボッシュは1450年オランダ南部の画家アーケン家に生まれる。
 本名はイェルーン・ファン・アーケンだが、作品には住んでいた都市デン・ボスにちなむ「Bosch」の署名をした。

 時代はメディチ家のフィレンツェが最盛期で、スペインは92年にグラナダを制圧する。
 ネーデルラントは小自由都市の時代。
 ボッシュについても詳しいことはわからないが、生涯ほとんどを生まれた都市で暮らしたようである。
 1516年8月に亡くなった。
 聖書に関する絵画が多く、16世紀改革によって破壊消失したものが多い。

80~04快楽園
 快楽の園。1503年前後の作と考えられている。折りたたみの三面衝立である。
 宗教的な寓意啓発の作品と思われるが、見方によってはかなり異端的でもある。ボッシュ特有の怪奇幻想的なモチーフと精密克明な技法の作品。
 
90~05放蕩息子
 放蕩息子。15世紀末ころの作品。
 旅する貧困な農民の若者。
 膝は破れ、靴は壊れ、背景には、屋根の壊れた廃屋のような家とその家族。
 壊れかけた窓から覗く老人。
 
 その感情表現。 現代ヨーロッパの庶民階級の原型はこうだったのでは、あるいはもっと酷かったのではと感じます。

 貧困の克明な描写はリアリズム思想とも言え、後のブリューゲルに影響したことは疑いないでしょう。

 ボッシュ-ブリューゲル-フェルメールといったリアリズムの流れと同時に、一方ではボッシュ-ブリューゲル-ゴヤ-ダリにつながるシュールリアリズムの流れを感じます。
関連記事

コメント

 初めまして。ブリューゲルはいいですよね。私も大好きです。

「子どもの遊戯」の絵には、確かうんちをこねくり回しているのもありました。昔から子どもはうんちが好きなんですね。笑いました。

ありがとうございます

ブリューゲルは時代を超えて、いいですよね。
> 「子どもの遊戯」の絵には、確かうんちをこねくり回しているのもありました。昔から子どもはうんちが好きなんですね。笑いました。
 解説の中にはおかゆを混ぜている、左は子どもの椅子としているのもありますが、私もこれはうんちを突っつき遊んでいるのだと思います。左の箱は穴が開いているので「おまる」だと思います。

追記

「おまる」というと貯めておく箱になりますが、きっと底のない外で使う「腰掛け便座」。
それをのけて、つっつき遊んでいる感じ。
おお、ぴったりではありませんか!
どうでしょうね?

おもしろいですね。
ブリューゲルの描くヨーロッパ人は、私たちが持つ現代ヨーロッパ人のイメージとちょっと違う気がします。何だか表情もスタイルも洗練されていないし。
こんなものだったのかも、と「子どもの発見」以前の社会に思いをはせてます。

Re:

> ブリューゲルの描くヨーロッパ人は、私たちが持つ現代ヨーロッパ人のイメージとちょっと違う気がします。何だか表情もスタイルも洗練されていないし。
> こんなものだったのかも、と「子どもの発見」以前の社会に思いをはせてます。
・・・・
 そうですね。
 自信のある表情が無い、というか「ヨーロッパ白人」な表情がありませんね。
 なにせ16世紀ですからねえ。
 イギリスもドイツもフランスもまだ暗黒の中世末期で、北イタリアとフランドル地方くらいが自由都市の商業と金融、繊維工業くらい。
 ほかのヨーロッパは、農民は農奴で領主の意のままに虐待され、戦争のたびに傭兵に破壊略奪強姦され、おまけに魔女狩り。
 フランドル地方の農民は比較的平和で安定していたのでしょうね。
 

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://bator.blog14.fc2.com/tb.php/1542-32016e1a

 | HOME | 

 

プロフィール

もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

最新記事(引用転載フリー)

カテゴリ

経済一般 (118)
経済一般~2012冬まで (161)
日本の経済 (224)
通貨戦争 (70)
ショック・ドクトリン (12)
震災関係 (23)
原発事故発生 (112)
事故と放射能2011 (165)
放射能汚染2012 (192)
汚染列島2013-14 (146)
汚染列島2015-16 (13)
福島の声 (127)
チェリノブイリからの声 (27)
政治 (413)
沖縄 (93)
社会 (316)
小沢一郎と「生活の党」 (232)
健康と食 (88)
環境と地球の歴史 (28)
未分類 (175)
脳卒中と入院 (7)

カウンター

最新コメント

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク

このブログをリンクに追加する

カレンダー

06 | 2020/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

最新トラックバック

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

Template by たけやん