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もうすぐ北風が強くなる

地球寒冷化:槌田(3)

 9.無意味な温暖化対策

 CO2温暖化脅威論がナンセンスである以上,この脅威を防ぐためのCO2対策もナンセンスということになる.もしも,文明批判が目的であれば,結果として発生するCO2を論ずるのではなく,石油など資源の大量使用を直接論ずるべきである.

 それだけでなく,提案された対策の多くは発生するCO2を減らすことにもなっていない.これらの対策は,ほとんどすべてコスト高である.コスト高ということは,間接的に石油や石炭などを大量に消費することを意味する.
 たとえば,太陽光発電の場合,半導体や関連機器の生産や設置に巨大な費用が必要だが,それは石油の消費でなされている.つまり,余計にCO2を放出することになっている.

 ここで,エネルギーまたは物質収支の計算がなされるが,この種の計算の最大の欠点は積上げ方式をとっていることである.
 このため,入力の積上げを忘れても,出力損失の積上げを忘れても,効果はよいほうに傾き,提案者に誤った希望を与えることになる.

10.原子力発電ではCO2排出量も減らない

 このことは,とくに,原子力発電の推進根拠の失敗に現れている.原子力発電所には,小さな重油タンクがあるだけだから,発電時にはCO2をほとんど出さないと説明される.
 しかし,この発電時以外のところで大量のエネルギーが投入されており,原子力発電はCO2を大量に発生している.

 アメリカのエネルギー開発庁(ERDA)が1976年に計算したところによれば,エネルギー産出量100を得るために26のエネルギーを投入している.産出投入比は100/26=3.8である.電力中央研究所による1991年の計算も4.0とほとんど変わらない.

 この結果は原発が有利なように見える.しかし,これは積上げ計算であるから,積残しを考慮していくと,投入量は増え,産出量は減り,結果として産出投入比はどんどん減ることになる.

 ERDAの場合も,電中研の場合も,運転での電力投入(7),遠方送電の建設(5),揚水発電所の建設(10)という投入が忘れられている.これを考慮すると,投入量は26+7+5+10=48となる.
 また遠方送電損失(7),揚水発電損失(20)という欠損があり,産出量は100-7ー20=73となる.
 その結栗,産出投入比は73/48=l.5となる[10].

 さらに,計算不可能な投入として,放射能対策,廃炉対策,事故・故障対策がある.これを評価すれば,産出投入比は1に近づき,そして1を割ることになっていく.
 原発は事故で庶民を加害し,また処理処分不可能な放射能を残すだけでなく,石油石炭を大量に消費するのである.

 現代の温暖化キャンペーンは,このような原子力をCO2削減のエースとして推進するためであった.アルゼンチンで開催された気候変動枠組条約 第4回締結国会議(COP4)は,さながら原子力発電の売込みの場であったと伝えられている.これに誘導されて大騒ぎするなどまったくナンセンスとしかいいようがない.

 11. ナンセンスといえばオゾンホールも

 通説では、フロンから塩素が出て化学反応で成層圏のオゾンを壊し、南極にオゾンホールが広がり、地表に届く紫外線が増え、皮膚ガンが増えると心配されている。

 オゾンを壊すという化学反応には、塩素のほかに紫外線が必要である。
 しかし、南極の春先、太陽光は水平に入ってくるので、光が通過する大気の厚さは、真上から入射したときの10倍にもなる。そのため、紫外線は南極の上空に届く前に宇宙に散乱され、ほとんど存在しない。これではオゾン破壊になるわけがない。

 フロンがオゾン層を破壊するという説の論拠は、南極の高層成層圏では強い西風が吹き、.その極渦がエアカーテンとなって南極の大気を隔離する。オゾンの出入りがないのにオゾンが減るのだから、ここでオゾンが破壊されているとしなければならない、と。しかし、ほんとうに南極の大気は閉ざされているのだろうか。

 高層成層圏での強い西風の原因は地球の自転である。地球が西から東へ動いているため、大気も一緒に西から東へ動いている。赤道の大気はもっとも速く動いており、南極の大気はあまり動かない。
 ここで、赤道の大気が南極に向かって移動すると、地球表面の速度は、南極に近づくにしたがって遅くなるので、大気のほうが速く動くことになる。つまり、緯度が高くなる方向に大気が動くと、西風になる。

 南極の周辺で高層成層圏に強い西風が吹いているということは、赤道から南極の方向に向けて大気が流れていることを示している。高層成層圏の西風はエアカーテンではなかったのである。
 南極に流れこむ高層成層圏の大気にはオゾンが1/10と少ない。したがって南極のオゾンが減るのは当たり前である[5]。この南極成層圏の西風という事実だけからフロン原因説は覆されてしまった。

 そのうえ、オゾンは紫外線が存在すると大気中の酸素から直ちに生産され、蓄積される。したがって、太陽光の有害紫外線はそれほど気にする問題ではもともとなかったのである。

 12. 森林と農地の喪失こそ最大の環境問題

 現状では、環境問題はCO2温暖化とO3ホールの話題がほとんど独占している。しかし、最大の環境問題は、農地と森林の喪失である。この原因は、過剰農業、過剰放牧、過剰伐採といわれているが、そもそもなぜ過剰になるのか、ということの議論が欠けては、対応できるわけがない・

 まず、科学技術はアメリカなど先進国で穀物の過剰生産をひき起こし、穀物の価格を下げてしまった。その結果、まだ穀物を生産できる農地であっても、採算がとれなくなって放棄されている。この放棄された農地は風水害で荒地となり、砂漠化している。

 また、先進国での穀物価格の低下は、農民を離農させ、失業問題となった。そこで農民の失業を抑止するため、この過剰穀物は輸出されている。
 農産物の代表的輸出国アメリカの穀物生産最は、入口を養う約5倍という。そのうち1は国民が食べ、3は家畜の鋳にし、残りの1を輸出している。これさらに安い価格で輸出されている。また援助物資という形は補助金をつけて、さらに安い価格で輸出されている。また援助物資という形で輸出される穀物も、実は失業対策であった。

 1994年の世界の小麦の貿易量は9900万トンであった。その輸出国の筆頭はアメリカ(31%)で、これにカナダ(22%)、オーストラリア(13%)、フランス(13%)、ドイツ(6%)、アルゼンチン(5%)、イギリス(4%)が続く。これらの国だけで小麦の輸出量のほとんどすべてになっている。

 これらの先進国の穀物の輸出攻勢を受けて、途上国の穀物生産は壊滅状態になった。とくに、アフリカの場合、昔は小麦を食べなかったが、たびたびの飢饉の際、援助物資の小麦で食の嗜好が変わり、都市の住人に小麦を食べる習慣ができてしまった。

 そうなると農家がミレット(きび)などの雑穀を生産しても、都市の住民は買ってくれない。やむなく農業を放棄して、都市のスラムの住民になる。先進国の失業対策は、途上国への失業の輸出を意味している。そして、放棄された農地は、風水害によって荒地となり、砂漠化することになる。

 先進国の科学技術による穀物の生産性の向上は、世界の人々を飢えから解放すると期待された。
 しかし、事実は逆で、先進国でも途上国でも有用な農地を砂漠化し、将来の飢えの原因を作っている。

 13. 債務返還と利子払いが途上国の農地破壊を加速

 砂漠化には、植民地から独立国になったことによる政治問題も関係する。植民地時代、植民地政府は綿花やコーヒーを栽培させた。それでも、農民を永続的に働かせるため、穀物生産のための農地は保護していた。
 ところが、独立で状況は一変する。独立した政府に、先進諸国から多大な資本の貸付が行われた。ところが、1982年以降、債務の返還と利息の支払いで資金は一方的に途上国から先進国へ流れることになった。

 世界の富は貧しい国から豊かな国へ流れている。途上国ではこの債務や利息の支払いのために、穀物生産をやめて換金作物を作っている。しかし、多くの途上国ではコーヒーなど換金作物を売った額の半分近くをこの返済にあてている。
 このような無理をして換金作物を作っているため、農地は荒れる一方で、ますます途上国の砂漠化が進むことになる。

14. 途上国における森林破壊

 途上国の農民が都市のスラムへ行かないで農業を続けようとすれば、まだ肥沃な土地のある森を焼き、開墾すればなんとかなる。
 しかし、そのようにして得た農地は2、3年で養分がなくなるので、そこを捨てて、また別の森林を焼くことになる。

 日本へ輸出する木材の過剰伐採も森林を破壊する原因であるが、それ以上に焼畑のほうが深刻である。スマトラ島のように、焼畑の火が森林火災の原因となって森を大規模に失うこともある。放牧でも森を焼いている。このようにして利用した森林の跡地はすべて砂漠化している。
 このように、砂漠化を進めているのは、穀物の過剰生産と穀物の自由貿易と債務である[11]。これを止めるのは容易ではない。よほど議論して対策を立てなければ、よい結果は生まれない。

 ともかく、このままでは、世界中で農地と森林を失い、農耕できない荒れ地ばかりにするのは確実である。このときに地球寒冷化と異常気象が襲うであろう。われわれがこの現象をなすすべもなく見逃したばかりに、子孫は苦しむことになる。

 このような農地と森林の破壊こそ大問題であるのに、炭酸ガス温暖化脅威説に振り回わされ、世界各地の環境悪化の経済的原因を十分に論議する機会が奪われていることは、残念というほかはない。

 15. 環境問題を正しく理解するには、開放系の熱学が必要

 生命は、なぜ、その活動を維持できるのか。この問題の答えは、開放系の熱学を学ぶことによって得られる[9]。いわゆる、エンジンの理論である。地球環境もこのエンジンの法則の範囲の中にあるから、これらの問題を議論するにはこの開放系の熱学が必要不可欠である。

 また、人間社会もこのエンジンの法則により維持されている。このエンジンは、需要があれば供給すると儲かるという欲望の法則によって動いている。
 これを無視して環境問題や人間社会を論ずると、CO2温暖化やO3ホールだけでなく、中途半端な議論に明け暮れ、その結果は、大気汚染や自由貿易や原発など本質的な環境破壊行為を見逃し、これをますます悪い方向に広げることになる[11]。
 現状は残念ながらそのとおりである。

 本論文は、1998年秋の環境経済・政策学会、物理学会、エントロピー学会での講演と質問への回答をもとに作成した。
(「熱物理学および環境経済論」)


[参考文献]

[1] Keeling, C. D. et al., Aspects of Climate Variability in the Pacific and the Western Americas (ed. Peterson, D. H.),pp.165-236(Geophys. Monogr. 55, Am. Geophys. Union, Washington DC, 1989)
[2] Keeling, C. D. et al., Nature, 375 668,(1995)
[3] 根本順吉 『超異常気象』 中公新書, 1994年.
[4] Keeling, R. F. et al., Nature, 358 723, (1992), Natre,381 218, (1996).
[5] 槌田敦 「地球は興味深い熱学系」 『日本物理学会誌』 53巻, p.616,1998年.
[6] Overpeck, J. et al., Science, 278 1251, (1997).
[7] 朝倉正 『異常気象と環境汚染』  NHKブックス,1972年.
[8] R. A. ブライソン, T. J. ムーレイ『飢えを呼ぶ気候』 根本順吉・見角鋭ニ訳,古今書院,1976年.
[9] 槌田敦 『熱学外論ー生命・環境を含む開放系の熱理論』 朝倉書店,1992年.
[10] 内山洋司・槌田敦・石谷久 『エコノミスト』 1992年11月17日号, p.67.
[11] 槌田敦 『エコロジー神話の功罪』 ほたる出版, 1998年.
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