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もうすぐ北風が強くなる

社説 原子力の時代を超えて:中日、東京

 3号機

 処理不可能な使用済み核燃料と高レベル廃棄物の集積だけでも、この国土を一触即発の危険にさらしている。
 すべての原発を今すぐ停止し、直ちに廃炉の技術開発を開始しなければならない。
 何度でも、何度でも呼びかけなければならない。
 これは国民の生命の利害であって、国民の願いだからだ。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
   社説 原子力の時代を超えて 年のはじめに考える   1/4 中日新聞、東京新聞

 総理、後戻りはいけません。国民の多くは、それを望んでいない。原子力の時代を超えて「持続可能」へ向かう。3・11を真に乗り越えるためにです。

 ドイツの哲学者故マルティン・ハイデッガーは「原子力の時代」に懐疑的でした。一世を風靡(ふうび)した「存在と時間」の著者が、です。

 一九五五年、南ドイツの小さな町での講演で「いったい誰が、どこの国が、こういう原子力時代の歴史的進展にブレーキをかけ、それを制御しうるというのでしょうか。
 われわれ原子力時代の人間は技術の圧力の前に策もなく、投げ出されているようです」と、核の脅威を語っています。

  制御しがたい巨大な力

 日米原子力協定が調印され、東京で原子力平和利用博覧会が開幕した年でした。米ソの核競争が激しくなっていたころです。

 哲学者は続けます。
 「われわれの故郷は失われ、生存の基盤はその足もとから崩れ去ってしまったのです」と。

 核兵器と原発。核は制御し難いものであることを、福島原発事故に思い知らされました。
 理不尽な力に故郷を追われ、多くの人々が避難先の仮住まいで、二度目の新年を迎えることになりました。哲学者が遺(のこ)した言葉は、予言のようにフクシマの心に迫ります。

 原子力の時代は、ヒロシマから始まりました。生存者に「太陽が二つあった」といわしめた計り知れない核分裂のエネルギー。その強大さに、唯一の被爆国さえも、いや、その力に打ちのめされた唯一の被爆国だからこそ、「平和利用」という米国産のうたい文句に魅入られたのかもしれません。

 戦災復興、そして高度経済成長へ。再び急な坂道を駆け上がろうとする時代。時代を動かす強力なエネルギーが必要だった。

  核のごみがあふれ出す

 原子力の時代はヒロシマで始まって、フクシマで終わったはずではなかったか。
 水素爆発の衝撃は神話のベールを吹き飛ばし、鉄骨やがれきの山と一緒に横たわる、それまで見ないようにしてきたものが露(あらわ)になったはずだった。

 フクシマは教えています。

 人間はいまだ、自然の猛威にあらがう技術を持ちません。これからも持ちうることはないでしょう。
 雨風に運ばれ、複雑な地形の隅々にまで入り込んでしまった放射能を集めるすべはありません。

 ひとたび事故が起きたとき、電力会社はおろか、政府にも、広範で多様な損害を満足に償うことはできません。
 補償は莫大(ばくだい)な額になり、安全のための補強にはきりがない。ほかよりずっと安いといわれた原発の発電コストが、本当は極めて高くつくことも、福島の事故が教えてくれました。

 核のごみ、危険な使用済み核燃料の処分場は決まりません。
 各原発の貯蔵プールからいまにもあふれ出そうとしている。

 その上、原発の敷地内やその周辺からは、大地震を引き起こす恐れのある活断層が、次々に発見されています。
 日本列島は地震の巣です。原発を安全に運転できる場所など、あるのでしょうか。

 このような欺瞞(ぎまん)や危険に気付いたからこそ、昨年の夏、前政権が全国十一カ所で開いた意見聴取会では約七割が、討論型世論調査では半数が「二〇三〇年原発ゼロ」を支持しています。

 原発の是非を外側から論ずるだけではありません。人や企業は原発への依存を減らすため、自らの暮らしと社会を変えようとし始めました。

 電力会社があおる電力危機を、私たちは省エネ努力で乗り切りました。節約型の暮らしは定着しつつあり、後戻りすることはないでしょう。太陽光や風力など、自然エネルギーの導入を近隣で競い合う、そんな地域や町内も、もう珍しくはありません。

 原子力の時代を超えて、その進展にブレーキをかけようとしています。

  地域が自立するために

 3・11以前、都会から遠く離れた原発の立地地域は、安全と地域の存続をはかりにかけて、悩み続けてきたのでしょう。

 交付金や寄付金頼みの財政は、いつまでも続きません。

 今ある港湾施設や原発の送電網などを利用して、新しいエネルギー産業を創設し、雇用を生み出すことができれば、本当の自立につながります。
 ふるさとを未来へと進める仕組みを築く、今がそのチャンスです。

 原子力の時代の次に来るもの。それは、命や倫理を大切に、豊かな暮らしと社会を築く、「持続可能の時代」であるべきです。

 発足早々、原発の新・増設に含みを持たす安倍政権には何度も呼びかけたい。
 時代を前へ進めることが、政治家と政府の使命であり、国民の願いでもあると。

3号機
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コメント

本年もよろしく!

この記事を読んで1980年にロンドンで
中日、東京新聞と北海道新聞の合同支社室で
お手伝いをしたことを誇りに思えます。

日本の大手マスコミの情けなさを福島原発事故以来
痛切に感じていましたので、東京新聞でしか耳を傾けて
いなかったのは賢明であったと今更ながら思います。

北風さん、今年もよろしくお付き合いさせてくださいねっ!

今年もよろしく!

それは良い体験だったのでしょうね。
2011年3月当時テレビが信用出来ない中で、東京新聞、日刊ゲンダイ、スポーツ紙くらいがまともな情報源でした。
他はみな完全統制されていて、「直ちに危険はない」とか「炉心は健全に保たれている」とか嘘ばかりを報道しておりました。まったく呆れるばかり。
今もこの足並み揃えた報道統制は先月の選挙でも露わになりました。
まともな報道が貴重ですね。琉球新報も良いようですが。
せめてもう少し英語でも読める日本人が多ければ良いのでしょうが。
この統制された陸の孤島状態を何とかせねば。少しでも。
今年もよろしくお願いします。

 人は自然の手のひらの上で生かされている。
自然の脅威、その猛々しいエネルギーの前に、人はただ、命だけ守り、逃げるしかない。

 放射能は自然に還ってゆけない。命の生きてゆく自然が、汚れてゆく。経済や政治ではなく、倫理、哲学の問題だ。多くの人がたくさん学んできた結果が、これなのか?

 しかも「よりによって」、人間の五感は放射能を感知できず、人間が使う「測定器」だけで判断され、どんな捏造も可能だ。人間の命運をきめる最高に危険な物質を、人間にはまったくわからないんだ・・ 地球の命運を託された、人間の叡智が、最高の皮肉をもって試されてるんだね。
 3.11以降、揺れ続けくずれ続ける日本国に、原発なんて狂気だ。

Re: タイトルなし

普通、私たち庶民は億万長者や権力者も同じ人間と思っています。
ですが、これはどうもそのように教えられてきたためのように思います。
なぜなら、億万長者や権力者は、一般の勤労庶民を、自分と同じ人間とは思っていないようだからです。
彼らは上に行けば行くほど、金銭亡者、権力亡者となり、一般庶民とはかけ離れた人間感覚が強くなってしまうのだと思うようになりました。
人間的な感覚が薄まり、あるいはなくなってしまった者でなければ到底考えつかないような発想をしています。
彼らを放置すれば私たち庶民の利益は損なわれ、生命も生活も危ういものになると思われます、
だから、絶えず彼らとは闘っていなければならない。
このことは、多くの人々が自分の体験を振り返り、意識的を高めることが必要だ。
と思うのですよ。


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それを50年間ズルズルと誤魔化し、引き伸ばしてきた結果が現在。
民主も自民も彼らを放置するなら、これからも何もしないでしょう。
警察が不当逮捕を続けるのは、彼らが脱原発運動を「権力闘争」と見ている証しと思う。

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