風邪薬の犠牲者
2012-12-18
冬になり寒くなると自然の法則で「風邪」は増える。
咽頭症状、微熱、疼痛などのいわゆる「風邪」は、欧州の医者では何も処方せず、暖かくして経過を見ましょう、にとどまるようだ。
医薬品の「商品化」が激しい日本では医者は3、4種類の薬を処方するのが多いようだが、おまけにテレビCMではびこる「市販風邪薬」。
「薬漬け」は健康に良いわけはないのだ。
そろそろシーズンなので、こちらを紹介します。
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風邪薬の犠牲者 12/10 リー湘南クリニック
先ほど、近隣に勤める風邪の患者がみえた。「ルル」を内服したそうで、内服しないほうがよいと説明したが、風邪薬で治ると信じているので手こずった。
一ヶ月ほど前、女子高生が来院し、様子をみる様に説明したところ、モンスター・ペアレンツから「なぜ薬をださないのかと」抗議の電話があった、バカを通り越している。その点、拙ブログを読まれていらっしゃる患者は楽である。
2008年11月、前立腺肥大症で他院を通院中で、尿閉(尿が出ない)の患者さん(62才、男性)がみえた。「風邪薬を飲みましたか?」「はい、ルルを」「もう一生飲まないでください」。
正常膀胱容量は~300ml、導尿したところ残尿量は 620mlだった。
泌尿器科の教科書(CAMPBELL's UROLOGY)には、”風邪薬”自体の記載がなく、尿閉の原因不明だが、おそらく、風邪薬に含まれる「抗ヒスタミン剤」が原因。この他に尿閉を起こしやすいのは、深酒です。
2006年 10月、発疹を主訴に 29歳男性が受診した。2年前に脳炎をわずらい、現在「抗てんかん薬」を服用している。薬疹の可能性があるので、休薬をすすめたが、怖くて休薬できないという。
脳炎の経過は「近くの医院で、風邪薬を処方され、続けていたら意識を消失、気づいたら平塚○○病院のベッドだった」そうだ。
医者から「風邪の菌が脳に入り脳炎になった」と説明されていた。
将来、過誤を繰り返さないように「脳炎は風邪薬の副作用で、風邪のウイルスは絶対に脳内に入らない。
風邪はウイルスによる疾患だから、風邪薬や抗生物質を飲んではいけない。」と説明したが、理解してもらえなかった、脳炎の後遺症で。
ちなみに、市販薬より医者が処方する風邪薬の方が有害なのです。
最近、「OTC医薬品です」と CMが流れる。OTC(Over the Counter;医師の処方箋なしで買える薬)の意味を知る人は少いだろ、在米中に聞いたこともない。
在米時、風邪で「感冒薬」や「抗生物質」を服用するのは、留学中の日本人だけでした。
傑作だったのは、順天大から来ていた眼下医、カナダを旅行中息子が熱をだしたので、ケフラール(第一世代セフェム、抗菌力が弱い)を飲ませ、小児科を受診したそうだ。
小児科医から「なぜ、ケフラールを飲ませたか」と言われたそうで、私に「もっと強い抗生物質でないといけないんだね」と言った、私「あんた、バカをとおり越している」と心の中でつぶやいた。
そろそろ、パブロン、ジキニン、ベンザだとかルルだとかテレビ CMが流れるシーズン。膨大な宣伝広告費をかけるわけですから、総合感冒薬は、よほど儲かるかるのでしょう。
製薬会社は大事な天下り先ですから、毎年「風邪薬脳炎」で乳幼児が 100人死のうが、厚労省が規制するはずもない。
近隣の医師が処方する薬は、次のような内容が多い。(1)ジスロマック 500mg 3~5日間。(2)いわゆる「感冒薬」、PLやダンリッチ。最悪の場合は、漢方「葛根湯」。(3)いわゆる「消炎剤や去痰剤」、ダーゼンやムコダイン。そして(4)胃薬。
若干、風邪のおさらいを。
・いわゆる「インフルエンザ脳炎」がみられるのは、世界中で日本列島と台湾の一部だけ。
かつては、世界七不思議の一つだったが、欧米の医師が日本列島に特有な「総合感冒薬」が原因と看破。無作為対照化試験の結果、総合感冒薬は治癒を遅延させることが判明。
そればかりか、日本では毎年 100人の乳幼児が、「インフルエンザ脳炎」で死亡し、100人が重い後遺症を残している(近藤誠・著「よくない治療、ダメな医者から逃れるヒント」や「医原病」にくわしい。
・風邪の諸症状は、ウイルスを排泄(咳や鼻水)し、弱体化させる(=発熱)作業。だから、症状を抑えない方が早く治る。
しかし、社会生活をしているので、希望があれば、ひどい咳には麻薬系「咳止め」。鼻水には「点鼻薬」を処方する。去痰剤は何の効果もない、効果的な去痰法は水分をよく摂ること。
・同じ文脈で、感冒様症状を自覚し 2日以内で、「仕事があるので」という希望者には「タミフル」を 2回内服してもらう(自費)。
SARS系ウイルスによる感冒には効果なし。
・他にできることは「うがい」。この場合、イソジン(殺菌作用があるので、味方の菌を殺す)などのうがい薬より、水道水がよい。
そして、なるべく食べないこと、栄養をつけると免疫能が低下します。
・解熱鎮痛剤は禁忌。ただ、咽疼痛が強い場合や頭痛には、アセトアミノフェン(カロナール)を処方します(OTCは、タイレノール)。
…お大事
(2006年10月と2008年11月の記事統合、校正)

風邪薬の儲け頭たち
咽頭症状、微熱、疼痛などのいわゆる「風邪」は、欧州の医者では何も処方せず、暖かくして経過を見ましょう、にとどまるようだ。
医薬品の「商品化」が激しい日本では医者は3、4種類の薬を処方するのが多いようだが、おまけにテレビCMではびこる「市販風邪薬」。
「薬漬け」は健康に良いわけはないのだ。
そろそろシーズンなので、こちらを紹介します。
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風邪薬の犠牲者 12/10 リー湘南クリニック
先ほど、近隣に勤める風邪の患者がみえた。「ルル」を内服したそうで、内服しないほうがよいと説明したが、風邪薬で治ると信じているので手こずった。
一ヶ月ほど前、女子高生が来院し、様子をみる様に説明したところ、モンスター・ペアレンツから「なぜ薬をださないのかと」抗議の電話があった、バカを通り越している。その点、拙ブログを読まれていらっしゃる患者は楽である。
2008年11月、前立腺肥大症で他院を通院中で、尿閉(尿が出ない)の患者さん(62才、男性)がみえた。「風邪薬を飲みましたか?」「はい、ルルを」「もう一生飲まないでください」。
正常膀胱容量は~300ml、導尿したところ残尿量は 620mlだった。
泌尿器科の教科書(CAMPBELL's UROLOGY)には、”風邪薬”自体の記載がなく、尿閉の原因不明だが、おそらく、風邪薬に含まれる「抗ヒスタミン剤」が原因。この他に尿閉を起こしやすいのは、深酒です。
2006年 10月、発疹を主訴に 29歳男性が受診した。2年前に脳炎をわずらい、現在「抗てんかん薬」を服用している。薬疹の可能性があるので、休薬をすすめたが、怖くて休薬できないという。
脳炎の経過は「近くの医院で、風邪薬を処方され、続けていたら意識を消失、気づいたら平塚○○病院のベッドだった」そうだ。
医者から「風邪の菌が脳に入り脳炎になった」と説明されていた。
将来、過誤を繰り返さないように「脳炎は風邪薬の副作用で、風邪のウイルスは絶対に脳内に入らない。
風邪はウイルスによる疾患だから、風邪薬や抗生物質を飲んではいけない。」と説明したが、理解してもらえなかった、脳炎の後遺症で。
ちなみに、市販薬より医者が処方する風邪薬の方が有害なのです。
最近、「OTC医薬品です」と CMが流れる。OTC(Over the Counter;医師の処方箋なしで買える薬)の意味を知る人は少いだろ、在米中に聞いたこともない。
在米時、風邪で「感冒薬」や「抗生物質」を服用するのは、留学中の日本人だけでした。
傑作だったのは、順天大から来ていた眼下医、カナダを旅行中息子が熱をだしたので、ケフラール(第一世代セフェム、抗菌力が弱い)を飲ませ、小児科を受診したそうだ。
小児科医から「なぜ、ケフラールを飲ませたか」と言われたそうで、私に「もっと強い抗生物質でないといけないんだね」と言った、私「あんた、バカをとおり越している」と心の中でつぶやいた。
そろそろ、パブロン、ジキニン、ベンザだとかルルだとかテレビ CMが流れるシーズン。膨大な宣伝広告費をかけるわけですから、総合感冒薬は、よほど儲かるかるのでしょう。
製薬会社は大事な天下り先ですから、毎年「風邪薬脳炎」で乳幼児が 100人死のうが、厚労省が規制するはずもない。
近隣の医師が処方する薬は、次のような内容が多い。(1)ジスロマック 500mg 3~5日間。(2)いわゆる「感冒薬」、PLやダンリッチ。最悪の場合は、漢方「葛根湯」。(3)いわゆる「消炎剤や去痰剤」、ダーゼンやムコダイン。そして(4)胃薬。
若干、風邪のおさらいを。
・いわゆる「インフルエンザ脳炎」がみられるのは、世界中で日本列島と台湾の一部だけ。
かつては、世界七不思議の一つだったが、欧米の医師が日本列島に特有な「総合感冒薬」が原因と看破。無作為対照化試験の結果、総合感冒薬は治癒を遅延させることが判明。
そればかりか、日本では毎年 100人の乳幼児が、「インフルエンザ脳炎」で死亡し、100人が重い後遺症を残している(近藤誠・著「よくない治療、ダメな医者から逃れるヒント」や「医原病」にくわしい。
・風邪の諸症状は、ウイルスを排泄(咳や鼻水)し、弱体化させる(=発熱)作業。だから、症状を抑えない方が早く治る。
しかし、社会生活をしているので、希望があれば、ひどい咳には麻薬系「咳止め」。鼻水には「点鼻薬」を処方する。去痰剤は何の効果もない、効果的な去痰法は水分をよく摂ること。
・同じ文脈で、感冒様症状を自覚し 2日以内で、「仕事があるので」という希望者には「タミフル」を 2回内服してもらう(自費)。
SARS系ウイルスによる感冒には効果なし。
・他にできることは「うがい」。この場合、イソジン(殺菌作用があるので、味方の菌を殺す)などのうがい薬より、水道水がよい。
そして、なるべく食べないこと、栄養をつけると免疫能が低下します。
・解熱鎮痛剤は禁忌。ただ、咽疼痛が強い場合や頭痛には、アセトアミノフェン(カロナール)を処方します(OTCは、タイレノール)。
…お大事
(2006年10月と2008年11月の記事統合、校正)

風邪薬の儲け頭たち
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コメント
風邪薬の副作用が分かっていれば……
Re: 風邪薬の副作用が分かっていれば……
私が直接に聞いた事例。
奥さんが三週間にわたって市販の風邪薬を服用して、気管支炎が悪化、夜中に咳が止まらず、咽頭炎が腐って咳とともに肉片が飛び出した。医者にかかったらすぐ大病院に運ばれて入院。白血球の激滅。直ちに救命救急室に入れられた。
幸い持ち直し回復しました。
市販風邪薬。決して3、4日以上飲み続けてはいけません。
奥さんが三週間にわたって市販の風邪薬を服用して、気管支炎が悪化、夜中に咳が止まらず、咽頭炎が腐って咳とともに肉片が飛び出した。医者にかかったらすぐ大病院に運ばれて入院。白血球の激滅。直ちに救命救急室に入れられた。
幸い持ち直し回復しました。
市販風邪薬。決して3、4日以上飲み続けてはいけません。
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Re: 風邪薬の副作用が分かっていれば……
私も詳しくはわかりませんが、ロキソニンならずとも一般に鎮痛剤はすべて消化系に悪い影響があります。
長期服用はまた別な注意が必要でしょうが、きっとその注意は医師が伝えているとは思いますよ。
体調によってさじ加減と言う考えもあるでしょうが、現実的ではない場合が多いのではと思います。
効能と副作用はその症状との兼ね合い、バランスですから一概には賢明で良心的な医師でもなかなか言えないだろうと思います。
難しいところですが、自覚症状は患者が最も解っています。
長期服用はまた別な注意が必要でしょうが、きっとその注意は医師が伝えているとは思いますよ。
体調によってさじ加減と言う考えもあるでしょうが、現実的ではない場合が多いのではと思います。
効能と副作用はその症状との兼ね合い、バランスですから一概には賢明で良心的な医師でもなかなか言えないだろうと思います。
難しいところですが、自覚症状は患者が最も解っています。
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『冬になり寒くなると自然の法則で「風邪」は増える。』
明快に書いていらして,感動いたしました。
つぎの『かつては、世界七不思議の一つだったが、欧米の医師が日本列島に特有な「総合感冒薬」が原因と看破。無作為対照化試験の結果、総合感冒薬は治癒を遅延させることが判明。』
このことが,もっと早く日本のお医者様や薬屋さんに浸透していれば……
わたくしの大好きなヴァイオリニストの川畠成道さんは,10歳のころアメリカにご家族で旅行中に,日本から持参した風邪薬の副作用で失明されたということが,忘れられません。初めてコンサートでアヴェ・マリアを聴いた時は,涙がこぼれました。