世界通貨戦争(19)中野剛志TPP批判の要約
2011-02-01
TPP(環太平洋経済連携協定)の批判としては、中野剛志氏が最も単刀直入で明解と考えるのですが、「世界通貨戦争(16)米国TPPは100年目の攻撃」で引用したものの、引用文がどうも些か長文過ぎる感じと思いました。
中野剛志氏の引用部分について要約を作ってみました(実はあまり長いので、あれでも全部では無いのです!!!)。
以下要約
1 世界の現状
米国は消費と輸入で世界経済を引っ張ることができなくなり、輸出拡大戦略に転じている。
世界不況でEUも危機に陥り、戦前の世界恐慌と同様に各国は世界の需要争奪戦となっている。先進国は雇用を守るために必死である。
従って、日本にも様々な仕掛けが講じられているが、相手の戦略を読んで動くことが重要。
TPP問題も戦略性が問われていたのに、議論無しで賛成と成っていることが最も問題。
2 TPPの問題点
11月のAPECに向けて唐突に持ち出し、マスコミが賛成一色に染まったことは戦略性のみならず民主主義からも異常で危険な事態。
農産物関税は日本が突出して高いわけではなく、なにより食料自給率が非常に低いことは農業市場が開放されている証拠。
「TPPに入ってアジアの成長を取り込む」というのは無理。そこに成長するアジアは入っていない。
予想されるTPP参加国のGDPは米国67%、日本24%で実質は日米自由貿易協定協定。
3 TPPで開国なのか
幕末の日米修好通商条約は、開港治外法権と関税自主権放棄の不平等条約。 対等な条約への回復は日清・日露の戦勝をへて60年かかった。TPPは関税自主権の放棄。
鎖国しているわけでもなければ、世界の孤児でもないのに、「開国する」などと言っているのは相手に交渉の武器を与えている。戦略的に既に敗北。
世界大不況で飢餓状態の現在、世界最大の金融資産国である日本は、環太平洋のカモネギ。
4 実質日米自由貿易協定のTPPで対米輸出が増えることは無い
米国の目標は貿易赤字を減らすこと。5年間で輸出を5倍に増やす。この為にTPPを仕掛けているので、輸入を増やすつもりは無い。
特にアジアを明言している。GDPの大きさから言って日本である。
米国の失業率は10%近く、政権の維持は雇用回復。
中国・日本の米国への輸出を抑え、米国は日本への輸出を増やしたい。
TPPでは日本の輸出先は米国のみで、米国の輸出先も日本のみ。米国は輸出を増やし、輸入はしたくない。
5 中国・韓国はTPPに参加はしない
中米間は人民元問題という自由貿易以前の段階なので中国は参加はしない。
韓国はTPPに参加してもTPP加盟国は一次産品国ばかりで利害が一致しない。調整交渉の余地のある米韓FTAを選んでいる。
日本は米国とのFTAが無理なのに、過激でハードルの高いTPPを選ぶという恐るべき戦略性の無さ。
6 関税はフェイントで実体は世界通貨戦争
グローバル経済化で企業は何処にでも立地する。関税は今や大きな意味をもたない。米国は日本の競争力を弱めたり、米国での現地生産を増やさせるためドル安を進める。輸出倍増の為だけではない。
日米間で関税を下げて、ドル安を進めると、米国は雇用を奪われず、同時に農産物が襲いかかる。当然ながら日本の農業は米国に立地できない。
グローバル経済世界では関税よりも、通貨戦争が勝敗を決める。
米国の関税で言うと、自国の防衛ではなく、日本の農業関税を突破するためのフェイント。通貨で勝てるから日本にTPPを要求している。
7 農業構造改革で自由化を乗り越えられるか
現在の米国の経済と政治を考慮するなら、議論の余地なく乗り越えられない。
関税撤廃、大規模企業生産だけではない。ドル安、そして米国国内賃金下降。この四つに勝てることはあり得ない。
8 デフレとの関係
自由貿易で消費者は利益を得られそうに見えるが、デフレの中でさらに物価が下がるのは、さらにデフレすなわち不況の最悪化を招く。農産物だけではない。
国内生産は米国産と競争せざるを得なく、重層的な縮小再生産。
国民全体が供給過剰のタクシー業界同様になり、生活が成り立たなくなる。
9 TPP参加にメリットは何処にも全く無い
関税を下げて日本が輸入すると物価が下がり、経済が縮小するので、結局は輸入も増えない。
幸せなのは米国農業のみ。
日本は元来輸出依存型でなく成長期を通じて内需拡大型経済。
本当は日本が輸出などに頼らずに、財政出動し、内需拡大し、デフレ脱却すれば輸入は増え、アメリカにもメリットはある。また環太平洋諸国にとっても好ましいことだ。
10 自由貿易はいびつな輸出依存国を作る
現状ではTPPはもちろん二国間自由貿易協定も、日本がデフレ脱却する以外にメリットはない。
韓国は自由貿易を進めているが、極度の通貨安政策で輸出依存のいびつな国内経済になってしまった。
格差の拡大、実質賃金の低下、内需の減少。輸出依存型経済は何も良いことではない。
しかも現在の世界経済は関税ではない。
通貨戦争である。
デフレ脱却すれば関税など問題にならなくなる。
11 TPP参加で最悪のケース
TPP参加で最悪の想定は国内農業が全滅して、世界的食料高騰を迎えること。
中野剛志氏の引用部分について要約を作ってみました(実はあまり長いので、あれでも全部では無いのです!!!)。
以下要約
1 世界の現状
米国は消費と輸入で世界経済を引っ張ることができなくなり、輸出拡大戦略に転じている。
世界不況でEUも危機に陥り、戦前の世界恐慌と同様に各国は世界の需要争奪戦となっている。先進国は雇用を守るために必死である。
従って、日本にも様々な仕掛けが講じられているが、相手の戦略を読んで動くことが重要。
TPP問題も戦略性が問われていたのに、議論無しで賛成と成っていることが最も問題。
2 TPPの問題点
11月のAPECに向けて唐突に持ち出し、マスコミが賛成一色に染まったことは戦略性のみならず民主主義からも異常で危険な事態。
農産物関税は日本が突出して高いわけではなく、なにより食料自給率が非常に低いことは農業市場が開放されている証拠。
「TPPに入ってアジアの成長を取り込む」というのは無理。そこに成長するアジアは入っていない。
予想されるTPP参加国のGDPは米国67%、日本24%で実質は日米自由貿易協定協定。
3 TPPで開国なのか
幕末の日米修好通商条約は、開港治外法権と関税自主権放棄の不平等条約。 対等な条約への回復は日清・日露の戦勝をへて60年かかった。TPPは関税自主権の放棄。
鎖国しているわけでもなければ、世界の孤児でもないのに、「開国する」などと言っているのは相手に交渉の武器を与えている。戦略的に既に敗北。
世界大不況で飢餓状態の現在、世界最大の金融資産国である日本は、環太平洋のカモネギ。
4 実質日米自由貿易協定のTPPで対米輸出が増えることは無い
米国の目標は貿易赤字を減らすこと。5年間で輸出を5倍に増やす。この為にTPPを仕掛けているので、輸入を増やすつもりは無い。
特にアジアを明言している。GDPの大きさから言って日本である。
米国の失業率は10%近く、政権の維持は雇用回復。
中国・日本の米国への輸出を抑え、米国は日本への輸出を増やしたい。
TPPでは日本の輸出先は米国のみで、米国の輸出先も日本のみ。米国は輸出を増やし、輸入はしたくない。
5 中国・韓国はTPPに参加はしない
中米間は人民元問題という自由貿易以前の段階なので中国は参加はしない。
韓国はTPPに参加してもTPP加盟国は一次産品国ばかりで利害が一致しない。調整交渉の余地のある米韓FTAを選んでいる。
日本は米国とのFTAが無理なのに、過激でハードルの高いTPPを選ぶという恐るべき戦略性の無さ。
6 関税はフェイントで実体は世界通貨戦争
グローバル経済化で企業は何処にでも立地する。関税は今や大きな意味をもたない。米国は日本の競争力を弱めたり、米国での現地生産を増やさせるためドル安を進める。輸出倍増の為だけではない。
日米間で関税を下げて、ドル安を進めると、米国は雇用を奪われず、同時に農産物が襲いかかる。当然ながら日本の農業は米国に立地できない。
グローバル経済世界では関税よりも、通貨戦争が勝敗を決める。
米国の関税で言うと、自国の防衛ではなく、日本の農業関税を突破するためのフェイント。通貨で勝てるから日本にTPPを要求している。
7 農業構造改革で自由化を乗り越えられるか
現在の米国の経済と政治を考慮するなら、議論の余地なく乗り越えられない。
関税撤廃、大規模企業生産だけではない。ドル安、そして米国国内賃金下降。この四つに勝てることはあり得ない。
8 デフレとの関係
自由貿易で消費者は利益を得られそうに見えるが、デフレの中でさらに物価が下がるのは、さらにデフレすなわち不況の最悪化を招く。農産物だけではない。
国内生産は米国産と競争せざるを得なく、重層的な縮小再生産。
国民全体が供給過剰のタクシー業界同様になり、生活が成り立たなくなる。
9 TPP参加にメリットは何処にも全く無い
関税を下げて日本が輸入すると物価が下がり、経済が縮小するので、結局は輸入も増えない。
幸せなのは米国農業のみ。
日本は元来輸出依存型でなく成長期を通じて内需拡大型経済。
本当は日本が輸出などに頼らずに、財政出動し、内需拡大し、デフレ脱却すれば輸入は増え、アメリカにもメリットはある。また環太平洋諸国にとっても好ましいことだ。
10 自由貿易はいびつな輸出依存国を作る
現状ではTPPはもちろん二国間自由貿易協定も、日本がデフレ脱却する以外にメリットはない。
韓国は自由貿易を進めているが、極度の通貨安政策で輸出依存のいびつな国内経済になってしまった。
格差の拡大、実質賃金の低下、内需の減少。輸出依存型経済は何も良いことではない。
しかも現在の世界経済は関税ではない。
通貨戦争である。
デフレ脱却すれば関税など問題にならなくなる。
11 TPP参加で最悪のケース
TPP参加で最悪の想定は国内農業が全滅して、世界的食料高騰を迎えること。
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