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もうすぐ北風が強くなる

買弁メディアと闘うラテンアメリカ、日本は?

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 1994サパティスタ民族解放軍

  反米化するラテンアメリカから見える日本のいま Democracy Now! 書き起こし「Skilala&Zowie」から

*日本でもメディアが政治を動かす。風を吹かせ、世論を誘導し、それに合わせて検察が動くという構図。不都合な政治家を抹殺する役割の一端を担う日本の記者クラブメディア。それは孫崎さんご著書の『戦後史の正体』になぞらえても、日本の戦後史のなかで十分認識出来る。
そのうえで、米国の工作、謀略によるクーデター、メディアによるネガキャンと戦っている中南米の国々に学ぶために八木さん出演のDemocracyNowを文字に起こしてみた。
07年:チャベス政権、民放テレビ局を閉鎖 是非をめぐり徹底討論http://democracynow.jp/video/20070531-1

ファン・ゴンザレス氏「ベネズエラでは、政府による民営放送局の閉鎖をめぐって、賛成と反対の両派が連日デモをしています。RCTV局の放送免許を更新しないと政府が決定したため、抗議者と警察と政府支持者が衝突し、数十人が逮捕されました。
国内最古の民営局RC TV局の閉鎖を大統領が決めたことはEUや米国や言論団体などの国際的な非難を浴びています。
RCTVが免許を失う理由は、5年前の短命クーデターを支持したことです。他の反政府系テレビ局もクーデターを支持しました。
チャべス氏は閉鎖決定を正当化し、『公共のモラルを攻撃し続けた』とRCTVを非難しました。
政府の決定を批判する別の民放局グロボビジョンに対しても「国家の敵」と非難しました」

映像:チャべス大統領「グロボビジョンは明らかに私の暗殺を教唆していました。鎮静剤を飲んで落ち着きなさい。さもないと、必要な措置を取ります」

ゴンザレス「政府はグロボビジョンを暗殺の教唆で提訴し、チャべスとアルカイダを関連付けたCNNも非難しています。両局とも事実を否定しています」

エイミー・グッドマン氏「RCTVの本部長は、閉鎖は「権力の乱用」「専制的」だと語っています。免許が更新されない理由はクーデターへの加担です。
チャべス支持者が不当に暴力的に描かれ、クーデターの成功だけを賞賛し、民衆の力でチャべスが復権したことは報じなかったからです。
クーデターを撮影したドキュメンタリーがあります。タイトルは『革命はテレビに流れない』監督はバートレイ氏とオブライアン氏。当時、RCTVの幹部だったイザラ氏も出演しています。(*)彼は情報操作に抗議して局を去りました。RCTVの閉鎖についてイザラ氏に聞きます。ウェスリアン大学准教授ロドリゲス氏にも聞きます。
イザラ氏はカラカスにいます。RCTVを辞めた後、チャべス政権で通信大臣を務め、現在はベネズエラ、アルゼンチン、キューバなどの多国籍放送局TeleSURの社長です。
サンフランシスコにいるロドリゲス准教授は経済学と中南米が専門で元ベネズエラ議会の経済担当官です。
イザラさん、チャべス大統領はなぜRCTVを閉鎖に?」

テレスール社長アンドレス・イザラ氏「放送局の閉鎖などしていません。RCTVは53年目にして放送免許が切れ、政府は免許を更新しませんでした。国営公共放送を開始するためです」

ゴンザレス「あなたはクーデターの時、RCTVの報道ディレクターでした。辞任された理由は?RCTVのニュース報道への懸念を話して下さい」

イザラ「2002年のクーデターは2日しか続きませんでしたが、RCTVはクーデター政権の側に立った報道をしました。RCTVだけでなく他のすべての民営ラジオやテレビも反乱を焚きつけるような報道を繰り返し、チャべス大統領の監禁に至る動きにはっきり加担していました。
当時、ベネズエラではすべての記者が検閲を受けました。民営テレビやラジオ局が報道を統制して、独裁政権を正当化したのです。私たちの言論を縛って都合の悪いことは報道させない。
カルモナのような独裁者に対し、民衆がどう反応したかなどは何も伝えられませんでした。
国内で実際に起きていることを報道することは許されず、連続ドラマや漫画ばかり放送していたのです」

エイミー「ウェスリアン大学のロドリゲスさんにも聞きましょう。元ベネズエラ議会の主任エコノミストです。RCTVの閉鎖についてどう思いますか?」

元ベネズエラ議会エコノミストフランシスコ・ロドリゲス氏「閉鎖されていないとおっしゃるのに驚きました。RCTVは50年代から続く最初にできた民営放送で、視聴者も一番多い。政府に嫌われるのは反体制派に近い立場からです。
クーデターを支持したと非難されていますが、民主主義の国では、犯罪の容疑があるだけで処罰することはできません。政府転覆を謀ったと疑われても、民主主義の国では法廷で弁明する権利があります。
裁判所が有罪判決を出してはじめて行政府が罰則を執行します。RCTV局が反政府の陰謀に加担した証拠があるのなら、なぜ裁判所に訴えないのです?RCTVに有罪判決は一つもない。
イザラ氏の発言は印象的でした。2002年4月のクーデターの間は、他の民営メディアもすべてチャべス支持者の見解を放送しなかったという指摘です。確かにそのとおりでした。
興味深いのは、いつくかのメディアがRCTVとおなじことをしていながら、免許更新を受けていることです。たとえば、ベネビシオンは更新を許されました。ベネビシオンとRCTVは同じ行動をしたのに、なぜRCTVはダメでベネビシオンは許可されるのか?
ベネビシオンの論説は政府に協力的だからです。ベネズエラの人々は「国営ベネビシオン」と呼んでいる。もはや国営テレビ局と見分けがつかないのです。
政府はそのために放送免許を使う。経済的な手段もあるし、ブラックリスとの作成もある。リコール投票に署名した350万人の名前を公開して脅迫したり、あの手この手で異論を排除しています。民主主義が崩壊しつつあるのです」

ゴンザレス「以前のベネズエラでは民主主義があったのでしょうか?
チャべス政権以前も、ベネズエラではテレビ局が免許取り消しに抗議する道がなかったのでは?
放送局が免許を持てるかどうかは今までも政府の胸三寸で決まってきたのでは?
米国ではFCC(連邦通信委員会)があり、放送局が公益に違反したら罰金や免許取り消しにしますが、放送局も裁判所に異議申し立てができます。ベネズエラでは、異議申し立ての道はありませんね?」

ロドリゲス「でもベネズエラ政府の署名した国際協定があります。これにより免許の更新や課税率や海外為替の配分率などを、テレビで報道されるメッセージを操作する手段として利用することはできなくなっています。
言論の自由の侵害ですから。イザラ氏および政府支援者たちが言っているように、RCTVは編集方針のせいで罰せられています。これは言論の自由の侵害です。
放送を規制するのではなく、政府に有利なメッセージを放送させているのです。結果は民主主義の崩壊です」

ゴンザレス「イザラさんのご意見は?他の局もクーデターに支援したのにRCTVだけを罰しているという批判がありましたが?」

イザラ「私はテレスールについてしか語れません。私たちの放送方針なら語れます。
反政府派の筆頭グロボビジョンのトップにもうちの局に出演して見解を述べました。私はベネビシオンの見解を代弁できませんが、私に言えるのは、これは主権の問題であり、単なる行政手続きだということです。
フランス政府がベルルスコーニから電気通信事業の免許を取り上げ、他の業者に与えたことがあります。免許の更新却下がここでも起きただけ。政治的なものはない。
RCTVが編集方針のために罰せられたのではありません。
ベネズエラのVHF波の78%は民間に許可されています。多くが野党と提携しています。
UHF波の82%も民放でその多くは野党系です。
問題なのはここでも、行政手段が政治利用され、クーデターを煽りそうなことです。以前と同じようなクーデターが計画されているのです。
民放メディアに煽られて、64日間の石油ストが起こり、ベネズエラの石油生産が止まった事を思い出すべきです。
この64日間RCTVは数千回にわたってスポット広告を政治に利用し、コマーシャルを流す代わりに政府を倒せという声を流し続けたのです。民主的に選ばれた政府なのに。
このような無責任なことを5年間もやる経営者は私たちの国では放送免許を取り消されます。
同じようなクーデターに関わる民営メディアがあれば、米国でも免許をはく奪され、所有者は投獄されるでしょう」

エイミー「ロイター社の最新ニュースによると、チャべス氏はグロボビジョンを「国家の敵」と呼び、多極の閉鎖をネタに暴力を扇動し続けるなら必要な措置を取ると述べました。
チャべス氏の発言を引用したロイターの記事を読みます。チャべスのRCTV閉鎖に抗議し、カラカスでは数万人が行進したが、国営テレビはチャべスの決定を祝う数百人の支持者を映していた。『裏工作をする祖国の敵よ。君の名はグロボビジョンだ。気を付けたまえ』チャべスの警告の言葉が全てのチャンネルから流れる。
『鎮静剤を飲んで落ち着きたまえ。さもないと必要な措置を取る』チャべス氏はグロボビジョンが自分の暗殺を焚きつけ、RCTV閉鎖への抗議を大げさに伝えて、クーデターを煽ったと非難した。この報道についてはいかがですか?

イザラ「大統領の暗殺を焚きつける映像は私も見ました。グロボビジョンのような報道をもしNBCやCBSがやったら、米国政府がどう対処するか知りたいものです。
彼等は反乱を扇動するだけでなく、小さな反対デモが行われたのを大げさに報道しているのですよ。
中流・上流階級の私大生が中心で、カラカス西部の富裕地区なのです。
米連邦通信委員会ならどう対処するでしょう?
放送局が反逆を呼びかけ、常に政治の不安定化を狙い、民主主義に反する政治手続きを支持してきたのです。
最近も大統領の暗殺をはっきりと呼びかけた放送がありました。『こんにちは市民』という毒々しい反チャべス番組です」

ゴンザレス「ロドリゲス教授に伺います。米国に引き寄せて考えると、NBCやABCなどの放送局がRCTVやグロボビジョンのように現政権を打倒せよと叫んで、放送局が大衆を煽ったならば、政府が措置を取るのは正当ですか?」

ロドリゲス「これらの放送局がしていることは正確に検証すべきです。最初に言ったように司法の場に持ち込んで検証すべきだ。
彼らが政府転覆を扇動したという証拠を示す必要があります。グロボビジョンの番組が公然と政府打倒を呼びかけたとおっしゃるが、彼らが見せたのはなんだったのか?ベネズエラや世界の歴史を語る過去の映像です。RCTVが50年余の歴史のなかで蓄積してきたアーカイブでした。
番組で取り上げた歴史的な場面の一つは、ヨハネ・パウロ二世の暗殺未遂の映像でした。ウィリアム・ララ通信大臣によると、冗談じゃなくてNYタイムズ紙の報道ですよ。通信省の暗号解読専門家たちが解読したところ、『ヨハネ・パウロ二世の暗殺未遂の映像は本当にチャべス大統領暗殺を呼びかけるものだったと判明した』誰が信じますか?
ベネズエラのようなカトリックの国で、教皇の暗殺未遂の映像でチャべス暗殺を呼びかけるなんて考える人は頭がおかしい。政府の示す証拠なんてこんなものです。
他にもあります。国営テレビの番組では、当たり前のように政府側のプロパガンダを流し続けています。国営テレビではチャべス支持のスローガンが常に出てくるのです。テレビ局は国のものであって政府のものではないのに、政府は当然の権利のように思っているようです。
さきほどの質問にお答えします。もしテレビ局が政府転覆を呼びけかたことを法廷で証明できるなら政府の言い分は通るでしょう。でも、実際は政府に好意的な最高裁判所さえ軍に対する政府の訴えを退けたのです。政府は苦戦しています。証拠が不十分なのです」

エイミー「イザラさん、最後に一言どうぞ」

イザラ「ロドリゲス教授の言う通りです。この国では奇妙なことが起こります。
2002年にクーデターがあったことは国内でも国外でも周知のことですが、裁判所はクーデターではないと裁定したのです。
『権力の不在』にすぎない。
軍は大統領を隔離して守っただけでクーデターはなかったと。ロドリゲス氏の言う通り、裁判所には苦戦しています。明白なクーデターでさえ認めないのですから。
でもロドリゲス氏は経済学者なのでものの見方が直線的なようです。
もし、ヨハネ・パウロ二世暗殺未遂の映像にかぶせて『全てに終わりがある。いまこそ終わらせろ』という曲を流しながら、現政権への批判を報道し、辛辣なスローガンの合唱や政府打倒の呼びかけや独裁への非難を映せば、ただの歴史的な映像も新しい意味を持ち、明確なメッセージを伝えます。
放送に携わる皆さんはよくご存じでしょう。
映像を操作して印象を植え付け、特定の思考や感情に誘導するのは簡単なことです」

<スタジオ>

中野さん「ご覧頂いたのは2007年5月31日にアメリカで放送された『チャべス政権、民放テレビを閉鎖、是非を巡って徹底討論』というものでしたけど、徹底討論というか、完全な平行線でしたね。
まるで二つの真実があるみたいでしたけれども、ふつう国営放送と言うと、統制された政府の言う通りのことしか放送しない。
自由な民営放送こそが真実を報道できるんだというような言い方があるんでしょうけれども、これを見ていると、どうも真実を放送するメディアが映像を操作して、チャべスを支持する人たちがクーデター支持派を攻撃したとかというようなでっち上げ映像を流したとか、あるいは、大統領を暗殺しろというようなことまで、これは殺人教唆ですよね。
そういうことをしたとかありましたね。なんで、こんなことになるんでしょうかね。

今日は、ここからゲストの方をお招きしてじっくり話を聞きたいと思います。本日のゲストは、歌手で作家で、健全な法治国家のために声をあげる市民の会代表の八木啓代さんです。こんばんわ」

八木啓代氏「こんばんわ」

中野「八木さんは前にも一度出演していただいて、あまりにもお話が面白いので」

八木「怖い女って書かれてますよ(笑)」

中野「いや、八木さんが怖いと思っているのは検察のビルのなかにいる人たちだけではないかなという気もしますけれども。(中略)では、早速お話を伺って行きたいと思います。
まず、さきにアサンジさんのお話から始めたので、そのまま行きますけれども、ジュリアン・アサンジさんが亡命申請をしたコレア大統領ですけど、彼はアサンジさんの番組のロシアトゥデイというところに出演して、それからしばらくして亡命申請ということになったんですけど、
そのなかで、コレアさんが言っていたのは、世界のなかでクーデターが絶対に起こらない国というのはアメリカだけだと。
何でかというと、アメリカ大使館がないからだということを、モラレスさんがおっしゃったというんですけれども」

八木「ボリビアのね」

中野「まさにそれこそが今の中南米にアメリカが何をしているかということを端的に言いあわらしている言葉だと思うんですけど、
この歴史について、八木さんからじっくりお話頂きたいと思います」

八木「じっくり話しているととっても時間がなくなってしまうので非常に短く言ってしまいますと、
1960年代以降、ずっと中南米というところは、その以前の段階、要するに19世紀までというのは中南米というのはスペイン領だったわけなんですけれども、そのあと19世紀に入ってそれぞれの国が独立するんですね。
その独立していったときに、アメリカという国がちょうど上にありまして、せっかくスペインから独立したのに、今度はアメリカに経済支配されるという構図ができてしまったわけなんです。
もともと植民地の国というのは、モノカルチャー。要するに、植民地というのは独立されたら困るわけですよね。自立できると独立されちゃうわけです。
だから、モノカルチャーと言って、例えば農業だったら、これしか作らせないとか、そういうふうにして、出来るだけその国が自立できないような形を宗主国が作ってしまうわけなんですね」

中野「自給できなくなるんですね」

八木「自給自足できなくなる。そういう状況のなかで中南米諸国は独立してしまったわけです。
そうすると、今度はアメリカが入ってきて、今度は代わりに中南米を経済支配してくる。たとえば、エクアドルだったらバナナだけ作らせるとか、そういうふうなことをやってきたわけですね。
そうやって、完全にアメリカが経済支配することによって中南米のなかで一部のものすごく富裕な既得権益層がアメリカと一心同体みたいな形で利権を共有すると。
圧倒的に多数の庶民の人たちは貧しい。そういうものすごい格差社会というのがずっと生まれてきてたわけです。

そういう状況のなかで、1959年のキューバ革命なんかを始まりとして、格差社会に対する反抗みたいな動きというのが出てきます。
一番最初は、さっき言ったキューバ革命ですよね。それから73年にはチリでアジェンデ政権という、いわゆる左派政権。
左派というのはフランス革命の時の議会の席ですけれども、どちらかというと、平等を求める側ですよね。王党派と違うほう。革命側」

中野「社会の革新。制度改革。えーっと、とにかく革新を求めるほう」

八木「革新を求めると言っても、つまり王政復古とか、そっちの方向じゃないわけですから、あくまで自由とか平等とかを求める側が左派ということで。
王党派、要するに権力側みたいなのが右派というふうに分かれるわけですけど、そういう意味での左派政権というものが中南米のチリで、民主的な選挙によって生まれたと。
ところが、これが3年後にクーデターによって倒されてしまうわけですね。このクーデターというのはCIAが関与して、という。証拠もはっきり挙がっています」

中野「チリの場合はそうですね」

八木「その後も中南米では色々政権交代があったわけなんですけれども、常にアメリカと富裕層が結託している。そして、それに反乱をおこす側というのが革命を起こそうとするとかいう歴史がずっと繰り返されてきたわけです」

中野「要するに独立国で、もう植民地じゃないんだけど、社会改革をやろうとするとすごい圧力がかかってきて、改革をしようとした人はみんな潰されていくという歴史だったということですか?」

八木「そうですね。まあ、全部潰されてきたわけじゃなくて、実際にキューバの場合は革命が成功してきましたし、ベネズエラの場合はチャべスがいまだに頑張っていますよね。
チャべスの場合も2002年にクーデターを起こされたと。ところがこれは、圧倒的な民衆の支持を得て、わずか数日でもう一回クーデターがひっくり返されてしまった」

中野「先ほど言っていた2002年のクーデターですね」

八木「まさにその話ですね。ところが、テレビも裁判所もみんな既得富裕層、既得権益側だから、クーデター事態をなかったことにしてしまったというすごい話を、さっき何気に語っていましたけど、そういうことになってしまったんです」

中野「何気に言っていましたけど、あったものがないなんて、メディアが言っちゃったらそのとおりになるんですかね?恐ろしい」

八木「それに似た例が2年前に実はエクアドルでもあったんですけど、エクアドルでもクーデター未遂があったんですね」

中野「コレアさんですね」

八木「まさしくアサンジさんが今、亡命しようとしている」

中野「彼もクーデター未遂というか、もうちょっとでやられ」

八木「やられかけた」

中野「どんなことがあったですか」

八木「この時は実は、まさに私がツイッターをやっていたら、タイムラインのなかで中南米の人たちの中から『いまエクアドルでクーデターが起こっている』とかツイッターで出たんですよ。
で、え?と思ってみたら『ユーストで中継をやっている』とか言うので」

中野「クーデターの?」

八木「クーデターの。慌ててユースト見たら、ユーストで国営エクアドル放送がクーデターの中継をやってたんですよ。もう銃撃戦」

中野「素晴らしい。国政放送ってそうでないとね」

八木「それでカメラマンもどんどんそばに寄って行ってたら、スタジオから『おい!もうそれ以上近寄るな!危ない!止めろ!』とか、スタジオの声が入っていたり、スタジオにカメラマンの奥さんが電話かけてきて『お願い!あなた、止めて!』みたいな、そういう声まで入ってきて、
ものすごい臨場感のあるユースト中継をやっていたわけですね。私もそれを見ながらびっくりして、ツイッターで所々日本語訳をしながらツイートしたり」

中野「ツイッター中継」

八木「してたんですけども。
結局、そのクーデターというのは、エクアドルの警察が非常にアメリカと近い関係にあったんですけれども、彼らが大統領を誘拐して、警察病院に閉じ込めて、そしてそのなかで大統領に辞任届に署名させようとしたんですよ。
殺すと脅迫して。ところが、コレア大統領は、『殺されても辞任届に署名なんかするものか』と言って頑張っていた。
その間に、どうもコレア大統領に同情した看護婦さんがこっそり携帯をパスしてくれて、そのパスしてもらった携帯でコレアが、なんとベネズエラのチャべスに電話をかけて、いまエクアドルはこんな状態だと」

中野「チャべスに?」

八木「そう。クーデター経験者だから」

中野「先輩」

八木「電話をかけた。そうするとチャべスが、これはたいへんだというので、エクアドルの軍隊、つまり誘拐したのは警察であって、軍はその時、何が起こっているか分かっていながら、ヒヨって静観というか、どっちの側にもついていなかったんですよ」

中野「はい。警察が給料を上げろと起こした」

八木「かたち上ね。軍は、関与してなかった。見て見ぬふりをしていたんですよ。
そこにチャべスが軍のトップに電話をかけて、『お前たち、もうこれは世界中でユーストで中継されているんだよ』みたいな。『いまさらクーデターは隠せないんだよ』みたいなことを言って説得するわけなんです。
それで軍が、これはまずいというんで、大統領側につくことに決めて、特殊部隊を送り込んで、で警察病院から奪還すると。
その間、ものすごい銃撃戦をやっているというのをユーストでずーっと中継してたんですよ。
国民は、その間なにをしていたかというと、大統領府の前に集まって国家を歌いながら大統領が帰ってくるのを待っていた」

中野「やっぱ、コレアさん人気があるんですね」

八木「人気があるんですね。というのが、ずーっとユーストでぜんぶ流れている。ところが、なぜか翌日、日本のNHKでは、『昨日、エクアドルでは、一時、警察と軍とのあいだで小さな騒ぎがあった』」

中野「警察と軍のあいだで騒ぎがあった?」

八木「『あったが、クーデターのようなものではない』というような報道がされたんですね。あと、アメリカのメディアなんかも、『昨日、エクアドルで起こったことはクーデターではない』と。
要するに、小競り合いにすぎないと。で、『大統領と警察の間に誤解があったみたいだ』と。そういう話にしている。
ところが実際にユーストを見ていた人というのは、明らかにクーデターが起こっていたことが分かっている。だけども、そういう報道によっては、そのクーデター自体もなかったことにしてしまえるんですよね」

中野「なるほど。そういうものがずっと続いていたということですよね」

八木「で、話を戻しますと、中南米の場合、格差社会というのがまずありますよね」

中野「それはもうすごいんですよね」

八木「いま、日本も格差社会になりつつあると言ってますけれども、向こうはそんなに簡単な、二歩に上にはるかに大きな格差社会になっている。
そうなってくると、そのなかで放送局のオーナーというのは、完全に富裕層なわけですね。
だから、日本のテレビ局なんかの場合は、結局、広告を出すから東京電力のことを悪く書けないとか、色々そういうのがあるのかもしれないけれども、そういうこと以上にオーナーの権限が強いんですよ。中南米の放送局は」

中野「オーナーの利益というのをそのまま反映して、それがすごい少数の1%もいないかもしれないような超特権階級みたいな」

八木「そうそう。だから、もうそういう人の主張が露骨に出てしまうわけなんですね。だから、ベネズエラの場合ははっきり政権転覆をテレビ局が煽ったという事実があったわけですし、
エクアドルでもそれに近いことがあったわけです」

中野「そうすると、メディアは何もアメリカのいいなりというわけでもなくて、自分たちの利益が今の改革派みたいなのに対して、一致しないので全部潰しにかかるというところが一緒なわけですね」

八木「そうですね。だけども、その富裕階級自体がアメリカと完全に利権で一心同体状態になっているから。
それともうひとつは、アメリカにとっても、そういう富裕階層が特権階級であるということがアメリカの国益に合うという考え方をしていますから。
つまり、根本的な政策転換が起こってしまうと、例えば、キューバとかベネズエラみたいなことが起こってしまうと、アメリカとしては国益を損なうという考え方がありますから、やっぱり徹底的に富裕層の側について、彼らを応援するという立場をとっていますね」

中野「そうすると、日本に入ってくる中南米のニュースって、そういうメディアが与えているニュースだから、私たちも。
最初、チャべスさんが出てきた頃って、あいつはすごい独裁者だとか、もうすごい酷いイメージでしたよね」

八木「それはなんでかというと、日本の新聞記者の人っていうのは、向こうに行って、あんまり危険なとこに行けないんですよ。サラリーマンだから」

中野「ジャーナリストというよりはサラリーマン」

八木「そうそう。万が一、向こうで死なれたりしたら局としてもたいへんなことになりますから、けっこう、現地で、現地の新聞を買って読んでいたり、現地のホテルでテレビを見て、それを記事にしてたりするんですね。
そうすると、接するメディアがそうなんですよ。となると、チャべスなんか誰も支持してないじゃないかということになるわけですよね。
『ベネズエラでは誰もチャべスを支持してない。とんでもない独裁者だ』という記事を書く。
ところが、選挙になるとチャべスは圧倒的に勝ってしまう。なんて不思議なことだろうということになっちゃうわけですね」

中野「日本の記者もまじめに取材はしているんですね。取材と言っても新聞のことですけれども、ちゃんと自分たちは伝えていると思って、やっているんだけども」

八木「ウソを書いているつもりはないんですよね」

中野「なるほど。デモメディアってイメージの力はすごいですし、そうやってかぶせられると、本当に真実は分からなくなりますよね。
そういうなかで、映像の中だと七十何%が民間のメディアで、そうではない小資本のところはすごく小さいという話だったんですけど、実際、メディアを支配している富裕層が持っている大メディアに対して、小さいメディアというのはどういうものがあるんですか?」

八木「国によって状況が違うので、今言ったのはベネズエラの例ですよね。ベネズエラの場合は、テレスールがあるわけです。
テレスールというのは、さっき出てましたけど、キューバとベネズエラとアルゼンチンと、ボリビアも加わっていますけれども、そういうところが共同出資で作っているテレビ局ですね。
要するに、民営のテレビ局というのはほんとうに富裕層の利益を代表するようなことしか言わないので、別の視点から報道をやろうということで合弁会社として作って、そういう意味では中南米のアルジャジーラという言い方をされることもありますけど、だけどアルジャジーラってアメリカからお金をけっこう受け取っているでしょ」

中野「そうですか?カタールがバックについているから。アメリカはアルジャジーラは大嫌いみたいですよ。アメリカでアルジャジーラを放送しているところは少ない見たいですよ。
英語版ですけど。アラビア語はとんでもなく無理でしょ?一生懸命英語版を作っても見ている人はあまりいないみたい。
でも、役割としては、そういう今までにない視点からというのをやろうとして、いくつかの国が集まって、国際放送をしようとして、期待できるんですかね。
真実は今までのものよりは、反映するようになされているというか」

八木「真実というか、物事をこっちから見るか、こっちから見るか。両方からの視点からがないとおかしいですよね」

中野「そうです。違う視点というのはすくなくともこれで出てくるようになったという」

八木「そうですね」

中野「じゃあメディアの支配に対して、どういう反撃ができるんですかね」

八木「それは、中南米はテレスールという発想ができる前にも、ずっとそういう富裕層がメディアを掌握しているという状況に対して、どう戦ってくるかという歴史というのがあったんですね。
一番最初というのは、意外かもしれないです。キューバ革命の時なんです。
キューバ革命の時に、今でもあるんですが、ラジオレベルデ。反乱放送という革命ラジオ放送」

中野「カッコイイですね。ラジオレベルデ」

八木「これは、実は考えついたのがあの有名なチェ・ゲバラです。さすがに革命の天才と言われただけのことはあって、要するにラジオ放送局を自分たちで持つことによって、政府の放送はウソばっかり流すわけですよ。
自分たちのほうの情報をラジオ局で流していくと。そのことによって多くの人に自分たちの言い分も聞いてもらう。
戦争の状態ですよね。革命の状態がどうなっているのか、というのも本当のことをみんなに知ってもらうというラジオレベルデというプロジェクトというのがキューバ革命の時にあったわけです」

中野「そのカウンターというか、別の情報を出さなきゃいけないと積極的に考え出したのが、あのゲバラさん」

八木「そう」

中野「素晴らしい」

八木「このキューバ革命には、それと一緒に、レジス・ドブレというフランスのジャーナリストが一緒に従軍して、世界に対してもキューバ革命の真実を知らせるという、そういう意味ではメディアが二つの意味で、大きな役割を果たしたということです。
そのあと、70年代には、ニカラグアで革命があるんですけど、この時は、ラジオサンディーノという。サンディーノというのはニカラグアの革命の英雄なんですけど、その人の名前をとって、ラジオサンディーノと。
それが、ニカラグアの革命の情報というのをどんどん流していくということによって、非常に大きな力を持ったんですね。
でも、最終的にはニカラグア革命の時というのは、最終の頃はみんなニカラグア人はラジオサンディーノを聞いていたという伝説があるぐらい、大きな力になった」

中野「ラジオはそんなお金が要りませんもんね」

八木「そうですね。そのあと、革命戦争があったエルサルバドルでは、ラジオベンセレーモスというのがあって、そこが今度は一生懸命に革命放送をやるわけなんですけども、ただ80年代の頃になるとみんならじをあんまり聴かなくなっていた。
むしろ、時代は完全にテレビにスライドしていたんですね。
そういうこともあって、エルサルバドルは、結局、革命は最終的には成功しなかったというのがあるんですね。もちろんそれだけが原因ではないんですけれども。
そういう流れの間で、テレビの力というものが80年代から90年代にかけて圧倒的に強くなってしまっていて、もう反体制側には方法はないのかなというふうになってしまったところで、メキシコでサパティスタという、面白いことをする人たちが出てきたわけです」

中野「サパティスタ?自由貿易協定に反対をしていたあのサパティスタですね?」

八木「そうです、そうです。彼らは、いま日本でTPPが問題になっていますけれども、メキシコで当時、NAFTAという自由貿易協定が調印されようとしていた。
それに反対するために、声を挙げたメキシコの農民の人たち、それから先住民の人たちの団体なんですけども、彼らは1月1日にサンクリストバル・デ・ラスカサスというメキシコの僻地の小さな市があるんですけど、そこの市役所を占拠して、ジュネーブ協定に基づいて、メキシコ政府に宣戦布告するわけなんです。
そのことによってメキシコはかたち上は内戦になるわけなんです。正式に宣戦布告されちゃったので」

中野「どのくらいに人数だったんですか?規模はそんな大きくないですよね。田舎町を占拠しただけというのでは」

八木「というか、そもそも1月1日って休みだから、誰もいないじゃないですか。しかも朝4時なんて誰もいないでしょ。市役所に。
だから、そこを占拠したと言っても、別にものすごいことがあったわけじゃなくて、ただそれを、なぜか、その日、その場所に、世界的に有名なカメラマンがいて、しかも、イタリアの新聞記者とかが何故かいて、そして1月2日の世界のトップニュースになったんです」

中野「革命宣言?」

八木「革命宣言じゃなくて、メキシコの内戦。革命というか、宣戦布告ですね。それが、国際的なニュースになっちゃった。日本でも1月2日にけっこう大きな記事で出たんです」

中野「私は、あれはずっとすごい大きな軍隊があって、と思っていたんですけど、最初はそうだったんですね」

八木「そうですね。だから、国会議事堂を占拠したみたいな話じゃなくて、日本で言うと、あんまり名前を挙げるとあれですけど、九州のはずれのほうの、いちおう県庁所在地ではあるけれども、みたいな。あ、県庁所在地ですらないんだ。そういう」

中野「観光地?」

八木「プチ観光地。別府、みたいな」

中野「外国人記者も来てくれる」

八木「だけど、なぜかそこに、そういうタイミングで、国際的な人たちがなぜかいた。しかも、そのあと、ゲリラ軍と名乗る人たちは、特定の新聞社にだけ特ダネを送り続けるわけですね。
具体的にはホルナーラという新聞なんですけど、そこは有力の大手紙とはちょっと外れた、一的に言うなら東京新聞みたいな」

中野「三大新聞のちょっと下みたいな」

八木「5大新聞のもう一つ下ぐらいの。それぐらいの位置の新聞に特ダネを送っていくわけなんです」

中野「次にこういうことをしますよ、というような情報とか?」

八木「声明文とか。そうすると、ホルナーダはそれを一面トップにドカンと掲載しますよね。そうすると、ゲリラ軍の最新の情報はそこでしか読めないもんですから、みんなその新聞を買うわけですよ。
ということであっという間にホルナーダは他の新聞を抜き去って売り上げが一位になってしまって。そうなると他の新聞も最初は無視しようとしていたのが、放っておくわけにいかなくなるので、取材競争が始まりますよね。
そうすると、司令官が、今日はこう言った。今日、これをやったというような取材合戦が始まってしまって、ものすごく大きなニュースになってしまった」

中野「それって意図的にやっているんですよね」

八木「明らかに意図的ですよね。そういう意味では、本当にメディア戦略がうまかった」

中野「あの、マルコスさん?」

八木「マルコスさん。そうですね。一時はアイドルのように人気がありましたね。当時、メキシコを歩いていると、もうTシャツとか、ランチマットとか、色んなグッズをみんな勝手に作って売ってるというぐらいの人気があった」
中野「そっかあ。メディア戦略」

八木「メディア戦略ですね。話を続けると、当時はテレビの時代で、もうダメかと思われたんですけど、新聞を使ったという新しい手口でマルコスは成功したわけですね。
サパティスタ。で、そのあと、今は今度はツイッターとユーストリームの時代ということですかね。
さっき、言った話ですけど、アサンジさんが亡命予定のエクアドルのクーデターというのはユーストリームでずっと中継されているということによってクーデターは阻止されたという部分がかなり大きいと思います」

中野「あ、そうですね。ということは、80年代ぐらいにラジオの影響がなくなってしばらく沈んでいたんだけれども、大きく言えば、ネットが使えるようになって、またメディアを使った革命といったらいいのかな。反撃が」

八木「そうですね。ものすごく出てきた。それと、ここ最近ずっと、中南米がいわゆる左傾化してきたという」

中野「左派政権がいっぱい出てきたといわれているやつですね」

八木「あるいは、反米政権が増えてきたと言われたりしますね」

中野「反米政権とも言われますね」

八木「それというのは、その辺と密接なかかわりがありますね」

中野「そっかあ」

八木「たとえばいくつか例を挙げてみると、エルサルバドルという国があって、それは80年代に散々内戦で何十万人も人が死んで、何百万人も難民が出たというような国なんですね。
そのあと、いちおう、和平協定を結んで、選挙をやるようになったんですけれども、やっぱり富裕層側にアメリカ側からの援助もあるし、お金も圧倒的に持ってるし、メディアもぜんぶ富裕層が握っているということがあるので、選挙をしたって絶対ゲリラ側が勝てないわけですよ。
ところが、そのエクアドルで、一昨年に政権がひっくり返っちゃった。つまり、元ゲリラだったFMLN、ファラブンド・マルティ民族解放戦線。民族解放戦線といっても、これが政党なんですけど、これが政権を取っちゃったんですよ。
これが本当にインターネット選挙みたいなかんじだったんですけれども、どういう感じでやったかというと、まずテレビ局は民族解放戦線側のことを徹底的にバッシングするわけなんです。
あいつらは元ゲリラだ、テロリストだ、テロリストと今でも手を組んでいるんだみたいな、ものすごい誹謗中傷をやるわけですね。
それに対抗するために、どうしたかというと、選挙事務所にウェブカメラをつけるんですよ」

中野「自分たちの?」

八木「自分たちの。だから自分たちの選挙事務所の中をぜんぶウェブカメラで常に中継。常に誰でも見ることができ、中の会話も聞くことができる。
『わたしたち、こんなにクリーンです』みたいな。そうしてウェブカメラで常に選挙事務所のなかに、どういう人が入っていて、どういう人がいて、どんな会話が交わされているか、どんな感じで選挙運動をやっているかもぜんぶクリーンに見せる」

中野「なるほどね。ゲリラだとか、革命派だとかいうんで、やっぱり怖い人たちだとかいうイメージが」

八木「そう。なんか裏であるんじゃないか、みたいな。そういうのをとにかく払拭するためにそういうことをしたというのがひとつと、
もう一つはYoutube。実は、このエルサルバドルの選挙の時に、ある有名な司会者がお互いの、それぞれの大統領候補と対談するという企画があったんですね。
その司会者が結構いじわるな質問を両方の候補者に対してやるわけなんです。
もちろん、元ゲリラ側、民族解放戦線のマウリシオ・フネス候補に対しても、けっこういじわる質問をするわけなんですね。なんか、あなたも政権取ったら独裁者になるんじゃないか、とか。
ところが、彼は非常に頭が良くて、非常にユーモアとウィットに富んだ感じで、すごい上手にぜんぶ返していくわけなんですね。会話が非常に良かった。
一方で対立候補というのは、もう絶対に、たぶん選挙で勝つと思ってたんですね。すごく油断していたというのがあって、あんまり準備もしてなかった」

中野「マスコミがなんか、こいつ絶対に勝つとかっていうような世論調査ではないですけど、予想を出したとかいうんじゃなかったでしたっけ」

八木「それはね、ブラジル。それで、こっちの候補のほうは、まず自分たちは勝つだろうと思った。そういうことで変に余裕を持っていたところに、その司会者がいじわる質問をしたんですね。それっていうのは、相手の候補というのは、元警察官だったんですね」

中野「検察官僚あがりの候補」

八木「そう。検察官僚あがりで、FBIで勉強したとかいうのがウリの人だったんですよ」

中野「なんでそういうことが?」

八木「要するにアメリカと自分が親しい、近いと」

中野「そんなものがウリになるの?」

八木「なるんです。で、『その警察官だった頃に、あなたは人を殺したことがあるという噂があるんですけど、本当ですか?』という質問されたときに、露骨に動揺して、一瞬、まともな受け答えができなかったんですよ」

中野「正直な人だ。でも、出ちゃうんですね、テレビって」

八木「出ちゃうんですね。ところが、テレビって一瞬で流れるでしょ。ところが、今、Youtubeの時代でしょう。そうすると、そこだけ切り取ってYoutubeで何度でも流れるし、消しても消しても、誰かがアップするから、その映像が見られる」

中野「悪夢だなあ」

八木「そう。その悪夢が起こってしまって、それでエルサルバドルでまさかの革命軍が大統領選挙で勝つという」

中野「ファラブンド・マルティが選挙で勝ったなんて考えてみればすごいことですよね」

八木「すごいことです。さっきおっしゃったブラジルでは、大統領にはなれなかったんですけども、緑の党というのが大統領選の前に、緑の党から立候補した人がいて、この人が徹底的なツイッター選挙を仕掛けるんですね。
最初は完全に泡沫候補と見られていて、いわゆる新聞の世論調査では、せいぜい2、3%。とって6%みたいな感じで、事前の世論調査ではされていたんですよ。
ところがふたを開けてみると、この緑の党の候補、マリーザモンチというんですけれども、彼女が二十数%取っていた。それどころか、首都圏では48%というダントツ一位だったんですよ」

中野「そのずれ」

八木「いったい、なんなんだ、そのずれは、というだけじゃなくて、しかも、でも二十数%だったら大統領にはなれなかったんですけど、ただキャスティングボートを握れたわけですね。
つまり、一位と二位で決選投票をするときに、その三位のマリーザ・モンチがどっちの側につくかで、大統領が決まるという立場に立ったから、一位と二位が、要するに両方とも三位の、緑の党の機嫌を取らなきゃいけなくなって、それは当然、政策に反映されるわけなんですよ。
そういうことが、中南米でも起こるようになってきた」

中野「なるほど。じゃあ、やっぱりメディアというのを使いこなす。反撃のためのメディアを持つというのはすごく大事ということですね。
中南米を今回取り上げたのは、やっぱり世界中、どこも非常に暗い状態で、デモがいっぱい起こっていますけれど、先があまり明るくない中で、
中南米というのは、一足先に改革の運動を起こしてきて、今のオキュパイの運動なんかも、原型を辿っていくと、中南米にあるというところにあるんですけど、その希望というか、そういうところが見えるとこだったんですけど、
そこにはメディア戦略みたいなことがあったんだということに」

八木「そうですね。もちろん、そうですね。だから、中南米の場合は急にインターネットだけが単独で出てきたというよりも、それ以前のラジオの時代から」

中野「ゲバラの時代から」

八木「そう、ゲバラの時代から、とにかく、大手メディアというのは基本的に富裕層なり、権力側を代表する、権力側の味方だから、私たちは、その反対する側というのはどうやってそれを崩していくかという発想がもともと昔からあったというのがありますよね」

中野「日本よりもはっきり見えたということですね」

八木「そうですね。初めから見えてた。日本というのは、割りと最近までメディアを普通に信じていた人というのがすごく多い。原発事故当たりで、初めて、アレ?おかしいなみたいな」

中野「もうひとつ、お聞きしたいことがあるので、これはぜひ。
前回メキシコの政情、カルデロン大統領という非常に不人気な大統領が出てきて、その不人気な大統領が大統領になったせいで麻薬戦争みたいな恐ろしい事態になったという、
非常に恐ろしいけれども、とっても日本の状態とかぶるお話を頂いたんですけど、そのあと、メキシコで選挙があったんですよね。そのアップデートというか、非常に興味深いお話なので、お話頂けませんか?」

八木「はい。そのまえに、まさにかぶるというのが、だから不人気な人が政権を取ると必ず何かそういう戦争方向というか、揉める」

中野「要するに国民に向き合うのが怖いからというか、嫌だから外に、ということですね」

八木「メキシコの場合は麻薬戦争。まさか、隣りの国に攻めるわけにはいかないですから。アメリカですから。だから、麻薬戦争という方向で、行ってしまったと。
日本の場合はちょうど政権が不人気だと、中国とか韓国とか」

中野「構図は同じなんですね」

八木「構図はまったく同じですよね。同じことがまず起こっているわけなんですけども、
ところがメキシコの場合は麻薬戦争のほうにやりすぎちゃって、もう今、メキシコで一番安全な都市はメキシコシティだといわれるぐらい、
麻薬戦争が、最初のうちは北部の一部の都市だったのが、全土に広がっちゃって、本当に死者が何万人も出て、しかも最初は、政府の発表では、いわゆるマフィア関係者で、マフィア同士の抗争なんだという説明をしてたんだけども、
どうもそういうことではなくて、相当な数の民間人が巻き添えを食ってるということが去年ぐらいから明らかになってきたんですね。
そして、民間のハビエル・シシリアという元々詩人なんですけど、そういう人が中心になって、とにかく和解をしていこうと。国民的な和解が必要だみたいな運動なんかも出てきたり、麻薬戦争に反対するデモとか、あるいは、キャンピング?」

中野「キャンペーン?」

八木「じゃなくて、長距離をデモするというのをなんて言うんだろう」

中野「長距離をずっとみんなで歩いて」

八木「バスを使ったり。なんて言うんだろう。そういうキャンペーンみたいなのをやったり。今、アメリカでもやっているんですよ。
メキシコの麻薬戦争に反対するキャンペーンみたいなのを。そういうことをやったりもしているんですけども」

中野「そこまで対立がすごくなったので、じゃあ停戦しましょ、といっても簡単に引けないところに行ったということですか?
暴力団みたいなのが抗争している状態があまりにも激しくなって?」

八木「というより、むしろ政府は徹底抗戦を呼びかけているわけですよ。あくまで起こっていることはマフィアの抗争だから、政府はそれに対して徹底抗戦すると。
そのことによって、今度は治安維持法というのを可決する。
この、治安維持法というのが可決されてしまうと、令状なしで家宅捜索をしたり、逮捕したりすることができるとか、要するに、ものすごい危険な法案、治安維持法までが通ってしまった。
この麻薬戦争を口実に、いまカルデロン政権はどんどん軍備を増強させているわけですよね。
結果的にそれというのは、だから本当に対マフィアなのかという」

中野「結局、政府が反対派を取り締まるためにも使われているということなんですね」

八木「そうそう。まさにそういうことなんですね。そういう流れにもなってきているので、非常にカルデロン大統領の人気というのが落ちている」

中野「ひどい話ですよね。なんか、大統領に当選した時に、バルコニーで就任演説ができなかったとおっしゃっていましたね」

八木「そう。できなかった。それで、ついこのあいだ、9月16日がメキシコの独立記念日なんですけど、独立記念日というのはおんなじように、大統領が大統領宮殿のバルコニーに出て、前に大きい憲法広場があって」

中野「国の一番大事な式典ですよね」

八木「そう、そこの式典で、『独立バンザイ!ビバ、メヒコ!』ってやるんですが、そうすると、国民がみんな『ビバ!メヒコ!』ってやるのが、実はその映像がYoutubeで見られるんですけど、
完全に大統領が一生懸命に演説をしているのを誰も聞いてなくて、国民が憲法広場に集まった人たちがほとんど全員で『ひ・と・ご・ろ・し!ひ・と・ろ・ご・し!』って」

中野「帰れ!辞めろ!と。なんか、似たような場面が最近あったような」

八木「ありましたね。日本でも」

中野「最近、新宿あたりであったような気がしますね」

八木「それよりもっと数十万人ですね。
あの感じとしては。数十万人で『ひ・と・ご・ろ・し!』というのと『不正選挙!不正選挙!』っていう大コールが。
もう演説の声が聞こえないということが、ほんの10日ぐらい前に起こってた。
それで、まさにそれがカルデロンの後を継いで今後、大統領になるペニャニエトのことですね。その『不正選挙』と言っているのは」

中野「後を継いでというのは、違う政党なんだけど、実は後継ぎということになるんですよね」

八木「そうですね」

中野「これから就任する方ですよね」

八木「そうです」

中野「この間の不正な操作というか、裁判に持ち込まれて、本命の候補が引きずり下ろされてしまった、ロペス・オブラドールさん。
あの方が今度の選挙でも出てきて、オキュパイ運動をやっているような人たちがバックについて、要するにすごい大衆的な人気があったと言うように聞いているんですけど、今回負けてしまったらしいですよね。
それで、不正選挙っていう」

八木「ええ。ところが、アメリカでFBIが何かの容疑でどこかを探索したら、メキシコの不正に印刷された投票用紙。要するに、ニセの投票用紙500万票分が出てきたとか。
とにかく、そういう話がいっぱいあって、各地で投票箱がすりかえられたとか、そういう話に、懐疑にいとまがなくて、
だから投票直後から、これは相当大規模な不正選挙が行われたという話がすごく出ていたんですよ」

中野「なるほど。前回もそうだったじゃない。前回も不正選挙だったじゃないってね」

八木「今回も、だからほとんど多くのメキシコ人は不正選挙だったと信じていると。
なので、独立記念日のあの日に、メキシコ人がみんなで『不正選挙!不正選挙!』と大統領官邸の前で絶叫するという、そういう異常事態が起こっているわけですね」

中野「メキシコの話は、このあいだ八木さんをお呼びしてお話を聞いてから、本当に似ているように見えてきて、今の日本を見ていると、だからすごい怖いですよね。
だって、メキシコはそれで、麻薬戦争ということで、結局、人命が失われるようなところまで行っちゃったわけでしょ。
だから、人気がなくて、正当性のない人が国の指導者になったら、これはものすごいやばいことなんじゃないかなという」

八木「そうですね。人気取りのために何をするか分からないと。
そういう意味では今の尖閣問題なんて、まさにそうでしょ。領土問題に話を持っていって、どうするんだみたいな」

中野「恐ろしいです」

八木「恐ろしいですね」
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