地中海型の食事と健康:リー湘南クリニック
2012-10-12

地中海型食事: 文化的遍歴 翻訳「リー湘南クリニック」から
Ferrari F. and Rapezzi C. The Mediterranean diet: a cultural journey Lancet 377: 1730 May 2011
地中海型食事は、1950年代の「7カ国研究」に端を発した。栄養学者、Ancell keysは南イタリアとクレタ島・住 人の心血管機能は、北欧に比べはるかに優れていることに気づいた。
彼は、この結果をオリーブ油、パン、野菜、そして穀類の大量摂取に求めた。
今日、地中海型食事の概念はよく定義され、フードピラミッドに示されている。
主な特徴は: 植物に富むこと(野菜、果物、丸挽きの穀類、ナッツ類、そして豆類); 主な脂質はオリーブ油であること; 少量から中程度の、魚、パン、そして家禽類の摂取; 相対的に赤肉の摂取量が低いこと; そして、食事中、赤ワインの適量摂取。
ここから、食事の文化的そして料理法を観ていく。
料理法の観点から、地中海型という言葉は地中海と同じくらいあいまいで、20以上の国があり、それぞれが独特の料理法をもつ。
食物は、国家、地域、家族、あるいは個人の独自性の重要な要素である。 だから、pizzaとスパゲティーはイタリアと関係し; チーズとパテーはフランス; ホムスは Magreb《=Maghreb: モロッコと西サハラ、アリュジェリア他の地域》; mezeはレバノン; tagineと pastillaはモロッコ; パエリアはスペイン; bacalauはポルトガルと関係する; などなど。
それで、地中海型食事とは? ピザ、タジン、あるいはパエリア? 実際は、どれもがである(Actually, it is none and all of these at the same time.)。
なぜなら、食事(diet)は完成した料理より成分に関連し、そして共通する成分のうち、オリーブとオリーブ油こそが地中海型食事の真の独自性である。
食事の概念は古い。すべては、紀元前一万年にメソポタニアに遡る、当時、地勢的拡大に伴い、農業が地盤を築き、食料が世界中へ輸出された(グローバリゼーションの最初の例)。
に、農業はまた文明の始まりを示す: 人類が動物と距離を置き始めた。農家は、もはや、狩猟者でもなく単なる摘み手でもない。
農家は生産者で、自然(nature)から明確に区別される。パンは農業と文明のシンボルである。パンは自然界には存在せず、複雑なテクノロジーをもって作られた人工物である。
パン、オリーブ油、そしてワインは、ギリシャそして古代ローマ人の食事の基礎で、キリスト教では特に重要である。
オリーブは平和の象徴で、キリストがヒトになった時「汝は、私の肉体(パン)と血(ワイン)を食すであろう」と述べた。その供述は、動物を生贄にし、神格化を求めたそれまでの地中海宗教の真逆である。
ある日、北欧からの人々(表*にある、バイキング: 地中海食を食さない)は、ローマ帝国を侵略し支配した。
だから、2つの相反する料理文化が遭遇し、混ざり合った。
バター、ビール、ポークそして他の肉類はノルディック文化の基礎で、栽培したものではなく、森から直接調達された物に由来する。肉は、直火で調理される。
より大きいことはより強いを意味したので、絢爛さは侵略する狩猟者に重要であった。
反対に、ローマ人は倹約的農家だった。彼らはまた、異なる料理法を用いた: 火で調理するにあたり、(スープにみられるように)煮ることが好まれた。
2つの文化が癒合した典型的な近代の例は、サンドイッチあるいは paninoである: パン、ポーク、バター、そして野菜が一緒である。この種の混じりあいは、なぜ真のヨーロッパ料理が存在しないのかを説明するが、複数の混じり合いにより特徴づけられる異なる料理の絶え間ない進化をも説明する。
このことはまた、北欧と南欧料理の多くの違い、そして地中海食のいくつかの混在を説明する。
豊富な美、新鮮味、そしてシエスタ(昼寝)を伴う地中海型伝統(Koine)の好ましい身体的影響も考慮されるべきである。
今日、われわれは食べ物とライフスタイルにおけるアンチテーゼに直面する
: ファースト vs スロー; 食物の産業化 vs 新鮮あるいは有機原料; グローバリゼイション vs 局地化; 保存 vs 新鮮; キングサイズ vs バランス、などなど。地中海食では、取り分け(small portions)、新鮮さ、均衡、そして食べる楽しみに力点がおかれる。
これこそが、これら食事に関し素晴らしい点である。食べ物は、美、調和、そして均衡とリンクした医療になった。
*表 地中海型 vs 北欧型 の大きな違い: Romans vs Vikings; 農業 vs 狩猟; 倹約 vs 絢爛; 貧乏 vs 裕福; 農家 vs 貴族; 水 vs 火; パン vs 肉; 野菜 vs ポーク; オリーブ油 vs ラード、バター; ワイン vs ビール
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食事とアルツハイマー病危険因子あるいはその予防: 最近のエビデンス 2011 May;11 NCBI 翻訳「リー湘南クリニック」から
要 旨
アルツハイマー病 (AD)の予防あるいは発症遅延、そして進行を遅延させることは、高齢者の健康状態および QOL改善につながる。
血中飽和脂肪酸の増加は、年齢に関係した認知能および中程度認知能障害に負の影響を与ええる。
さらに、最近の疫学的証拠は、魚、単価脂肪酸と多価脂肪酸(特に、n-3多価脂肪酸)の摂取と認知能低下と痴呆症のリスク低下に関連を示唆する。
認知能の低下と血管性痴呆症の増加は、牛乳あるいは乳製品の低摂取と関係することが判明した。
しかしながら、無調整(全脂肪)乳製品摂取は、高齢者において認知能低下と関係する可能性がある。
アルコールの少量から中程度摂取は、痴呆症と ADの発症を低下させる可能性があるが、血管性痴呆症に対する、認知能の低下や前痴呆症症候群の予防効果はエビデンスに乏しい。
果物や野菜の摂取と認知能の関係に関するエビデンスは限られているが、認知能低下、痴呆症そして ADの予防効果を示唆する。
ごく最近、地中海型食事と認知能低下予防との強い関係が明らかになったが、地中海型食事は、複数の食材、ミクロ- そしてマクロ-栄養素(個々の要素は、痴呆症と前痴呆症候群に対して、予防効果がすでに提唱されている)の組み合わせである。
実際、最近の前向き試験は、地中海型食事は認知能の低下を遅延し、中程度認知能障害から ADへの進展を防止し、そして AD患者で全死亡低下と強い関係を示す。
これらの発見は、地中海食は ADのリスクばかりでなく、前痴呆症候群から明らかな痴呆症への進展リスクへ影響を与えることを示唆した。
これら要因に関する最近のエビデンスを基に、決定的な食事の推奨は不可能である。
しかしながら、心血管系および代謝性疾患の危険を低下させるために、魚油、植物油、非でんぷん質の野菜、低糖化指数の果物と砂糖添加が少ない食品、そして中程度のワイン摂取が勧められる。
このことが、痴呆症と ADの予防と管理に新たな機会を広げるであろうことが望まれる。
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栄養学的な説明ではないが、食事と生活、そして環境も大いに健康に影響はするだろう。
北米、北西ヨーロッパ型の食事は肉と動物脂肪の摂り過ぎになりやすいのも事実だ。
日本食、中華食についても研究はされているようで、健康に良いようですね。
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コメント
コメントをありがとうございます
冬はしのぎやすいとはいえ、日照が少ない北西ヨーロッパでは美味しい野菜ができるわけもないので、特有の肉と動物脂肪に偏った食事になったのでしょうね。
北側が特殊で、地中海型の方が世界的に普通かなとと思って来ました。
今後も宜しく。
北側が特殊で、地中海型の方が世界的に普通かなとと思って来ました。
今後も宜しく。
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また遊びに来ます!!
ありがとうございます。