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通貨戦争(59)量的緩和第三弾と財政の崖:三橋

 アメリカは量的緩和の第三弾に踏み切った。
 米ドル、ユーロ、人民元と流動性の過剰供給はとどまるところを知らない。
 通貨の増刷戦争である。
 特に欧米は、いずれも国民の格差拡大により実体経済はなかなか拡大しないままに、マネーは投機市場に流れてゆく。
 雇用は回復せずに、生活必需品が物価高騰となる。
 新興国、後進国のインフレが煽られ、食糧危機、エネルギー危機へ向かいつつある。
  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
   量的緩和第三弾と財政の崖   9/20  三橋貴明 Klugから

 アメリカのFRBが、雇用環境が改善しないことなどを受け、量的緩和第三弾の実施を表明した。

 『2012年9月14日 産経新聞「米FRBが量的緩和第3弾 経済見通し下方修正、効果により追加も」
 米連邦準備制度理事会(FRB)は13日、景気回復を後押しするため、住宅ローン担保証券(MBS)を毎月買い入れる追加の量的金融緩和策の実施を決めた。
 FRBは経済見通しも下方修正し、記者会見したバーナンキ議長は「経済が弱まれば購入を拡大する」として、一段の追加緩和も辞さない姿勢を強調した。
 FRBは同日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、MBSを毎月400億ドル(約3兆1千億円)追加購入する方針を決定。14日からニューヨーク連邦準備銀行が買い取りを始め、9月中は230億ドルの購入を見込んでいる。
 FRBの量的緩和策は、市場に大量のドル資金を供給して流動性を潤沢にし景気を下支えるのが目的で、デフレ懸念の解消を目指して2011年6月まで行われた「第2弾」以来。
 バーナンキ議長は「雇用情勢が引き続き大きな懸念材料だ」と述べ、就業者数が伸び悩むなど低迷する雇用情勢が景気を押し下げる危機感を強調した。(後略)』

 今回のアメリカの量的緩和は、リーマンショック以降の量的緩和第一弾と同様に、政府系金融機関からMBS(不動産担保証券)を購入する形になるようだ。(量的緩和第二弾は長期米国債の買い取りだった)

 今さらであるが、量的緩和とは一定の目標(今回の場合は「労働市場が著しく改善するまで」となっている)を達成するまで、国内の市中銀行や政府系金融機関から中央銀行が債権(主に国債)を買い取り、新たに発行した通貨で支払いを行っていくことだ。
 アメリカの量的緩和第三弾の場合、月に400億ドルのMBSを金融機関から買い取っていく。すなわち、毎月400億ドルの「新たなドル」が市中に供給されることになる。

 MBSや国債は、金利を生む。それに対し、FRBが新規に供給したドルは、金利を生まない。金融機関側にしてみれば、金利収入がある国債やMBSと、金利が発生しないドル通貨を交換したことになる。
 結果的に、金融機関は手元の「金利を生まない」ドルを民間企業や家計に貸し出そうとするため、国内の投資が増え、雇用が改善する「はず」というロジックになっている。
 とはいえ、上記の雇用改善までのプロセスには、複数の「課題」がある。

(1) デフレ化が進行し、民間の資金需要が高まっていないことが明らかな状況で、果たして金融機関が国債やMBSの「中央銀行への売却」に応じるか

(2) 金融機関にドルなどの新規通貨が供給されたとして、果たしてそれが民間に借りられるか? 民間への貸し出しが増えない場合、金融機関側は、
国債やMBSを中央銀行に売却して受けとったドルなどの通貨をもてあまし、国債やMBSを購入せざるを得ない
 という、バカバカしい状況になってしまう。

(3) 新たに発行されたドルなどの通貨が民間に貸し出されたとして、それが本当に工場建設や店舗開設など、雇用を生み出すための投資に向かうのか
 通貨が株式や先物取引に向かうと、雇用が生み出されない上に、単なる資産バブルを醸成してしまう。特に、原油先物や食料先物にドルが向かうと、投機的需要により「世界中」のガソリン価格や食料価格を高騰させ、途上国を中心に世界中が多大な迷惑を被る。

 日本の場合、デフレ深刻化で民間資金需要の縮小が甚だしく、すでにして日本銀行が通貨発行のために銀行から国債を買い取ろうとしても、銀行側が国債売却に応じないタイプの『札割れ』が発生している有様である。
 日本の銀行側にしてみれば、国債を日銀に売却して日銀当座預金(日銀預け金)の金額を増やしても、その通貨から「より高い金利」を得られる可能性は低いのだ(あるいは、低いと判断しているわけだ)。
 そうである以上、そもそも日銀に国債を売却しないという選択に走ることになってしまう。

 また、現在の銀行は完全に「社会的役割」を喪失しており、債権の不良化を恐れ、今や「資金があれば生き残り、かつ利益を稼げる」中小企業にすら、お金を貸さない事態に至っている。
 確かに、バブル崩壊により中小企業の担保能力が縮小はしたが、それにしても、
「少しでもリスクがあるのは嫌。だから、100%安全な国債を買う」
 のでは、資金を潤滑油のごとく国民経済に供給していくという、銀行の役目を忘れてしまっていると糾弾されても仕方がないだろう。

 経済のバブル化とは、要するに「民間」が健全な範囲を超えて負債を増やし、資産を買い漁る現象だ。
 負債を増やして資産を購入しても、実質金利が投資利益を下回るため、民間の企業や家計が一斉に市場に参入してくる。
 プレーヤーが増えることで資産価格が上昇すると、ますます投資利益が実質金利を上回ることになり、さらなる民間投資を呼び込む
 その循環が行き着くところまで行き着き、資産価格が頭打ちになった途端、お金の流れが一気に反転するわけだ。

 すなわち、バブル崩壊である。
 バブル崩壊後は、負債を増やして資産を購入しても、投資利益が実質金利を下回ってしまう。そうなると、民間は負債の増加や資産の購入ではなく、むしろ資産の売却や負債の返済を志向するようになる。
 プレーヤーが一斉に負債返済、資産売却という行動を採ると、資産価格の下落が加速し、国内の支出(GDP)が一気に縮小することになるわけである。

 というわけで、07年までのアメリカ不動産バブルの主役を務めた、家計の負債状況を見てみよう。

【図110-1 アメリカの家計の金融負債の推移(単位:十億ドル)】
20110713_02.png
出典:FRB

 図110-1の通り、アメリカの家計は08年以降、負債を増やして消費や投資を拡大するどころか、むしろ「借金返済」に走っているのである。特に、住宅ローンの残高は、08年以降、一度も前期を上回ったことがない。

 住宅価格の下落ももちろんだが、それ以上に住宅ローン残高が減り続けていることの方が問題だ。アメリカの家計が住宅ローンを返済すると、その金額分、アメリカのGDPは増えない。借金返済は貯蓄に該当し、消費でも投資でもないのである。

 図110-1の03年から07年を見ると、アメリカの家計は年にほぼ1兆ドル(80兆円)ずつ、負債残高を増やし続けている。
 この時期のアメリカの家計が負債を増やし、投資や消費に使ったお金が呼び水となり、当時の世界的な好景気が維持されたわけである。

 ところが、現在のアメリカの家計は、まさに90年代の日本の企業同様に、負債返済に邁進している。
 何しろ、アメリカの家計の消費は1000兆円を越え、「世界最大の需要項目」である。その「主役」たちが借金返済という貯蓄に走り、消費や投資を減らしている以上、日本は外需志向の成長戦略を、いい加減に修正しなければならない。
 07年まで続いた、アメリカの家計の負債増に基づく「祭り」は、もう終わったのである。


 多くの日本人が理解していない気がするが、経済とは「お金が動く」こと(フロー)が重要であって、「お金があること」(ストック)には、さしたる意味がない。
 より具体的に書けば、「誰かがお金を借り、使うこと」で、初めてGDPが成長するのである。家計や企業がどれだけお金を貯めても、あるいは借金を返済しても、GDPは1円も増えない。

 アメリカの苦境が根深いと思われるのは、FRBが史上最大規模の量的緩和を実施し、銀行に流動性がジャブジャブに溢れているにも関わらず、それを同国の家計が借りようとしないという点である。

 無論、銀行側が不良債権化を恐れて「貸さない」という問題もあるだろう。だが、いずれにせよ、バブル崩壊後の民間にお金を借りさせ、GDPとして支出させるというのは、大変に困難なのである。
 どれだけFRBが銀行に流動性(準備預金)を提供しても、それが借りられて使われなければ、GDPには影響を与えない。すなわち、雇用の改善には結びつかないというわけだ。

 さて、アメリカの家計の住宅ローンは四半期ごとに減少しているとして、肝心の住宅価格の方はどうだろうか。
 スタンダード・アンド・プアーズのケースシラー指数を見る限り、回復しているとは断言できない状況だ。

【図110-2 S&Pケース・シラー指数(2000年1月=100)】
20110714_03.png
出典:S&P※季節調整済み

 09年5月に、一旦は底を売ったアメリカの住宅価格であるが、10年7月には早くも息切れしてしまい、その後はジリジリと下がり続けている。
 さすがに07年から翌年にかけたような激しい下落局面は発生していないが、アメリカ政府が住宅支援を行い(すでに終了したが)、FRBが大規模な量的緩和を実施していた最中にさえ、住宅価格は下落か、もしくは精々が横ばいの状況だったのである。

 バブル崩壊後の日本の例を見る限り、今のアメリカが経済のデフレ化を食い止めるには、政府が財政出動をしつつ、金融緩和を拡大するしかない。
 特に、アメリカの場合は、政府が家計に住宅購入支援を行うと、不動産市場や住宅価格に大きく影響を与える。
 ケースシラー指数が09年5月以降に持ち直したのは、初めて住宅を購入するアメリカの家計に、8000ドルの税額を控除するという、大規模な支援を行ったためだ。

 とはいえ、ティーパーティの影響が強い共和党に議会を握られている以上、オバマ政権は大々的な財政出動は実施できない
 そうなると、またもやFRBがこれまで以上に長期米国債を買い取る、金融緩和を実施するしかない。すなわち、量的緩和第三弾だ。

 だが、量的緩和第二弾の例でも明らかなように、金融緩和のみでは家計の負債拡大や雇用改善が望めない。ならば、どうするのか。

 以前のアメリカであれば、戦争という「需要拡大」により、苦境を脱することができただろう。しかし、現在のアメリカは、どちらかと言うと「引きこもり」状態にあり、国内の雇用改善以外には興味がないように思える。アフガニスタンからの米軍撤退も、今月から始まる。

 まさに、出口が見つからない状況というわけだ。

 結局、オバマ政権としては、出口が見つからない中において、せめてもの策ということで、量的緩和第三弾を実施する以外に道がないように思えるわけである。
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