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もうすぐ北風が強くなる

日本で原子力への異議、前代未聞の広がり

 8/5 仏ル・モンド紙 フィリップ・ムズメール特派員(福島) 書き起こし翻訳「フランスねこのNews Watching」から

   日本における原子力への異議、前代未聞の広がり


将来のエネルギー政策を選択するこの時期、野田首相は原発反対派に面会しなければならないだろう。

●「方向転換」

8月3日(金)に予定されていた野田佳彦首相と原子力に反対する市民らの面会は、最終的に実現しなかった。

「現在準備を行っているところです。近い将来に実現できると思います。」

野田首相は明言した。首相がいかにこの面会を「原発の安全性に異議をとなえるデモの参加者たちの説得にとどめたい」と願ったとしても、今回の面会は政府の方針転換を担うものとなるだろう。7月12日、原子力に反対する市民らとの面会可能性について国会議員から質問を受けた首相は次のように答えている。

「官邸周辺では常にいろいろなテーマについてのデモが行われています。私がこうしたデモの参加者と会うために出て行ったことは、これまで一度もありません。」

野田首相が意見を変えた背景には、福島原発事故が起きた当時首相をつとめ脱原発を支持する菅直人氏の介入があったと見られている。
原子力に反対する声は1960年代・70年代以来のかつてない大きな広がりを見せている。世論調査によれば、およそ3分の2の日本人が原子力からの脱却を望んでいるのだ。

●広がる「紫陽花(あじさい)革命」

原発に反対する市民らの運動を報じない日本メディアによる故意の沈黙と、運動の規模を小さく見せようとする警察の努力にもかかわらず、「紫陽花革命」にはますます多くの人が参加し始めている。

市民による原発反対運動に先鞭をつけたのは、(福島原発事故の翌日である)2011年3月12日に東京電力本社前で行われた約20人の市民による抗議行動だった。運動は2011年9月、原子力政策を所管する経済産業省前へのテント設置により明確な形を持つものとなった。
テントを通じた抗議行動は今も経済産業省前で続けられている。
2012年3月29日、13の市民団体がつくる首都圏反原発連合は、首相官邸前で原発に反対する抗議行動を行った。以来、毎金曜日、家族連れを含む多くの市民が参加する形で抗議デモは続けられている。

抗議の声は、政府が大飯原発の再稼働を決定した6月16日以降更なる高まりを見せており、音楽家の坂本龍一氏や鳩山由紀夫元首相などの著名人も参加している。運動の成功は、7月28日の緑の党結成にもつながった。

8月3日、3千人の市民が新たに大飯原発の停止を求める抗議を行った。市民たちは同時に、原子力規制委員会の委員長候補として指名されている田中俊一氏への指名を見直すよう求めている。
田中氏は原子力委員会の元委員長代理であり、「原子力ムラ」の重要な一員と見なされている。田中氏は2011年、原子力委員会で公職についていた時期に原子力を推進するための資金を受け取っていたと見られている。
同氏への指名は、与党民主党内でも大きな反発を招いた。

●原発政策に対する福島の思い

こうした中、政府は2030年に向けた原子力発電の位置付けに関する決定を迫られている。日本政府は原子力存続の可否についての国民投票を拒否し、2030年以降も原子力を15%まで維持する案の実施を望んでいる。
しかし検討のプロセスに民主主義的な色合いを与える意図で、インターネットや公聴会を通じた意見聴取のしくみづくりが行われた。

最後の公聴会は8月1日、福島市で行われた。人々の想いと緊張が流れる中、30名の市民らは原子力行政担当大臣を務める細川豪志大臣の前でそれぞれの意見を述べた。
市民の中には、原発事故による土地の汚染により、避難を余儀なくされた人達も含まれていた。

「福島の原発事故で死んだ人はいない、と言う人がいます。」

一人の市民がこう述べた。

「この方たちは、自殺されたり避難の後で亡くなったお年寄りのことを考えていらっしゃらないのではないでしょうか。」

福島市民の多くが「見捨てられた」という気持ちを強くしている。

「この数か月、何も動きません。政府の行動を見ていると、福島原発事故はもう過去のことだと思わせたがっているように見えます。」

福島原発から25キロの距離にある南相馬市の職員は悔しそうにこう述べた。しかし前代未聞の原発反対運動は、ゆっくりとだが前に進んでいる。

 (了)
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