孫崎亨、岩上対談:原発と日米関係
2012-08-08
原発事故の後、政府とマスコミの情報隠蔽が凄まじく、孫崎氏のツイッターが頼りとなった時期がありました。
2011年8月の記録ですが、岩上安身氏による対談です。
IWJの原点 孫崎亨、岩上安身トークライブ 2011/8/21 書き起こし「Sekirara&Zowie」から
岩上さんの8月19日ツイートよりhttp://twitter.com/#!/iwakamiyasumi/status/104206108289269760
【IWJ・Event】21日には、14:00から、外務省元国際情報局長で、最近は原発問題についても積極的に発言されている孫崎享さんが登場。IWJのUstの歴史は、孫崎さんのインタビューをiPhoneでUst中継したときから始まりました。原発震災を経ても、我々の原点は不変です。
posted at 00:00:46
講師:孫崎享氏
岩上
「外務省の元国際情報局長、日本のインテリジェンスの第一人者である孫崎享さんです。
孫崎さんはもちろん原発の専門家であるとか、電力に特別詳しいとか地震の専門家ではありません。
だけれども、孫崎さんでなければ分からないことがいくつかある。
そのひとつはこの国の統治構造、権力構造とはどうなっているのか?孫崎さんはいつもそこに冷徹なまなざしを注がれている。
その構造というのは国内だけで完結していない、背景にいつもアメリカの影がある。この国というのはアメリカの保護国に事実上なってしまっている。
原子力の平和利用のスタート地点にはやっぱりアメリカの影響があった。その出発点を見据えずして何故、原子力、原発というものが今日このような構造になって我々の社会に根を下ろしているのかが分かりにくい。
かつ、この国の統治構造を見た時には政治家だけではない。目に見えやすいのは政治家が派手だが、そこには大きな官僚機構があり、資本があり、そしてメディアがあり、アカデミズムがある。
こうした政官業学報が一体となって相当巨大な利権構造を生み出している。そうしたことを分析しないと今回の原発事故について、その後の収束を巡っての成り行き、道筋がよく分かってこないのではないか。
そこで孫崎さん、ツイッターをおやりになって、ここのところますますヒートアップ中。どんどん歯に衣着せずにやっているが、結構前は歯に衣着せていたが、ここのところ歯に衣着せなくなってきているので大変面白いツイートを連発されている孫崎さんにお話をお伺いしたい。
先生は3.11はどこで迎えられましたか?」
孫崎
「自分の家なんです。ちょうどたまたま『日本の国境問題』という本を出したんですが―――」
岩上
「北方領土の問題や尖閣の問題や―――」
孫崎
「はい。編集者と打ち合わせをしている最中だったですね」
岩上
「これは大変な事になるというご理解は―――地震のあと津波が起こり、原発の事故に繋がっていくわけですが、あの瞬間に一体自分たちの社会、この国に何が起きたのかという事を即座に理解できた人はほとんどいないと思うんです。どうでしたか?」
孫崎
「その時はまだ原発の危険というのは感じていなかったですよね。むしろ、地震であったり、その後の影響は、東京のほうでは計画停電があったりと、通信手段が停まってしまったようなところもあり、その後の月曜日か火曜日に一水会という右翼団体―――」
岩上
「新右翼ですね。鈴木邦男さんです」
孫崎
「どちらかという脱米。今まで日本の右翼というのはアメリカと一体という非常に変わった右翼なんですよね。
通常は右翼というと国粋主義、国粋主義であると外国との距離というのが必ずあるんですけど、日本の場合には親米一辺倒という非常に変わった右翼ですけれども、それに対して―――」
岩上
「戦後右翼というと特にそうですね」
孫崎
「それに対してアメリカとの距離をしっかり見据えようじゃないかというようなグループが一水会で、私はそこに月曜か火曜に公演に行ったんですけども、その頃はまだ余震が続いてました。
私は止めたいと。もっとオーディエンスがたくさん来た方がいいと言ったんですけども、右翼がそんなことで止められるかと言われて少ない聴衆で―――」
岩上
「(笑)めんどくさいなー。鈴木邦男さん、木村三浩さん。デモで会ったりしているんですよ。脱原発デモで、お~久しぶりと」
孫崎
「今回、原発の問題で非常に大きなメッセージを上げたのは、いま岩上さんが言ったようにエスタブリッシュメントは原発推進すべきだという事を言ってきているんです。
政治家、財界、学者、メディア、経産省という官庁、こうした日本の中枢のところが今も言っていて、出来たら原発というところに帰りたいという動きがずっとずっと続いている。
今度、菅総理が辞めたあと、もう一回その流れが出てくるんじゃないかと私は思っていますけれども、非常に面白いのが、すべて権威のある者が原子力を推進しなければならないという論調に立っている中で、国民の7割が、いやそうではないという事を考えたという事です。
これは非常に大きいことだと思います。
例えばメディアについても日本の70%ぐらいはメディアを基本的に信じる。しかし大手のメディアは脱原発を言わない。
特に一番大きいのは読売。以前として元に戻ってこようとしてやっている。その中で多くの国民は権威のある者と違う事を言い始めたという事。これはものすごく大きい。
そうすると、原発の問題は意外にも我々がこれまで正しいと思っていたような事も実は違うんではないかという事も考えさせるチャンスになったと思うんです。
それで、私は先ほどの話で言うと領土問題の事で一水会に話をしに行った。
北方領土問題というのを我々はずっと日本の島だと、頭の中に北方領土、国後、択捉、これは我々が主張できるんだと国民のみんながそう思っているんです。
私は今度の本で違うという事を言い始めたんです。それを言うとある意味、ちょっと怖い。
一番国粋主義的な人達は領土こそ重要であって、国後、択捉が戦後の歴史のなかで違う歩みをしていたんだという事になると、なんだ国賊が、みたいな話になるから、それだったら本家本元の右翼のほうで話が出来るんであれば一番いいじゃないかという事で出かけたんです」
岩上
「そういう余震も収まらない中で、新右翼の人達にお話になった。実は新右翼の人達というのは脱原発なんですよ。
いま言った多くの右翼の人達はかなりのところ現体制の支配的な層に対して非常に従順なんですね。その従順というのは誰に対して従順かと言えば、結局、最後の最後、アメリカに従順なんです。親米右翼なんです。
なんで親米なの?と言えばこの国の最大の権力者がアメリカだからなんですね。殆どの右翼はそれに従っている。
だけど、そういう中に日本の為の日本でしょと言う人達もいるという事ですね。僕らは取り立てて一水会と深い繋がりがあってということではなくて昔からの知り合いではあるんですけれども」
孫崎
「戦後のところから少し。結局のところ、全ての問題というのは戦後の頃からのスタートで始まるんですね。
私のツイッターを見ておいでの方は分かると思うんですが、皆さん、8月15日を終戦記念日だと我々みな思っているわけですよね」
岩上
「私は思ってないですよ。今年の8月15日の終戦記念日特集というのを、これは敗戦の日だと―――」
孫崎
「いやしかし、もし記念すべき日だとするなら他の日?」
岩上
「はい・・・あ、その話ですね。つまりミズーリ号の調印の時の話ですね」
孫崎
「そう。だから要するに8月15日で終戦になったと我々は思っているけれども、それはポツダム宣言を受け入れるという事を日本が言っただけなんで、別にそれでアメリカが終わったとは思ってない。
ルーズベルトは9月2日、ミズーリ号で終戦になった日に『これで我々は報復が出来た日だ』と。『これから9月2日がくる度に真珠湾攻撃の日を想うと思う、と同時に報復が出来た日だと思うんだ』と。チャーチルも同じように『これで以って戦争が終わったんだ』と。9月2日なんです。
じゃあ、なぜ9月2日が終戦記念日じゃないのか?それは9月2日という日が敗戦記念日だからなんです。9月2日の敗戦記念日は言葉だけの問題だろうというんじゃない。実は9月2日に日本側はサインをしているんです。何をサインしているか?
いま我々は例えば、日本が属国だと言うとそれは誰かが日米関係を歪曲して話そうとしている人が書いたものだとみんな思う。
今日、講師に孫崎がいて、日本は属国だと言ったと。あいつはちょっと極端すぎるよと、こう言うが、属国という言葉は9月2日、正式には9月21日か22日に、アメリカの初期占領の方針というのがマッカーサーの元に来る。
その時には、日本は属国だと書いてある。日本側と交渉する必要は何にもない。これからマッカーサーという人が日本の最高権力者であると。
そしてその最高権力者が日本をどのようにするかという事は日本政府と何にも相談することなく決めるんだと言っている。この体制が51年のサンフランシスコ条約まで続いたんです。
そしてそこでサンフランシスコ条約と同時に日米安保条約というのが出来た。
非常に大きな問題は、日米安保条約が出来た時に占領体制とどのような継続性を持っているのか?
その継続性を見ると、その時ダレス長官が、日米安保条約が基本的にどうなったかという事を解説している。その解説の中にアメリカの基地をどこに置くか、いつまで置くかという事は日本側と相談することではない、と。
これが一回目の安保条約なんです。そして1960年に安保条約の改定があったけれども基本的には何も変わっていない。
我々は属国だと言うと、何かとんでもない人間が現在の情勢を歪めて話をしているんではないかという事を思っているのだが、実はそうではない」
岩上
「ちょっと補足を。国際関係論や現代史が分からない人の為に。まず、占領があったわけですね。敗戦のあとの占領。
無権利状態のような状況で、占領国の総司令官の言う事を絶対に聞かなきゃいけないような占領期が続いた。
そして、サンフランシスコ講和条約、これによって日本は独立を果たし、国際社会に復帰を果たしたと、こういう建前になっております。いまでもどこを見てもそう言われていると思います。
ところがそれが完全な独立、完全な主権回復ではなくて、実はその時点から安保条約というものがあって、この国にずっとアメリカ軍が占領支配するようになる。
駐留というより占領の継続。そして、60年安保の闘争が行われた時というのは安保条約の改定があった。でも、改定をしても結局同じ事が続いていってるというお話なんですね」
孫崎
「もうひとつ。今日ツイッターしたんですけれども、正力さんについてツイートしたんです。(*)」
(*)2011年08月21日(日)
正力:元検事「正力とは一体何者か。これを調べることで日本がかなりわかるのでないか。読売の役割も」。経歴見てみよう。「関東大震災で”朝鮮人暴動”の噂を流布させ、自警団による虐殺の遠因」「同年 警視庁警務部長」で公安警察の雄。「1924年懲戒免官後読売新聞の経営権を買収、社長に就任」
posted at 09:05:01
正力2:「1934年 大リーグ招聘、巨人軍創立」。1940年 大政翼賛会総務。公安警察の雄で、大政翼賛会総務なら、戦後米国占領下、絶対に公的に生きれない人物。戦後それが米国とのパイプの要の一人。有馬教授のテレビ関連、原発関連での米国との結びつきの正力研究はあるが、まだまだ要研究。
posted at 09:07:06
岩上
「はい。正力松太郎さん」
孫崎
「原発の問題というのは必ず正力さんと関係があるわけです」
岩上
「正力松太郎さんというのは読売新聞の社主で日本テレビの創設者ですね」
孫崎
「結局、原発がどうして出てきたかと。日米の関係を若干整理しておきますと、第五福竜丸事件(*)というのがあった。これが被爆した。
(*)第五福竜丸事件[wikipedia]より
被爆事件 [編集]
1954年3月1日、第五福竜丸はマーシャル諸島近海において操業中にビキニ環礁で行われた水爆実験(キャッスル作戦・ブラボー (BRAVO) 、1954年3月1日3時42分実施)に遭遇し、船体・船員・捕獲した魚類が放射性降下物に被爆した[1]。実験当時、第五福竜丸は米国が設定した危険水域の外で操業していた。危険を察知して海域からの脱出を図ったが、延縄の収容に時間がかかり、数時間に渡って放射性降下物の降灰を受け続けることとなり、第五福竜丸の船員23名は全員被爆した。後に米国は危険水域を拡大、第五福竜丸以外にも危険区域内で多くの漁船が操業していたことが明らかとなった。この水爆実験で放射性降下物を浴びた漁船は数百隻にのぼるとみられ、被爆者は2万人を越えるとみられている。
予想以上に深刻な被害が発生した原因は、当初米国がこの爆弾の威力を4 - 8Mtと見積もり、危険区域を狭く設定したことにある。爆弾の実際の威力はその予想を遥かに超える15Mtであった為、安全区域にいたはずの多くの人々が被爆することとなった。
第五福竜丸の水爆災害(とりわけ久保山無線長(当時40歳)が「原水爆による犠牲者は、私で最後にして欲しい」と遺言を遺して息を引き取った事)は、当時の日本国内に強烈な反核運動を起こす結果となった。反核運動が反米運動へと移行することを恐れた米国は、日本政府との間で被爆者補償の交渉を急ぎ、「米国の責任を追及しないこと」の確約を日本政府から受け、事件の決着を図った。1955年(昭和30年)に200万ドルが支払われたが、連合国による占領からの主権回復後間もなかったこともあり、賠償金でなく“ex gratia(好意による)”見舞金として支払われた。また事件が一般に報道されると、「放射能マグロ」の大量廃棄[2]や、残留放射線に対する危惧から魚肉の消費が落ち込むなど、社会的に大きな影響を与えた。
これに対して米国は、第五福竜丸の被爆を矮小化するために、4月22日の時点で米国の国家安全保障会議作戦調整委員会 (OCB) は「水爆や関連する開発への日本人の好ましくない態度を相殺するための米政府の行動リスト」を起草し、科学的対策として「日本人患者の発病の原因は、放射能よりもむしろサンゴの塵の化学的影響とする」と明記し、「放射線の影響を受けた日本の漁師が死んだ場合、日米合同の病理解剖や死因についての共同声明の発表の準備も含め、非常事態対策案を練る」と決めていた。実際、同年9月に久保山無線長が死亡した際に、日本人医師団は死因を「放射能症」と発表したが、米国は現在まで「放射線が直接の原因ではない」との見解を取り続けている[3]。
第五福竜丸の被爆により、日本国民は原子爆弾・水素爆弾と両核爆弾の被爆(被曝)体験を持つ国民となった。
第五福竜丸は被爆後、救難信号 (SOS) を発することなく他の数百隻の漁船同様に自力で焼津漁港に帰港した。これは、船員が実験海域での被爆の事実を隠蔽しようとする米軍に撃沈されることを恐れていたためであるともいわれている[4]。
【リンク】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%BA%94%E7%A6%8F%E7%AB%9C%E4%B8%B8#.E8.A2.AB.E7.88.86.E4.BA.8B.E4.BB.B6
日本の中は大変な騒動になったわけです」
岩上
「南太平洋のビキニ岩礁で水爆実験が行われて、日本の漁船が被爆した事件。当時は大変な大騒ぎになった。戦後、そろそろ立ち直り、復興期に入っていた時にこれが起こった。1950年代。この時の記憶から怪獣映画のゴジラが生まれたりする」
孫崎「そこで、その時に原水禁が立ちあがってきて、反原子力。ある意味ではアメリカの支配に対する日本の世論が非常に立ち上がったときに、このままで行くとちょっと危険なので日本に原子力発電所を作らせてあげようと。
そしてそこで平和利用という事が出てくるんです。
だから原発の促進と、実は核兵器廃絶、あるいはソ連に続いてアメリカに対する厳しい見方というものと裏腹の関係があったんです。
この間もテレビを見てましたら、広島あたりの人の中に『私たちは今までずっと恨みを持っておくのは良くない。昔我々が何をされたかという事から脱して、新しい時代に生きようと。協力の世界で生きようと』その協力のシンボルが原発だったわけですね。
その原発の推進者が正力松太郎さんだった。いま、正力さんの事を言ったのはある意味唐突じゃない。
何故正力さんお話しが出たかというと、昨日たまたま知り合いの元検事と会った。そこで、戦後史はやっぱり正力松太郎を見ないとどうもよく分からないと。
正力松太郎を見ましょうという事で家に帰ってツイッターに打ち込んだ。正力松太郎さんって戦前どんな人だったか知っている?」
岩上
「特高(特別高等警察)の親分ですよね」
孫崎
「特高の親分。それで関東大地震があったときに朝鮮人が暴動を起こそうとしているという噂を流すことによって挑戦の人達に対し攻撃があった」
岩上
「いわゆる関東大震災の時の朝鮮人虐殺という事件に正力さんが当時関与している。
内務省。当時の警察というのは非常に大きな内務省という一つの組織の一部だった。その絶大な力を持っていた内務省の官僚として、ここに関わっていた。それはどういう関わり方だったのでしょう?」
孫崎
「朝鮮人がこれを利用して暴動を起こそうとかいうような噂を流す、という事をやった」
岩上
「あれは自然に流れたものではなく、そうした心ない噂というものが実は意図的に当局によって流されていた。
要するに一種のパニックを作り出して、警備・治安を強化しなければならないという口実にしていく。これは治安機関がどこの国でもやる手ですけども、そういう事があったわけですか」
孫崎
「そのあと、警視庁の警務部長という一番重要なポストになる。それから戦争へ行くための大政翼賛会、オールジャパンを作ったわけです」
岩上
「今も大連立をやろうとしていますけど。読売がやろうとしているけれども」
孫崎
「そこの主要メンバーなんです」
岩上
「なるほど。おんなじことをやろうとしているような気がしますよね」
孫崎
「非常に重要なのは、参戦になり一番の戦争犯罪人は全部戦犯としたが、戦犯とした時に治安警察、大政翼賛会、こういうようなものは戦犯第一号になるような人達。それにも関わらず、正力さんというのが戦後史の中で出てくるわけです。
これはいったい何なのか?
正力さんというのは1930年位に(1924年)警備上のある事件があって免職になった。その34年(記憶違いで実際には24年)に読売新聞を買い、社主になるんです」
岩上
「1934年に読売を買ってるんですか?え?戦前じゃないですか?」
孫崎
「そうなのよ。戦前なのよ。だから戦前の中核の人間なのよ」
岩上
「1930年前後というのはまさにファシズムの前夜か、もう突入過程ですね」
孫崎
「というような形でファシズムがいく。もう少し調べないといけないが、その時に支えた新聞、そして大政翼賛会。ということでA級戦犯になるんです。だけど、1947年ぐらいに直ぐに大丈夫になるんです。
それと、面白いのはアメリカのプロチームを呼んで、それでジャイアンツがスタートするんじゃないでしたか?(戦前)
というようなものを見ますと、原発の問題というのもやはり日米関係というものとある種のリンクをしてきたと」
岩上
「原子力の平和利用という事で原発を持たせるのはなんでなのかというところはまだまだ未解明のところが多いとは思います。
核というものは反対だと。核爆弾を落とされているし、ビキニ岩礁の事件もあるし、原水爆禁止運動も盛り上がってきたし、アメリカからの独立というもの、当時の日本人は戦争体験もありますから、今の我々と違ってアメリカというのとこの間まで喧嘩をしていて、とされ焼夷弾を落とされ、ボロボロにされた相手だという意識があるんですね。
いまはもう心の中にしまいこんでて、反発心は隠して入るけれども、やっぱり心を開けばアメリカに対して冗談じゃないという気持ちがあった。
だからいつでも反米、もしくはアメリカからの独立・自立というような動きになりかねなかった。
それを食い止めるためにも、そして冷戦体制が始まっており、アメリカ側の陣営に食い留め置くためにも日本を引きつけておく必要があった。
それは色んな形で行われましたよね。高度成長を助けるため。
復興を助けるために。アメリカがプラスの面で働きかけてくれた部分もある。市場開放してくれた。良い事をしてくれた部分もいっぱいある。
しかし同時にアメリカから離れないようにするため、核のうちのある部分、原子力のある部分を差し出した。なぜか、ですよね?
つまりそれを受け取って喜ぶ日本人は当時どれだけいたかというと、一般の人達はいい迷惑でそんなもの要らないと思っていた人はたくさんいたと思います。
だけれども、日本の右翼の、あるいは保守の人達は強固な軍事国家としての日本の再興という事を願っていた人が当時はたくさんまだまだ残っていた。
その人たちの気持ちの中には、日本も核武装、核兵器を持つことによって主権が回復できるんじゃないか。世界に対してまた強硬な意見を言って自分たちの主張を通すことが出来るようになるのではないか。国際政治の中で政治力を発揮できるんじゃないか。こういうふうに考えた人達。
もっと直截に言うと、これから核戦争の時代だからドンパチやる時に自分たちも武装しとかなきゃと軍事力行使の手段として、文字通り核武装が必要だと考えていた人達もたくさんいたと思いますけども、そういう動機が薄々あるだろうという事を見越したうえで、そういう人達に対してアメ玉をやるようにして核の力の半分を渡した。
だけれども、全部を渡したわけではない。ある種、そうやりながら日本のとりわけ保守層というものをタカ派層を引きつけ続けた。飼い慣らしてきたという事になるんじゃないですか」
孫崎
「そうだと思いますね。だけど、一番重要な事は一般国民の核への反発というのを和らげた」
岩上
「なるほど。その核という原子力の平和利用が可能なものなんだよと」
孫崎
「そうそう。平和利用というものがなかったら核兵器反対」
岩上
「一本槍になってしまうから」
孫崎
「一本槍になって、そうするとそれは必然的に反米に繋がっていく。
その流れというのは第五福竜丸の時、それから原水協というようなものに非常に盛り上がりがあるという危険性があった、というような認識があった。
だから国民に対して、核というのは兵器というものがあるけれども一方は平和利用があるんですよと。これから平和利用の事を考えていきましょうと。
過去を考えるのではなくて未来を考える。では未来を考えると、それは核というところで日米で協力していきましょうよという話になってきますから。
だから日本の対米政策とリンクしていたんですね」
岩上
「そこで読売がどう絡んでいたかというと、この正力さんが初代原子力委員会の委員長になるわけですね。且つ、ナベツネさんなんかと盟友として知られる中曽根さん。
中曽根さんが当時、科学技術庁が作られていく過程の中で原子力の多くの所管や権限が移されていく。それは中曽根さんがアメリカから日本へ原子力技術導入に関してたいへん大きな役割を果たされた。
その後押しを読売がしてきた。読売が単独でやってきたわけではないけれども、大変大きな役割を果たした。そういう歴史があるわけですね」
孫崎
「一つだけ付け加えておくと、もちろんそういう人達もそうなんですけれども、そこで革新グループもそれに入るんですよね。
原子力のジュネーブ辺り(1955年、ジュネーブで開かれた原子力平和利用会議)で新しい原子力を開発する民事のための原子力平和利用だという形でデリゲーション(代表団、権限委譲)が組まれていくんですけれども、これはいわゆる保守層だけじゃなく革新の人も入ってくるんです。
そういう意味で見ていきますと、反原発というところも平和愛好層というものが必ずしも原発反対ではなかったわけです。
私が少しツイッターで言っているのは、公明党のこと。公明党の旗印は平和の党なんですよね。マニフェストの2番目くらいに人間の命を守る党と。けれども原発推進なんです。
という事で原発推進が良いというところで以って革新平和利用の層がある意味では分断されているという事が言えると思うんです」
岩上
「そうですね。今の時代でちょっと分からなかったのは原爆と原発がどのように違うのか。
実際はいざ事故が起こってみると原発の事故の被害というものは結局、放射性物質による被ばくですから、原爆だって恐ろしい爆風だけではなくその後の被ばくという問題。
それが大変な影響を与えるわけで同じようなものじゃないか。
今だったら確かに思うんですけれども、昔だったら、爆弾として使われる爆風の威力の凄まじさと、原子力発電のパワフルなモーターで、クリーンなエネルギーで、資源のない我が国が存続し産業が発展していく上で不可欠、未来へ向けてのエネルギーなんだというような宣伝があって、その両者が全く別のもののように悪なる力を飼い慣らして善なるものに善用したというふうに、確かにあの時代、右だろうが左だろうが、タカ派だろうがハト派だろうがみんな一緒になって、それはそうだと説得されて動いたことは事実なんですよね。
ただそこの根っこにアメリカの国益も絡んでいたでしょう。今日、福島第一原発が事故を起こしたその第一原発というものはGEの設計ですよね。でもいまゼネラル・エレクトリック社を責めるという声が全く上がりません」
孫崎
「最初にはアメリカにはあったんですよね。非常に危惧したんです。私もその辺のことは良く知りませんけども、1990年代に製造物責任かなんかがあったですよね」
岩上「はい。PL法(*)のことですね」
(*)製造物責任法[wikipedia]より
製造物責任法(平成6年7月1日法律第85号)とは、製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法規のことをいうが、形式的意義においては、上述の損害賠償責任について規定した日本の法律(平成6年法律第85号)のことをいう。1995年7月1日施行。製造物責任という用語に相当する英語の product liability (PL)から、PL法と呼ばれることがある。
【リンク】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%BD%E9%80%A0%E7%89%A9%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E6%B3%95
そういうような問題がたぶん適用されるかもしれないということでGEぐらいは一時期非常に心配したんですね。だけど、日本の社会ではアメリカにモノ申すということを全くしませんから」
岩上
「だからアメリカは言われると思っていたのに、全く言われないからホッと胸をなでおろして、なんだこれなら大丈夫じゃないかと思っている状態。
責められもしないんだったらわざわざこちらからうちの責任ですと言う必要はないなと。そんな調子ですよね。
そういう残念な状態にある。実は残念な国なんですよ、日本という国は。とっても残念な状態にある。
このGEの責任というのは追及してしかるべきじゃないか。もちろんこれを導入するに至っては免責されているだろうとは思いますけれども。でもこんなものを作ったじゃないか、と言ったっていいじゃないですか。
そしてこういうものを受け入れた我々の責任は大きいけれども、だけれどもやっぱりこれはおかしいだろという声をなぜ上げないのか。あげるとアメリカは困るんですよね。
アメリカは国内で原発についてそれぞれ論議を出来ます。そうするとアメリカでは当然色んな意見があって、原発はアメリカに会っても非常に危険なのではないかという声が上がる。
これはアメリカの政府、推進しようといった勢力にとっては困るので、早め早めに釘を刺すというような動きがあるわけです」
孫崎
「だから、今後、これから次の政権で原発がどういうことになるかということは非常に重要なことだと思っているんです。
私自身はある時期、ツイッターで菅首相をかなり攻撃してきたんですね。それはもうちょっと前からいくと、普天間問題で辺野古へ行くというのはおかしいと。普天間問題で日米合意を守らなきゃいかんという立場はおかしいということを言ってきた。
その流れで鳩山さんが潰れたあと、菅さんがすぐにアメリカべったりの方針を出しましたので、菅総理はおかしいということをずっとツイッターでやってきたんですけども、原発に関する限りは政治家としては、当初一週間眠れなかったという時にちゃんと政策をやったかというとこれはおかしいと思いますけども、そのあとあるべき政策を出してきましたよね」
岩上
「最初は違ったんですよね。最初は原発を維持すると。浜岡も止めないと。
最初の時期に記者会見で原発をどうするつもりか、浜岡をどうするのかと聞いた。すると、原発は維持する、一番大事なのは事故の検証なんだと。事故の検証なんて待っていたら終わらない。
本当に事故がどう起こったかなんていうのはスリーマイルでもチェルノブイリでもずっと後のことです。メルトダウン寸前だった事が分かったスリーマイルでも10年もかかっている。でも今日、メルトダウンしてしまっている。
燃料がどこかに行っちゃっている。それを見つける事も見る事も確認すら出来ない。形状も分からない。そしてそれを回収する手立ても分からない。
そんな状態で検証が先だなんて言っていたらお話しにならない。そんなのんきな事を当初は言っていた。浜岡も止めないと言っていた。
ちょっと経ってから質問すると、変わっていた。浜岡を止める事になった。それは浜岡を止めるだけのはずだった。
これは経産省が描いた絵だと思う。浜岡を止めてもあれは一時的な停止で、防潮堤を作ったから大丈夫という事で再開できるようにしておくはずだった。私が取材した限りでは経産省が描いた絵。
海江田さんは経産省の振り付け通りにしゃべる人だから、その通りにしゃべる予定だったのを菅さんがパクって自分の手柄にしてパフォーマンスされた。そうしたらウケたと思った。
でもその時はまだ経産省と気脈を通じ、経産省のシナリオ通りのガス抜きをするだけだったがその辺りからずれていった。
その頃から本格的にずれ始めた。良い意味でずれたと思っていますけど、先生が仰るように日本のエスタブリッシュメントからすると、あいつバカじゃないかという感じになっているわけですよね」
孫崎
「ということで次になったときに菅総理が言っていたように現在のスタンス、脱原発というようなものの流れに本当に乗ってくれるかどうか分からないというのが本当に心配される事。
その背景にはひとつは米国にとって日本が今脱原発をやられるというのは非常に困るんです。
というのは自分の国に原発があるわけですから。自分の国の世論もあるのに、やっぱり原発というのは危険だということでポリシーを変えたということになると今度は米国の住民が騒ぎ始めますから。
いま米国は原子力政策をそのまま続けようとしている。
それに対して日本の政策が変わるということになれば、ドイツは考え過ぎだとしても、みんなが本当にそうですかというような雰囲気になるから、日本にはそのまま続けてほしいという気持ちが強い。
私はそれも一つ、大連立という事を言っている理由だと思うんです」
岩上
「そうですよね。大連立をすると衆参でねじれが解消される。なので法案が通しやすくなるというのは小手先の議論であって、そもそも参議院が衆議院の全くのコピーだったら参議院なんていらないわけで、そこで様々な議論が尽くされなければ意味がない。
ところがそういう話じゃなくなっている。恐らく、その話は小手先の話であってとにかくべったりとエスタブリッシュメント。今回、本当にその姿が明らかになったと思いますけれども、それの言う事通りにとっととやってくれる便利なパペット集団操り人形、それに早いところ政治家どもよ、変わってくれと。
国会がそういう状態になってくれと。そしたら官僚であれ、メディアであれ、あるいは財界であれ、その背景で支えているアメリカであれ、大変都合が良いと。
先ほど先生が、7割の国民がこんなマスコミの情報が統制されている時に政府を信用していない。そういう状態でなお、7割が原発をノーと言っている。ところが読売みたいなところが原発推進だと言っている。
国民に支持されていない政府があり、国民に支持されていない財界があり、国民に支持されていない新聞があり、国民に支持されていないテレビがあり、そういう状態なんだと思うんです。
だから、本当だったら国民の7割が、こんな状態はあり得ないと思っているのであれば、これらみんな言ってみれば失格なんですよね。
そうならなきゃいけないのになぜかそうではなく、違う方向に粘り強く持っていかれようとしている。
そのひとつの象徴として首相の首が挿げ替えられ、内閣が取り替えられ、便利な人間に取り替えられていこうとしているんじゃないか、そんな気がしないでもないですよね」
孫崎
「ささやかに私が今ツイッターでやっているのは、読売社説批判というのをこれ必死でやっているんです(笑)もう社説批判をやったって大したことじゃない。
向こうは1千万部売れるし、しかし有り難い事に26,000ぐらいのフォロワーが。岩上さんの10万ぐらいのとは雲泥の差なんですけども、しかしそれでもそういうようなものをやっているとそれが拡散していくわけです。
読売新聞がおかしいなと思っている人はたくさんいるかもしれないけども、ある種、どうおかしいのかということを一つ一つ丁寧に批判ということでやっている。
昨日の社説でいうと、昨日は放射線を勉強しなきゃいけないと。それで勉強すれば風評被害みたいなものはなくなると。
何を言っているのかと。勉強しなきゃならないのはあなたたちでしょうと。
そして社説で言っている論法は、放射線というものは癌の治療にも役立つ、それから自然に空から降ってくる放射線もある。そういうのを勉強すると今騒いでいる放射線でヒステリックになっているのはおかしいんじゃないかという議論になるから我々はもっと放射線を勉強しなければいけないと。これが読売新聞の社説なんです。
今のこの時点でもそんな事を言っているわけです」
岩上
「もうね、クレイジーとしか言いようがない」
孫崎
「そう。だけど、見てみるとクレイジーということを言っている個所はないんですよ。メディアは同業だからあまり悪口を言わない。学者も言わない。
日本のメディアで非常に大きな事は、我々多くの人はメディアというのは中立で、歪んだところを社会の警告をメディアが言ってくれていると思っている。それが我々のメディアを見る目なんですよね。読売ばっかり攻撃して申し訳ないけど―――」
岩上
「読売が代表的なのであって、日経なんて丸々コピーですよ。産経も同じですし」
孫崎
「しかしそれは権力構図なんです。権力の一部として権力になる事を自分たちが選択しているという事なんですね。
その権力でどう物事を誘導するかということに対しておかしいと思っていないわけです。
自分たちは正しい方向、正しい政治に新聞という武器を使って持っていく役割を果たしている。だから政治的に自分たちの目的の方向に持っていく事に対しておかしいとは思ってない」
岩上
「政党の機関紙とか、政治宣伝ビラとか、そんなようなものですね」
孫崎
「だからそれよりも怖いわけですよね」
岩上
「偽装してますからね」
孫崎
「うん。政党のものだったら、これは政党のものだから場合によってはバイアスがかかると思ってみんな警戒している」
岩上
「そうですよ。赤旗だったら、聖教新聞だったらだいたい想像がつくんですけどね」
孫崎
「だけど、あくまでも読売新聞なんかは、我々は非常にニュートラルであって、一番公平な報道をし、公平な論議をするという幻想をみんなに抱かせつつ、それをやっている訳だから、非常に怖い」
岩上
「この間、田中康夫さんとお会いして長い話をしたんですけども(*)、USTでおっしゃったかな、かなり歯に衣着せずお話しになる方ですけども、ナベツネさんからジャイアンツのチケットと一緒にお手紙をよく貰うんですって。
(*)110820新党日本・田中康夫×岩上安身http://www.ustream.tv/recorded/16729514
いろいろと“あの国会の質問は良かった”と。“氏家にもよく見とけと言っといた”とかそういうのが来るんですって。だからそういうふうに言ってくれればやっぱり嬉しいじゃないですか。
だけど、この期に及んでも原発は必要だと手紙に書いてこられると」
孫崎
「書いてくる?」
岩上
「まめな人ですね。ですから、どうすべきか、どっちなんだろうと本当は人間迷うべきなんだろうと思うんですよ。どっちにしていいか分からないと色々考えなきゃいけない。判断を保留する部分もある。
だからこそ情報を収集しようとなるはずなんだけれども、答えが出ちゃってる。
その答えの為に不都合な現実というのをどう折伏、説得していくかという事の為に言葉が使われてしまっている。
それはまことにおかしな状態で逆転している。
いま、おっしゃられたように宣伝機関化してしまっているんですね。
日本テレビ自体がもともとCIAが工作資金を出して作られたと。正力松太郎さん自身がポダムというコードネームを持ったCIAのエージェントだったという事も今日あきらかになってたりする。
大変悲しい現実。それが戦後史の中の事実として受け入れざるを得ないし、そういう状態をやっぱり早く正常化してもらわないと。
まともな新聞メディアとして機能してもらいたいと思うんですけども。
ただ、これは末端まで貫徹されてまして、読売の記者が取材に行くと、“うちは原発推進ですから”と断って、取材というよりは居直って話をする、質問するということがざらにあるわけです。
ちょっと迷われないのかなと思うんですけど、自然放射線があるから平気なんだとか、それはおかしいだろと。
自然放射線が本当に裸に降り注ぐ中にいたら我々は生息できませんよ。
そういうものが次第に我々の身体に貫かないまでになったからこそこの環境に生きていける訳だし、また医療に役立つと言ってもやむを得ず受けているのであって、レントゲンであっても放射線治療であっても浴び続けて身体に良いわけない。
むしろ非常に危険なわけです。毒を以て毒を制すみたいな事をしているのであって、だから良いんだという理屈には全くならないですね。
そういう理屈を振りかざしていくというのはどうなのかなと思いますよね。
皆さんの質問を受け付けながら少し進めていきたいなと思うんですけども、何かご質問ご意見ある方いらっしゃいますか?」
質問者A
「いま、首相候補で何人か名前が挙がっている人達がいて、その中の1人でA級戦犯は戦犯じゃないみたいな事を言っている人がいるんですけど、要するに東京裁判全否定なんていう人が首相になってアメリカは許すのだろうかという事をお聞きしたいです。アメリカべったりのくせに東京裁判全否定してて、なんだそれという」
孫崎
「勉強されてないんじゃないでしょうか。としか思えませんね。アメリカが厳しく出てくるというのを知らないんだと思います。そのうちもし首相になったら態度を変えるでしょう」
岩上
「野田さんはご存じのとおり、財務省の振りつけられたパペットというようなところで評価が定まっている人です。
申し訳ないですけれども。やらなきゃいけない彼のミッションがあるとすれば、それは消費税の増税なんですよね。
何よりかにより。その他のところは枝葉末節見たいなところがあるわけです。浮かんでは凹み浮かんでは凹み、というのは彼が本格的な候補ではない証拠なんですね。
かなり早い時点で名前が出ました。ということは観測気球みたいなもので、ああいうものは後出しじゃんけんの方が強かったりするわけです。特に近ければ近いほどボロが出ない。
早めに出て迂闊な発言して引っ込む。まだ時期尚早と。またフワッと上がってくる。
実際問題として前原さんを担いでいたというのが現在の執行部ですよね。そこが今民主党の権力を実質的に担っているわけですけども、その人達の核にいるのが誰なのか。一致しているのは仙谷さんなんですね。
仙谷さんを中心とするグループであって、その本命候補というのは前原さん。
前原さんはいろいろ外国人献金問題であったりとかある。今回の代表選に関していうと、ワンポイントリリーフみたいなことがありますから、来年の9月にもう一回、今度は本当の意味での選挙があるわけで、その時に満を持して出ようと思っているのではないかという推測があります。
とはいえ、こういうものはぎりぎりになってポッと出てなる事もあり得るので、両面あると思うんですけども、野田さんは当て馬みたいに名前が出たり引っ込んだりと。
でも暫くは誰がなったとしてもB級候補がなってサンドバックにされながら、お前ミッション果たせよと言って、ちょっとだけ持ち上げてもらって、それから支持率が下っていく過程の中で消耗、消費しながら消費税を1個通すか、ワンイシューですよね。原発を再稼働させるか。
でなきゃTPPやるか。TPPやるというのは大変ですから、3つも4つも出来ないと思います。
菅さんは最初そのミッション全部やる気だった訳ですけども、原発を初めとしてやらないというような態度になっちゃったわけで、そこで彼は御用済みというような扱いを受けているわけです。
そういう意味では野田さんも何か一つ、消費税の増税じゃないけれどもそういう事をやってお払い箱になるのだろうという筋書きだと、これは多くの霞が関、永田町関係者の見立てるところですね」
孫崎
「一つ、A級戦犯の話で。A級戦犯とBC級戦犯と、この二つがありますよね。
BC戦犯というのは現地で人道的なものに反して虐待をしたというのがBC級戦犯で、実行部隊と言われる。
だけど、戦争をする計画を立てた本当の推進者がA級だという位置づけなんですよね。
その中で、日本のもっている非常に大きな歪みは、どこで歪んできたかというと冷戦構造があった時に、実は1947年ぐらいから出てくるのですが、ソ連との戦いで日本を盾にしようという考え方が出てくるわけです。
最初は日本というものをもう一回戦争は出来ないというような形にしていく。
しかし日本を戦争の盾に使用と思った時からA級戦犯の人達も使い始めたわけですね。それはいちばん代表的なのは岸総理であるとか。そこから日本の政治の歪みが出てきたわけですよね。
本来、ある意味では日本国民自体が第二次世界大戦というものを総括しなければならないにもかかわらず、総括せずに、結局その時には鳩山総理が駄目になるなど、いくつかの有力な人達が米国によって排除されている中で、代わりとして右派の戦犯のような人達が日本の政治を取り仕切ってきたというところがA級戦犯の問題の一番の日本政治の難しいところ、問題点だと思っています」
岩上
「A級戦犯に関して僕もちょっと。要するに野田さんにとってA級戦犯がどうのこうのと歴史的に語るというのは付け焼刃にすぎないということなんですね。
今の孫崎さんのお話の補足なんですが、『ANPO』というタイトルでドキュメンタリーを作られたリンダ・ホーグランドさんという監督がいます。
この方は日本で長いこと育ったアメリカの方なんですけれども、凄く日本語が堪能で日本の事を故郷のように思っている方なんですが、彼女と本当にツイッター上で知り合って、意気投合して彼女の『ANPO』というドキュメンタリーのトークライブに出て彼女にもインタビューをした。
その映画をぜひ機会があれば見て頂きたいのですが、60年安保あの運動の記録を色々な形で記憶していくアート。例えば、音楽とか絵とか写真家とかそういうアーティストたちのインタビューを収録していくドキュメンタリーなんです。
一見、アートについて語っているんです。ところがその中にちょっと異質なんですけども、アメリカ人が入るんです。CIA秘録という本を書いたジャーナリストなんですけども、この人がものすごい数のCIAにインタビューを重ねている。
そして対日工作、日本に対してどんな工作をしたのかということについての証言もたくさん取っているんですね。ドキュメントも含めて。岸さんの事、今言ったA級戦犯の人達の事も出てくる。
このA級戦犯の人間、一旦失墜してしまったかつてのエリート。これにアメをあげる訳です。
アメを差し出し、向こうもそれに食らいついてくる。
お互いに持ちつ持たれつで、岸は自分を支援してくれたたら徹底的にアメリカに尽くすんだというような事を持ちかけてくるし、アメリカの側もアメリカにとって好都合な政策をやってくれるんだったらお前を首相にしてやるぞと。
政治的にも経済的にも色んな意味でバックアップするぞという取引が成り立つ。非常に卑劣な取引。
こういう取引が何故こういう場で普通に語られるかというと。アメリカはあらゆる所でやっているんです。
南米諸国とかアジアの国々とか、よその国の人達だと、隣人がいて隣国がどんな目に遭ってどんなことが起こっているかということをみんな知っていますから、アメリカがそういう工作をするということを普通に知っているんですね。
日本だけが特別扱いを受けているわけがないわけで。日本も全くおんなじように工作の対象になり、そういう取引が行われ、国を売る政治家が現れる。
自分たちが特権的な地位を得て国民は不利益を被るというようなことが行われている。現実にそういうことが行われたというのをアメリカ人のジャーナリストがアメリカ人の映画監督に対してしゃべっているんです。
なお、その本も読んで頂けるとよりなお分かりやすいと思います。他にも研究書があるんですけど、『ANPO』の映画だけでも十分分かると思います。
それを見ると結局なぜA級戦犯全体が国益の為に一生懸命大日本帝国の為に挺身して良かれと思ってやったことが結局あとで裁判で裁かれたかという見方もあるでしょうけども、戦後のA級戦犯ということを考えると中には身を翻した人がいる訳ですね。
身を翻して自分の身の安全と共に、それどころか立身出世を再度出来た人達がいる。
岸さんとか正力さんとか。そこにぜひ注目して頂けると戦後の歴史の理解というのが進むんじゃないかなという気がします」
質問者B
「私は第一原発の地元の人間なんですが」
岩上
「浪江町からいらしたんですよね」
質問者B
「第一原発が着工されましたのは私らが小さい頃でして、高校1年の頃に確か着工されたんです。
それまでの記憶では原子力に対する日本人のアレルギーは今と変わりませんで、広島長崎の反対運動というようなもんがいっぱいあったんです。
ところが、第一原発については地域的にもそうした団体の方々も、そういったデモもなかったような感じがするんです。後になってなんであそこはデモも反対運動も起こらなかったんだと、ある方にお聞きしたら『当たり前だろ。あれは一人の財閥の人の土地で持ち物だよ』という事を聞いて、唖然としたんですが、それは事実なんでしょうか?
今のある鉄道会社の名前があがってそこの下の社主の名前も上がったんですが私どもは全然分かりかねますので。
それで学徒動員された方がその場にいたのですが、涙を流されて本気になって怒ったんですね。
俺らはひとつの個人の鉄道に尽くしたんじゃないんだと。あの通りを平らにして開港するのに何人掛かったかと」
孫崎
「一言だけ申し上げますと、問題はその土地が誰のものであったかということだけではないんだと思うんですよね。
その周辺の人達がどのように原発というものを受け止めたかということが非常に重要であって、今日たまたまツイートしたのは、どなたかが送ってきたものを紹介したんですけども、北海道の泊原発、泊村の癌になって死亡する率は北海道180町村の中で飛び抜けて高いんですよね」
岩上
「それは再稼働の今回火ぶたを切るはずだった玄海原発もそうですね。よく知られている事ですけども、玄海町は癌や白血病の罹患率が高いんです」
孫崎
「結局、本当はそれも併せて原発は問題になるわけですから、それが非常に残念ですけども玄海原発もそうだし、敦賀原発もそうだし、泊原発もそうだし、基本的には米軍の基地と同じように地方にお金を与えるというシステムで以って地方住民が絶対反対しない形をとっていたと。
今度もちょっと見ますと泊原発は4町村が支持に回りましたよね」
岩上
「逆を言うとその4町村にしか聞いてないんですね。要は地元の理解を得てと言うんですけども。札幌なんかはごくわずかな距離ですよ。
札幌とか函館とか大きな都市があるし、他の地方にもあるんですがそこには聞いていない。
だから少なくとも札幌のような人口集積地だったら、それだけ多くの人がものを言う権利があるわけですからそこに聞かなきゃいけないですよね。
ただここでねじれが起こっていて、知事はやる気満々なんですけど、札幌市長が抵抗する姿勢を見せ始めた。だからより近接している自治体の長は別としてその隣接地の自治体は反発するという傾向にありますよね」
孫崎
「それは静岡の原発がまさにその構図ですよね」
岩上
「実はあれも浜岡を今回止めるにあたって、三重あたりからスタートしていったんですね。それがずっと東へドミノ倒しのように反対だという声が大きくなっていった」
孫崎
「周辺4市は反対。持っていた御前崎は賛成というような構図だったわけですけども、周辺4市の力というものがかなり大きくなった」
岩上
「ですから玄海原発に反対するという事も福岡の人達の声というのが重要なカギを握る。
ところが立地現地の玄海町はどうかというと、玄海町の町長というのは地元で有名な建設会社の一族で。そこが丸々九電の仕事でご飯食べている。
全く下請けが医者みたいなもんなんですね。だから全く言いなりの状態」
孫崎
「一つだけ気になるのが、この構図というのは沖縄と非常に似ているんですよ。米軍基地と。
何が言いたいかというと最初は反対させるために名護市にお金をものすごくたくさん出したんです。名護市が辺野古移転を受け入れるようにそこにお金をどっぷり出した。
ところが名護市の市長さん、あるいは市会議員が反対して、いま止まったんですね。
そしていま何をしようかとしているかというと、今度は県に交付金を好きなように使えというものを出し始めた。
だから今までは利益がほんの基地を受け入れるところ、あるいは原発を受け入れるその町にしかいかなかったのを、今度は地方自治体全体に、お前もっとあげるよと。そして自由にお金を使っていいよ、という形で、今一番起こっているのは敦賀原発ですね。
福井県に交付金とかそういうようなものをダーッとあげる。今までは立地のところが反対、周辺のところが立ちあがる危険性があった。ところが今度は県全体にお金を出すことによって県がそういうような声を出さないようなお金のシステムを作ると」
岩上
「今の福井県知事は大変厳しい姿勢を貫かれてますから。そういう県全体のプラスじゃないか。県の財界なんかが言いだすようになるとだいぶそういう声をあげ辛くなるでしょう。そういうことも狙っているんでしょうけども。
お話の元々の原点は誰が地主かということですが、基本的には地主が誰かということが問題なのではないという方向の話になっています。
地主が誰かというよりは地主というものがあれば、地主さんが別にそこに住んでいなくたっていいわけですね。全然別の土地に離れて居て、あそこの土地使ってもいいよと言うことが出来る。
そこで多少のトラブルがあっても火の粉は降りかかってこないと、そういう便利な土地、建てやすい土地を狙っていくというのはあると思います。
ここで大事なことを言ってくれたアイリーン・スミスさんだったか。その前に三重のほうに行って和歌山の人達も含めて色々話を聞いたのですが、あの辺りは原発を建てられそうになったことがあるんですよ。
それに対して地元の人達が凄く頑張って反対した歴史があるんですね。海沿いの漁師町の人が。
そういうところには結果として今なんにも建ってないわけです。なんのモニュメントもないんです。でもものすごい粘り強い抵抗の歴史があるんです。
その事を地元の人は誇らしげに記憶しているのだけども、多くの人は知らない。そういうところは実は日本中にありますよと。
凄く頑張って結局跳ね返した。お金をあげるよと言われても全部撥ね退けていった土地がいっぱいあるんですね。
それはいわば勝利の光景じゃないかと。何も建ってない土地というのを写真にでも撮ってみんなに見せたら分かりやすいんじゃないかという話も聞いたことがあります。
ですからやられてしまった土地というのもあるんですね。飛び地のように持っているその地主だけ籠絡すれば地面を変えるとか、上手いように政治的に付け込んだ土地もあるだろうし、住民が色んな形で買収されてしまったというか、雇用をあげるよと、良い事だらけだよと言って説得されてしまった土地もあるでしょう。
でも、説得されなかった土地もある。それはやっぱり違いがあるんでしょうね。
なんで一方では撥ね退けたか。一方では受け入れてしまったか。その違いというものをちゃんと振り返って調査取材をして、あるいは地元の人たちが今までは黙っていたけど、もう黙っていないと言って、事実はこうだったとどんどん語っていくことを通じて、その違いを明らかにする事は大事なことじゃないかなという気がします」
質問者C
「私地元なのですが、地元小田原でこのような重要な会を持ってくださったことをお礼申し上げます。
3.11で起こったことの一つには原発というのは構造的に基本的におかしなものであったということは確かだったと思うんですが、実はそこで起こったこと、例えば誰かが何をした、現場で間違えたとかボタンの掛け違えというのはあるわけですが、そういうところから見えてきたものは実はそのシステム全体にとても大きな破綻があったのではないかということが見えたと思うんですね。
その破綻というのは私たちの想像をはるかに上回っていまして、政財界やメディアまで全て含めたうえで大間違いだった。
あるいは大間違いではなくてそこまで作為があって動かされていたのではないか。
私たちの7割の人みんなが原発反対だともし手を挙げたとしてもどこにも届かないようなシステムを私たちは作って来てしまった事に大きな驚愕と閉塞感で力が抜けてくるような感じがあるんです。
ここに答えを求めるというよりも私はここで根本的に何を戦い直す、あるいは問い直さなければいけないかという立場にいるのではないかと私自身、生き方の変化も含めて考えつつあるんですね。
いま、フロントラインでやらなければいけない事はTPPも止めなきゃいけない、理念を止めたいと色んな事があるんですけど、現場の事で戦うことと根本的な事に視座を持ち直すことというのが同時にあるような気がしてまして、この機会にお答えを頂くというよりもこの機会を頂いた事に対しての私の意見を言わせて頂きました。ありがとうございます」
孫崎
「基本的に今おっしゃった事も全くその通りだと私は思っています。問題は原発はみんなが分かったということですね。
他の安全保障の問題やTPPなど色んな問題も抱えている。だけど、TPP何かを国民みんながおかしいということになるかというとなかなかそうはならない。
だけど、この原発だけは自分の安全に関わる、そして現在の体制がおかしいということは皆分かったと思うんです。
だから出来る事は、この原発というものを一つの機会として、これが止まっていくという流れ、一般の人たちの考えがいまから見ると殆ど機能しないような感じかもしれませんけども、私はそうとは思っていないんです。
この原発を契機にこれで以って一般の人たちが政治の流れを変えるということが出来ればそれは色んなところに波及していくということですから、この原発はどの党であるとかいうことは抜きにして広い意味での国民運動を展開していくという非常にいいきっかけになっているんではないかと思っています」
岩上
「本当に一言で言えば、何が必要なのか。それは民主化以外にないんじゃないですか?
つまりそんな難しい話じゃないと思います。国民の7割が嫌だと言っている事。
多くの国民が主人であり主権者であり、その国民の意を汲んだ政治を行うこと、そういう社会を営んでいくことが政治であり、営むのは行政ですから、政治も行政も国民の声を聞き、国民の声を反映する、それが民主主義ということに尽きるわけですね。
民主主義を偽装した民主的ではない政治や行政がこの国にはあると。驚くようなことではないと思っています。
驚いている人が多いというのは事実だと思いますけれども、どこを通ってもそんな場面に出くわすなというのが正直なところで、原発で露わになったのはなおも強行しようとしている事ですね。
これまでそうだっただけではなく、なおのこと強行しようとしているということです。
それを唯々諾々と従ったとしたら、これだけ日頃は色んな形で騙されています、偽装されているものに。
だけれども、誰の目にもほぼ7割の人に分かっているものをなお強行されたらそれは受け容れた側も同意したに等しいですね。
なんと言うんでしょう。暴力を振るわれているんだけどその暴力を受け入れちゃったというような状態に近いんじゃないですか。
やっぱりなんらか理不尽な事をされている時に、やめて下さい、それはおかしいんじゃないかということを言って抵抗するのは当たり前のことで、取り立てて誰か特別な人をいじめたり、加害行為を我々がしているわけではありませんから、何故言い立てるということに怯えるのか。
至る所でその怯えるシーン、怯えている人を見るんですけれども、理解不可能ですね。
むしろきちんと、これはないでしょということを言わないと一緒くたになってしまいますね。
逆を言うと、一部の人達が濃厚に汚染している状態だとして、それが出も汚染が色々と拡散しているよと。我々はみな同じ状態だ、だからこれを甘受しよう、もう考えるのを止めようというふうにされつつあるような気もします。
そういう状態は健全だとは非常に思えないですね。
やはりどう考えても健康的ではないですね。しかも極めて不経済です。原発があるということはとてつもなく不経済な事で我々の財政を逼迫しているわけですから、あっていいものではないんじゃないかなと思います。
最後に一点だけ。
これはちょっと僕には答えようがないので孫崎さんにお願いしますけれども、『行政のほぼ全てが信用を失いました。新政府を樹立する可能性と手段はあるでしょうか?』という質問。
(笑)新政府って、なにか革命政府みたいなんですけども、そんな大それたことは私ぜんぜん考えてもいませんし、全然お答えする準備がないんですけれども、どうでしょうか?」
孫崎
「私がさっきから繰り返しているように、原発は止める手段を一般の人たちが持っていると思うんです。
というのは住民の反対で以って強行できないというようなシステムは一応はあるんですよね。
だからこれを使って原発というようなものが次々と止め得ること。
政治というのは一般の市民を考えてやらなければいけないということをその過程で政治家が分かってくるんだろうと。
いま政治家は国民をなめてると思うんです」
岩上
「なめてますよね、本当に。新聞にもなめられてますし、官僚にもなめられてるし」
孫崎
「だけど、原発はそれを変える手段を持っている。
実はこれを実現すると、その他のところにも、あ、やっぱり一般の人たちの意見というものを考えて政治をしなきゃいけないという事の契機になるんじゃないかと思っています」
岩上
「はい。だいぶお時間になってしまいました。ということでありがとうございました。孫崎先生でした。読売にボンボン怒っていて、何かきませんか?読売にそろそろ書かないかとか(笑)」
孫崎
「ということを書いたらエライ叱られました(笑)」
岩上
「そろそろ饗応とか買収とかきませんか(笑)読売新聞の座談会に呼ばれるとか。座談会に呼ばれるくらいはいいんですけどね。買収されないように僕が監視したいと思います(笑)
読売だけじゃありません。日経も全くおんなじ。産経も同じ。朝日はその時々で日和って見せるのが上手ですけど、こないだまでTPPと消費税増税と小沢切りの3点セットをやったら菅政権を推すとか堂々と仕掛けといてよく言うよって」
孫崎
「一つだけお願いがあるとすると私みたいにかなり激しい人間、言いたい人間ってやっぱりいるんですよね。
しかし言える場所っていうのがそんなにないんですね。
そんなにないけれども、比較的あるところは単行本のところが比較的まだありそうなんです。出版社は。
幸いなことに私はここ2,3年まあまあのところまで売れましたので、新しい本を書けというのが今2つきているんですね。
それで、戦後の日米関係を裏から見るという企画が今あるんですね。これをやろうと思っているんです。何をお願いしたいかというと、やっぱりそういう発言をしている人達の本を買って頂きたいんですよね」
岩上
「みなさん、孫崎享さんの本を買いましょう」
孫崎
「いやいや、いやいや。僕はさっき言ったようにみなさんに買ってもらわなくてもある程度、出版社はこれはお金になるということで話がき始めた。ということはそれだけ、世に意見を言うチャンスがあるんですよね。
そういう人達を他のところにもたくさんありますから、賛成する形の発言をする人。
特に一般メディアに出られないような人達、その人の本を買ってあげて頂ければ非常にありがたいと。私も含めて(笑)どうもすいません(笑)」
岩上
「(笑)やっぱり最後にきましたね。清き一票を、のお願いとかあるいはカンパのお願いに近いものがあったと思いますけれども、それは私も同様でして。本当にこの企画をやるにあたって、これを非営利でやらないといけないんです。
たまたまこの小田原の廃校にご縁があって、これは素晴らしい場所だなということで使わせていただくことになったんですけど、ここを管理するのは教育委員会ですから。
それから地元の方の動員も得なきゃいけない。それで絶対に非営利じゃなきゃいけないということがあったんですね。分かりましたと。入場料は取りません、営利と思われるようなことは一切やりませんからということで徹底的に非営利でやってます。
その代わりカンパでご支援お願いしたいということでやっているんですね。日本は寄付文化がない、カンパ文化がないなどと言うんですけど、そうなのかなと。実は多くの人が売買の関係だけではなくて、何か自分が応援したいと思うものだったらば、カンパしようとかいう思いの人、あるいはボランティアをやろうとお思いの人、すごくいらっしゃいますよ。
実はさっき質問してくださった方もボランティアに来てくださっていて、こうやって参加もしてくださって、お手伝いもしてくださっている。小田原の人にすごい助けてもらっているんですね。
本当に迎え入れてくださった小田原市の行政の皆さんにもそうしですし、地元の自治体の皆さん、それから足を運んでくださっている皆さん、ボランティアの皆さんにここであらためてお礼と感謝をしたいと思います。
ありがとうございました。過去形で言っちゃいましたけども、今日は2日目で明日も続きますから。この辺で終了にしたいと思います。みなさんありがとうございました」
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このブログ内の孫崎氏関連ページ。
尖閣(釣魚)事件(8)政権崩壊へ自滅か
世界通貨戦争(20)TPPは日米不平等条約
第一原発は既に「深刻な事故」のレベル
震災・原発の状況と孫崎氏
孫崎氏原発情報3/23
孫崎亨氏講演:領土問題と日米関係の事実
戦後米国支配とかいらいマスコミに鉄槌を」。
2011年8月の記録ですが、岩上安身氏による対談です。
IWJの原点 孫崎亨、岩上安身トークライブ 2011/8/21 書き起こし「Sekirara&Zowie」から
岩上さんの8月19日ツイートよりhttp://twitter.com/#!/iwakamiyasumi/status/104206108289269760
【IWJ・Event】21日には、14:00から、外務省元国際情報局長で、最近は原発問題についても積極的に発言されている孫崎享さんが登場。IWJのUstの歴史は、孫崎さんのインタビューをiPhoneでUst中継したときから始まりました。原発震災を経ても、我々の原点は不変です。
posted at 00:00:46
講師:孫崎享氏
岩上
「外務省の元国際情報局長、日本のインテリジェンスの第一人者である孫崎享さんです。
孫崎さんはもちろん原発の専門家であるとか、電力に特別詳しいとか地震の専門家ではありません。
だけれども、孫崎さんでなければ分からないことがいくつかある。
そのひとつはこの国の統治構造、権力構造とはどうなっているのか?孫崎さんはいつもそこに冷徹なまなざしを注がれている。
その構造というのは国内だけで完結していない、背景にいつもアメリカの影がある。この国というのはアメリカの保護国に事実上なってしまっている。
原子力の平和利用のスタート地点にはやっぱりアメリカの影響があった。その出発点を見据えずして何故、原子力、原発というものが今日このような構造になって我々の社会に根を下ろしているのかが分かりにくい。
かつ、この国の統治構造を見た時には政治家だけではない。目に見えやすいのは政治家が派手だが、そこには大きな官僚機構があり、資本があり、そしてメディアがあり、アカデミズムがある。
こうした政官業学報が一体となって相当巨大な利権構造を生み出している。そうしたことを分析しないと今回の原発事故について、その後の収束を巡っての成り行き、道筋がよく分かってこないのではないか。
そこで孫崎さん、ツイッターをおやりになって、ここのところますますヒートアップ中。どんどん歯に衣着せずにやっているが、結構前は歯に衣着せていたが、ここのところ歯に衣着せなくなってきているので大変面白いツイートを連発されている孫崎さんにお話をお伺いしたい。
先生は3.11はどこで迎えられましたか?」
孫崎
「自分の家なんです。ちょうどたまたま『日本の国境問題』という本を出したんですが―――」
岩上
「北方領土の問題や尖閣の問題や―――」
孫崎
「はい。編集者と打ち合わせをしている最中だったですね」
岩上
「これは大変な事になるというご理解は―――地震のあと津波が起こり、原発の事故に繋がっていくわけですが、あの瞬間に一体自分たちの社会、この国に何が起きたのかという事を即座に理解できた人はほとんどいないと思うんです。どうでしたか?」
孫崎
「その時はまだ原発の危険というのは感じていなかったですよね。むしろ、地震であったり、その後の影響は、東京のほうでは計画停電があったりと、通信手段が停まってしまったようなところもあり、その後の月曜日か火曜日に一水会という右翼団体―――」
岩上
「新右翼ですね。鈴木邦男さんです」
孫崎
「どちらかという脱米。今まで日本の右翼というのはアメリカと一体という非常に変わった右翼なんですよね。
通常は右翼というと国粋主義、国粋主義であると外国との距離というのが必ずあるんですけど、日本の場合には親米一辺倒という非常に変わった右翼ですけれども、それに対して―――」
岩上
「戦後右翼というと特にそうですね」
孫崎
「それに対してアメリカとの距離をしっかり見据えようじゃないかというようなグループが一水会で、私はそこに月曜か火曜に公演に行ったんですけども、その頃はまだ余震が続いてました。
私は止めたいと。もっとオーディエンスがたくさん来た方がいいと言ったんですけども、右翼がそんなことで止められるかと言われて少ない聴衆で―――」
岩上
「(笑)めんどくさいなー。鈴木邦男さん、木村三浩さん。デモで会ったりしているんですよ。脱原発デモで、お~久しぶりと」
孫崎
「今回、原発の問題で非常に大きなメッセージを上げたのは、いま岩上さんが言ったようにエスタブリッシュメントは原発推進すべきだという事を言ってきているんです。
政治家、財界、学者、メディア、経産省という官庁、こうした日本の中枢のところが今も言っていて、出来たら原発というところに帰りたいという動きがずっとずっと続いている。
今度、菅総理が辞めたあと、もう一回その流れが出てくるんじゃないかと私は思っていますけれども、非常に面白いのが、すべて権威のある者が原子力を推進しなければならないという論調に立っている中で、国民の7割が、いやそうではないという事を考えたという事です。
これは非常に大きいことだと思います。
例えばメディアについても日本の70%ぐらいはメディアを基本的に信じる。しかし大手のメディアは脱原発を言わない。
特に一番大きいのは読売。以前として元に戻ってこようとしてやっている。その中で多くの国民は権威のある者と違う事を言い始めたという事。これはものすごく大きい。
そうすると、原発の問題は意外にも我々がこれまで正しいと思っていたような事も実は違うんではないかという事も考えさせるチャンスになったと思うんです。
それで、私は先ほどの話で言うと領土問題の事で一水会に話をしに行った。
北方領土問題というのを我々はずっと日本の島だと、頭の中に北方領土、国後、択捉、これは我々が主張できるんだと国民のみんながそう思っているんです。
私は今度の本で違うという事を言い始めたんです。それを言うとある意味、ちょっと怖い。
一番国粋主義的な人達は領土こそ重要であって、国後、択捉が戦後の歴史のなかで違う歩みをしていたんだという事になると、なんだ国賊が、みたいな話になるから、それだったら本家本元の右翼のほうで話が出来るんであれば一番いいじゃないかという事で出かけたんです」
岩上
「そういう余震も収まらない中で、新右翼の人達にお話になった。実は新右翼の人達というのは脱原発なんですよ。
いま言った多くの右翼の人達はかなりのところ現体制の支配的な層に対して非常に従順なんですね。その従順というのは誰に対して従順かと言えば、結局、最後の最後、アメリカに従順なんです。親米右翼なんです。
なんで親米なの?と言えばこの国の最大の権力者がアメリカだからなんですね。殆どの右翼はそれに従っている。
だけど、そういう中に日本の為の日本でしょと言う人達もいるという事ですね。僕らは取り立てて一水会と深い繋がりがあってということではなくて昔からの知り合いではあるんですけれども」
孫崎
「戦後のところから少し。結局のところ、全ての問題というのは戦後の頃からのスタートで始まるんですね。
私のツイッターを見ておいでの方は分かると思うんですが、皆さん、8月15日を終戦記念日だと我々みな思っているわけですよね」
岩上
「私は思ってないですよ。今年の8月15日の終戦記念日特集というのを、これは敗戦の日だと―――」
孫崎
「いやしかし、もし記念すべき日だとするなら他の日?」
岩上
「はい・・・あ、その話ですね。つまりミズーリ号の調印の時の話ですね」
孫崎
「そう。だから要するに8月15日で終戦になったと我々は思っているけれども、それはポツダム宣言を受け入れるという事を日本が言っただけなんで、別にそれでアメリカが終わったとは思ってない。
ルーズベルトは9月2日、ミズーリ号で終戦になった日に『これで我々は報復が出来た日だ』と。『これから9月2日がくる度に真珠湾攻撃の日を想うと思う、と同時に報復が出来た日だと思うんだ』と。チャーチルも同じように『これで以って戦争が終わったんだ』と。9月2日なんです。
じゃあ、なぜ9月2日が終戦記念日じゃないのか?それは9月2日という日が敗戦記念日だからなんです。9月2日の敗戦記念日は言葉だけの問題だろうというんじゃない。実は9月2日に日本側はサインをしているんです。何をサインしているか?
いま我々は例えば、日本が属国だと言うとそれは誰かが日米関係を歪曲して話そうとしている人が書いたものだとみんな思う。
今日、講師に孫崎がいて、日本は属国だと言ったと。あいつはちょっと極端すぎるよと、こう言うが、属国という言葉は9月2日、正式には9月21日か22日に、アメリカの初期占領の方針というのがマッカーサーの元に来る。
その時には、日本は属国だと書いてある。日本側と交渉する必要は何にもない。これからマッカーサーという人が日本の最高権力者であると。
そしてその最高権力者が日本をどのようにするかという事は日本政府と何にも相談することなく決めるんだと言っている。この体制が51年のサンフランシスコ条約まで続いたんです。
そしてそこでサンフランシスコ条約と同時に日米安保条約というのが出来た。
非常に大きな問題は、日米安保条約が出来た時に占領体制とどのような継続性を持っているのか?
その継続性を見ると、その時ダレス長官が、日米安保条約が基本的にどうなったかという事を解説している。その解説の中にアメリカの基地をどこに置くか、いつまで置くかという事は日本側と相談することではない、と。
これが一回目の安保条約なんです。そして1960年に安保条約の改定があったけれども基本的には何も変わっていない。
我々は属国だと言うと、何かとんでもない人間が現在の情勢を歪めて話をしているんではないかという事を思っているのだが、実はそうではない」
岩上
「ちょっと補足を。国際関係論や現代史が分からない人の為に。まず、占領があったわけですね。敗戦のあとの占領。
無権利状態のような状況で、占領国の総司令官の言う事を絶対に聞かなきゃいけないような占領期が続いた。
そして、サンフランシスコ講和条約、これによって日本は独立を果たし、国際社会に復帰を果たしたと、こういう建前になっております。いまでもどこを見てもそう言われていると思います。
ところがそれが完全な独立、完全な主権回復ではなくて、実はその時点から安保条約というものがあって、この国にずっとアメリカ軍が占領支配するようになる。
駐留というより占領の継続。そして、60年安保の闘争が行われた時というのは安保条約の改定があった。でも、改定をしても結局同じ事が続いていってるというお話なんですね」
孫崎
「もうひとつ。今日ツイッターしたんですけれども、正力さんについてツイートしたんです。(*)」
(*)2011年08月21日(日)
正力:元検事「正力とは一体何者か。これを調べることで日本がかなりわかるのでないか。読売の役割も」。経歴見てみよう。「関東大震災で”朝鮮人暴動”の噂を流布させ、自警団による虐殺の遠因」「同年 警視庁警務部長」で公安警察の雄。「1924年懲戒免官後読売新聞の経営権を買収、社長に就任」
posted at 09:05:01
正力2:「1934年 大リーグ招聘、巨人軍創立」。1940年 大政翼賛会総務。公安警察の雄で、大政翼賛会総務なら、戦後米国占領下、絶対に公的に生きれない人物。戦後それが米国とのパイプの要の一人。有馬教授のテレビ関連、原発関連での米国との結びつきの正力研究はあるが、まだまだ要研究。
posted at 09:07:06
岩上
「はい。正力松太郎さん」
孫崎
「原発の問題というのは必ず正力さんと関係があるわけです」
岩上
「正力松太郎さんというのは読売新聞の社主で日本テレビの創設者ですね」
孫崎
「結局、原発がどうして出てきたかと。日米の関係を若干整理しておきますと、第五福竜丸事件(*)というのがあった。これが被爆した。
(*)第五福竜丸事件[wikipedia]より
被爆事件 [編集]
1954年3月1日、第五福竜丸はマーシャル諸島近海において操業中にビキニ環礁で行われた水爆実験(キャッスル作戦・ブラボー (BRAVO) 、1954年3月1日3時42分実施)に遭遇し、船体・船員・捕獲した魚類が放射性降下物に被爆した[1]。実験当時、第五福竜丸は米国が設定した危険水域の外で操業していた。危険を察知して海域からの脱出を図ったが、延縄の収容に時間がかかり、数時間に渡って放射性降下物の降灰を受け続けることとなり、第五福竜丸の船員23名は全員被爆した。後に米国は危険水域を拡大、第五福竜丸以外にも危険区域内で多くの漁船が操業していたことが明らかとなった。この水爆実験で放射性降下物を浴びた漁船は数百隻にのぼるとみられ、被爆者は2万人を越えるとみられている。
予想以上に深刻な被害が発生した原因は、当初米国がこの爆弾の威力を4 - 8Mtと見積もり、危険区域を狭く設定したことにある。爆弾の実際の威力はその予想を遥かに超える15Mtであった為、安全区域にいたはずの多くの人々が被爆することとなった。
第五福竜丸の水爆災害(とりわけ久保山無線長(当時40歳)が「原水爆による犠牲者は、私で最後にして欲しい」と遺言を遺して息を引き取った事)は、当時の日本国内に強烈な反核運動を起こす結果となった。反核運動が反米運動へと移行することを恐れた米国は、日本政府との間で被爆者補償の交渉を急ぎ、「米国の責任を追及しないこと」の確約を日本政府から受け、事件の決着を図った。1955年(昭和30年)に200万ドルが支払われたが、連合国による占領からの主権回復後間もなかったこともあり、賠償金でなく“ex gratia(好意による)”見舞金として支払われた。また事件が一般に報道されると、「放射能マグロ」の大量廃棄[2]や、残留放射線に対する危惧から魚肉の消費が落ち込むなど、社会的に大きな影響を与えた。
これに対して米国は、第五福竜丸の被爆を矮小化するために、4月22日の時点で米国の国家安全保障会議作戦調整委員会 (OCB) は「水爆や関連する開発への日本人の好ましくない態度を相殺するための米政府の行動リスト」を起草し、科学的対策として「日本人患者の発病の原因は、放射能よりもむしろサンゴの塵の化学的影響とする」と明記し、「放射線の影響を受けた日本の漁師が死んだ場合、日米合同の病理解剖や死因についての共同声明の発表の準備も含め、非常事態対策案を練る」と決めていた。実際、同年9月に久保山無線長が死亡した際に、日本人医師団は死因を「放射能症」と発表したが、米国は現在まで「放射線が直接の原因ではない」との見解を取り続けている[3]。
第五福竜丸の被爆により、日本国民は原子爆弾・水素爆弾と両核爆弾の被爆(被曝)体験を持つ国民となった。
第五福竜丸は被爆後、救難信号 (SOS) を発することなく他の数百隻の漁船同様に自力で焼津漁港に帰港した。これは、船員が実験海域での被爆の事実を隠蔽しようとする米軍に撃沈されることを恐れていたためであるともいわれている[4]。
【リンク】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%BA%94%E7%A6%8F%E7%AB%9C%E4%B8%B8#.E8.A2.AB.E7.88.86.E4.BA.8B.E4.BB.B6
日本の中は大変な騒動になったわけです」
岩上
「南太平洋のビキニ岩礁で水爆実験が行われて、日本の漁船が被爆した事件。当時は大変な大騒ぎになった。戦後、そろそろ立ち直り、復興期に入っていた時にこれが起こった。1950年代。この時の記憶から怪獣映画のゴジラが生まれたりする」
孫崎「そこで、その時に原水禁が立ちあがってきて、反原子力。ある意味ではアメリカの支配に対する日本の世論が非常に立ち上がったときに、このままで行くとちょっと危険なので日本に原子力発電所を作らせてあげようと。
そしてそこで平和利用という事が出てくるんです。
だから原発の促進と、実は核兵器廃絶、あるいはソ連に続いてアメリカに対する厳しい見方というものと裏腹の関係があったんです。
この間もテレビを見てましたら、広島あたりの人の中に『私たちは今までずっと恨みを持っておくのは良くない。昔我々が何をされたかという事から脱して、新しい時代に生きようと。協力の世界で生きようと』その協力のシンボルが原発だったわけですね。
その原発の推進者が正力松太郎さんだった。いま、正力さんの事を言ったのはある意味唐突じゃない。
何故正力さんお話しが出たかというと、昨日たまたま知り合いの元検事と会った。そこで、戦後史はやっぱり正力松太郎を見ないとどうもよく分からないと。
正力松太郎を見ましょうという事で家に帰ってツイッターに打ち込んだ。正力松太郎さんって戦前どんな人だったか知っている?」
岩上
「特高(特別高等警察)の親分ですよね」
孫崎
「特高の親分。それで関東大地震があったときに朝鮮人が暴動を起こそうとしているという噂を流すことによって挑戦の人達に対し攻撃があった」
岩上
「いわゆる関東大震災の時の朝鮮人虐殺という事件に正力さんが当時関与している。
内務省。当時の警察というのは非常に大きな内務省という一つの組織の一部だった。その絶大な力を持っていた内務省の官僚として、ここに関わっていた。それはどういう関わり方だったのでしょう?」
孫崎
「朝鮮人がこれを利用して暴動を起こそうとかいうような噂を流す、という事をやった」
岩上
「あれは自然に流れたものではなく、そうした心ない噂というものが実は意図的に当局によって流されていた。
要するに一種のパニックを作り出して、警備・治安を強化しなければならないという口実にしていく。これは治安機関がどこの国でもやる手ですけども、そういう事があったわけですか」
孫崎
「そのあと、警視庁の警務部長という一番重要なポストになる。それから戦争へ行くための大政翼賛会、オールジャパンを作ったわけです」
岩上
「今も大連立をやろうとしていますけど。読売がやろうとしているけれども」
孫崎
「そこの主要メンバーなんです」
岩上
「なるほど。おんなじことをやろうとしているような気がしますよね」
孫崎
「非常に重要なのは、参戦になり一番の戦争犯罪人は全部戦犯としたが、戦犯とした時に治安警察、大政翼賛会、こういうようなものは戦犯第一号になるような人達。それにも関わらず、正力さんというのが戦後史の中で出てくるわけです。
これはいったい何なのか?
正力さんというのは1930年位に(1924年)警備上のある事件があって免職になった。その34年(記憶違いで実際には24年)に読売新聞を買い、社主になるんです」
岩上
「1934年に読売を買ってるんですか?え?戦前じゃないですか?」
孫崎
「そうなのよ。戦前なのよ。だから戦前の中核の人間なのよ」
岩上
「1930年前後というのはまさにファシズムの前夜か、もう突入過程ですね」
孫崎
「というような形でファシズムがいく。もう少し調べないといけないが、その時に支えた新聞、そして大政翼賛会。ということでA級戦犯になるんです。だけど、1947年ぐらいに直ぐに大丈夫になるんです。
それと、面白いのはアメリカのプロチームを呼んで、それでジャイアンツがスタートするんじゃないでしたか?(戦前)
というようなものを見ますと、原発の問題というのもやはり日米関係というものとある種のリンクをしてきたと」
岩上
「原子力の平和利用という事で原発を持たせるのはなんでなのかというところはまだまだ未解明のところが多いとは思います。
核というものは反対だと。核爆弾を落とされているし、ビキニ岩礁の事件もあるし、原水爆禁止運動も盛り上がってきたし、アメリカからの独立というもの、当時の日本人は戦争体験もありますから、今の我々と違ってアメリカというのとこの間まで喧嘩をしていて、とされ焼夷弾を落とされ、ボロボロにされた相手だという意識があるんですね。
いまはもう心の中にしまいこんでて、反発心は隠して入るけれども、やっぱり心を開けばアメリカに対して冗談じゃないという気持ちがあった。
だからいつでも反米、もしくはアメリカからの独立・自立というような動きになりかねなかった。
それを食い止めるためにも、そして冷戦体制が始まっており、アメリカ側の陣営に食い留め置くためにも日本を引きつけておく必要があった。
それは色んな形で行われましたよね。高度成長を助けるため。
復興を助けるために。アメリカがプラスの面で働きかけてくれた部分もある。市場開放してくれた。良い事をしてくれた部分もいっぱいある。
しかし同時にアメリカから離れないようにするため、核のうちのある部分、原子力のある部分を差し出した。なぜか、ですよね?
つまりそれを受け取って喜ぶ日本人は当時どれだけいたかというと、一般の人達はいい迷惑でそんなもの要らないと思っていた人はたくさんいたと思います。
だけれども、日本の右翼の、あるいは保守の人達は強固な軍事国家としての日本の再興という事を願っていた人が当時はたくさんまだまだ残っていた。
その人たちの気持ちの中には、日本も核武装、核兵器を持つことによって主権が回復できるんじゃないか。世界に対してまた強硬な意見を言って自分たちの主張を通すことが出来るようになるのではないか。国際政治の中で政治力を発揮できるんじゃないか。こういうふうに考えた人達。
もっと直截に言うと、これから核戦争の時代だからドンパチやる時に自分たちも武装しとかなきゃと軍事力行使の手段として、文字通り核武装が必要だと考えていた人達もたくさんいたと思いますけども、そういう動機が薄々あるだろうという事を見越したうえで、そういう人達に対してアメ玉をやるようにして核の力の半分を渡した。
だけれども、全部を渡したわけではない。ある種、そうやりながら日本のとりわけ保守層というものをタカ派層を引きつけ続けた。飼い慣らしてきたという事になるんじゃないですか」
孫崎
「そうだと思いますね。だけど、一番重要な事は一般国民の核への反発というのを和らげた」
岩上
「なるほど。その核という原子力の平和利用が可能なものなんだよと」
孫崎
「そうそう。平和利用というものがなかったら核兵器反対」
岩上
「一本槍になってしまうから」
孫崎
「一本槍になって、そうするとそれは必然的に反米に繋がっていく。
その流れというのは第五福竜丸の時、それから原水協というようなものに非常に盛り上がりがあるという危険性があった、というような認識があった。
だから国民に対して、核というのは兵器というものがあるけれども一方は平和利用があるんですよと。これから平和利用の事を考えていきましょうと。
過去を考えるのではなくて未来を考える。では未来を考えると、それは核というところで日米で協力していきましょうよという話になってきますから。
だから日本の対米政策とリンクしていたんですね」
岩上
「そこで読売がどう絡んでいたかというと、この正力さんが初代原子力委員会の委員長になるわけですね。且つ、ナベツネさんなんかと盟友として知られる中曽根さん。
中曽根さんが当時、科学技術庁が作られていく過程の中で原子力の多くの所管や権限が移されていく。それは中曽根さんがアメリカから日本へ原子力技術導入に関してたいへん大きな役割を果たされた。
その後押しを読売がしてきた。読売が単独でやってきたわけではないけれども、大変大きな役割を果たした。そういう歴史があるわけですね」
孫崎
「一つだけ付け加えておくと、もちろんそういう人達もそうなんですけれども、そこで革新グループもそれに入るんですよね。
原子力のジュネーブ辺り(1955年、ジュネーブで開かれた原子力平和利用会議)で新しい原子力を開発する民事のための原子力平和利用だという形でデリゲーション(代表団、権限委譲)が組まれていくんですけれども、これはいわゆる保守層だけじゃなく革新の人も入ってくるんです。
そういう意味で見ていきますと、反原発というところも平和愛好層というものが必ずしも原発反対ではなかったわけです。
私が少しツイッターで言っているのは、公明党のこと。公明党の旗印は平和の党なんですよね。マニフェストの2番目くらいに人間の命を守る党と。けれども原発推進なんです。
という事で原発推進が良いというところで以って革新平和利用の層がある意味では分断されているという事が言えると思うんです」
岩上
「そうですね。今の時代でちょっと分からなかったのは原爆と原発がどのように違うのか。
実際はいざ事故が起こってみると原発の事故の被害というものは結局、放射性物質による被ばくですから、原爆だって恐ろしい爆風だけではなくその後の被ばくという問題。
それが大変な影響を与えるわけで同じようなものじゃないか。
今だったら確かに思うんですけれども、昔だったら、爆弾として使われる爆風の威力の凄まじさと、原子力発電のパワフルなモーターで、クリーンなエネルギーで、資源のない我が国が存続し産業が発展していく上で不可欠、未来へ向けてのエネルギーなんだというような宣伝があって、その両者が全く別のもののように悪なる力を飼い慣らして善なるものに善用したというふうに、確かにあの時代、右だろうが左だろうが、タカ派だろうがハト派だろうがみんな一緒になって、それはそうだと説得されて動いたことは事実なんですよね。
ただそこの根っこにアメリカの国益も絡んでいたでしょう。今日、福島第一原発が事故を起こしたその第一原発というものはGEの設計ですよね。でもいまゼネラル・エレクトリック社を責めるという声が全く上がりません」
孫崎
「最初にはアメリカにはあったんですよね。非常に危惧したんです。私もその辺のことは良く知りませんけども、1990年代に製造物責任かなんかがあったですよね」
岩上「はい。PL法(*)のことですね」
(*)製造物責任法[wikipedia]より
製造物責任法(平成6年7月1日法律第85号)とは、製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法規のことをいうが、形式的意義においては、上述の損害賠償責任について規定した日本の法律(平成6年法律第85号)のことをいう。1995年7月1日施行。製造物責任という用語に相当する英語の product liability (PL)から、PL法と呼ばれることがある。
【リンク】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%BD%E9%80%A0%E7%89%A9%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E6%B3%95
そういうような問題がたぶん適用されるかもしれないということでGEぐらいは一時期非常に心配したんですね。だけど、日本の社会ではアメリカにモノ申すということを全くしませんから」
岩上
「だからアメリカは言われると思っていたのに、全く言われないからホッと胸をなでおろして、なんだこれなら大丈夫じゃないかと思っている状態。
責められもしないんだったらわざわざこちらからうちの責任ですと言う必要はないなと。そんな調子ですよね。
そういう残念な状態にある。実は残念な国なんですよ、日本という国は。とっても残念な状態にある。
このGEの責任というのは追及してしかるべきじゃないか。もちろんこれを導入するに至っては免責されているだろうとは思いますけれども。でもこんなものを作ったじゃないか、と言ったっていいじゃないですか。
そしてこういうものを受け入れた我々の責任は大きいけれども、だけれどもやっぱりこれはおかしいだろという声をなぜ上げないのか。あげるとアメリカは困るんですよね。
アメリカは国内で原発についてそれぞれ論議を出来ます。そうするとアメリカでは当然色んな意見があって、原発はアメリカに会っても非常に危険なのではないかという声が上がる。
これはアメリカの政府、推進しようといった勢力にとっては困るので、早め早めに釘を刺すというような動きがあるわけです」
孫崎
「だから、今後、これから次の政権で原発がどういうことになるかということは非常に重要なことだと思っているんです。
私自身はある時期、ツイッターで菅首相をかなり攻撃してきたんですね。それはもうちょっと前からいくと、普天間問題で辺野古へ行くというのはおかしいと。普天間問題で日米合意を守らなきゃいかんという立場はおかしいということを言ってきた。
その流れで鳩山さんが潰れたあと、菅さんがすぐにアメリカべったりの方針を出しましたので、菅総理はおかしいということをずっとツイッターでやってきたんですけども、原発に関する限りは政治家としては、当初一週間眠れなかったという時にちゃんと政策をやったかというとこれはおかしいと思いますけども、そのあとあるべき政策を出してきましたよね」
岩上
「最初は違ったんですよね。最初は原発を維持すると。浜岡も止めないと。
最初の時期に記者会見で原発をどうするつもりか、浜岡をどうするのかと聞いた。すると、原発は維持する、一番大事なのは事故の検証なんだと。事故の検証なんて待っていたら終わらない。
本当に事故がどう起こったかなんていうのはスリーマイルでもチェルノブイリでもずっと後のことです。メルトダウン寸前だった事が分かったスリーマイルでも10年もかかっている。でも今日、メルトダウンしてしまっている。
燃料がどこかに行っちゃっている。それを見つける事も見る事も確認すら出来ない。形状も分からない。そしてそれを回収する手立ても分からない。
そんな状態で検証が先だなんて言っていたらお話しにならない。そんなのんきな事を当初は言っていた。浜岡も止めないと言っていた。
ちょっと経ってから質問すると、変わっていた。浜岡を止める事になった。それは浜岡を止めるだけのはずだった。
これは経産省が描いた絵だと思う。浜岡を止めてもあれは一時的な停止で、防潮堤を作ったから大丈夫という事で再開できるようにしておくはずだった。私が取材した限りでは経産省が描いた絵。
海江田さんは経産省の振り付け通りにしゃべる人だから、その通りにしゃべる予定だったのを菅さんがパクって自分の手柄にしてパフォーマンスされた。そうしたらウケたと思った。
でもその時はまだ経産省と気脈を通じ、経産省のシナリオ通りのガス抜きをするだけだったがその辺りからずれていった。
その頃から本格的にずれ始めた。良い意味でずれたと思っていますけど、先生が仰るように日本のエスタブリッシュメントからすると、あいつバカじゃないかという感じになっているわけですよね」
孫崎
「ということで次になったときに菅総理が言っていたように現在のスタンス、脱原発というようなものの流れに本当に乗ってくれるかどうか分からないというのが本当に心配される事。
その背景にはひとつは米国にとって日本が今脱原発をやられるというのは非常に困るんです。
というのは自分の国に原発があるわけですから。自分の国の世論もあるのに、やっぱり原発というのは危険だということでポリシーを変えたということになると今度は米国の住民が騒ぎ始めますから。
いま米国は原子力政策をそのまま続けようとしている。
それに対して日本の政策が変わるということになれば、ドイツは考え過ぎだとしても、みんなが本当にそうですかというような雰囲気になるから、日本にはそのまま続けてほしいという気持ちが強い。
私はそれも一つ、大連立という事を言っている理由だと思うんです」
岩上
「そうですよね。大連立をすると衆参でねじれが解消される。なので法案が通しやすくなるというのは小手先の議論であって、そもそも参議院が衆議院の全くのコピーだったら参議院なんていらないわけで、そこで様々な議論が尽くされなければ意味がない。
ところがそういう話じゃなくなっている。恐らく、その話は小手先の話であってとにかくべったりとエスタブリッシュメント。今回、本当にその姿が明らかになったと思いますけれども、それの言う事通りにとっととやってくれる便利なパペット集団操り人形、それに早いところ政治家どもよ、変わってくれと。
国会がそういう状態になってくれと。そしたら官僚であれ、メディアであれ、あるいは財界であれ、その背景で支えているアメリカであれ、大変都合が良いと。
先ほど先生が、7割の国民がこんなマスコミの情報が統制されている時に政府を信用していない。そういう状態でなお、7割が原発をノーと言っている。ところが読売みたいなところが原発推進だと言っている。
国民に支持されていない政府があり、国民に支持されていない財界があり、国民に支持されていない新聞があり、国民に支持されていないテレビがあり、そういう状態なんだと思うんです。
だから、本当だったら国民の7割が、こんな状態はあり得ないと思っているのであれば、これらみんな言ってみれば失格なんですよね。
そうならなきゃいけないのになぜかそうではなく、違う方向に粘り強く持っていかれようとしている。
そのひとつの象徴として首相の首が挿げ替えられ、内閣が取り替えられ、便利な人間に取り替えられていこうとしているんじゃないか、そんな気がしないでもないですよね」
孫崎
「ささやかに私が今ツイッターでやっているのは、読売社説批判というのをこれ必死でやっているんです(笑)もう社説批判をやったって大したことじゃない。
向こうは1千万部売れるし、しかし有り難い事に26,000ぐらいのフォロワーが。岩上さんの10万ぐらいのとは雲泥の差なんですけども、しかしそれでもそういうようなものをやっているとそれが拡散していくわけです。
読売新聞がおかしいなと思っている人はたくさんいるかもしれないけども、ある種、どうおかしいのかということを一つ一つ丁寧に批判ということでやっている。
昨日の社説でいうと、昨日は放射線を勉強しなきゃいけないと。それで勉強すれば風評被害みたいなものはなくなると。
何を言っているのかと。勉強しなきゃならないのはあなたたちでしょうと。
そして社説で言っている論法は、放射線というものは癌の治療にも役立つ、それから自然に空から降ってくる放射線もある。そういうのを勉強すると今騒いでいる放射線でヒステリックになっているのはおかしいんじゃないかという議論になるから我々はもっと放射線を勉強しなければいけないと。これが読売新聞の社説なんです。
今のこの時点でもそんな事を言っているわけです」
岩上
「もうね、クレイジーとしか言いようがない」
孫崎
「そう。だけど、見てみるとクレイジーということを言っている個所はないんですよ。メディアは同業だからあまり悪口を言わない。学者も言わない。
日本のメディアで非常に大きな事は、我々多くの人はメディアというのは中立で、歪んだところを社会の警告をメディアが言ってくれていると思っている。それが我々のメディアを見る目なんですよね。読売ばっかり攻撃して申し訳ないけど―――」
岩上
「読売が代表的なのであって、日経なんて丸々コピーですよ。産経も同じですし」
孫崎
「しかしそれは権力構図なんです。権力の一部として権力になる事を自分たちが選択しているという事なんですね。
その権力でどう物事を誘導するかということに対しておかしいと思っていないわけです。
自分たちは正しい方向、正しい政治に新聞という武器を使って持っていく役割を果たしている。だから政治的に自分たちの目的の方向に持っていく事に対しておかしいとは思ってない」
岩上
「政党の機関紙とか、政治宣伝ビラとか、そんなようなものですね」
孫崎
「だからそれよりも怖いわけですよね」
岩上
「偽装してますからね」
孫崎
「うん。政党のものだったら、これは政党のものだから場合によってはバイアスがかかると思ってみんな警戒している」
岩上
「そうですよ。赤旗だったら、聖教新聞だったらだいたい想像がつくんですけどね」
孫崎
「だけど、あくまでも読売新聞なんかは、我々は非常にニュートラルであって、一番公平な報道をし、公平な論議をするという幻想をみんなに抱かせつつ、それをやっている訳だから、非常に怖い」
岩上
「この間、田中康夫さんとお会いして長い話をしたんですけども(*)、USTでおっしゃったかな、かなり歯に衣着せずお話しになる方ですけども、ナベツネさんからジャイアンツのチケットと一緒にお手紙をよく貰うんですって。
(*)110820新党日本・田中康夫×岩上安身http://www.ustream.tv/recorded/16729514
いろいろと“あの国会の質問は良かった”と。“氏家にもよく見とけと言っといた”とかそういうのが来るんですって。だからそういうふうに言ってくれればやっぱり嬉しいじゃないですか。
だけど、この期に及んでも原発は必要だと手紙に書いてこられると」
孫崎
「書いてくる?」
岩上
「まめな人ですね。ですから、どうすべきか、どっちなんだろうと本当は人間迷うべきなんだろうと思うんですよ。どっちにしていいか分からないと色々考えなきゃいけない。判断を保留する部分もある。
だからこそ情報を収集しようとなるはずなんだけれども、答えが出ちゃってる。
その答えの為に不都合な現実というのをどう折伏、説得していくかという事の為に言葉が使われてしまっている。
それはまことにおかしな状態で逆転している。
いま、おっしゃられたように宣伝機関化してしまっているんですね。
日本テレビ自体がもともとCIAが工作資金を出して作られたと。正力松太郎さん自身がポダムというコードネームを持ったCIAのエージェントだったという事も今日あきらかになってたりする。
大変悲しい現実。それが戦後史の中の事実として受け入れざるを得ないし、そういう状態をやっぱり早く正常化してもらわないと。
まともな新聞メディアとして機能してもらいたいと思うんですけども。
ただ、これは末端まで貫徹されてまして、読売の記者が取材に行くと、“うちは原発推進ですから”と断って、取材というよりは居直って話をする、質問するということがざらにあるわけです。
ちょっと迷われないのかなと思うんですけど、自然放射線があるから平気なんだとか、それはおかしいだろと。
自然放射線が本当に裸に降り注ぐ中にいたら我々は生息できませんよ。
そういうものが次第に我々の身体に貫かないまでになったからこそこの環境に生きていける訳だし、また医療に役立つと言ってもやむを得ず受けているのであって、レントゲンであっても放射線治療であっても浴び続けて身体に良いわけない。
むしろ非常に危険なわけです。毒を以て毒を制すみたいな事をしているのであって、だから良いんだという理屈には全くならないですね。
そういう理屈を振りかざしていくというのはどうなのかなと思いますよね。
皆さんの質問を受け付けながら少し進めていきたいなと思うんですけども、何かご質問ご意見ある方いらっしゃいますか?」
質問者A
「いま、首相候補で何人か名前が挙がっている人達がいて、その中の1人でA級戦犯は戦犯じゃないみたいな事を言っている人がいるんですけど、要するに東京裁判全否定なんていう人が首相になってアメリカは許すのだろうかという事をお聞きしたいです。アメリカべったりのくせに東京裁判全否定してて、なんだそれという」
孫崎
「勉強されてないんじゃないでしょうか。としか思えませんね。アメリカが厳しく出てくるというのを知らないんだと思います。そのうちもし首相になったら態度を変えるでしょう」
岩上
「野田さんはご存じのとおり、財務省の振りつけられたパペットというようなところで評価が定まっている人です。
申し訳ないですけれども。やらなきゃいけない彼のミッションがあるとすれば、それは消費税の増税なんですよね。
何よりかにより。その他のところは枝葉末節見たいなところがあるわけです。浮かんでは凹み浮かんでは凹み、というのは彼が本格的な候補ではない証拠なんですね。
かなり早い時点で名前が出ました。ということは観測気球みたいなもので、ああいうものは後出しじゃんけんの方が強かったりするわけです。特に近ければ近いほどボロが出ない。
早めに出て迂闊な発言して引っ込む。まだ時期尚早と。またフワッと上がってくる。
実際問題として前原さんを担いでいたというのが現在の執行部ですよね。そこが今民主党の権力を実質的に担っているわけですけども、その人達の核にいるのが誰なのか。一致しているのは仙谷さんなんですね。
仙谷さんを中心とするグループであって、その本命候補というのは前原さん。
前原さんはいろいろ外国人献金問題であったりとかある。今回の代表選に関していうと、ワンポイントリリーフみたいなことがありますから、来年の9月にもう一回、今度は本当の意味での選挙があるわけで、その時に満を持して出ようと思っているのではないかという推測があります。
とはいえ、こういうものはぎりぎりになってポッと出てなる事もあり得るので、両面あると思うんですけども、野田さんは当て馬みたいに名前が出たり引っ込んだりと。
でも暫くは誰がなったとしてもB級候補がなってサンドバックにされながら、お前ミッション果たせよと言って、ちょっとだけ持ち上げてもらって、それから支持率が下っていく過程の中で消耗、消費しながら消費税を1個通すか、ワンイシューですよね。原発を再稼働させるか。
でなきゃTPPやるか。TPPやるというのは大変ですから、3つも4つも出来ないと思います。
菅さんは最初そのミッション全部やる気だった訳ですけども、原発を初めとしてやらないというような態度になっちゃったわけで、そこで彼は御用済みというような扱いを受けているわけです。
そういう意味では野田さんも何か一つ、消費税の増税じゃないけれどもそういう事をやってお払い箱になるのだろうという筋書きだと、これは多くの霞が関、永田町関係者の見立てるところですね」
孫崎
「一つ、A級戦犯の話で。A級戦犯とBC級戦犯と、この二つがありますよね。
BC戦犯というのは現地で人道的なものに反して虐待をしたというのがBC級戦犯で、実行部隊と言われる。
だけど、戦争をする計画を立てた本当の推進者がA級だという位置づけなんですよね。
その中で、日本のもっている非常に大きな歪みは、どこで歪んできたかというと冷戦構造があった時に、実は1947年ぐらいから出てくるのですが、ソ連との戦いで日本を盾にしようという考え方が出てくるわけです。
最初は日本というものをもう一回戦争は出来ないというような形にしていく。
しかし日本を戦争の盾に使用と思った時からA級戦犯の人達も使い始めたわけですね。それはいちばん代表的なのは岸総理であるとか。そこから日本の政治の歪みが出てきたわけですよね。
本来、ある意味では日本国民自体が第二次世界大戦というものを総括しなければならないにもかかわらず、総括せずに、結局その時には鳩山総理が駄目になるなど、いくつかの有力な人達が米国によって排除されている中で、代わりとして右派の戦犯のような人達が日本の政治を取り仕切ってきたというところがA級戦犯の問題の一番の日本政治の難しいところ、問題点だと思っています」
岩上
「A級戦犯に関して僕もちょっと。要するに野田さんにとってA級戦犯がどうのこうのと歴史的に語るというのは付け焼刃にすぎないということなんですね。
今の孫崎さんのお話の補足なんですが、『ANPO』というタイトルでドキュメンタリーを作られたリンダ・ホーグランドさんという監督がいます。
この方は日本で長いこと育ったアメリカの方なんですけれども、凄く日本語が堪能で日本の事を故郷のように思っている方なんですが、彼女と本当にツイッター上で知り合って、意気投合して彼女の『ANPO』というドキュメンタリーのトークライブに出て彼女にもインタビューをした。
その映画をぜひ機会があれば見て頂きたいのですが、60年安保あの運動の記録を色々な形で記憶していくアート。例えば、音楽とか絵とか写真家とかそういうアーティストたちのインタビューを収録していくドキュメンタリーなんです。
一見、アートについて語っているんです。ところがその中にちょっと異質なんですけども、アメリカ人が入るんです。CIA秘録という本を書いたジャーナリストなんですけども、この人がものすごい数のCIAにインタビューを重ねている。
そして対日工作、日本に対してどんな工作をしたのかということについての証言もたくさん取っているんですね。ドキュメントも含めて。岸さんの事、今言ったA級戦犯の人達の事も出てくる。
このA級戦犯の人間、一旦失墜してしまったかつてのエリート。これにアメをあげる訳です。
アメを差し出し、向こうもそれに食らいついてくる。
お互いに持ちつ持たれつで、岸は自分を支援してくれたたら徹底的にアメリカに尽くすんだというような事を持ちかけてくるし、アメリカの側もアメリカにとって好都合な政策をやってくれるんだったらお前を首相にしてやるぞと。
政治的にも経済的にも色んな意味でバックアップするぞという取引が成り立つ。非常に卑劣な取引。
こういう取引が何故こういう場で普通に語られるかというと。アメリカはあらゆる所でやっているんです。
南米諸国とかアジアの国々とか、よその国の人達だと、隣人がいて隣国がどんな目に遭ってどんなことが起こっているかということをみんな知っていますから、アメリカがそういう工作をするということを普通に知っているんですね。
日本だけが特別扱いを受けているわけがないわけで。日本も全くおんなじように工作の対象になり、そういう取引が行われ、国を売る政治家が現れる。
自分たちが特権的な地位を得て国民は不利益を被るというようなことが行われている。現実にそういうことが行われたというのをアメリカ人のジャーナリストがアメリカ人の映画監督に対してしゃべっているんです。
なお、その本も読んで頂けるとよりなお分かりやすいと思います。他にも研究書があるんですけど、『ANPO』の映画だけでも十分分かると思います。
それを見ると結局なぜA級戦犯全体が国益の為に一生懸命大日本帝国の為に挺身して良かれと思ってやったことが結局あとで裁判で裁かれたかという見方もあるでしょうけども、戦後のA級戦犯ということを考えると中には身を翻した人がいる訳ですね。
身を翻して自分の身の安全と共に、それどころか立身出世を再度出来た人達がいる。
岸さんとか正力さんとか。そこにぜひ注目して頂けると戦後の歴史の理解というのが進むんじゃないかなという気がします」
質問者B
「私は第一原発の地元の人間なんですが」
岩上
「浪江町からいらしたんですよね」
質問者B
「第一原発が着工されましたのは私らが小さい頃でして、高校1年の頃に確か着工されたんです。
それまでの記憶では原子力に対する日本人のアレルギーは今と変わりませんで、広島長崎の反対運動というようなもんがいっぱいあったんです。
ところが、第一原発については地域的にもそうした団体の方々も、そういったデモもなかったような感じがするんです。後になってなんであそこはデモも反対運動も起こらなかったんだと、ある方にお聞きしたら『当たり前だろ。あれは一人の財閥の人の土地で持ち物だよ』という事を聞いて、唖然としたんですが、それは事実なんでしょうか?
今のある鉄道会社の名前があがってそこの下の社主の名前も上がったんですが私どもは全然分かりかねますので。
それで学徒動員された方がその場にいたのですが、涙を流されて本気になって怒ったんですね。
俺らはひとつの個人の鉄道に尽くしたんじゃないんだと。あの通りを平らにして開港するのに何人掛かったかと」
孫崎
「一言だけ申し上げますと、問題はその土地が誰のものであったかということだけではないんだと思うんですよね。
その周辺の人達がどのように原発というものを受け止めたかということが非常に重要であって、今日たまたまツイートしたのは、どなたかが送ってきたものを紹介したんですけども、北海道の泊原発、泊村の癌になって死亡する率は北海道180町村の中で飛び抜けて高いんですよね」
岩上
「それは再稼働の今回火ぶたを切るはずだった玄海原発もそうですね。よく知られている事ですけども、玄海町は癌や白血病の罹患率が高いんです」
孫崎
「結局、本当はそれも併せて原発は問題になるわけですから、それが非常に残念ですけども玄海原発もそうだし、敦賀原発もそうだし、泊原発もそうだし、基本的には米軍の基地と同じように地方にお金を与えるというシステムで以って地方住民が絶対反対しない形をとっていたと。
今度もちょっと見ますと泊原発は4町村が支持に回りましたよね」
岩上
「逆を言うとその4町村にしか聞いてないんですね。要は地元の理解を得てと言うんですけども。札幌なんかはごくわずかな距離ですよ。
札幌とか函館とか大きな都市があるし、他の地方にもあるんですがそこには聞いていない。
だから少なくとも札幌のような人口集積地だったら、それだけ多くの人がものを言う権利があるわけですからそこに聞かなきゃいけないですよね。
ただここでねじれが起こっていて、知事はやる気満々なんですけど、札幌市長が抵抗する姿勢を見せ始めた。だからより近接している自治体の長は別としてその隣接地の自治体は反発するという傾向にありますよね」
孫崎
「それは静岡の原発がまさにその構図ですよね」
岩上
「実はあれも浜岡を今回止めるにあたって、三重あたりからスタートしていったんですね。それがずっと東へドミノ倒しのように反対だという声が大きくなっていった」
孫崎
「周辺4市は反対。持っていた御前崎は賛成というような構図だったわけですけども、周辺4市の力というものがかなり大きくなった」
岩上
「ですから玄海原発に反対するという事も福岡の人達の声というのが重要なカギを握る。
ところが立地現地の玄海町はどうかというと、玄海町の町長というのは地元で有名な建設会社の一族で。そこが丸々九電の仕事でご飯食べている。
全く下請けが医者みたいなもんなんですね。だから全く言いなりの状態」
孫崎
「一つだけ気になるのが、この構図というのは沖縄と非常に似ているんですよ。米軍基地と。
何が言いたいかというと最初は反対させるために名護市にお金をものすごくたくさん出したんです。名護市が辺野古移転を受け入れるようにそこにお金をどっぷり出した。
ところが名護市の市長さん、あるいは市会議員が反対して、いま止まったんですね。
そしていま何をしようかとしているかというと、今度は県に交付金を好きなように使えというものを出し始めた。
だから今までは利益がほんの基地を受け入れるところ、あるいは原発を受け入れるその町にしかいかなかったのを、今度は地方自治体全体に、お前もっとあげるよと。そして自由にお金を使っていいよ、という形で、今一番起こっているのは敦賀原発ですね。
福井県に交付金とかそういうようなものをダーッとあげる。今までは立地のところが反対、周辺のところが立ちあがる危険性があった。ところが今度は県全体にお金を出すことによって県がそういうような声を出さないようなお金のシステムを作ると」
岩上
「今の福井県知事は大変厳しい姿勢を貫かれてますから。そういう県全体のプラスじゃないか。県の財界なんかが言いだすようになるとだいぶそういう声をあげ辛くなるでしょう。そういうことも狙っているんでしょうけども。
お話の元々の原点は誰が地主かということですが、基本的には地主が誰かということが問題なのではないという方向の話になっています。
地主が誰かというよりは地主というものがあれば、地主さんが別にそこに住んでいなくたっていいわけですね。全然別の土地に離れて居て、あそこの土地使ってもいいよと言うことが出来る。
そこで多少のトラブルがあっても火の粉は降りかかってこないと、そういう便利な土地、建てやすい土地を狙っていくというのはあると思います。
ここで大事なことを言ってくれたアイリーン・スミスさんだったか。その前に三重のほうに行って和歌山の人達も含めて色々話を聞いたのですが、あの辺りは原発を建てられそうになったことがあるんですよ。
それに対して地元の人達が凄く頑張って反対した歴史があるんですね。海沿いの漁師町の人が。
そういうところには結果として今なんにも建ってないわけです。なんのモニュメントもないんです。でもものすごい粘り強い抵抗の歴史があるんです。
その事を地元の人は誇らしげに記憶しているのだけども、多くの人は知らない。そういうところは実は日本中にありますよと。
凄く頑張って結局跳ね返した。お金をあげるよと言われても全部撥ね退けていった土地がいっぱいあるんですね。
それはいわば勝利の光景じゃないかと。何も建ってない土地というのを写真にでも撮ってみんなに見せたら分かりやすいんじゃないかという話も聞いたことがあります。
ですからやられてしまった土地というのもあるんですね。飛び地のように持っているその地主だけ籠絡すれば地面を変えるとか、上手いように政治的に付け込んだ土地もあるだろうし、住民が色んな形で買収されてしまったというか、雇用をあげるよと、良い事だらけだよと言って説得されてしまった土地もあるでしょう。
でも、説得されなかった土地もある。それはやっぱり違いがあるんでしょうね。
なんで一方では撥ね退けたか。一方では受け入れてしまったか。その違いというものをちゃんと振り返って調査取材をして、あるいは地元の人たちが今までは黙っていたけど、もう黙っていないと言って、事実はこうだったとどんどん語っていくことを通じて、その違いを明らかにする事は大事なことじゃないかなという気がします」
質問者C
「私地元なのですが、地元小田原でこのような重要な会を持ってくださったことをお礼申し上げます。
3.11で起こったことの一つには原発というのは構造的に基本的におかしなものであったということは確かだったと思うんですが、実はそこで起こったこと、例えば誰かが何をした、現場で間違えたとかボタンの掛け違えというのはあるわけですが、そういうところから見えてきたものは実はそのシステム全体にとても大きな破綻があったのではないかということが見えたと思うんですね。
その破綻というのは私たちの想像をはるかに上回っていまして、政財界やメディアまで全て含めたうえで大間違いだった。
あるいは大間違いではなくてそこまで作為があって動かされていたのではないか。
私たちの7割の人みんなが原発反対だともし手を挙げたとしてもどこにも届かないようなシステムを私たちは作って来てしまった事に大きな驚愕と閉塞感で力が抜けてくるような感じがあるんです。
ここに答えを求めるというよりも私はここで根本的に何を戦い直す、あるいは問い直さなければいけないかという立場にいるのではないかと私自身、生き方の変化も含めて考えつつあるんですね。
いま、フロントラインでやらなければいけない事はTPPも止めなきゃいけない、理念を止めたいと色んな事があるんですけど、現場の事で戦うことと根本的な事に視座を持ち直すことというのが同時にあるような気がしてまして、この機会にお答えを頂くというよりもこの機会を頂いた事に対しての私の意見を言わせて頂きました。ありがとうございます」
孫崎
「基本的に今おっしゃった事も全くその通りだと私は思っています。問題は原発はみんなが分かったということですね。
他の安全保障の問題やTPPなど色んな問題も抱えている。だけど、TPP何かを国民みんながおかしいということになるかというとなかなかそうはならない。
だけど、この原発だけは自分の安全に関わる、そして現在の体制がおかしいということは皆分かったと思うんです。
だから出来る事は、この原発というものを一つの機会として、これが止まっていくという流れ、一般の人たちの考えがいまから見ると殆ど機能しないような感じかもしれませんけども、私はそうとは思っていないんです。
この原発を契機にこれで以って一般の人たちが政治の流れを変えるということが出来ればそれは色んなところに波及していくということですから、この原発はどの党であるとかいうことは抜きにして広い意味での国民運動を展開していくという非常にいいきっかけになっているんではないかと思っています」
岩上
「本当に一言で言えば、何が必要なのか。それは民主化以外にないんじゃないですか?
つまりそんな難しい話じゃないと思います。国民の7割が嫌だと言っている事。
多くの国民が主人であり主権者であり、その国民の意を汲んだ政治を行うこと、そういう社会を営んでいくことが政治であり、営むのは行政ですから、政治も行政も国民の声を聞き、国民の声を反映する、それが民主主義ということに尽きるわけですね。
民主主義を偽装した民主的ではない政治や行政がこの国にはあると。驚くようなことではないと思っています。
驚いている人が多いというのは事実だと思いますけれども、どこを通ってもそんな場面に出くわすなというのが正直なところで、原発で露わになったのはなおも強行しようとしている事ですね。
これまでそうだっただけではなく、なおのこと強行しようとしているということです。
それを唯々諾々と従ったとしたら、これだけ日頃は色んな形で騙されています、偽装されているものに。
だけれども、誰の目にもほぼ7割の人に分かっているものをなお強行されたらそれは受け容れた側も同意したに等しいですね。
なんと言うんでしょう。暴力を振るわれているんだけどその暴力を受け入れちゃったというような状態に近いんじゃないですか。
やっぱりなんらか理不尽な事をされている時に、やめて下さい、それはおかしいんじゃないかということを言って抵抗するのは当たり前のことで、取り立てて誰か特別な人をいじめたり、加害行為を我々がしているわけではありませんから、何故言い立てるということに怯えるのか。
至る所でその怯えるシーン、怯えている人を見るんですけれども、理解不可能ですね。
むしろきちんと、これはないでしょということを言わないと一緒くたになってしまいますね。
逆を言うと、一部の人達が濃厚に汚染している状態だとして、それが出も汚染が色々と拡散しているよと。我々はみな同じ状態だ、だからこれを甘受しよう、もう考えるのを止めようというふうにされつつあるような気もします。
そういう状態は健全だとは非常に思えないですね。
やはりどう考えても健康的ではないですね。しかも極めて不経済です。原発があるということはとてつもなく不経済な事で我々の財政を逼迫しているわけですから、あっていいものではないんじゃないかなと思います。
最後に一点だけ。
これはちょっと僕には答えようがないので孫崎さんにお願いしますけれども、『行政のほぼ全てが信用を失いました。新政府を樹立する可能性と手段はあるでしょうか?』という質問。
(笑)新政府って、なにか革命政府みたいなんですけども、そんな大それたことは私ぜんぜん考えてもいませんし、全然お答えする準備がないんですけれども、どうでしょうか?」
孫崎
「私がさっきから繰り返しているように、原発は止める手段を一般の人たちが持っていると思うんです。
というのは住民の反対で以って強行できないというようなシステムは一応はあるんですよね。
だからこれを使って原発というようなものが次々と止め得ること。
政治というのは一般の市民を考えてやらなければいけないということをその過程で政治家が分かってくるんだろうと。
いま政治家は国民をなめてると思うんです」
岩上
「なめてますよね、本当に。新聞にもなめられてますし、官僚にもなめられてるし」
孫崎
「だけど、原発はそれを変える手段を持っている。
実はこれを実現すると、その他のところにも、あ、やっぱり一般の人たちの意見というものを考えて政治をしなきゃいけないという事の契機になるんじゃないかと思っています」
岩上
「はい。だいぶお時間になってしまいました。ということでありがとうございました。孫崎先生でした。読売にボンボン怒っていて、何かきませんか?読売にそろそろ書かないかとか(笑)」
孫崎
「ということを書いたらエライ叱られました(笑)」
岩上
「そろそろ饗応とか買収とかきませんか(笑)読売新聞の座談会に呼ばれるとか。座談会に呼ばれるくらいはいいんですけどね。買収されないように僕が監視したいと思います(笑)
読売だけじゃありません。日経も全くおんなじ。産経も同じ。朝日はその時々で日和って見せるのが上手ですけど、こないだまでTPPと消費税増税と小沢切りの3点セットをやったら菅政権を推すとか堂々と仕掛けといてよく言うよって」
孫崎
「一つだけお願いがあるとすると私みたいにかなり激しい人間、言いたい人間ってやっぱりいるんですよね。
しかし言える場所っていうのがそんなにないんですね。
そんなにないけれども、比較的あるところは単行本のところが比較的まだありそうなんです。出版社は。
幸いなことに私はここ2,3年まあまあのところまで売れましたので、新しい本を書けというのが今2つきているんですね。
それで、戦後の日米関係を裏から見るという企画が今あるんですね。これをやろうと思っているんです。何をお願いしたいかというと、やっぱりそういう発言をしている人達の本を買って頂きたいんですよね」
岩上
「みなさん、孫崎享さんの本を買いましょう」
孫崎
「いやいや、いやいや。僕はさっき言ったようにみなさんに買ってもらわなくてもある程度、出版社はこれはお金になるということで話がき始めた。ということはそれだけ、世に意見を言うチャンスがあるんですよね。
そういう人達を他のところにもたくさんありますから、賛成する形の発言をする人。
特に一般メディアに出られないような人達、その人の本を買ってあげて頂ければ非常にありがたいと。私も含めて(笑)どうもすいません(笑)」
岩上
「(笑)やっぱり最後にきましたね。清き一票を、のお願いとかあるいはカンパのお願いに近いものがあったと思いますけれども、それは私も同様でして。本当にこの企画をやるにあたって、これを非営利でやらないといけないんです。
たまたまこの小田原の廃校にご縁があって、これは素晴らしい場所だなということで使わせていただくことになったんですけど、ここを管理するのは教育委員会ですから。
それから地元の方の動員も得なきゃいけない。それで絶対に非営利じゃなきゃいけないということがあったんですね。分かりましたと。入場料は取りません、営利と思われるようなことは一切やりませんからということで徹底的に非営利でやってます。
その代わりカンパでご支援お願いしたいということでやっているんですね。日本は寄付文化がない、カンパ文化がないなどと言うんですけど、そうなのかなと。実は多くの人が売買の関係だけではなくて、何か自分が応援したいと思うものだったらば、カンパしようとかいう思いの人、あるいはボランティアをやろうとお思いの人、すごくいらっしゃいますよ。
実はさっき質問してくださった方もボランティアに来てくださっていて、こうやって参加もしてくださって、お手伝いもしてくださっている。小田原の人にすごい助けてもらっているんですね。
本当に迎え入れてくださった小田原市の行政の皆さんにもそうしですし、地元の自治体の皆さん、それから足を運んでくださっている皆さん、ボランティアの皆さんにここであらためてお礼と感謝をしたいと思います。
ありがとうございました。過去形で言っちゃいましたけども、今日は2日目で明日も続きますから。この辺で終了にしたいと思います。みなさんありがとうございました」
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