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もうすぐ北風が強くなる

インサイダー事件の主犯は外資ハイエナ

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 今更言うまでもないが、マーケットで短期に儲けようなどと素人が考えるのはとんでもない妄想だ。
 株も為替も商品も勝者は常に大口投資家や機関投資家であり、インサイダー取引と言って良い。
 最初から竹槍で爆撃機と闘うようなものである。
  
 企業の資金調達として増資は極めて重要なのだが、ここに超大口のインサイダーが絡むと、「健全な」資金調達市場としての株式市場は市場自体の信用劣化を招き、機能を果たせなくなり、株式会社制度の根幹にも関わる危機につながる。
 金融庁は野村のモラル・ハザードでケリにしたいようだが、もっぱら手数料、受託料で賄う日本の証券会社が今回事件の真の原因とは考えにくい。
 やはり、真打は桁違いの強欲精神を持つ、外資ハイエナであろう。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
   悪者は野村だけか 主犯は外資で法の外  8/2  山田厚史  ダイヤモンド・オンライン

 増資情報を漏らし、見返りに売買の注文を取る。いわゆる「インサイダー増資」で野村ホールディングスの渡部賢一グループ最高経営責任者(CEO)が引責辞任した。証券取引等監視委員会は野村の行政処分を金融庁に勧告。申し開きの余地のない悪質な事件だが、トップの首を取り行政罰を課せば一件落着、というほど単純な事件ではないと思う。

  今回の事件で明らかになったこと

 背後にはグローバル化した証券市場に跋扈する投機集団が、日本を「エサ場」にしている実態がある。主役は日本の証券会社ではない。カネを動かし情報で儲けるヘッジファンドや投資顧問など外資系のハイエナだ。野村をはじめとする日本勢は、ハイエナの協力者として片棒を担がされたに過ぎない。本当の悪者は法の目をかいくぐって平然としているのではないか。

 市場の秩序を守るのは東京証券取引所や金融庁の責任だが、当局は日本の証券市場を健全に保つ対策が打てない。窮余の一策が「野村トップの首を取ること」だった。当局の手が及ぶのは、日本の業界でしかないということなら日本市場は外資の草刈り場になるだろう。

 今回の事件で明らかになったのは次の3点だ。

1.上場企業の特権的な資金調達手段である時価発行増資が歪められ、ヘッジファンドなど外資系ハイエナのエサ場になっている。

2.増資を担当する幹事証券が協力者となり秘密情報をハイエナに提供し、空売りを仕掛ける手伝いまでした。

3.野村が手を染めた「背信ビジネス」の遠因はリーマンブラザーズの海外部門を買ったことにある。米国当局の意向にそって破綻企業を抱きかかえたことが重荷になり、ハイエナの術中にはまった。

4.当局は「増資荒し」を苦々しく思っていたが、外資を処罰する法的裏付けがない。やむなく野村を追い込んで経営者に「詰め腹を切らす」という行政指導でお茶を濁した。

  注文をくれるネコはいいネコ

 事件の概要を振り返ってみよう。

 野村がインサイダー情報を漏らしたのは、東京電力、みずほフィナンシャルグループ、国際石油開発帝石などの増資だ。このほか大和証券とJPモルガン証券は日本板硝子、SMBC日興は三井住友FG、相鉄ホールディングスの増資に絡み情報漏洩があったとされている。

 増資は株数が増えるので、発表された直後は株価が下がる。情報を先に掴めば、その前に空売りをかけて株価を押し下げ、発表後さらに下がったところで買いもどせば、差益をがっぽり稼げる。増資情報を一般の投資家より先に知れば濡れ手に粟の大儲けが可能だ。

 株価に影響を与える増資情報は本来、極秘扱いだ。証券会社は増資を担当する「引き受け」部門と株の売買注文を受ける「営業」の間に、情報の「壁」を設けることになっている。野村では日常的に両者は接触し、引き受けのマル秘情報が、営業の道具になっていた。

 ハイエナは杜撰な管理体制につけ込んだ。米国証券市場はリーマンショックでヘッジファンドへの風当たりは強まり、監視はきつくなった。カネが流れ込む東京市場に活路を求めた。ヘッジファンドが東証を舞台に荒稼ぎしていることは昨年から話題になっていた。ヘッジファンドはカネになる情報を証券会社に求め、その貢献に応じて株を発注する。

「黒いネコでも白いネコでも注文をくれるネコはいいネコ」(証券マン)という感覚でインサイダー情報という「おまけ付き」営業が盛んになった。情報を流すだけではない。ヘッジファンドが空売りする株まで提供した。「公募価格を高くしたい」という増資企業の願いを踏みにじる行為である。顧客への背信行為を業界トップの野村が先頭に立ってやっていたのだ。

  甘い日本の課徴金制度

 ハイエナの群れでひときわ活発だったのが投資助言会社「ジャパン・アドバイサリー合同会社」。投資への助言・代理業を行うだけで、株の売買など運用はシンガポールの会社がやる。いずれもヘッジファンドを運営する米国の大手資産管理会社「ホイットニー」の実質的な関連会社である。ジャパン社は東京の窓口、注文を出すのはシンガポールの会社、統括は米国の本部という分業体制で「インサイダー取引」の規制を回避する。

 証券取引等監視委員会は、ジャパン社をシンガポールの運用会社と一体と見なし、金融証券取引法違反の疑いで課徴金を取ることを金融庁に勧告している。ただし、その課徴金はわずか37万円でしかない。日本板硝子の増資だけでもジャパン社は265万株・5億4000万円相当の空売りを仕掛け、後日買い戻して1600万円の利益を上げている。ペナルティーが36万円なら「やり得」である。業者に甘い日本の課徴金制度が外資につけ込まれた。

 野村をはじめとする日本勢の社風や社内体制に問題があるのは確かだが、市場の健全性を守るのは金融庁と東京証券取引所の仕事だ。東証の社長は野村証券出身の斉藤淳氏でいわば「証券ムラ」の仕切り役である。金融庁は1990年代の大蔵省スキャンダルで、同省から分離独立しれた組織だが証券業務に精通する人材がいない。証券業界と通じていた官僚は「癒着」が問題になり排除され、「権限だけある素人集団」と揶揄されている。

 世界各地に根を張って、法の抜け道や制度の不備を突いてビジネスを展開するヘッジファンドからみれば、日本は「仕事しやすいマーケット」である。インサイダー増資でハイエナはボロ儲けし、損を被ったのは一般の投資家。「日本から数百億円の利益流出」などといわれているが、取引所も規制当局も、はしたガネの課徴金しか取れない。

  切腹を命ずる相手は身内だけ

 リーマンショック後、世界の金融当局はヘッジファンドに象徴される「背徳的ビジネス」を封じる規制を模索してきた。一方、日本が本気でハイエナ退治に乗りだした気配はない。活動拠点がNYやロンドンだったこともあろうが、日本に危機感が乏しかったのは確かだ。

 気がつくと無傷だった東京にハイエナがなだれ込み、貴重な金融資産を食いまくっていた。ハイエナは素早くて捕まらない。そうなれば、分かりやすく当局の存在感を示すのが、野村のCEOに「切腹」を命ずることだった。

 渡部氏は抵抗したが、杜撰な管理が次々とリークされ逃げ道を断たれた。引責辞任は当然ではあるが、腹を膨らませたハイエナは悠々と次の機会を狙っている。

 繰り返しになるが、野村が営業部隊に無理なノルマをかけたきっかけは、破綻したリーマンブラザーズの欧州アジア部門を買ったことである。これが大赤字で野村はムーディーズによる格付けを「投資適格の最下位」まで下げられた。これ以下になると「投機的」となり、海外で資金調達できなくなる。つまり外国でビジネスができない。

 モルガンスタンレーに出資した銀行最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループも、赤字要因に悲鳴を上げている。危ない会社を買ったのは野村や三菱の自己責任だが、当時、米国の当局は傷が浅かった日本に協力を求めていた。銀行と証券のトップ企業がひと肌脱ぐのは国際協調とされたのである。助けたつもりが、実は負担を押しつけられていた。

 その結果、野村は格付けを下げられ、窮地に追い込まれて、ハイエナに主導権を奪われた。

 日本の政府はアメリカの言うことはよく聞くが、自分の縄張りさえ守れない。切腹を命ずる相手は、支配が及ぶ身内のトップ。こんなことで個人金融資産1500兆円という日本人の財産が守れるのだろうか。
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