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もうすぐ北風が強くなる

萩原朔太郎

 青空

 10代の末頃、萩原朔太郎の詩が好きでした。
 他の詩人は何となく詩らしすぎて、余り興味が無かったものでした。
 彼の詩は、音韻と内容のメリハリにバランスが非常に良くとれている。と感じるのです。
 晩期の散文は余り興味がありません。

 何度も引越しを繰り返すうちに20年ほど前、文庫本ばかりぎっしり詰めた段ボールを2箱間違えてゴミに出してしまい、他の貴重な本と一緒に消滅してしまいました。
 (つまり、捨てる予定の2個が残っていて............捨てました(笑)。引越しなどの際は気をつけましょう。)

 今も時折思い出す二つを載せます。 
 
 旅上

ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背廣をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに

 殺人事件

とほい空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣裳をきて、
こひびとの窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびとのあひだから、
まつさをの血がながれてゐる、
かなしい女の屍体のうへで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。

しもつき上旬(はじめ)のある朝、
探偵は玻璃の衣裳をきて、
街の十字巷路(よつつじ)を曲つた。
十字巷路に秋のふんすゐ、
はやひとり探偵はうれひをかんず。

みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者(くせもの)はいつさんにすべつてゆく。
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コメント

おかえりなさい

 殺人事件・・初めて知りました。
私は「少女趣味」だったから、この題名だけで忌避したのかもしれませんね。何度も読み返していますが、言葉もセピア色して、安っぽい意味でなく「大浪漫」を感じました。

 しもつき上旬(はじめ)・・ぴったり、今の季節ですね。

 

Re: タイトルなし

そうですね。
朔太郎は言葉から想像する映像のイメージと音韻の音楽的な組み合わせが、彼独特の世界を作っていると思います。
「殺人事件」は確かに「大浪漫」と感じます。
芥川龍之介と同じで彼も若い頃が花火のような閃きで、後年は普通の詩作になってしまいましたが。
芥川はそれに耐えずに自殺してしまいました。

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いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

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