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「やったふり」が蔓延する社会

 見てみないふりやら思考停止のふりやら、死んだふりやら、この国は忙しい国だ。
 そう、前から思っていたのだが、「やっているふり」と言うのがある。
 アリバイ行政とかもそうだ。

 何かしらやっているようなふりをして、役にもたたないただマスコミに乗りそうなイベント行政とも言う。
 会社でこの病気が広まると、世の中すべてそんな会社ばかりではないので、じきに競争に負けて倒産に至る。
 若者などの場合は、やっているふりなのに本当にやっていると錯覚しているようである。

 ま、錯覚してしまっている人は中高年でも多いようだが。
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 シューカツから事業仕分け、円高対策に原発まで
  なぜ日本社会では「やったふり」が横行するのか 
 5/23 上久保誠人 ダイヤモンド・オンライン

 政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表を無罪とした東京地裁判決について、検察官役の指定弁護士は無罪を不服として、控訴する方針を決定した。
 前回、小沢氏の無罪判決が、消費増税を巡る政界の対立軸を鮮明にすると論じた。本来、政策志向が近い民主党・自民党双方の中堅「野田世代」が、強大な本当の敵・小沢一郎の存在に気づき手を組めば、「政界再編」の絶好の機会となるからだ(第35回を参照のこと)。

 しかし、控訴で小沢氏が「復権」しないとなると、消費税を巡る対立軸は、結局曖昧なままとなる。「野田世代」は些細な違いを争い、足を引っ張り合い続けることになる。

 政治家は、小沢氏の裁判を政局に利用すべきではない。結局、すべての政治家にとって「自殺行為」になるからだ。検察審査会が政治家を強制起訴する際には、「推定無罪」を徹底すべきだ(前連載第60回を参照のこと)。裁判が結審するまでは、政治家に嫌疑がかけられても、その「政治的・道義的責任」を問うべきではない。

 国会での証人喚問・政治倫理審査会出席も不要である。「疑わしきは強制起訴して、裁判所で白黒つける」となれば、誰でも政治家のあることないことをでっち上げて、簡単に政治生命を奪えることになる。
 それを防ぐには、せめて結審するまで政治的・道義的責任を問わずに、政治家を守ることだ。政局に有利と小沢氏を叩くことは、結果的に「政治の死」を招き、自らの身にも跳ね返ってくるということを、政治家はよく考えるべきだ。

  大学生に蔓延する「みんな一緒にやったふり」の空気

 本題に入る。「若者の就職難」がますます深刻さを増している(第34回を参照のこと)。私の教え子たちも、シューカツ(就職活動)に大苦戦している。

「若者の就職難」は、単なる景気悪化の問題ではない。経済のグローバル化に対応した日本企業の海外現地化と、国内での既存正社員の「長期雇用保障の慣習」維持の結果だ。従って、今後劇的に状況が改善することは考え難い。だが、現在シューカツに必死な4回生は別だが、1~3回生を見ていると、私は不思議でならない。

 彼らはいずれ直面するシューカツの大変さを知っているはずだ。だが、早めに危機感を持ってその準備をしたり、専門知識を身に着けるために必死で勉強したり、語学や技術を磨く学生は少ない。大多数の学生は、ほどほどにサークル活動を楽しみ、バイトし、楽勝科目を選んで出席している。

 例えば、バイトについてだ。日本の経済力が落ちたとはいえ、別に苦学生が多いわけではないだろう。バイトなどせず、シューカツに備えたらどうかと学生に聞いてみた。しかし、学生は「みんながバイトしているからする」という。サークル活動も同じだ。「みんながサークルに入っているから」なのだ。逆に、勉強については、「みんな楽勝科目を取るから」「みんな、そんなに必死に勉強していないから」という調子だ。その結果、みんな一緒に、シューカツで討ち死にしていくことになる。

 25年前、子どもの頃から徹底した「個人主義者」だった私は、「みんなサークル・バイトをし、勉強はほどほどに」の空気を嫌って、体育会の門を叩いた。せっかく受験競争に勝ち抜いたというのに、どうしてみんな一緒にほどほどにならないといけないのかと、素朴に思ったものだ。
 今の学生たちも、どんなにシューカツが厳しくても、自分だけは討ち死にせず生き残る「覚悟」で、みんなと離れて努力すればいいのにと思うが、そういう学生は限りなく少ない。

 私が授業などで、留学中の厳しい競争の話(第32回を参照のこと)をすれば、学生は真面目に聞いてくれる。自分も頑張ると言う。だが、残念ながら口だけだ。頑張るといっても、「やったふり」で、実際には、「みんな一緒に」のグループから離れて、本気で個を確立して生きていく覚悟などない。

 このような大学生のグループは日本社会の縮図なのだろう。日本社会には「やったふり」が至る所で見られる

  消費増税正当化のために行政改革を「やったふり」

 野田内閣が、国家公務員の13年度新規採用を09年度比で56%削減することを閣議決定した。「社会保障と税の一体改革」実現のために、野田首相は「国民に負担をお願いするからには、自ら痛みをうける大胆な決断をした」と訴える。

 しかし、実際には現職の公務員になんの「痛み」も負わせていない。痛みを押し付けられているのは、若者という「国民」ではないか。野田首相は消費増税を正当化するために、行革を「やったふり」しているだけだ(第34回を参照のこと)。

 また、野田内閣は「国会議員定数削減」も打ち出している。だが、比例定数を80減らしても、せいぜい年間30億~50億円程度の節減にしかならない。国会議員定数削減は国家予算の一般会計約90兆円に対してなんのインパクトもなく、財政再建に実質的な貢献はないのだ。

 そもそも「身を切る」とは、「政治家も絡んだ利権と化した行政の無駄を自らギリギリまで削る」という意味だったはずだ。野田内閣は、議員定数削減という「やったふり」のパフォーマンスに逃げるべきではない(第28回を参照のこと)。

 更に言えば、国民の人気を博した「事業仕分け」も、「やったふり」の政治的パフォーマンスに過ぎなかった。事業仕分けは、国民に公開の場で、外部の「仕分け人」がさまざまな予算事業を査定し、「そもそも予算が必要なのか」、「事業を誰が行うべきか」、「予算に無駄がないか」等を判定するものだった。仕分け人がズバズバと事業を切り捨てる様子が、民主党政権の支持率上昇に一時的には貢献した。

 しかし、実際に仕分けの対象となった事業は、予算全体のごく一部に過ぎない。民主党政権は、仕分け対象外の類似事業にも仕分け結果を反映させる方針だったが、事業仕分けに法的な権限・強制力はなかった。結局、財務省は実際の予算編成に仕分け結果をほとんど反映させなかったのだ。

  東日本大震災からの復旧・復興も「やったふり」

 東日本大震災からの復旧・復興予算を決める過程も、「やったふり」だった。菅直人内閣の「復興構想会議」では、被災者、財界、業界、専門家、有識者、政治家、省庁などから、復興・復旧のさまざまな提案が持ち込まれた。
 だが、結局は復興を自らの予算拡大の好機と考えた省庁の「予算分捕りの場」となった。民間の投資を活用できる分野があっても、各省庁の「補助金で行うべきだ」という主張に押し切られた。

 また、地方自治体からも、費用負担を国に要求する訴えばかりだった。だが、政府はこれらの要求を断って、真に復興につながる事業を決めて、優先的に予算を配分する政治決断をしなかった。
 政治家が「やらない」と言えば、マスコミなどから厳しく批判されてしまう。だが、それを乗り越える気迫は政治家になかった。かくして、復興対策は予算要求の単純な羅列となった(第10回を参照のこと)。

  効果のない円高対策を「やったふり」で産業構造改革の機会を失う

 被災者の方々には不謹慎な言い方ではあったが、大震災を日本人がこれまで目を背けてきた問題を直視するきっかけにせねばならないと論じてきた(第6回を参照のこと)。例えば「円高」の進行だ。

 日本の長期低落は、製造業・土木建築業などの第二次産業を中心にすべき時期が過ぎたのに、産業構造の転換が進まないことが根本的な原因だ。だが、政府は輸出産業の声に押されて、一時的な効果しかないことを知っていながら、実効性のない「円高」牽制のポーズを取り続けてきた。まさに「やったふり」を続けてきたのだ。

 政府が斜陽産業の保護という政治的なしがらみを今回も断てず、原材料費・エネルギー価格のコストダウン、海外への投資の拡大など、円高のメリットを生かして新しい日本経済を構築すべきチャンスを、残念ながら失いつつあるのが現状だろう。

  究極の「やったふり」原子力政策「想定外は残余のリスク」

 究極の「やったふり」は原子力政策だ。福島第一原発事故で、想定外で起こる危険を「残余のリスク」と呼ぶ、聞き慣れない用語を国民が広く知ることとなった。現在、日本の原発は「電力会社が想定した地震、津波、台風、大雨等の範囲」に限り、安全に設計されているという。

 逆に言えば、想定外の災害が起こった場合、原発が破壊されることはあるということだ。だが、想定外の災害に対して、電力会社は安全性確保の対策を検討するのではなく、「残余のリスク」という言葉を用いて、自分たちが免責されるという論理を立てた。要するに、原発の安全性対策は「やったふり」に過ぎず、結果的に起きたのが福島第一原発事故だったのだ。

 現在、政府・電力会社は関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の早期の再稼働を目指している。だが、2013年度の防波堤の嵩上げの完了、2015年の「免震事務棟」設置、外部への放射性物質放出抑制フィルター装着ベント設備の設置を待たずの再稼働許可である。

 これは、「想定外」の災害のリスクを「残余」とする従来の考え方を踏襲したものに過ぎない。まず電力確保のための再稼働ありきなのである。政府・電力会社はあれだけの大事故が起こった後でも、原発の安全性確認を「やったふり」し続けている。

  「やったふり」を横行させる硬直的な日本型組織

 どうして日本では、さまざまな場面で「やったふり」が横行するのか。いろいろな要因があるだろうが、今回は1つ指摘してみたい。

 以前、ある格付会社に英国債の高格付の理由を聞いたことを紹介した(第25回を参照のこと)。格付会社の答えは、「英国は、財政危機に対応するために、首相が消費税増税を決断すれば即日実行できるし、危機対応のための省庁横断的な組織が必要ならば、これも法律制定なしに即日設立できる」というものだった。

 英国など欧州では、行政組織は基本的に「プロジェクトベース」で作られる。もちろん、財務省や外務省のような主要官庁は改廃されないが、その内部の部局や外庁などは柔軟に設置したり、廃止したりできる。
 また、終身雇用・年功序列はなく、必要な人材を柔軟に集められる。組織内部で職員が自動的に昇格することも基本的にない。
 昇格したければ、公募に願書を提出し、外部からの応募者との競争に勝たなければならない。これは、民間企業や教育機関でも、基本的に同じだ。

 プロジェクトベースで組織が作られる場合、組織や人材は基本的に「成果」で評価される。また、そこでキャリアアップをしようとする人は、公募に受かる必要があるので、外部で通用する「成果」を積み重ねる必要がある。だから、仕事を「やったふり」する余地はない。

 一方、日本の官僚組織・企業は、基本的に終身雇用・年功序列だ。だから、まず所属する組織を守ることが重要になる。人材も、組織防衛への貢献が評価基準になりがちだ。その上、「縦割り行政」に代表されるように、組織が持つ権限が明確に分けられ、硬直的で改廃が容易ではない。

 だから、組織の構成員は、組織の権限の範囲内で何ができるかを、まず考えることになる。組織の権限を超えることには手をつけなくなるし、組織に責任が及ぶリスクは徹底的に回避することになる。結果として、実際の「成果」はどうでもよくなり、組織のための「やったふり」が横行することになる。

 日本的組織の「やったふり」を止められるのは、本来政治家だろうが、政治家もまた、これらの組織に大きく依存してきた。だから日本では、原発再稼働是非論、円高のメリットを生かした産業構造や社会構造の転換、終身雇用など既得権に大胆に切り込む行革などを、本質的に議論することなど起こり得ないのだろう。

  大学生は誰に対して「やったふり」しているのか?

 最後に、大学生の話に戻りたい。まだ組織に属しているわけではない大学生は、誰に対して「やったふり」しているのだろうか。
 曖昧ではあるが、日本社会全体に流れる「空気」に対してなのかと思っている。サークル活動やバイトをほどほどにやり、みんなで一緒にシューカツで討ち死にして、日本社会の上の世代の既得権を侵さない。
 大人しくしているほうが、日本社会で生きていくには得だと思っているからなのではないだろうか。
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