しきたりで縛り、監視するムラ
2012-05-26
よそ者を遠ざけて、転入者を拒絶し、常にみなが監視しているムラ。
現実に今もそんなところがあるようだ。
驚くことに、大都市の「郊外」だという。
まるで江戸時代のムラそのままのような「しきたり」らしい。
なかなかむずかしい問題だが、現実なので知っていた方が良い。
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悪い冗談のようなしきたりに“よそ者”は四苦八苦!
日本にまだあった、人間関係が超濃ゆい「監視ムラ」 5/23 相川俊英 ダイヤモンド・オンライン
地名は一切伏せてくれ――。筆者が聞いた冗談のような“ムラ”の話
友人からその話を聞いたとき、最初は理解できなかった。たちの悪い冗談かと思った。そんなことが、今の日本社会でまかり通るはずはないと思ったからだ。しかし、友人は「作り話なんかではなく、本当の話。僕も当人から直接、打ち明けられてびっくり仰天した」と、まじめな顔で語る。
それでも信じられず、当事者に直接確認することにした。どうにか取材に応じてもらえたが、名前はおろか、「地名も一切伏せてくれ」と厳命された。こんな話だった。
大都市で生活していたAさんは、郊外の集落に転居した。ある社会的な事業を展開させるため、まとまった土地が必要となったからだ。Aさんにとって縁もゆかりもない地域だったが、理解ある地主さんと知り合い、思い切って決断した。
その後、新たに畑と作業場を借り上げ、仲間たちと野菜作りに挑むことにした。地主さんの尽力でその手当も順調に進み、賃貸契約に漕ぎ着けた。
長年、温めていた夢が実現に向けて前進するとあって、Aさんは嬉しさでいっぱいだった。1日でも早く野菜作りに取りかかりたい。そんなはやる気持ちを抑えることができなかった。
隣近所に挨拶をする前に、ちょっとした荷物を運び込むことにした。作業が一段落したら、きちんと挨拶周りしようと思っていた。ところが、この判断が甘かった。思いもかけぬ事態となり、地域を揺るがす大問題にまで発展してしまったのである。
荷物を運ぶ物音を聞きつけた近所の人が姿を現し、血相変えてやってきた。そして、挨拶するAさんにこう詰め寄ったという。
「何をしているんだ? ムラ(いわゆる町内会)の許可を得てやっているのか?」
わけがわからないAさんがきょとんとしていると、近所の人は「ムラのしきたりも知らないのか? ここではムラの許可がなかったら、引っ越しはできない」と言い放ったのである。その凄まじい剣幕にAさんは返す言葉を見い出せず、ただただ唖然とするばかりだった。
結局、わけがわからぬまま搬入作業を中止し、すごすごと退散するしかなかった。まるで自分が、重大な犯罪を犯したような錯覚にさえ陥った。もちろん、畑や作業場の所有者ときちんと賃貸契約を結んでおり、手続き上の瑕疵はない。
実は許されざるフライングだった?ムラへの根回し前に引っ越し作業
Aさんは地主さんの元に駆け付け、ことの顛末を伝えた。地主さんは表情を曇らせた。困惑し切ったその顔を目にし、Aさんは自分が容易ならざる事態を引き起こしたことを痛感した。
地主さんが隣近所にAさんのことを伝える前に、Aさんは引っ越し作業に及んでいた。つまり、順番が逆になっていた。これが地域にとって「許されざるフライング」となり、猛反発を呼んだのだという。
騒動の舞台となった自治体は、古くから集落が形成された純農村地帯。都会とは異なり、隣近所の付き合いはもともと濃密である。そこに洪水などの災害に見舞われてきた地域事情も加わり、住民同士の絆は一般の農村部よりさらに強固になり、互いに助け合う「共助」の精神に溢れた地域となっていた。住民による共同作業はもちろん、それ以外にもたくさんのしきたりが受け継がれ、さらには新たに加えられたりしていた。
そうしたムラのしきたりの中でとりわけ厳格なのが、新たにムラの住民になる場合だった。この地域では、「披露金」という独特のしきたりが存在していた。他所から転入する場合、ムラの人たちに飲食の場を提供し、「仲間入りを認めてもらう」というものである。
新参者自らがお披露目会を設定し、出席者への土産品も用意する。地域から外に出ていった人が戻ってくる場合も対象になるという。費用の相場は、20万円。半端な額ではない。それどころか引っ越しで物入りのときなので、大変な負担と言える。
それでも「ノー」とは言えないようだ。「ノーと言ったら、どうなるのか?」と地主さんに尋ねたら、返ってきたのは「そうした事例はない」という言葉だった。
披露金というしきたりがあるため、「都会で最近よくある孤独死や孤立死は我々の集落ではあり得ない」(地主の話)という。地域にどんな人が住んでいるかは、住民全員が互いに熟知しているからだ。都会の冷え切った人間関係と正反対の濃密な関係が構築されている。こうしたムラ社会である。知らない人物が挨拶もなく、いきなり荷物を運び入れることは許されないという認識だった。
むしろ閉鎖的になり転入者を遠ざける、しきたりに縛られた前近代的なムラの行方
地域住民の絆を固めるしきたりは、プラス面だけではない。外から入るには敷居が高く、結果的に転入を阻んでいる面もある。つまりは閉鎖的なのだ。
また、細かなしきたりが多く、息苦しさを感じている人も少なくないようだ。葬式はムラの当番が取り仕切り、結婚式にはムラのメンバーが必ず出席する。地域の共同作業があり、不参加の場合は罰金(1000円~2000円)を取られる。寄り合いへの不参加も同様(100円)だ。絆を深めて助け合うのは大切だが、度を越すと窒息しかねない。
騒動が起きた地域でも少子高齢化が進み、かつての勢いを失っているという。このため、Aさんの理解者である地主さんは、「外から人が来るようにしないと地域は活性化しない。それには、昔からのムラのしきたりを何とかしないといけない。そう訴えているが、なかなか聞き入れてもらえない」と、危機感を募らせている。
さて、Aさんの騒動の顛末はどうなったのか。ムラの寄り合いが開かれ、Aさんを受け入れるかどうか激しいやり取りとなったという。「(畑などの賃貸)契約の間、様子を見て(ムラの一員として受け入れるか)判断する」という結論になったそうだ。
地域住民の絆を深めることは、確かに重要だ。しかし、同時に絆の輪を広げることにも力を注ぐべきなのではないか。もちろん、それは国レベルでも同様だ。
現実に今もそんなところがあるようだ。
驚くことに、大都市の「郊外」だという。
まるで江戸時代のムラそのままのような「しきたり」らしい。
なかなかむずかしい問題だが、現実なので知っていた方が良い。
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悪い冗談のようなしきたりに“よそ者”は四苦八苦!
日本にまだあった、人間関係が超濃ゆい「監視ムラ」 5/23 相川俊英 ダイヤモンド・オンライン
地名は一切伏せてくれ――。筆者が聞いた冗談のような“ムラ”の話
友人からその話を聞いたとき、最初は理解できなかった。たちの悪い冗談かと思った。そんなことが、今の日本社会でまかり通るはずはないと思ったからだ。しかし、友人は「作り話なんかではなく、本当の話。僕も当人から直接、打ち明けられてびっくり仰天した」と、まじめな顔で語る。
それでも信じられず、当事者に直接確認することにした。どうにか取材に応じてもらえたが、名前はおろか、「地名も一切伏せてくれ」と厳命された。こんな話だった。
大都市で生活していたAさんは、郊外の集落に転居した。ある社会的な事業を展開させるため、まとまった土地が必要となったからだ。Aさんにとって縁もゆかりもない地域だったが、理解ある地主さんと知り合い、思い切って決断した。
その後、新たに畑と作業場を借り上げ、仲間たちと野菜作りに挑むことにした。地主さんの尽力でその手当も順調に進み、賃貸契約に漕ぎ着けた。
長年、温めていた夢が実現に向けて前進するとあって、Aさんは嬉しさでいっぱいだった。1日でも早く野菜作りに取りかかりたい。そんなはやる気持ちを抑えることができなかった。
隣近所に挨拶をする前に、ちょっとした荷物を運び込むことにした。作業が一段落したら、きちんと挨拶周りしようと思っていた。ところが、この判断が甘かった。思いもかけぬ事態となり、地域を揺るがす大問題にまで発展してしまったのである。
荷物を運ぶ物音を聞きつけた近所の人が姿を現し、血相変えてやってきた。そして、挨拶するAさんにこう詰め寄ったという。
「何をしているんだ? ムラ(いわゆる町内会)の許可を得てやっているのか?」
わけがわからないAさんがきょとんとしていると、近所の人は「ムラのしきたりも知らないのか? ここではムラの許可がなかったら、引っ越しはできない」と言い放ったのである。その凄まじい剣幕にAさんは返す言葉を見い出せず、ただただ唖然とするばかりだった。
結局、わけがわからぬまま搬入作業を中止し、すごすごと退散するしかなかった。まるで自分が、重大な犯罪を犯したような錯覚にさえ陥った。もちろん、畑や作業場の所有者ときちんと賃貸契約を結んでおり、手続き上の瑕疵はない。
実は許されざるフライングだった?ムラへの根回し前に引っ越し作業
Aさんは地主さんの元に駆け付け、ことの顛末を伝えた。地主さんは表情を曇らせた。困惑し切ったその顔を目にし、Aさんは自分が容易ならざる事態を引き起こしたことを痛感した。
地主さんが隣近所にAさんのことを伝える前に、Aさんは引っ越し作業に及んでいた。つまり、順番が逆になっていた。これが地域にとって「許されざるフライング」となり、猛反発を呼んだのだという。
騒動の舞台となった自治体は、古くから集落が形成された純農村地帯。都会とは異なり、隣近所の付き合いはもともと濃密である。そこに洪水などの災害に見舞われてきた地域事情も加わり、住民同士の絆は一般の農村部よりさらに強固になり、互いに助け合う「共助」の精神に溢れた地域となっていた。住民による共同作業はもちろん、それ以外にもたくさんのしきたりが受け継がれ、さらには新たに加えられたりしていた。
そうしたムラのしきたりの中でとりわけ厳格なのが、新たにムラの住民になる場合だった。この地域では、「披露金」という独特のしきたりが存在していた。他所から転入する場合、ムラの人たちに飲食の場を提供し、「仲間入りを認めてもらう」というものである。
新参者自らがお披露目会を設定し、出席者への土産品も用意する。地域から外に出ていった人が戻ってくる場合も対象になるという。費用の相場は、20万円。半端な額ではない。それどころか引っ越しで物入りのときなので、大変な負担と言える。
それでも「ノー」とは言えないようだ。「ノーと言ったら、どうなるのか?」と地主さんに尋ねたら、返ってきたのは「そうした事例はない」という言葉だった。
披露金というしきたりがあるため、「都会で最近よくある孤独死や孤立死は我々の集落ではあり得ない」(地主の話)という。地域にどんな人が住んでいるかは、住民全員が互いに熟知しているからだ。都会の冷え切った人間関係と正反対の濃密な関係が構築されている。こうしたムラ社会である。知らない人物が挨拶もなく、いきなり荷物を運び入れることは許されないという認識だった。
むしろ閉鎖的になり転入者を遠ざける、しきたりに縛られた前近代的なムラの行方
地域住民の絆を固めるしきたりは、プラス面だけではない。外から入るには敷居が高く、結果的に転入を阻んでいる面もある。つまりは閉鎖的なのだ。
また、細かなしきたりが多く、息苦しさを感じている人も少なくないようだ。葬式はムラの当番が取り仕切り、結婚式にはムラのメンバーが必ず出席する。地域の共同作業があり、不参加の場合は罰金(1000円~2000円)を取られる。寄り合いへの不参加も同様(100円)だ。絆を深めて助け合うのは大切だが、度を越すと窒息しかねない。
騒動が起きた地域でも少子高齢化が進み、かつての勢いを失っているという。このため、Aさんの理解者である地主さんは、「外から人が来るようにしないと地域は活性化しない。それには、昔からのムラのしきたりを何とかしないといけない。そう訴えているが、なかなか聞き入れてもらえない」と、危機感を募らせている。
さて、Aさんの騒動の顛末はどうなったのか。ムラの寄り合いが開かれ、Aさんを受け入れるかどうか激しいやり取りとなったという。「(畑などの賃貸)契約の間、様子を見て(ムラの一員として受け入れるか)判断する」という結論になったそうだ。
地域住民の絆を深めることは、確かに重要だ。しかし、同時に絆の輪を広げることにも力を注ぐべきなのではないか。もちろん、それは国レベルでも同様だ。
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