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もうすぐ北風が強くなる

主権と民意の侵害が通るだろうか

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 ギリシャはこのまま過酷な超緊縮財政策を取らされて、底なし沼にはまり込むよりも、デフォルト宣言してユーロを離脱し、自国通貨ドラクマに戻したほうが早く健全な成長に復帰できるだろう。
 だが、すこし交渉の余地が出てきたようだ。

 フランス、ギリシャの選挙結果は超緊縮のみでは、ユーロ全体としての将来展望が無いことを示してしまった。
 ユーロ圏からギリシャが離脱すると、ポルトガル、スペイン、アイルランド、イタリアと連鎖する危険があるためである。
 ぼろぼろと離脱国が現れるユーロなどとはとんでもない事態で、とても基軸通貨ドルの二番手などというものではなくなる。
 ここ数日はギリシャの離脱を食い止めなければならない、といった方向に変わってきている。

 つまり、ユーロはギリシャに「離脱しないでくれ」と表明したのだ。
 ギリシャ急進左派連合ツィプロス氏の「超緊縮に反対、ユーロ離脱に反対」の方針について、交渉の余地が生まれ始めている。
 ユーロは緊縮と経済成長の二股を模索する方向に向かいつつあるようあり、ユーロ共同債の設置に向けて債権国国民の説得を加速することになろう。
 停留には国際金融資本と勤労階級の利害があり、調整可能かどうかは不明である。

 そして、同時に債権国の賃金上昇を図って(債務国の賃金を下降させると超窮乏化となり現実性が無い)、債務国との生産コストの均衡を図らざるを得ないだろう。
 これは同時に国家主権と民意の侵害である。

 簡単に通るとはとても思われない。だが覚悟は決めたようだ。 
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  ギリシャに干渉したG8サミット「民意」の反逆を恐れる首脳たち 5/24 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン

 ワシントンで開かれたG8(主要国首脳会議)は、ギリシャの再選挙に干渉するような文言を首脳宣言に盛り込んだ。

「ギリシャがユーロ圏に残ることへの我々の関心を確認する」(外務省仮訳)という表現で、「離脱するなよ」と念押ししたのである。
 世界のリーダーが束になって、他国の有権者に口を挟む。サミットも軽くなった。首脳たちは、「民意」が世界の秩序を壊すことを恐れている。

 世界が抱える問題を、大国の親分衆が集まり、腹を割って話し合う。それがサミットの原点だった。その始まりとなる政府高官の会議は1973年、変動相場制が始まった年に開催された。
 石油ショックもこの年に起きた。一国で済まない危機を、「文殊の知恵」で打開しようとしたのがサミットで、話し合うことに意味があった。

 いまのサミットは、にぎやかなパーティーに変貌した。メンバーは増え、熟議は霞み、社交と政策宣伝が幅を利かす。
 首脳が考えを深める場ではなく、民意にアピールする舞台になったのである。

  とどまるも離れるも痛みを伴う選択

 今回はギリシャへのメッセージが中央に掲げられた。「誤った選択をしてはいけない」、である。
 もともと大国の利害に沿って、世界経済を運営することがサミットの狙いだった。ギリシャ国民がどう考えるか、は二の次である。
 「ユーロ体制」がギリシャごときに振り回されては困る。ギリシャは「ユーロ体制のアキレス腱」であり、処理を誤ると地獄の釜の蓋が開いてしまう。救済はギリシャ国民の問題でなく、世界の秩序を護る正念場なのだ。

 ユーロ圏は、「ドイツだけが好景気。その他は不況」という地域格差が鮮明になっている。どの国もユーロになり「為替相場で国際競争力を調整する」という通貨本来の機能が失われた。
 ユーロランドは「国境を越えた企業のガチンコ勝負」で、10年経ってドイツの一人勝ちが明らかになった。ドイツには、はじめから分かっていたことである。

 ドイツ人ほど勤勉でなく、生活を楽しむことが好きで、古い習慣から抜けられないギリシャ人にとって、今日の事態は「ユーロを選んだ自業自得」かもしれない。
 ユーロにとどまる限り、ドイツの風下に立つしかない。ギリシャが「ドラクマへの復帰」を望むのは、あながち的外れとは言えない。

 だが、民意は揺れている。世論調査で「ユーロ圏にとどまるべきか」という質問に、70%を超える人が「とどまった方がいい」と回答した、という。緊縮財政には「ノー」だが、ユーロ離脱にも「ノー」なのだ。
 ユーロのままの方が、居心地がいい。フランスやイギリスと一緒に「欧州一等国」を意識できる。ドラクマに戻れば、通貨価値は一気に下落し、預金の価値は目減りする。購買力も失われる。外国からの借金を返すのも大変になる。そんな厄介なことは避けたいと、誰しも思うだろう。

 ギリシャ人は、緊縮財政を受け入れるか、ドラクマに戻る混乱を覚悟するか。どちらを選ぶか、なのだ。
 ユーロにとどまり負け組周縁国に甘んじるか、ガチンコ勝負から離れ独自の流儀をとるか。どっちに転んでも、痛みを伴う選択である。

  権力者が恐れるのは「民意」と「市場」

 それはギリシャ人が決めることだが、「勝手に決められては困る。こっちにも事情がある」というのが、サミット側の事情だ。

 ユーロの負け組はギリシャだけではない。ポルトガルやスペイン、アイルランドも音をあげている。ギリシャが離脱すれば、「次はどこが落ちこぼれるか」と市場は虎視眈眈だ。

 EUやIMFが練り上げた支援策が壊れれば、周縁国と呼ばれる南欧諸国の国債は軒並み下落する恐れがあり、金融市場に衝撃が走るだろう。

 沈静化していた銀行の経営危機が再燃しかねない。疑心暗鬼から短期金融市場が凍りつき、貸し渋りが欧州景気を冷やすだろう。
 欧州の混乱は、病み上がりの米国経済を揺さぶり、再選を目指すオバマ大統領の選挙にも影響する。米国とEUが双璧をなす旧先進国リーグの没落につながりかねない。

 寄る辺ない民意が体制を揺るがすことを恐れるのは、社会主義市場経済の指導者だけではない。民主主義市場経済の権力者が恐れるのは「民意」と「市場」である。

 その恐怖がサミットの首脳宣言に滲んでいる。「成長と雇用の促進」が真っ先に掲げられた。普通に読めば当たり前のことだが、「緊縮財政」と「成長と雇用」が並んでいる「二股政策」が、今回の特徴だ。
 緊縮財政を取りながら、どうやって成長を確保するのか。欧州だけでなく、日本も米国も財政改革が迫られている。「緊縮財政」による調整は、先進国に共通する改題だ。

 ギリシャの失敗は、自国民の生活向上を借金で賄って来たことだ。行政サービスはもっと手厚く、税金は少なく、という民意におもねる政治が、「身を切る緊縮財政」が避けられない事態を招いたのだが、それはなにもギリシャに限ったことではない。

 借金を自国の貯蓄で賄っているドイツや日本はまだしも、外国の巨額の資金に頼って生活水準を維持している米国は、ギリシャと同じである。
 違いがあるとすれば、自国の腕力で外国からカネを引っ張って来られるか否か、だろう。
 その米国が主導するサミットは、ギリシャをユーロに囲い込むことを求めている。

 ドイツも、口では「ギリシャはお荷物」「甘えるな」というが、ギリシャがとどまることが、ユーロ体制に必要なことは承知している。ドイツの関心は、ドイツの負担を極限まで小さくして、ギリシャを抱えることである。
 ドイツにとって、宣言に「成長」が盛られたことは、大きな妥協だった。緊縮財政を続けながら成長を模索すれば、政党は手っ取り早い金融緩和を主張する。景気が過熱しかねないドイツにとって、金融緩和は受け入れ難い。

  今後の焦点は「ユーロ共同債」

 今後の焦点は、「ユーロ共同債」に移りそうだ。危ない国も、ドイツなど優等生と並んでユーロ建ての債券を発行する。危ない国のリスクを強国が負担する、という仕組みだ。
 ユーロ離脱を思い留まってもらうため、用意する「アメ玉」である。

 ギリシャの民意は「緊縮」も「離脱」もイヤという。サミットは「緊縮」も「成長」も、と謳う。どちらも「あり得ない二股政策」ではないのか。

 1970年代に始まった資本主義の危機は、サミット体制に象徴される「共同危機管理」でなんとか40年間保たれて来た。その後、世界全体が市場経済化し、混乱の振れ幅は一段と大きくなっている。
 冷戦が終わり、軍事的脅威から開放された途上国は、地力をつけて来た。今や、先進国の親分衆が仕切れる時代ではなくなった。

 小粒になったリーダーたちは、世界より自国、されに足元の民意に目を奪われ、時には牙を剥く市場に気をやみながら、綱渡りを続ける。

 欧州危機はこれから正念場を迎える。民意を背負って登場したフランスのオランド大統領の「成長路線」と、「緊縮財政」にこだわるドイツ・メルケル首相。
 「ユーロ離脱含み」のギリシャ再選挙。

 「統一欧州」の理想は、主権と民意の壁にぶつかっている。
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 このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化と財政緊縮政策の危機についての、関連記事リンクです。

・ 通貨、金利と信用創造の特殊な性質
・ 欧州の財政危機
・ ユーロは夢の終わりか
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・ ギリシャを解体、山分けする国際金融資本
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・ ユーロの危機は労働階級を試練にさらす
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