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ギリシャ反・緊縮財政の渦

 超緊縮財政によって将来展望があるなら良いが、国民を失業と飢餓に追い込んでも将来展望が描けないなら、そうした政策は不可能である。
 日本で言えば関東の税収は関東で使う、四国は四国で自賄いせよと言うものである
 ユーロの実態は「通貨だけ統合」の矛盾をさらけ出した。
 ギリシャはドラクマに戻して、通貨安の利益を使わなければならない。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  反・緊縮財政の渦の中で  5/17  三橋貴明 Klugから

 本稿執筆現在、ギリシャの情勢が落ち着く気配はない。
 総選挙の結果を受け、第一党のND(新民主主義党)、第二党の急進左派連合、そして第三党のPASOK(全ギリシャ社会主義運動)が順番に連立内閣の組閣を試みたが、失敗に終わった。
 現在は、パプリアス大統領が各党の党首と会談し、挙国一致内閣樹立に向けた説得を行っているが、協議は平行線をたどっている。

 『2012年5月13日 日本経済新聞「ギリシャ大統領、最後の説得 各党首に連立組閣促す」
 総選挙後の混乱が続くギリシャのパプリアス大統領は13日正午(日本時間同日午後6時)から、議会に議席を持つ全党の党首を順次、大統領官邸に呼んで組閣に向けた最後の説得を始めた。不調に終われば6月半ばの再選挙実施が決まる。ギリシャ政局は最終局面を迎えた。
 憲法で定められた第1~3党による組閣の試みは既に全て失敗。財政緊縮策をめぐる各党の立場の相違は大きく、大統領による調停は極めて困難とみられている。
 6日実施の総選挙では、与党として財政緊縮策を推進した二大政党が合計でも過半数を取れず、反緊縮派政党が躍進。再選挙で反緊縮派が勝利して政権を取った場合、緊縮策の実行を条件とする欧州連合(EU)などの金融支援が停止してギリシャが完全に財政破綻、欧州債務危機が再燃する懸念も出てくる。
 13日はまず、緊縮策を推進した第1党の新民主主義党(ND)のサマラス党首と第3党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首、反緊縮派の第2党、急進左派連合(SYRIZA)のツィプラス党首が一緒に呼ばれて大統領と会談。残りの4党首とはその後、一人ずつ個別に会談の予定。
 EUなどの金融支援の枠組み破棄や大幅見直しを主張するSYRIZAは、最新の世論調査で支持率20%以上とトップに立つ。再選挙での勝利をにらみ、大統領の調停前の連立工作ではNDやPASOKなどとの協力を拒否していた。』

 特に、総選挙で第二党に躍進した急進左派連合は「反緊縮財政」を貫いており、同党のツィプラス党首は、
「緊縮財政実施を条件とするギリシャへの金融支援は、不況の治療薬とはならない。抜本的な見直しを求める」
 と発言している。
 この発言自体は正しいが、別にギリシャが緊縮財政とEUなどからの支援を拒否したところで、不況の治療薬とはならない。
 ギリシャが片足を突っ込んでいるデフレから逃れ、財政を少しでも健全化するには、ユーロを離脱し、独自通貨に戻るしかない。

 無論、独自通貨に戻ったからと言って、それで問題が解決するわけではない。独自通貨に復帰し、通貨暴落と政府のデフォルトを受け入れ、その上で「通貨安ボーナス」を利用し、国民が外国に製品やサービスを売らなければならないのだ。
 ギリシャの莫大な「対外負債」は、同国の国民が働き、付加価値を稼ぎ出し、外国から獲得した「所得」から返済するしかない。
 すなわち、ギリシャの場合は観光というサービスの輸出を拡大し、経常収支の黒字化(対外純資産の増加、もしくは対外純負債の減少)を目指すしかないのだ。

 ところが、ギリシャの現在の通貨はユーロだ。ユーロ圏内では、どの国においても「1ユーロ=1ユーロ」である。ギリシャがユーロに留まっている限り、少なくとも「通貨安ボーナス」による観光サービスの拡大は有り得ない。
 しかも、ギリシャの近隣にはトルコ、クロアチアといった独自通貨の観光サービス大国があるのだ。トルコやクロアチアは、まさに「安い為替レート」を武器に、ユーロ圏内から観光客を奪い取っていっている。

 そもそも、同じく政府の負債が大きいとは言っても、日本の場合は自国通貨建て国債の話で、ギリシャは共通通貨ユーロ建てだ。自国通貨建て国債と「その他の債務」は、全く異なる存在なのである。

 現在の日本は、90年に「経常収支黒字国=過剰貯蓄国」としてバブル崩壊を起こし、自国通貨建て国債の長期金利が「超低迷(本稿執筆時点では、何と0.85%)」している。
 デフレ深刻化で民間の資金需要がなく、銀行が過剰貯蓄の運用先として国債を選んでいるためだ。
 というよりも、デフレ下で銀行の手元に貯まっていくお金は「日本円」なのだ。
 日本円は日本国以外の地域では、一切使うことができない。
 使えないお金を借りる人はいないわけだから、日本の銀行が過剰貯蓄を貸し付けることができる相手は、日本国内にしか存在しないのである。
 そして、日本国内で事業活動を行う企業が借りないとなると、これはもはや、銀行としては「日本国政府に貸す以外にない」という話になる。
 すなわち、日本の過剰貯蓄問題の場合、国債を購入する銀行側に「選択肢」がないのだ。
 銀行が日本国債を購入する、すなわち政府にお金を貸し付けられない場合、冗談抜きで預金者に対しマイナス金利を設定するしかなくなってしまう。

 それに対し、ギリシャは異なる。ギリシャはそもそも貿易収支赤字国、経常収支赤字国だったのである。
 すなわち、国内に過剰貯蓄問題があったわけではない。日本とは真逆に過小貯蓄に悩んでいたのが、かつてのギリシャ(今もだが)なのだ。

 ギリシャが貿易収支赤字、さらには高インフレ率に悩んでいたのは、日本とは異なり、国内の供給能力が不十分だったためだ。
 すなわち、潜在GDPが需要(名目GDP)に追い付かず、インフレギャップが発生し続けていたのである。

 インフレギャップは、インフレ率上昇と貿易赤字拡大により埋められる。
 現在のギリシャは、国内の需要が崩壊状態にあり、インフレ率は低迷している(2012年のギリシャは物価上昇率がマイナスに落ち込むと予想されている)。
 とはいえ、別にギリシャ国内の供給能力が伸びたわけではないため、貿易赤字は続いている。貿易赤字まで縮小してしまうと、ギリシャ国民は必要な食料すら入手できず、飢え死にしかねない。

 ギリシャが破綻状態にあるにも関わらず、なぜ未だに貿易赤字を維持できるのかと言えば、まさしく「ユーロの賜物」である。
 普通の独自通貨国であれば、ギリシャのような財政破綻状態に陥れば、確実に通貨が暴落する。
 結果的に、輸入が激減し、国民は輸入価格上昇に苦しむことになるわけだが、ギリシャ国民の場合は、ユーロ加盟国に対し価値が変わらないユーロに救われているわけだ。

【図154-1 ギリシャの経常収支の推移(単位:十億ドル)】
20120514.png
出典:世界銀行

 いずれにせよ、経常収支赤字国が国内でバブルを発生させていたわけであるから、当然、金の貸し手は「外国人」ということになる。
 ギリシャの場合はフランスとドイツだが、両国の金融機関からギリシャ政府や国内銀行が「ユーロ建て」でお金を借りまくっていたというのが、ギリシャ危機の本質だ。

 すなわち、ギリシャ政府の債権者は「国際金融市場」であり、国内の銀行ではないのだ。
 しかも、国際金融市場が貸し付けていたのは「共通通貨ユーロ」であり、ギリシャの独自通貨ではない。
 国際金融市場側にしてみれば、手元に貯まっているユーロについて、別にギリシャに貸し付ける義務はない。ドイツに貸しても、オランダに貸してもいいわけである。

 というわけで、日本のケースとは異なり、ギリシャの場合は金の貸し手(国際金融市場)側に選択肢がある。
 ギリシャ政府は国債金融市場から金を借りる場合、他のユーロ加盟国の政府と競合しなければならないのだ。結果的に、バブル崩壊後のギリシャ国債の金利は急騰していった。

 国債金利が急騰すると、政府はお金を借りにくくなる。バブル崩壊後のデフレ対策として、政府は負債を増やし、投資や消費といった有効需要を拡大し、デフレギャップを埋めなければならない。
 ところが、ギリシャのように経常収支赤字国が「外国から借りた金」でバブルを膨張させ、崩壊させてしまうと、長期金利が急騰し、まともなデフレ対策は取りようがなくなってしまうのだ。

 独自通貨国であれば、金利急騰時に中央銀行が国債を買い取れば済むわけだが、ギリシャの場合はそれもできない。
 日本とギリシャは、バブル崩壊後にデフレに陥っているという点は同じだが、それ以外はほとんど共通点がない。
 日本は独自通貨国で、ギリシャは共通通貨ユーロの加盟国。
 日本は経常収支黒字で、ギリシャは経常収支赤字。
 日本は国内が過剰貯蓄状態で、ギリシャは過小貯蓄。
 日本は長期金利が0.88%で、ギリシャは25%。
 日本は中央銀行に国債を買い取らせることで、政府は返済負担や利払い負担から解放されるが、ギリシャはそうではない。

 ここまで状況が違う日本とギリシャを同一視し、
「このままでは日本がギリシャになる! 消費税増税!」
 と、初めから結論が決まっている消費税増税に向けて、デマゴーグを流す人が後を絶たないわけであるから、許しがたいわけだ(ちなみに、ギリシャの消費税は23%)。

 また、逆の意味におけるギリシャと日本の同一視も問題だと思う。すなわち、
「ギリシャは緊縮財政に国民が反対し、民主主義が勝利した。日本もギリシャを見倣い、緊縮財政という悪を打破しよう!」
 といった論調だ。無論、現在の日本において緊縮財政が「愚策」であることは疑いないが、それは単純に我が国が長期のデフレに苦しめられているためだ。
 デフレの国が増税や政府支出削減など、名目GDPを押し下げる政策を実施すると、当然ながら税収が減る。
 そもそも緊縮財政とは「財政問題」を解決するために実施するのだと思うわけだが、デフレ期には状況を悪化させるだけだ。

 逆にいえば、インフレ期の政府が放漫財政に陥り、政府支出(政府の需要)拡大でインフレ率を押し上げてしまっている場合は、緊縮財政は容赦なく実施されるべきである。
 政府支出を切り詰め、公共事業を削減し、公務員を解雇し、年金を縮小し、さらに増税で国民の需要を押さえつければ、インフレは抑制される。

 要するに、緊縮財政にせよ増税にせよ、単なる「政策」なのである。政策に「悪」も「善」もない。単に「適している時期」と「適していない時期」があるだけの話だ。

 今後、消費税政局と絡め、欧州の反緊縮財政が話題に上るケースが増えてくる。読者には是非、その種の言説の「向こう側」にあるものを見極めて欲しいと思う。

 さて、ギリシャはユーロ圏にとどまる限り、緊縮財政を受け入れようが、拒否しようが、対外債務問題が解決することはない。
 EUやIMFの支援と引き換えに緊縮財政を受け入れた場合、「デフレ下の緊縮財政」ということで、名目GDPが急収縮し、税収も減る。すなわち、財政が悪化する。
 ギリシャが緊縮財政を拒否すると、EUやIMFからの支援が行われず、6月もしくは7月にも政府が「完全なデフォルト」状態に陥る。結果、ユーロ危機が再拡大し、加盟国側から「ユーロ離脱」を求めてくることになるだろう。

 とはいえ、ユーロには「加盟のルール」はあっても、「離脱のルール」はない。
 そういう意味で、ユーロとは実に「机上の空論」的なシステムであることが分かる。
 どんなシステムも、環境変化に対応できる「機能」を備え付けておかなければならないが、ユーロは「デフレ環境」には全く対応できないのだ。

 先日の総選挙で第二党となった急進左派連合は、選挙後の世論調査で25.5%とトップに立っている。
 このまま6月に再選挙となると、ギリシャの選挙制度(第一党に50議席上乗せ)により、急進左派連合が115議席程度を獲得し、第一党になるだろう。

 急進左派連合のツィプラス党首は、先述の通り、緊縮財政を条件とするEUやIMFの緊急支援について「抜本的な見直し」を求めている。
 しかも、再選挙になると圧倒的に有利であり、NDを蹴落として第一党になる可能性が高いのだ。
 国民の七割近くが賛同した「反緊縮財政」の急先鋒である急進左派連合が態度を変えない限り、ギリシャの再選挙を回避する道は極めて細い。

 無論、PASOKやNDという旧与党側は、さらなる選挙だけは避けたいだろう。何しろ、再選挙になると、今回以上に議席を減らすことは確実なのだ。さすがに、NDやPASOKが今さら「反緊縮財政組」に鞍替えすることはできない。

 というわけで、パプリアス大統領の調整が失敗し、再選挙が行われ、急進左派連合を中心とした反緊縮財政の政権が発足する可能性は極めて高い。
 ギリシャのみならず、フランスやスペイン、ポルトガル、それにオランダにおいても反緊縮財政の国民運動が盛り上がりを見せている。

 無論、世界で最も「デフレ期の緊縮財政」に苦しめられている日本国民も、政府に対し抗議の声を出すべきである。とはいえ、その際には是非とも、
 「デフレ期の緊縮財政は、国民所得を押し下げ、税収を減少させ、財政を却って悪化させるから間違い」
 と、正しい経済知識に基づいた怒りの声を上げて欲しいと願うわけである。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化と財政緊縮政策の危機についての、関連記事リンクです。

・ 通貨、金利と信用創造の特殊な性質
・ 欧州の財政危機
・ ユーロは夢の終わりか
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