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もうすぐ北風が強くなる

緊縮財政を否定する各国国民

 相変わらず婉曲な話法と言うか、断定を避けて疑問形話法の山崎氏ですが、フランスとギリシャの政変の分析と日本の状況について、至極真っ当な正論。
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  「緊縮政策にノン!」の行方を考える   5/8  山崎元 ダイヤモンド・オンライン

 フランスとギリシャ、そして日本 緊縮財政に反対する国民の強い意思

 フランス大統領選の決選投票、加えてギリシャの総選挙の結果が相次いで発表された。フランスは現職のサルコジ大統領が敗れ、社会党のオランド党首が新大統領に就任した。

 ギリシャは連立政権編成の合意ができない混迷状態だ。特に、民主主義発祥の地とも言えるギリシャの状況を見ると、選挙による民主主義は時に機能不全に陥るものであることが改めてわかる。

 両国の置かれた状況はそれなりに異なるが、共通するのは、緊縮政策に反対する国民の強い意思だ。フランス語だから「緊縮政策にノン!」ということになる。

 選挙結果を受けて、我が国の株価は大幅に下落した。一方、円の為替レートは選挙結果が出る前から円高が進み、選挙後も、対米ドルで80円割れの水準に留まっている。

 率直に言って、選挙結果はほぼ事前の予想通りであり、為替市場の方が賢いようにも見えるが、大型連休で日本の株式市場が開かれていない間に、為替は海外市場で取引されていたことの差もあろう。

 一方、我が国では、参院で問責決議を受けた閣僚の去就など、不確実性を伴う問題があるが、「社会保障と税の一体改革」の法案、要は消費税率引き上げの法案が審議入りの運びとなり、こちらでも、「方向としては」増税による緊縮政策が指向されている。

 しかし、賛否は大きくはかけ離れてはいないものの、最近の世論調査では、消費税率引き上げに対する反対の方が賛成よりも多く、また、消費税率引き上げを目指す野田政権への支持率は下降トレンドを辿っている。

 フランス、ギリシャのように選挙で民意を問うなら、「緊縮にノー」が返って来そうな情勢だ。

 統一通貨ユーロからの離脱も 欧州には通貨の自由度が必要

 フランスもギリシャも、高い失業率を抱えており、これが最大の問題だ。フランスは10%と、隣国ドイツの5.7%を大きく上回っている。ギリシャは20%を大きく上回っており、これは社会秩序の維持が危うくなるレベルと言えそうだ。

 大きな失業率を抱えているときに、緊縮政策は不適切だというのが、両国民が緊縮政策に反対する直接的な理由だろう。

 確かに、民間の需要が大幅に落ち込んでいるときに、財政赤字がこれをカバーすることが適切な場合もある。しかし、両国、特にギリシャにとって必要なのは、共通通貨ユーロからの離脱による通貨の自由ではないだろうか。

 観光と農業を主な産業として、膨大な数の公務員を養わなければならないギリシャとしては、通貨ユーロが高止まりしていることが決定的な重荷だ。

 ギリシャをユーロ圏に留めることについては、ユーロの信用維持の意味があるとしても、ギリシャ自身の苦境を救うことを考えた場合には、ギリシャがユーロから離脱して独自の通貨を使えるようにすることが望ましいのではないだろうか。

 フランスは、ユーロの中心国の1つだから、ユーロから離脱する選択肢は当面考えにくいが、ドイツとの失業率の差やフランスとドイツの1人当たり国民所得がほとんど並んでいることを見ると、現在、ドイツと共通の通貨と金融政策を使っていることの「家賃」が高いのではないかと思われる。

 フランス人の労働者とドイツ人の労働者がほぼ代替的なら、共通の通貨で構わないだろうが、両国の産業や労働者の生産性に違いが出る局面では、共通通貨が一方の足枷になる。

 共通通貨ユーロは、財政や物価、生産性などが加盟各国で変わらない条件でなら歪みを生じないが、各国で経済環境が異なり、これに対して各国が財政的に対処しようとした場合に障害となる。

 この条件の下で「ユーロの害」を無毒化するためには、各国で賃金をはじめとする物価が速やかに調整されなければならないが、たとえば、ギリシャの産業が十分に競争力を持つところまでギリシャ人の賃金をスムーズに引き下げることは、社会的に難しい。(引用者:逆に例えばドイツの賃金を上げて圏内のコスト均衡を図ることは十分可能である。しかしドイツは賃金抑制してしまった。流れが変わればドイツの賃金を上げる案が実行されても不思議はない、どころか実行すべきである。)

 ヨーロッパの債務問題が今後どうなるかは見通しが難いが、金融機関ないし政府が抱える不良債権が、かつての日本の不良債権処理のような意味で「処理」されたとは到底言えない。

 最終的に不良債権を処理するためには、財政資金の投入が必要になり、これを欧州中銀がファイナンスせざるを得ないように思われるが、ドイツはそれを容認しそうにない。不況の長期化が予想されるし、再び「危機」(金融システム不安)の状況に陥る可能性もある。

 なお、フランスのオランド新大統領には「バランスの取れた現実主義者」だとの評があるが、当選後、雇用対策として公務員を数万人増やすと発表したことには驚いた。

 数万人の公務員に付随する予算と仕事がどのようにものになるかにもよるが、これだけでは雇用増に対する効果は限られているし、その割に非効率が大きい。残念ながらあまり期待できそうにない、というのが当面の感想だ。

 日本は緊縮財政より拡張財政を 消費税率の引き上げは早急に必要か

 フロー・ストック共に巨額の財政赤字を見ると、消費税率引き上げくらいで緊縮政策と呼ぶのは大袈裟かも知れないが、改めて日本の場合、消費税率の早急な引き上げが必要なのだろうか。

 日銀は1%の「インフレ目標」を提示したが、これはいつまでに達成されるかが曖昧で、来年度も物価上昇率は1%に達しない可能性もある。金融緩和を拡大し続けると、通貨発行益がやがては政府のものとなり、中央銀行による財政のファイナンスとなるので、いつかはインフレになるはずだが、当面、直接的には需給ギャップの存在によって物価は上がりにくい。

 日銀の金融緩和の強化も必要だが、ここしばらくの間、財政は緊縮方向に向けるよりも、拡張的であることの方が適切なのではないか。

 日銀に必要なのは手段の独立性 一体改革は成立しなくても惜しくない

 財政赤字の拡大と金融緩和の組み合わせの副作用は、長期金利の上昇とインフレ率の上昇、さらに通貨安だが、現在、長期金利は低位で安定しており、インフレ率はもっと高いことが望ましく、為替レートも円安の方がいい。

 そもそも、過去のデフレの影響を修正することを考えると、インフレ目標値は1%よりも高い方が適切なのではないか。また、米国よりも低いインフレ目標を掲げ続けることは、市場からは「円安にはしない」という意志の表明とも読める。

 一般に、あるべき「中央銀行の独立性」は、「政策目標ではなく、手段の独立性だ」と言われる。「1%が目標だが、達成の時期については、判断をこちらが預からせてもらう」という現在の日銀のスタンスは、明らかに政策目標レベルで独自の判断をしている。

 世の役に立つ普通の中央銀行になってもらうためには、日銀法を改正して、政策目標レベルでは政府のコントロール下に入ることを明確化すべきだと思われる。

 また、消費税率の引き上げは今でなくともよい。小沢一郎氏の無罪判決などもあり、我が国の政治の見通しが利きにくくなっているが、社会保障と税の一体改革法案は、成立しなくても惜しくない。
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 このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化と財政緊縮政策の危機についての、関連記事リンクです。

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デフレ下での緊縮財政は逆効果です、税収も増えません。
日銀は大きな罪を犯しました。

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