もうすぐ北風が強くなる

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ユーロは第二次大恐慌の引き金か:三橋

 スペインの失業率が、ついに1933年大恐慌下のアメリカに並ぶ失業率となった。
 サブプライムショック、リーマンショックによる不動産価格崩壊と信用恐慌、国家債務の増大は実体経済を破壊し続ける。

 失業の増大は実体経済の縮小そのものを示す。
 「恐慌」に他ならない。
 米国も欧州も不動産価格崩壊と信用恐慌、国家債務の増大は同じであり、投資も需要も増えないために流動性供給は実体経済に及んでいない。
 なんとか、ソフトランディングを引っ張っているだけだ。

 共通通貨の恩恵をうける債権国ドイツ、オランダ、フランスは資産も実体経済も拡張を続けているが、被害国はギリシャ、スペインをはじめとして、国民経済が縮小循環(恐慌)を始めている。
 ここに緊縮財政策を実施するとどうなるか。
 スティグリッツやクルーグマンの言うとおり「自殺行為」となるだろう。
 欧米への恐慌波及である。
  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  第二次大恐慌の引き金  5/3  三橋貴明  Klugから

 2012年第1四半期のスペインの失業率が、24.4%に達した。スペインの雇用統計について、現在の集計方法が始まった1996年以来、最悪の値を更新したのである。
 本連載でも頻繁に取り上げる、大恐慌下のアメリカが1933年に記録した失業率24.9%に、匹敵するほどに雇用環境が悪化しているわけだ。

 ちなみに、大恐慌期のアメリカは「全土」の失業率が24.9%であり、農村部はそこまで酷くはなかった。
 すなわち、逆に言えば都市部の雇用環境はより悪化していたわけで、何とは50%に近接したのである。
 所得を得られないという点は同じだが、農村部は都市部ほど「失業」はしない。当時のアメリカの都市部では、労働者の半分が「所得を得られない」状況になっていたわけだ。
 まさに、経済的なカタストロフィ状態に陥っていたといっても過言ではない。

 高インフレ、あるいはハイパーインフレーションも、失業率が極端に上昇するデフレ深刻化や恐慌も、共に国民経済の「失敗」なのである。
 理由は、インフレ率高騰も恐慌も、両方とも国民が「飢える」という同じ結果をもたらすためだ。

 高インフレとは、需要に対し供給能力が全く足らず、インフレギャップが巨大化している状況である。
 例えば、1946年ごろの日本がまさにそうだったわけだが、財やサービスの供給能力が需要に全く追い付かず、実際に当時の日本国民は飢えた。
 46年の日本のインフレ率は360%を上回ったが、これは日本において「歴史上最も高いインフレ率」と考えられている。

 基本的に平和が続き、国民が供給能力の蓄積を好む日本では、インフレ率はそう簡単には上がらない。
 何しろ、明治初期に明治政府が政府紙幣(明治通宝など)を発行し、富国強兵に向けた政策を展開したにも関わらず、インフレ率は一桁で収まったほどだ。
 46年の日本のインフレ率は、有史以来空前の高さと言っても過言ではないのである。

 さて、国民経済の供給能力が極端に不足し、インフレ率が高騰している国においては、国民は物不足、サービス不足、最終的には「飢え」に苦しむ。
 逆に、恐慌下では、財やサービスの生産能力は「余って」おり、実際に農村部に食料が溢れかえっているケースが多い。
 それにも関わらず、デフレ深刻化で所得を得られない失業者が極端に増え、国民が高インフレ同様に飢えてしまうのだ。
 何しろ、失業者は所得を得られないため、財やサービスを購入するお金がない。所得を得られないとは、やはり「飢え」に繋がってしまうのである。

 現在のスペインは「供給能力の拡大」ではなく、「需要の極端な縮小」によりデフレギャップが発生している。需要の極端な縮小の原因は、バブル崩壊以外にない。
 バブル崩壊後の国は、特に民間の「投資」が激減する。何しろ、「消費」はある程度は維持しなければ、国民が飢え死にしてしまうのに対し、投資は「先送り」が可能なのだ。

 結果、現在のスペインは「低インフレ」の状態に陥っている。
 労働者の四分の一近くが失業状態にあり、かつ若年層失業率は50%を超え、所得不足から「飢え」へと向かっている国民が少ないにも関わらず、いや、だからこそ物価が低迷しているのだ。

【図152-1 ユーロ圏及びイギリス、スイスのインフレ率(対前年比%)】
20120430a.png
出典:ユーロスタット

 図152-1の通り、現在のスペインのインフレ率は2%を下回っている。同国の物価上昇率の水準は、他のユーロ加盟国(ギリシャ除く)よりも低くなっているのである。

 スペインやギリシャの物価上昇率が落ち込んでいるのは、別に両国の供給能力が高まったためではない。そうではなく、バブル崩壊により需要が急収縮しているために、物価上昇率が低迷していっているのだ。
 日本の例を見るまでもなく、健全な価格競争により物価が下落したのではなく、「バブル崩壊後の需要の縮小」によりインフレ率が落ち込む国においては、企業経営がひたすら厳しくなっていく。
 企業の業績が悪化すると、当然ながら人員削減が行われ、失業率が上昇していく。


 フィリップス曲線からも分かる通り、失業率の改善には、ある程度のインフレ率が欠かせないのだ。ところが、現在のギリシャやスペインはインフレ率を上昇させる政策を採ることを「許されておらず」、このままではスイスや日本同様に深刻なデフレ局面を迎えることになり、失業率はアメリカ大恐慌期を上回ることになるだろう

 ちなみに、2012年のギリシャの物価上昇率は、最終的にはマイナスになると予想されている。このままでは、スペインも同じ道を辿ることになるだろう。
 デフレ期のオーソドックスな対策は、「国債発行+財政出動+通貨発行(国債買取)」のパッケージである。中央銀行が国債を買い取り、通貨を発行しつつ、政府がそのお金を「雇用」が生まれるように使うのだ。
 雇用の創出とは、すなわち付加価値(GDP)の発生だ。政府が中央銀行に発行させた通貨を国債で吸い上げ、雇用創出のために使えば、国内の需要を意味する名目GDPが成長する。すなわち、物価下落の主因であるデフレギャップを埋められる。

 しかも、日本やスイスのように「健全な資本主義国」がデフレに落ち込むと、長期金利は低迷する。本稿執筆時点で、日本の長期金利(新規発行十年物国債金利)は0.9%、スイスが何と0.71%だ。
 日本政府やスイス政府は「超低迷」した長期金利を活用し、自国内の需要を政府主導で拡大していけばいいのである。政府が有効需要となる支出を増やせば、間違いなく雇用環境が改善し、企業の投資も復活する。

 日本やスイスの長期金利が超低迷している理由は、両国共に経常収支黒字国かつ自国通貨国であるためだ。経常収支黒字国とは、すなわち国内が過剰貯蓄状態にあることを意味している。
 そして、この「過剰貯蓄」は、日本の場合は日本円、スイスの場合はスイス・フランだ。銀行に次々と「預けられる」預金(実際には銀行の借金)は、それぞれ日本円、スイス・フランなのである。

 日本円やスイス・フランを預けられた両国の銀行は、懸命に投資先を探し求める。ところが、デフレで需要が収縮している時期に、企業は融資を増やそうとしない。
 また、デフレで経営状況が悪化した企業には、銀行側の与信が通らない。 

 結果、両国の銀行は結局は「日本国債」あるいは「スイス国債」を購入するしかないのだ。日本やスイスの場合、実は過剰貯蓄に悩む銀行側に、お金を貸し出す際の「選択肢」がない。
 日本で言えば、日本企業や家計が銀行に貯まった「日本円」を借りてくれない場合、最終的には国債を買うしかなくなるのだ。
 何しろ、日本円は日本国内でしか流通しておらず、外国に借り手はほとんどいない。

 それに対し、スペインやギリシャはユーロ加盟国であり、中央銀行の機能をECB(欧州中央銀行)に委譲している。ユーロ圏内で過剰貯蓄を抱えた金融機関は、別にスペインやギリシャにお金を貸し出す義務はない。
 手元のユーロを、経常収支黒字国で国債の信用も高いドイツやオランダに貸し付ければ(ドイツ国債やオランダ国債を買う)、それで話が済んでしまうのだ。

 すなわち、ユーロ圏の金融機関と国債の関係を見ると、「貸し手側」に選択肢があるということになる。
 スペイン政府がユーロ圏の金融機関からお金を借りる際には、ドイツ政府やギリシャ政府などと「競争」しなければならない
わけだ。

 しかも、スペインやギリシャは経常収支赤字国だ。
 経常収支赤字国は国内が過小貯蓄状態であるため、そもそも不動産バブルなどは発生しない「はず」だ。ところが、ユーロに加盟したことで為替レートの変動が消滅し、ユーロ加盟国から高い金利を求めるお金(ユーロ)がスペインやギリシャに流れ込み、バブルを膨張させ、ギリシャの場合は財政赤字をひたすら拡大していったわけだ。

 結果的に、バブル崩壊後にギリシャやスペインがお金を返す相手は「外国の金融機関」という話になり、長期金利が高騰していった。
 繰り返しになるが、ユーロを保有する金融機関は、日本の銀行とは異なり「借り手」を選ぶことが出来る。

 すなわち、ギリシャやスペインは、日本やスイスとは異なり「国債発行+財政出動+通貨発行(国債買取)」という正しいデフレ対策を採れないわけだ。 
 そもそも、ユーロ加盟国は金融政策についてECBに委譲しているため、独自の政策としてユーロを発行する(自国国債を買い取る)ことすら不可能なのである。

 しかも、ギリシャやスペインにお金を貸していた国際金融市場は、両国(両国のみではないが)に緊縮財政を要求し、名目GDPを縮小させ、税収を減らし、財政問題を悪化させていっている。
 そこに、ユーロの盟主たるドイツの「財政均衡至上主義」が加わり、ユーロ加盟国は「財政均衡の憲法化」という、冗談のような政策を採らされようとしている有様だ。
 バブル崩壊後に民間の投資縮小で国内の需要が減少している最中に、政府までもが公共投資削減などの緊縮財政を実施すると、その国はデフレ化し、恐慌へと向かうことになる。
 バブル崩壊後の政府による緊縮財政は、日本の例を見るまでもなく「経済的自殺行為」なのである。

『2012年4月26日 ブルームバーグ紙「スティグリッツ教授:欧州の緊縮策は「自殺」への処方箋」

 ノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学教授のジョゼフ・スティグリッツ氏は、欧州大陸は緊縮策に重点的に取り組むことで「自殺」に向かっており、「悲惨な」状況にあると指摘した。

 スティグリッツ氏(69)は26日にウィーンで記者団に対し、「いかなる大国でもこれまでに緊縮プログラムが成功したケースはない」と述べ、「欧州のアプローチは間違いなく成功の見込みが最も薄いものだ。欧州は自殺に向かっていると思う」と語った。

 欧州連合(EU)27カ国はソブリン債危機の中で総額4500億ユーロ(約48兆円)の緊縮措置を実行している。一方で各国政府が財政赤字の穴埋めや財政危機に陥る他の加盟国の救済資金拠出で借り入れを増やしたことから、ユーロ圏全体の債務は昨年、単一通貨導入以降で最高水準に達した。

 スティグリッツ氏はギリシャが欧州で緊縮策を導入している一部にすぎないなら当局は無視でき得ると述べた上で、「だが英国やフランスなどの国が緊縮策を取れば、共同で緊縮策を講じるようなものであり、それに伴う経済的な影響は悲惨なものになろう」と予想。同氏はまた、ユーロ圏首脳は「緊縮策それ自体では機能せず、経済成長が必要であることを理解している」ものの何の行動も伴っていないとし、昨年12月に実行に合意したのはユーロの死を確実にする処方箋だと述べた。』

 スティグリッツ教授の言う通り、デフレ局面で緊縮プログラムに成功した国はない。現在のスペインやギリシャが加盟国や国際機関(IMFなど)から緊縮財政を強要されているのは、まさしく恐慌への道を目隠ししたまま歩かされているようなものだ。

 実際、ユーロで財政危機に陥った国々は、08年以降にひたすら緊縮財政を実施しているわけだがが、ユーロ圏全体の債務(政府の負債)は増えていっている。
 デフレ下の緊縮財政が名目GDPを押し下げ、税収を抑制する以上、当たり前だ。名目GDPを健全な成長に戻し、税収を「成長により」増加させることを考えなければ、ユーロ加盟国の財政は延々と悪化していくことになる。

 バブル崩壊後のデフレ期に、政府が緊縮財政を実施しても、財政が改善することはない。理由は明々白々で、緊縮財政が名目GDPを抑制し、さらに税収の源が名目GDPであるためだ。
 税収が減っていく国に置いて「財政を改善ずる」などという奇跡は、現実には起きない。そんなことは、97年以降の日本の例を見れば、誰でも理解できるはずである。

 4月30日、ILO(国際労働機関)は、財政危機に揺れるヨーロッパを中心とした先進国の「緊縮財政」が、雇用の回復に悪影響を及ぼすとして警鐘を鳴らした。
 ILOによると、2011年時点で、先進国の求職者の約40%が1年以上も職がない状態が続き、失業期間の長期化が目立っているという。

 各国の緊縮財政で失業率が上昇すると、当然ながら名目GDPの消費という「需要」が減る。企業の投資(やはり需要)も減る。
 そもそも緊縮財政とは、政府支出という需要項目を削減する行為であるわけだが、それが民間にも波及し、スパイラル的な需要収縮に突入してしまう。

 需要が縮小すれば、デフレギャップが拡大し、企業はさらなるリストラクチャリングに励むことになる。すなわち、失業率が上昇する。失業率が上昇すると・・・と、需要と雇用、そして国民所得が急収縮していく状況を、正に恐慌と呼ぶのだ。

 日本を含めた先進国の政府は、早急に現時点で優先されるべき政策が何かを理解しなければならない。すなわち、政府支出拡大により「需要」「雇用」そして「所得」を増やすことだ。
 財政健全化など、名目GDPが堅調に成長していく局面に入れば、放っておいても実現できる

 上記の「マインドの切り替え」が行われない場合、世界は冗談でも何でもなく「第二次大恐慌」に突入しかねない。そして、現時点で最も「大恐慌」の引き金を引く可能性が高い地域が、ユーロ圏なのだ。
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
 このブログ内での、ユーロの基本的で致命的な欠陥とリーマンショック以来の二極化の危機についての、関連記事リンクです。

・ 通貨、金利と信用創造の特殊な性質
・ 欧州の財政危機
・ ユーロは夢の終わりか
・ ヨーロッパの危機
・ 動けなくなってきたユーロ
・ ギリシャを解体、山分けする国際金融資本
・ 過剰信用と恐慌、焼け太る国際金融資本「家」
・ ユーロは凋落、デフレと円高は悪化へ
・ ユーロの危機は労働階級を試練にさらす
・ ギリシャの危機拡大はEUの危機!
・ 公平な分配で経済成長を続けるアルゼンチン
・ アイスランドの教訓:銀行は破綻させよ
・ ギリシャ、イタリアでIMF、EU抗議の大デモ
・ 破滅するユーロか、破滅する国家か
・ 欧州直接統治へ進む国際金融資本
・ ユーロは国民国家を解体するか
・ アイスランドの教訓、ギリシャはドラクマに戻せ
・ ユーロは崩壊か分裂か
・ 動乱の2012年
・ 通貨戦争(46)ドル、ユーロ、円
・ ヨーロッパは恐慌に向かっている
・ ユーロ危機で延命するドル・ 通貨戦争(48)分裂に向かうユーロ
・ 緊迫するユーロ、ギリシャは何処へ向かうか
・ IMF、EU、メルケルと闘うギリシャ
・ ギリシャ、抗議の暴動
・ 資産も主権も国際資本に奪われるギリシャ
・ ギリシャは民主主義を守るためにデフォルトを!
・ ユーロが襲うギリシャの社会危機、政治危機
・ 毒饅頭を食わされたギリシャ
・ 何も改善しないEU新財政協定
・ ユーロの悲劇:三橋
・ 通貨戦争(51)ユーロ分裂に備え始めた欧州
・ ヨーロッパは底なしの危機、27の指標
・ 通貨戦争(54)債務国から巨額の資金流出
関連記事

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://bator.blog14.fc2.com/tb.php/1059-248bca73

 | HOME | 

 

プロフィール

もうすぐ北風

Author:もうすぐ北風
こんにちは。
いろんな旅を続けています。
ゆきさきを決めてないなら、しばらく一緒に歩きましょうか。

最新記事(引用転載フリー)

カテゴリ

経済一般 (118)
経済一般~2012冬まで (161)
日本の経済 (224)
通貨戦争 (70)
ショック・ドクトリン (12)
震災関係 (23)
原発事故発生 (112)
事故と放射能2011 (165)
放射能汚染2012 (192)
汚染列島2013-14 (146)
汚染列島2015-16 (13)
福島の声 (127)
チェリノブイリからの声 (27)
政治 (413)
沖縄 (93)
社会 (316)
小沢一郎と「生活の党」 (232)
健康と食 (88)
環境と地球の歴史 (28)
未分類 (174)
脳卒中と入院 (7)

カウンター

最新コメント

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

リンク

このブログをリンクに追加する

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

最新トラックバック

月別アーカイブ

RSSリンクの表示

FC2Ad

Template by たけやん

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。