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フクシマの嘘:山田

ドイツの放送局が問う「フクシマの嘘」とは
元凶に触れず再稼働する野田政権の愚行     4/12 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン

 原子力発電所の再稼働に向け、あたふたと動きだす野田政権の姿に「フクシマから何を学んだのか」と情けなく思うのは、私だけだろうか。

 汚染は日々深刻になっている。ふるさとを追われた住民は帰れない。売れない作物の品目や産地が広がっている。「除染」のかけ声だけが空しい。

 爆発した原子炉から今日も放射性物質が飛び散り、風や雨が運び、子どもの体内被曝が心配される。原子力事故が人の営みの根幹を揺るがしているのに、「我々は何を間違えたのか」という反省もないまま、「電力体制」を復元する愚行が始まった。

  原発再稼働3条件は再稼働のためのお題目

 野田政権は、止まっている原発を再稼働する条件を3つ挙げた。

(1)全電源を喪失しても事態の悪化を防ぐ安全対策ができている。
(2)東日本大震災なみに、想定値を超えた地震・津波が起きても核燃料が損傷しないことを政府が確認している。
(3)電力会社が、さらに安全を向上させる対策をいつまでに実施するか計画を作っている。

 字面だけ読めば、立派だ。「安全対策」「政府が確認」「実施計画」。どれも耳にタコができるほど聞かされた言葉だ。そんなお題目がいかに虚ろだったか。思い知らされたのが「フクシマ」ではなかったか。

 震災当時、「直ちに健康に影響はありません」と無表情に繰り返していた現経済産業大臣が、今度は「おおむね安全が確認されました」と再稼働させようとしている。

 枝野さん、あなたはファイティングポーズをとっているかに見えるときもあるが、なぜフクシマであんな事態が起きたのか、教訓を踏まえた政治をしていますか?

  ネット上で話題になっているドイツの放送局の「フクシマの嘘」

 ドイツの放送局「ZDF」が製作した「フクシマの嘘」が、日本でもネットで話題になっている。

 白い防護服で顔を隠したドイツ人記者が、立ち入り禁止区域に潜入し廃墟となった汚染地帯を取材する。案内したのは原発の出入り業者である企業の社長。現場での指摘がいかに無視されたか、発せられた警告や懸念の前に立ちはだかる壁がいかに分厚かったか、が証言される。

 菅直人前首相のインタビューでは、大事故が起きながらも官邸に大事な情報が上がらない危機管理体制の欠落と、電力会社の情報統制を問題にした首相を引きずり降ろす力に焦点を当てている。そした最後に、いま目の前のある危機として「4号炉の使用済み核燃料」の問題を提起している。

 ネットで「フクシマの嘘」にアクセスして是非見てほしい。

 30分足らずのドキュメンタリー番組だが「なぜフクシマであのようなことが起き、我々はどんな危険に曝されているのか」を象徴的に描いた力作だ。

  電力権力の構造にまでメスを入れる必要

 一方、日本で語られている「事故原因の究明」は、予想を超えた地震や津波、全電源喪失といった、表面上の因果関係の解明が中心になっている。

 背後にある「警告を無視する」「批判を許さない」「嘘の報告書がまかり通る」などの企業としての隠蔽体質を無視して、この事故は語れない。

「役所との癒着」「御用学者の重用」「御用政治家の養成」「産業界支配」「マスコミの懐柔」「自治体カネ縛り」といった電力権力の構造までメスを入れない限り、ことの本質を変えることはできない。


 フクシマの事故は、制御不能にまで肥大化した電力支配の膿が、ついに噴き出した事件なのだ。人災ともいえる原発事故は、われわれに対して「核エネルギーを扱える社会なのか」と投げかけられた厳しい警告だった。

 防潮堤を高くしたり、自家発電装置を高いところに置くなど小手先の手当で済む問題ではない。行政・経済システム、学術やメディアの在り方が問われたのである。

 再稼働3条件は、膿が出た傷口をふさぐだけのもので、電力支配の構造を温存するものというしかない。

 それも「再稼働を急げ」という応急処置で、電力会社がこれからなすべき安全対策を箇条書きしただけのお粗末なもので、再稼働にお墨付きを与える小道具にすぎない。こうした官業癒着を改めることがフクシマの教訓ではなかったか。

 東京電力はうわべだけはしおらしくしている。だが、電力料金の値上げが「権利だ」と言ってみたり、4月からの大口料金の詐欺的値上げ強要など、オレ様的な振る舞いが抜けていない。意を体して働く電力議員はいまも健在だし、エネルギー庁や原子力保安院の手綱は握ったままだ。電力支配は微動だにしていないのだ。枝野経産相は内心はともかく、そうした官業癒着構造の上で仕事をしている。

「フクシマの嘘」が描いているのは、不都合な真実を隠し政治まで操る電力権力が日本にあり、その結果大変な悲劇が起きてしまった、ということだ。これは日本だけでの問題ではないだろう。

 例えば、中国で高速鉄道の大事故が起きた。原因究明もしないまま車両を埋めてしまった。中国はなんてことをするのか、度し難い非民主国、と多くの日本人は呆れた。では、フクシマの悲劇はどうなのか。中国のやり方を笑えるだろうか。その自覚がないとすれば、中国より悲惨かも知れない。

  最も危険なのが「4号機」1300本超の使用済み燃料が残る

「フクシマ」は最悪の事態を脱した、と多くの人は思っている。放射能汚染は広がっているが、原発はなんとか制御可能な状態になり、これから収束に向かう、と。

 だが、これには「幸運に恵まれれば」という但し書きがつく。損傷した施設に大量の核燃料が残り、取り出すことさえできない。地震などで施設が壊れれば、昨年3月を上回る事故が起きる可能性があるのだ。

 最も危険なのが「4号機」である。大きな爆発を起こし、放射性物質を大量に噴出させたのは1号機と3号機。4号機の爆発は建屋の下のほうで、鉄骨が剥き出しになるような惨状にはなっていない。だが4号機の原子炉の上には1300本を超える使用済み燃料が貯蔵されている。水を貯めたプールの中に入っているが、水が漏れている。

「フクシマの嘘」の中で、案内役の社長は「燃料プールは4階にある。建屋は爆発でかなり損傷している。運搬用の重機も一緒にあり、また地震が起きたら崩れてしまう可能性が高い」と指摘している。

 4号機問題は、京大の小出裕章助教もかねてから問題にしていた。使用済みの核燃料棒は、崩壊熱により芯は2700度の高温だ。水で冷やして安定を保っているが、プールが壊れれば落下して剥き出しになる。1300本という大量の燃料棒が溶けたら、1・3号炉併せた倍以上の放射性物質が発生する恐れがある、と専門家はいう。

 原発が爆発した後、菅政権は最悪の事態を想定した。爆発が連鎖し高濃度の汚染で施設に近づけなくなったら首都圏3000万人の避難が必要、と推定された。この時、大きな汚染要因とされたのが4号機の使用済み燃料棒だった。

 それがまだ危うい状況にある。余震が頻発し地震学者は原発近くで大きな余震が起こる可能性が高い、と指摘する。壊れかけたまま修復もままならない建屋の上部に大量の燃料棒がある。落下したら……。また地獄だ。避難区域はもっと大きくなるだろう。首都さえ危うい。

 そんな危機が目の前にあるのに、野田首相は「収束宣言」を発し、再稼働に突き進もうとしている。

 解散だ、消費税だ、やれ大連立だ、と政界は騒がしい。世間の関心を意図的に反らしているのではないか、とさえ思える。

 夏の電力不足の数字がまた出てきた。それがどの程度のものなのか。何万年もの後まで被害の爪痕を引きずり、国土を失い、人々の暮らしを崩壊させる。社会の安定を脅かす重大事から目を背けるとしたら、それは犯罪的だ。

 フクシマの悲劇はなぜ起きた。いまの世代が真っ先に取り組むべき課題を、われわれは外国の放送局に問いかけられている。
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