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もうすぐ北風が強くなる

頓珍漢な法人税引下げと泥縄対策

 米倉某の率いる経団連と空缶政権が、また馬鹿な政策を言い出している。
 どちらも、一国の経済などまるで考えずに、頭の中には自分たちの個別利害のみしかないと言う異様さだ。
 責任あるはずの者たちが、社会全体のことなど誰も考えないと言う、不思議の国だ。

 デフレと経済政策については「民間給与5%減」、「世界で日本のみデフレ」、「公務員叩きとデフレ政策」を御覧ください。
 「英国の歳出削減」に続き、 三橋貴明氏から引用します。
 なお、三橋氏の文中で「法人税は7割が払っていない」とありますが、正しくは上場企業の7割です。
 中小・零細企業には何のご利益もありません。恩恵を受けるのは莫大な内部留保を貯めこむ、ほんのひとつまみの巨大企業だけなのです。

法人税引き下げと泥縄式対策
2010/12/21 (火) 14:02

 極東のある地域に、デフレ下にも関わらず、消費税などの増税を強行しようとする奇妙な国が実在している。しかも、97年に一度「デフレ下の消費税アップ」他、緊縮財政を実施し、その後のデフレ深刻化を決定的にしたにも関わらず、再び同じことをしようとしているのである。

 賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶという。だが、歴史からも経験からも学べない愚者については、果たして何と評価するべきだろうか。

 そもそも、消費税などを増税する目的が「財政健全化」なわけであるから、もはや笑い話にしかならない。なぜならば、全く同じ目的で97年に消費税をアップした結果、却って税収減を招いてしまったためである。確かに、消費税自体は増えたのだが(税率が3%から5%にアップされた以上、当たり前だ)、それ以上に所得税と法人税が減少し、全体の税収が減ってしまったのだ。

 消費税は、当然のことながら国家経済のフロー(GDP)に悪影響を与える。具体的には、個人消費と民間住宅投資である。個人消費や民間住宅投資とは、企業にとって「内需」そのものである。内需が低迷した結果、企業の設備投資も縮小し、全体的な税収減を招いてしまったわけだ。

 税収が減ると、当たり前の話として財政は却って悪化する。
 およそこの世界が始まって以来、デフレ下の緊縮財政で「財政健全化」を成し遂げた国など存在しない。逆の言い方をすれば、財政健全化とは経済成長によってしか達成できないのである。

 たとえば、一時は政府の負債がGNPの三倍近くにまで拡大した、かつてのイギリスは、淡々と経済成長することで「政府負債対GNP比率」を改善していった。しかも、数年で実現したわけではなく、五十年、六十年という期間を費やし、比率を少しずつ下げていったのだ。別に、国家には寿命があるわけでも何でもないので、それで構わないわけである。

 また、これまたイギリスの例になるが、サッチャー政権時代の好景気の時期に、政府の税収に「余り」が生じたことがある(随分と羨ましい話だ)。すなわち、使いどころが見当たらない税収が、政府の手元に残ったわけだ。結果、サッチャー政権は余った税金を国債償還(=政府の負債返済)に充てた。念のため書いておくが、サッチャー政権期に税収に余剰が生じたのは、別にデフレ下で増税したためではない(増税は景気を冷やし、税収をむしろ減らす)。単純に、景気が良くなり、税収が増えただけの話である。

 好景気で税収が余り、政府の負債を返済するというのであれば、まだしも話は分かる(というか、むしろ普通の政策だ)。ところが、極東のある島国では、「政府の負債を返済するために、増税する」と主張する人が絶えないのだ。この手の人々は、国債や国債償還に関する過去の事例について、少しでも調べたのだろうか。デフレ下で増税により財政健全化を達成した国など、未だかつて存在したことがない。なぜならば、デフレ下で増税をすると、単純に国家経済のフロー(GDP)に打撃を与え、税収をますます減らしてしまうためだ。

 イギリスの例からも分かるように、経済が成長し、名目GDPが健全に拡大していってこそ、財政は健全化できる。というよりも、経済成長率が高まり、インフレが加速するような局面を迎えたならば、むしろ財政健全化を「インフレ対策」として率先して行うべきだ。財政健全化とは、要するに緊縮財政である。政府の支出を切り詰め、増税をする。国家経済のフローでいえば、個人消費や民間住宅を増税により抑えつけ、公共投資などの政府支出を削っていく。結果、国内の需要が縮小することで、インフレ率は改善(低下)していくことになる。

 例えば、現在の日本でインフレが加速しているのであれば、筆者としても、「消費税を上げろ! 公共投資を削れ! 財政健全化だ!」 と、叫ぶことになるだろう。
 しかし、現実の日本はデフレなのだ。

 供給能力が需要に追い付かず、物価が上昇している局面であるならばともかく、現在の日本は真逆の環境下にある。すなわち、需要(=GDP)に対して供給能力が大きすぎ、物価が継続的に下落していってしまっているわけだ。そんな状況で、増税(=GDP上の民間の支出を削り取る)や公共投資削減(=GDP上の公的固定資本形成を削り取る)を強行して、一体何をしたいのだろうか。需要不足の環境において、需要を削り取ることを続けても、デフレは悪化する一方である。

 また、我が国ではデフレ環境下にありながら、「規制緩和」などのインフレ対策を叫ぶ人が絶えないわけであるから、こちらも困った話だ。規制緩和にせよ、民営化にせよ、あるいは生産性の向上にせよ、全ては「供給能力を高める」ことを目的としたインフレ対策である。需要不足のデフレ環境下で供給能力を高めてしまうと、デフレはますます深刻化してしまう。

 結局のところ、日本経済が抱える問題は、多くの経済学者や「識者」と自称する人々が、「デフレ環境下でインフレ対策を叫び続けている」ことに原因があるのだ。筆者は別に財政健全化や規制緩和に、絶対的に反対しているわけではない。単に、これらの対策は「インフレ対策」であって、デフレ下では逆効果になると言っているだけだ。

 戦後の経済学は、基本的に「インフレ対策」が主流であった。インフレ環境が継続的に続く中、経済学は未曾有の発展を遂げたわけである。
 それはそれとして、現在の日本はデフレだ。デフレ環境下にある以上、インフレ下で発展した経済学は、箪笥の中に仕舞っておかねばならないのである。日本がデフレを脱却し、インフレが加速し始めたら、それらを箪笥の中から取り出せばいいだけの話だ。

 ところが、現実にはデフレ環境下でインフレ対策を叫ぶ人が後を絶たない。そろそろ「困ったものである」では済まない話になってきた。

 さて、現在の日本の民主党政権をの中心に位置する人々は、基本的なマクロ経済について全く理解していない。何しろ、財務大臣時代に国会で「乗数効果」を知らないことを暴露された人物が、首相の座についているのである。

 民主党政権は、マクロ経済を知らない割に、人気取りや「支持率アップ」のためならば、突発的におかしな対策を取ろうとする。その代表的なものが、突如、話が浮上した「法人税5パーセント引き下げ」である。

『2010年2月13日 NHK「首相 法人税5%引き下げ指示」
 菅総理大臣は13日夜、記者団に対し、来年度の税制改正の焦点となっている法人税率について、地方分をあわせた実効税率を5%引き下げるよう、野田財務大臣らに指示したことを明らかにしました。
 この中で菅総理大臣は「先ほど、玄葉国家戦略担当大臣と野田財務大臣が、法人税を3%引き下げるか、5%引き下げるか、最終的な判断を決めてくれと求めてきた。企業が海外に出て行き、雇用が失われることは、日本経済や雇用に決してプラスではない」と述べました。そのうえで菅総理大臣は「ここは思い切って法人税を5%下げ、経済界は国内に投資し、雇用を拡大し、さらには給料を増やす。それによって景気を引き上げ、成長を促し、デフレを脱却する。そういう方向に積極的に使えるように、法人税を5%引き下げる方向で調整するよう両大臣に指示した」と述べ、来年度の税制改正の焦点となっている法人税率について、地方分をあわせた実効税率を5%引き下げるよう、野田財務大臣らに指示したことを明らかにしました。(後略)』

 デフレの深刻化を受け、現在、日本の法人企業の70%は赤字になっており、法人税をほとんど支払っていない。すなわち、仕事が無くて困っている中小企業に対しては、法人税減税は何の恩恵も無いのである。

 そもそも、日本の国内経済の問題は、需要不足から生じるデフレ不況により、黒字法人が少なくなってしまっていることだ。根本的な問題には手をつけず、法人税を全体的に引き下げても、黒字企業の内部留保を増やすだけの結果に終わる。すなわち、またもや「過剰貯蓄(預金超過)」の拡大である。

 図81-1 日本の銀行の貸出金・実質預金・預金超過額の推移(単位:十億円)
 20101222_02.png
 出典:日本銀行 金融経済統計月報
※預金超過額=実質預金-貸出金と定義

 現在、日本の銀行の貸出残高は、11ヶ月連続で減少している。その裏で、実質預金(銀行にとっては借入金)は増え続け、日本の家計の現預金残高は、ついに800兆円という、人類前代未聞の規模に達してしまった。

 また、銀行の貸出態度DIを見た場合、少なくとも大企業や中堅企業に対してはプラスになっている。(中小企業については、ぎりぎりマイナス)そうである以上、現在の日本国内は、明らかに資金需要不足に陥っている。貸し出し態度DIがプラス、すなわち銀行側が「お金を貸したくて堪らない」環境下にありながら、貸出金が減り続けているわけだ。
 根っこの問題である需要不足に手をつけず、法人税引き下げで「政府から黒字企業への贈与」を行うなど、一体何を考えているのやら、さっぱりわからない。

 無論、民主党政権がビジョンやグランドデザイン、成長戦略を示した上で、重点分野に「投資減税」をするというのであれば、反対はしない。現在の日本にとっては、グランドデザインに基づく公共投資拡大と、的を絞った投資減税こそが、最も適切なソリューションなのである。

 ところが、民主党政権がやることは、「子ども手当」や「農家戸別所得補償制度」同様に、またまた「政府から民間への贈与」というわけだ。

 要するに、この手の政策は、あまり知恵を絞る必要が無いため、やりやすいのだろう。何しろ、対象が建前上は「全法人」になるため、「一部の企業だけが潤うだけだ!」などという批判はやりにくくなる。とはいえ、現実に黒字企業が三割でしかない以上、「一部の企業だけが潤う」ことは間違いないわけだが。

 菅直人首相は「経済界は国内に投資し、雇用を拡大し、さらには給料を増やす」などと言っているが、それができるならば、初めから苦労はしない。何しろ、政府は民間に「法人税減税分は、雇用を増やすか、投資をせよ!」などと命令することはできないのだ。

 現在の民主党政権は、マクロ経済の知識に加え、「全体を見る視線」が完璧に欠落している。結果的に、却って逆効果の政策ばかりが浮上してくることになるわけだ。
 法人税減税による税収減は、結局のところ国債発行で補うことになるだろう。政府が民間から借金し、民間企業に贈与するというわけだ。民間企業の内部留保増大を、負債増で支援して上げるなど、随分と気前がいい政府である。

 などと考えていたら、法人税5パーセント引き下げが報道された翌日、度肝を抜かれるようなニュースが流れた。

『2010年12月15日 毎日新聞「法人税:5%引き下げ 内部留保に課税も 政府検討、企業側をけん制」

 菅直人首相が法人税率の5%引き下げを指示したのを受け、政府税制調査会は14日、企業の内部留保に対する課税の検討に着手した。政府は減税分を雇用や国内投資に回すよう経済界に求めているが、税調メンバーらは減税分が「内部留保に回るだけ」と懸念しており、そうならないよう企業側をけん制する狙いがある。16日に閣議決定する11年度税制改正大綱には盛り込まないものの、来年度に法人税減税の雇用・投資効果がみられなければ12年度からの導入を検討する構えだ。(中略)

 政府税調メンバーの一人は「法人税減税の結果、雇用に変化がなければ本当に(内部留保課税を)やる。そうした姿勢を見せることが大事だ」と話す。』 


 唖然、としか言いようがない。企業の金融資産というストックに課税するなど、一体いつから日本は共産主義国家になったのであろうか。上記の企業の内部留保への課税は、ほとんど民間の私有財産を否定したも同然だ。

 結局のところ、民主党政権は全てが「泥縄式」であり、政権担当能力が全くないことがこの一件を見るだけでも分かる。泥棒を捕らえてから、慌てて縄を綯う(なう)という始末、何かをやる際に、先のことを全く予想しようとはしないのだ。

 そもそも、
「法人税を引き下げると、三割の黒字組の内部留保に回る。なぜなら、国内に資金需要がないため」
 というのは、少し考えれば誰でも分かる話である。

 それを踏まえた上で、法人税を引き下げるというであれば、それなりの対策を用意しておかなければならない。が、現実の民主党政権は、法人税引き下げを発表した後に、
「法人税を引き下げても、内部留保に回るだけだ!」
との批判を浴び、慌てて「内部留保に課税」と言い出したわけである。

 何と言うべきか、突っ込みどころが多過ぎ、筆者もいい加減に疲れてきた。ここまで泥縄式対策を繰り返す政権というのは、世界の歴史を見ても、さすがに例がないのではないだろうか。
(引用終わり)

追記
話は全く変わるのですが。
漢字変換で「とんちんかん」が一発で「頓珍漢」と出るのですね。
長年にわたって、「とんちんかん」は平仮名と思っていましたよ。
.................こいつはやはり、言語感覚が変わりますね。
もう、既に私自身変わってるみたいですものね。
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