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通貨戦争(72)人民元、国際通貨基軸通貨への長期戦略

人民元

   宿輪ゼミLIVE 人民元の基軸通貨化を進める中国の狙いを教えてください  2015/3/4 宿輪純一 ダイヤモンド・オンライン

  そもそも基軸通貨になるメリットはどこにあるのでしょうか?

 実は「基軸通貨」には明確な定義はなく、「主たる国際通貨」を意味します。
 国際通貨とは、国際的な取引・決済に使われる通貨のことです。
 海外との取引(外国為替)の取引で問題なのは、為替レートが動くことです。企業は先物予約などを使って、リスクをヘッジしています。
 それが国際通貨・基軸通貨になると、自国の通貨がそのまま使えて、取引がとても楽(為替変動リスクがゼロ)になります。

 さらに本当のメリットは、国、特に通貨当局(中央銀行・財務省)にとってのものです。
 マクロ経済において、たとえば貿易赤字を刷った自国通貨で払うことが可能になり、赤字の穴埋めができるのです。これはもちろんお札でなくても同様で、このメリットは大きいのです。
 米国のドル、特にドル紙幣は100ドル札や50ドル札が国内で使えないことからも分かるように、輸出、つまり海外に支払われます

 しかも、国内の通貨の増刷と違って、国内がインフレになりにくい。
 さらに、海外で保持されるドルは、預金されたままだと収益性が低いので、米国債が買われる
ことになります。
 この構図は中国と米国の現在の関係でもあり、中国は外貨準備においてドルと米国債を約4兆ドル保有しています。

  なぜ中国は人民元を基軸通貨にしたいのでしょうか?

 2008年のリーマンショックは米国発の金融危機で、ドルも盤石でないことを示しました。
 現在、中国は世界第2位の経済大国となり、約4兆ドルという世界一位の外貨準備を保有していますが、その多くがドル建てです。
 そのため、ドルの不安定さと下落は死活問題でした。

 2009年のG20金融サミットで中国は「IMF・世銀改革」を訴えました。
 事前に周小川人民銀行総裁は「国際通貨制度改革」に関する論文を公表し、一国の通貨ドルに依存する経済体制は危険で、せめて世界を代表する通貨としてIMFの通貨SDR(Special Drawing Rights:特別引き出し権:ドル・ユーロ・ポンド・円から構成)を示し、そこに人民元も加えるように求めました。
 しかし、米国の反対で実現せず、それならば、と、本件をきっかけに通貨政策・国際金融政策を反転させ、自ら非ドル圏・中国経済圏の確立に向かい、「30年計画」で人民元をドル・ユーロに並ぶ国際通貨、そして基軸通貨にすべく動き出しました

  中国はどのような手法で人民元の国際化・基軸通貨化を進めているのですか?

 中国は他国の経済政策を学び極めて巧みに、貿易、オフショア化、決済銀行、資本規制、スワップ協定等様々な手法で進めています。具体的には以下の通りです。

(1)貿易決済

 人民元建ての貿易決済は認められていませんでしたが、人民元の国際化のため、2009年7月に試験的に貿易における人民元建て決済が導入されました。
 香港・マカオやASEAN諸国も対象地域とされ、中国5都市(上海市、広州市、深?市、珠海市、東莞市)の中国パイロット企業との貿易取引に限るという条件でした。

 その後、人民元建て貿易決済の規制緩和が発表され、対象範囲は、中国の12省、4自治区、4直轄市と全世界との貿易取引にまで拡大されました。
 また、輸出はパイロット企業限定が続くものの、輸入は国内対象地域内の外国企業を含むあらゆる企業に解禁されました。
 2011年には元建て貿易を中国全土で認めるなど決済通貨としての元の利便性の向上に努めています。

(2)オフショア人民元

 中国は、日本の円の国際化のスキーム(JOM:Japan Offshore Market)を学び、戦略として、日本同様「双軌制」を採用しています。
 「中国国内の人民元(CNY:Chinese Yen)」は厳重に管理し、「オフショア人民元(CNH:Chinese Hong Kong:香港がその中心地のため)」で斬新的に自由化を進めています。

(3)決済銀行

 これまで、中国人民銀行(中央銀行)はオフショア人民元の取引を、民間銀行である中国銀行(Bank of China)香港支店に集中させてきましたが、最近では、世界各地で決済ハブ機能を担うのは中国の四大国有銀行で、都市ごとに分担して行っています。

 当初は、香港・台湾・シンガポール・マカオなどの中華圏に限られていましたが、タイ、マレーシア、オーストラリア、韓国のアジア太平洋地区に加え、ドイツ、フランス、イギリス、ルクセンブルクの欧州に加え、中東のカタールにも広げています(中国と欧州は伝統的に関係が深い傾向があります)。
(※ カナダが加わる。)

(4)資本規制

 中国本土以外で人民元建債券(点心債)の発行が可能になり、ルクセンブルクも人民元建ての起債を開始しました。
 また、韓国ウリィ銀行も韓国初の人民元建て債券 を発行しました。

 中国政府は外国人が貿易の代金などとして受け取った人民元を、中国国内の株式や債券などの資本取引に回ることを原則として認めていません
 “例外処置”として「適格外国人機関投資家(QFII:Qualified Foreign Institutional Investors)」と「人民元適格外国人機関投資家(RQFII:RMB Qualified Foreign Institutional Investors)」の両資格制度があります。

 いずれも中国政府が香港を含む域外の機関投資家を個別に認定する仕組みです。
 QFIIは約10年前の導入で、米ドルベースで投資枠を与え、その枠内で人民元に両替し、上海上場の人民元建てのA株などに投資できます。
 RQFIIはその人民元版。個別に認可を受けた機関投資家が人民元建てで中国国内の資本市場に投資できます。
 RQFIIの対象はかつては香港だけであったが、シンガポールと英国等にも対象を広げています。

(5)通貨スワップ協定

 上記のようにモノの貿易面だけでなく、資金面でも国際化が進み、相手国が人民元での決済ができるようにする通貨スワップ(交換)協定を世界23カ国の通貨当局と締結しています。

 2008年 韓国  
 2009年 香港、マレーシア、ベラルーシ、インドネシア、アルゼンチン  
 2010年 アイスランド、シンガポール 
 2011年 ニュージーランド、ウズベキスタン、モンゴル、カザフスタン、タイ、パキスタン 
 2012年 アラブ首長国連合、トルコ、オーストラリア、ブラジル、ウクライナ、インド    
 2013年 英国、ECB 
 2014年 ロシア (南アフリカ交渉中)

 特にアジア地区が多いのですが、域外ではブラジルとアルゼンチン、アラブ首長国連合、西側諸国でも英国、ECB、特に韓国、オーストラリア、ニュージーランド、との協定は注目に値します。

 BRICSやAIIB(アジア・インフラ投資銀行)関係の国々とも、このスワップ協定を関係強化のために使っています。
 2014年には、AIIBに参加するモンゴルとの通貨スワップの枠を現在よりも5割多い150億元(約2500億円)に広げることで同意しました。

  中国が主導するアジア・インフラ投資銀行(AIIB)が最近、急拡大しているようですが?

 2014年にブラジルで開催された新興5ヵ国首脳会議は、1944年のブレトンウッズ会議から70年目に当たります。
 ブレトンウッズ会議はIMFと世界銀行(World Bank)の創設を決めましたが、今回BRICS首脳会議は「新開発銀行」と「緊急時外貨準備基金」の創設で合意しました。
 今回のBRICSの構想をブレトンウッズ体制への重要な問題提起となっており、国際通貨制度におけるドルの役割を見直す契機となっています。

 中国やロシアなどの新興5ヵ国によって「BRICS開発銀行(新開発銀行)」の創設が決まりました。
 本部は中国・上海で、トップはインド。
 これは「新興国の世界銀行」の位置づけです。同時に金融危機の際に資金を融通し合う総額1000億ドル(約10兆円)の外貨準備の共同基金も設けます。
 これは「新興国のIMF(世界通貨基金)」に相当します。IMF、世界銀行、さらにアジア開発銀行は米国や日本が作った国際金融秩序でした。
 BRICSの経済規模は世界の2割超を占めます。

 このBRICS開発銀行を通じて、アフリカ・中南米等の支援を進めるのでしょう。
 均等出資する5ヵ国の思惑が食い違う可能性もあり、アジアでは別途「アジア・インフラ投資銀行(AIIB:Asian Infrastructure Investment Bank)を準備する2段構えとなっています。
 中国の影響力の強い非米国・脱米ドルの経済圏形成への思惑が感じられます。
 通貨も含めた経済圏を作る可能性も高いのです。

 AIIBは本部を北京とし、2015年末までの設立を決めています。
 資本金は500億ドル。設立覚書に署名した21ヵ国は、ASEAN(カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、インドネシア)、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラディシュ、モンゴル、ウズベキスタン、オマーン、カザフスタン、カタール、クウェート。さらに、モルディブ、ニュージーランド、サウジアラビア、タジクスタン、が参加して、26ヵ国になりました。これは「中国型マーシャルプラン」ともいうことができます。
(※ 現在57か国。)

 こうした中国の動きは欧米の通貨・国際金融体制を揺るがしはじめています。
 実際、これらの「踏み絵」によって、欧米サイドとみられていたニュージーランドはこの体系にすでに組み込まれており、さらに韓国とオーストラリアも中国の枠組みに参加し始めていますが、米国の反対にあってAIIBには参加できませんでした。
 (※ 3月末までには各国とも参加した。参加しなかったのは米国のほかは日本、カナダ、メキシコ、アルゼンチン。)
 これらの国は貿易などで深い経済関係(貿易相手国1位)があることがその主因です。

 経済成長を続けるアジア新興国では毎年8000億ドルのインフラ整備資金が必要とみられています。
 国際機関としてはアジア開発銀行(ADB)があり、実は中国は日米に続く第3位の出資国でもあるが、インドと並んで最大級の借り手でもあります。

 このように中国の通貨政策・国際金融政策はかなり“戦略的”なのです。
 一方、円・人民元の直接取引は低水準にとどまっていますし、
 「円の国際化」政策も最近は聞きません。
 ーーーーーーーーーーーーーーー
※ 中国人観光客のマナーには困ったものだが、うらはらに中国中央政府は極めて賢明かつ戦略的である。
 19世紀の初めまで世界の超大国であった中国だが、160年を経て復活し始めたと見るなら、国際通貨どころか基軸通貨を戦略目標としていてもおかしくはない。
 歴史的には紙幣の流通も地域基軸通貨も経験済みの中国大陸である。
 ユーロ圏の4倍を超える14億の人口と生産力は世界を圧倒する。

 
 
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通貨戦争(71)人民元はアジアの主要通貨になる

 ドル人民元

   人民元がアジアの主要決済通貨になる日も近い!?  5/8 細谷 元  ダイヤモンド・オンライン

アジア域内における取引で人民元が主要取引通貨の一つとなる可能性がある。
香港上海銀行(HSBC)がこのほどまとめた報告書によると、アジア市場、とりわけ香港、台湾、シンガポールでの人民元決済貿易が増えるという。
アジア域内における人民元の動向から、アジアにおけるオフショア人民元の現状と今後の展望をご紹介しよう。

  人民元利用を促進するマレーシアとシンガポール

 2015年4月15日、マレーシア政府は首都クアラルンプールに、中国人民元決済銀行業務を担う中国銀行を設置した。
 これまでマレーシア・リンギを人民元に替えるには一度米ドルに替える必要があったが、人民元決済銀行が開設されたことで、リンギから直接、人民元に替えることが可能になった。

 決済コストを低減することに加え、流動性リスクを減らすことが狙いと言われている。
 また同日、マレーシアの格安航空会社(LCC)エアアジアは、銀行間カード決済サービスを提供する中国銀聯(ユニオンペイ)との提携を発表した。
 これにより航空券を人民元で決済することが可能になるという。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)での人民元決済銀行開設はシンガポールに次いで2ヵ国目となる。

 シンガポールが人民元決済銀行を設置したのは13年5月。
 その後、同国におけるオフショア人民元の取扱量は急増し、14年4月時点で中国と香港を除いた人民元取扱量が、英国を抜いて世界1位(スウィフト調べ)になった。
 さらに同国では、シンガポール取引所(SGX)が15年4月、人民元建て金融商品の拡充で、中国銀行(BOC)との提携を発表している。

 こうした諸事実を並べて分かることは、アジアにおける主要取引通貨として中国人民元の重要性が高まっているということだ。

 実際、英金融大手のHSBCはこのほど発表した報告で、アジア市場での人民元建て貿易決済が拡大する見込みが大きいと指摘している。
 この報告によると、人民元建て貿易決済は2020年までに中国の貿易総額の50%を超えるという。
 ちなみに2014年は22%だった。

  世界の金融ハブ・英シティーも人民元拡大を狙う?

 人民元の利用が増加している背景には、世界の金融ハブである英シティーが人民元利用を促進しようとする取り組みが見え隠れする。
 14年4月27日、シンガポール銀行協会とロンドン中心の自治都市「シティ・オブ・ロンドン」は、非公開で人民元利用促進のための会合をシンガポールで開催した。

 この会合は非公開のため詳細を知る術はないが、共同声明で発表された内容が今後の人民元の動向を示唆している。
 それは、人民元が投資通貨としてだけでなく、今後は外貨準備通貨として利用されるというものだ。
 これは、現在の主要準備通貨は米ドルだが、それに人民元が加わっていくことを意味する。

 15年4月17日には、英国のオズボーン財務相が将来的に国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元を加えることを支持する姿勢を表明。
 英国が人民元の国際化を後押しすることを明確に示すものとなった。

 最近、日本が参加の見送りを表明したことで話題となった中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と、新シルクロード(一帯一路)構想もアジア域内での人民元の普及を促進する要因になりそうだ。

AIIBの登記資本金は一応、米ドルとなっているが、専門家らは実際のオペレーションでは人民元が決済通貨として利用されると見ている。

 中国中央テレビなどが公表した一帯一路構想ルートによれば、陸上では①中国-タイ-南アジア、②中国-中央アジア-ロシア-欧州、③中国-中央アジア-西アジア-地中海の3ルートが示された。
 海上では①中国-南シナ海-南太平洋、②中国-南シナ海-インド洋-欧州の2ルートが明らかになった。

 中国政府は、AIIBを通じて、この経路沿いのインフラ開発を実施する計画だ。
 これらのインフラプロジェクトでは膨大な額の資金が動く。
 もし、こうしたプロジェクトの決済が人民元で行われた場合、人民元の流通は瞬く間に拡大する


 例えば、中国がこのほどパキスタンと合意した「中パ経済回廊」構想では、当初約460億米ドル(約5.5兆円)相当の資金が動く。
 このインフラプロジェクトでは、パキスタン南西部グワダルから中国新疆ウイグル自治区までの約3000キロにわたり道路や鉄道を敷設する。
 さらには、太陽光発電所の建設や光ファイバーケーブル
の設置を行う。

 東南アジアのフロンティアであるミャンマーも一帯一路構想の一環で実施される「バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊」の枠組みにおいて、インフラ支援や農業、電力、金融分野での協力に意欲を示したと言われている。
 このようなインフラプロジェクトの需要は東南アジアだけではなく、中央アジア、西アジア、中東で高く、今後も増えると考えられる。

 このように中国の一帯一路構想とAIIBが連携することで、近い将来アジア域内に人民元が流通する可能性が大いにある。
 アジア展開を目指す日本企業は取引通貨として人民元を利用する準備をする必要があるだろう。
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