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もうすぐ北風が強くなる

無視され踏みにじられる国会と憲法

 国会議事堂

   「国会はいらない」安倍政権  5/1  山田厚史

今回の日米首脳会談の核心は、日本で議論もされていないことをアメリカに約束したことだ。「日本の国柄」を根底から変える決定を国民や議会に諮ることなく、安倍首相はオバマ大統領に表明した。

自衛隊の任務を根底から変える日米安全保障ガイドラインが18年ぶりに変更された。
アメリカが世界で展開する戦争に協力できるようになる。

  ◆本末転倒の異常事態

「国民に相談もなく」というと、「そんなことはない。連日新聞が伝えている」とか「与党会議の内容はオープンにされている」という人がいる。
それは政府・与党の内輪の話し合いでしかない。

国の針路を決めるのは国会と決められている。
自衛隊が世界で米軍を支援できるようにする重大決定は、主権者の代表である国会に諮り、異論をぶつけ合う十分な議論を経て決めると憲法は定めている

大統領に約束した「米軍との一体行動」は、日本国の法律による裏付けが必要だ。
自衛隊の活動範囲の拡大や、同盟国に武器・弾薬の供給を可能にするには、平和支援法などの法改正は新法の成立が欠かせない。
そんな大事な法改正の手順も踏まずに、首相が訪米して約束するという異常事態を異常と思わない日本の異常さは一体なんだろう。

首相はアメリカから帰国後、連休明けに国会に法案を提出するという。
本末転倒とはこういうことだ。日本は法治国家だろうか。

外国と決めたことを後になって国会に諮る、ということは確かにある。条約など国際交渉がそれだ。
他国と妥協点を探り、合意した内容を「これでいいですか」と議会に諮る、そんなことはよくある。
今回は全く違う。米軍への協力を持ちかけたのは日本側、つまり安倍首相だ。

  ◆国会の立法権を踏みにじった政府

一連の流れを振り返ってみよう。
昨年7月、安倍内閣は集団的自衛権を行使できるように憲法解釈を変えた。
同盟国が攻撃を受けても一緒になって反撃することはできない、日本の憲法でそう決まっている、というのが歴代内閣の解釈だった。
安倍政権はこれを覆し、閣議決定で集団的自衛権が日本にはある、と決めた。
これに伴い、自衛隊活動を制約している法律(安全保障法制)を「規制緩和」する作業が始まった。

防衛省や内閣法制局など政府部内で素案が練られ、自民党と公明党の与党協議で話し合われた。
これはあくまで国会で議論するための準備作業でしかない

日本は戦争をしない国」という国是は、中国侵略から第2次世界大戦に至る戦争の反省に立って決めた国家の指針だった。
この基本方針を変える安全保障法制を決めるのは、国民の代表である国会だ。
国権の最高機関は言うまでもなく国会だ。

首相がアメリカで約束した「米軍のお手伝い体制」は国会で審議さえされていない。
「日米同盟を一変させるものだ」とアメリカが絶賛する「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」は、まず日本で国民に説明がなされ、国会で法律を決め、首脳会談で合意するのが当たり前の手順だろう。

ところがどうだ。首相訪米と併せ岸田外相と中谷防衛相がニューヨークで米国のケリー国務長官、カーター国防長官と会い、「防衛協力の指針」を改定することに合意。
翌日の安倍・オバマ会談で「新時代の同盟」が謳われた。

国会は何をしているのだろう。
民主党の岡田代表が「国民に説明もなく、米国で合意してくるのは前代未聞。国民軽視も甚だしい」と批判した。
しかし「民主党がなにを言っても無力だ」「国会の過半数は自民・公明で占めているから結局は同じ」という声さえある。

それは断じて違う。国会で議論もせず米国に約束したことは与野党対立の問題ではない
政府=行政権が、国会の立法権を踏みにじったのである。
国会の議決が国民の意思、という立憲制度の根幹に関わる問題だ。
衆参の議長が「国会を無視するな」と異議を唱える場面である。

ところがどうだ。衆議院の議長は脳梗塞(こうそく)で体調不良の町村信孝元官房長官。
自民党総裁選挙で安倍との争いに敗れ、あてがいポストとして衆議院議長になっていた。
紛糾が予想される5月の安保国会を前に4月21日、大島理森氏に議長の座を譲り渡した。大島議長は国会対策を得意とする調整型の政治家だ。

国会の現状は、ホームベースを踏むための三塁ベースでしかない。
行政権が決めた方針に従い手順を踏む場でしかない。どう見ても国権の最高機関という言葉がうつろに響く。

  ◆形骸化と空洞化 国会は冷めたピザ

自衛隊を米軍の補助機関にする一連の流れを振り返ると、国会は完全に無視されてきた。
集団的自衛権を容認した憲法解釈は「首相のお友達の集まり」といわれる安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)が意見を具申し、閣議が決めた

本来なら国会が憲法改正を発議し、国民投票にかけて決める重大問題だった。
閣議決定の具体化は国会が決める法律によって定めることになっていた。
ところが防衛省の一部官僚と自民党・公明党で骨格と法案が決まり、日米が水面下で話し合ってガイドラインが変更された。
国会は無視。つまり国民が無視された。

日米首脳会談が報じられた4月29日付の新聞に小渕優子衆議院議員の金銭スキャンダルが報じられた。先代から地盤を相続し、家業の政治家を務める二世議員の陳腐さを物語る事件だった。
「国会議員なんてそんなもの」という世間の冷ややかな視線が政治家に注がれ、「国会は主権在民の砦」という期待は見る影さえない。

迫力に乏しい審議、形骸化した国会、というイメージが先行する中で「国会軽視」が、まさに粛々と進んでいる。
安倍首相は憲法改正をゴールに定めながら、国会発議・国民投票という正攻法に自信が持てない。
憲法解釈や法制度の変更で既成事実を積み上げ、憲法とは異なる現実を着々と築いている。

並行して進むのが「国会の空洞化」だ。大事なことは国会の外で決める。
国会が審議する前に「親分」のアメリカに報告し、超国家の既成事実を作り上げる
国民にとっても日米関係でも「もう終わった」段階で、国会に提案する。国会は冷めたピザか。

日本国の運営は、誰が担おうと憲法の定めで行われるという大原則を安倍政権は無視してきた。
憲法逸脱、国会無視、という重大事態をメディアも騒がない
せいぜい「岡田が批判している」としか書かないメディアは、着実に進む異常事態にならされているのか。

「日米が歩み寄ったのは中国の脅威があるから」といった政府に都合のいい解釈がメディアをにぎわす。
現状はかなり深刻といわざるを得ない。
権力者が国会を無視し、国会も異議を唱えず、メディアは問題にせず。国民も「国会なんて」と冷笑する。
その先に何が待っているのだろう。
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