小沢氏4/7会見「辺野古を決めるのは県民、国民の意思」
2015-04-08

4/7 小沢一郎 代表 記者会見 4/8 「銅のはしご」氏から
玉城 デニー 幹事長
今日は山本太郎代表が別の所用ではずしておりますので小沢一郎代表のみの代表会見となりますので,よろしくお願いいたします。
A社 記者 ; 安倍首相が国会答弁などで述べる「積極的平和主義」と,実際的な平和学で用いられる積極的平和主義 <=積極的に平和の実現を目指す考え方> というの言葉の概念が食い違っているのではないかとネットなどで指摘されている。 小沢代表がお考えになっている積極的平和主義は,安倍首相とどう違うかを。
小沢 一郎 代表
はい。
積極的平和主義という言葉,それを素直にその言葉だけを解釈すれば,わたくしもまったく同感です。
ただ,安倍さんの「積極的平和主義」という言葉の背景には,今 いろいろ言われております集団的自衛権ということも始めといたしまして,日本が独自で,日本の国と直接関わり合いのない最紛争等にもアメリカあるいはその他の国と一緒になって参加していこうと。
こういう考え方だと思いますし,その,彼の心情的背景には,いわゆる戦前回帰と言いますか,国威発揚と言いますか,大国主義的な考え方が背景にあってのことだろうと思いますけれども,わたくし共の言う積極的平和主義とは,まったく別のものであります。
例えばですね,アフガン戦争でもあるいはイラク戦争でも,ブッシュ前大統領は「これはアメリカの戦争である」という言い方をしました。
ということは,アメリカに対して攻撃をした者に対しアメリカが報復して攻撃するということですね。
それはまさにリンチでしかありません。
それが,アメリカ単独であれ,あるいはアメリカと(ともに攻撃に加わる国が)まあ,これからは日本も一緒になるのかどうか分かりませんが,日本であれどの国であれ,特定の国でその個人的なリンチに助っ人する,参加するということは,まさに自分たち自身がリンチを行なうと同じでありまして,
これはまったく,わたくしの言う積極的平和主義と,根本的に,そして論理的に食い違うものであります。
わたくしは,国連中心主義ということを言っておりますが,それは何かと言いますと(国際連合は)世界のほとんどすべての国が参加して理想の地球,世界,平和を目指してつくり上げた組織であります。
その力が,あるいは機能が,十分発揮されていないということは 事実でありますけれども,だからと言ってそれを否定してリンチを行なったのでは (無政府 ・無秩序状態に陥る)。
例えば1つの国の中で見ても「政府が何もしないから俺は直接,犯人をやっつける」ということは許されないことでありますし,非常に基本的な間違いです。
ですから,わたくしは地球国家,地球連邦。
地球全体の平和を守るための国連が,やはり,国際紛争等に直接係わりながら,その解決に努力するということでありませんと,まったく積極的平和主義というものは,意味の違ったものになってしまうと,そのように思います。
今,安倍さんが進めようとしていることは,まさに米国と,あるいはその他の特定の国と国際紛争を解決すると,平和という名の下にリンチをする,少なくても(リンチの)手助けを日本が行なうということになるわけでありまして,わたくしは,それは絶対反対であり,いけないことだと思います。
日本は飽くまでも,世界の国々で構成する国連の大義の下で,秩序の維持,平和の維持,それに積極的に参加すると。
それが日本の取るべき道だと。そのように思っております。
光文社FLASH ; 小沢代表の仰る国連中心主義の下での国際紛争解決の有事活動ですが,仮に将来,日本が参加するとなった場合に,いくら有事活動とは言え危険な状態に陥る,また最悪の場合犠牲者が出ることも考えられる。そうなった場合,世論に対してどのように説明し理解を得ていこうとお考えかを。
小沢 一郎 代表
そりゃあもう,賢明な日本人だから分かるんじゃないですか。
じゃあ,他の国の人が犠牲になるのは構わないけど日本人だけはイヤっつう,そんなバカなことはね,通用しませんし,それじゃあ本当に平和を日本人が求めてるのかどうか,世界各国からもう疑いの目をもって(見られるだけ)。
今でも疑われていますけれども,相手にされなくなるんじゃないでしょうか。
そしてそれは飽くまでも国連の行動ですから。その国連の方針に従って,日本の政府の判断(に従って)ではなくて,国連の方針に従って,参加した自衛隊であれ,あるいはその他の部隊であれ(国連の)指示に従って(活動を)行うと。結果として本格的に参加すれば,犠牲が出るかも知れません。
しかし,その犠牲を恐れていたのでは日本は本当の平和国家として,国際社会の一員としての責任を果たせなくなりますので,それは,いたし方ないことであり,もちろん犠牲者が出ないように万全を期することはもちろんですけれども,
そのことは日本人はきちんと説明すれば分かってくれると思います。
フリージャーナリスト ; 沖縄の問題について 玉城幹事長と小沢代表に伺います。クリントン政権時代に辺野古の移設を主導したジョセフ ・ナイ元国防次官補までが,辺野古の移設を再検討したほうが良いと言っていた。今後仮に,埋め立てを断念に追い込むにはどういう戦術があるか,どういう方法があるかを。
小沢 一郎 代表
ナイさんがそういう趣旨の話しをしたということは,今初めて聞きましたけれども。
去年の会見かな,前に私は言ったけど,国務省の報道官も県民の意思に反してそれを強行する気はないというようなことを言ってるんですよね。
ですから,私は当然の政治判断だと思いますよ。此間の会見のときもアメリカがそれを強行することを決して望んでない,と。
だから,沖縄県民の意思が,そしてそれをバックアップする国民の意思が,はっきりしていれば強制することはできない。
結果として,私はできないと思います。
玉城 デニー 幹事長
わたくしは予てから,沖縄における海兵隊の組織は,その訓練部隊,例えば輸送部隊,地上部隊,それを支えるサポートする兵站部隊,指令部隊はごく一部ですが,それを県外に移しても抑止力が欠けるということはまったく無いというふうに思います。
今,海兵隊を移すと 抑止力に穴が開くというふうな,さも尤もらしい言い方をされていますけれども,実際は,空軍,海軍,具体的に米軍は動いて運用されていますので,そのことをしっかり日本政府がアメリカに強弁すること。
そのためには沖縄とどういうふうに向き合うかということが重要であると思います。
結論から言いますと,沖縄から海兵隊の部隊は県外に暫定で移し,グァムやハワイ,オーストラリア,カリフォルニアに,そのスタンバイができたら,そこに移していっても 何ら問題が無いというふうに思います。
光文社FLASH ; 4月2日,子どもの貧困対策に政府が民間の資金を活用した基金の創設を発表した。日本の子どもの貧困率は16%を超えて過去最悪になっている。 政府の社会保障政策が高齢者中心で,子どもに対してあまり重きが置かれていないと言われるが,小沢代表のお考えを。< 16.3%(2012年) >
小沢 一郎 代表
子どもの貧困率というのは,どういう要素を取ってどのように測ってるのか詳しいこと私は知りませんけれども,要するに所得と雇用の格差がどんどん,どんどん開いてきてると。
それで子どもに対する親の,そういったケアがなかなか行き届かないということが大きな原因じゃないかなというふうに思います。
それからやはり,自由競争,強い者勝ちの政策を取っておりますので,どうしても,そういう方向に,政策の主力が向けられることになります。
だから「地方創生」だっつって,組合始め農業政策を根本的に変えて収入を安定させるんだなんて(安倍政権は)ヘンなこと言ってますけれども,まったく逆で,これは,まったく地方を破壊し,そして農家に壊滅的な打撃を与える。
要するにどんどん,どんどん農地を集めて会社で経営すりゃあ,そんで生産性上がるんじゃないかという,まったくもって無茶苦茶な論理ですから。
すべてそういう類いの発想でやられていることが,やはり一番の原因じゃないかと。
とくに子ども,弱い立場の,保護の必要な立場の人たちですから,そういう意味で,やはり子ども(に目を向け)そして子育てを,きちんとやり易い環境を,親の収入にしろ,あるいは保育園だ幼稚園だという類いのものであれ,あるいは今,育児休暇とかいろんなことも言われてますけれども,そういった類いの充実に目を向けていくということが大事なんじゃないかなと思います。
東京スポーツ ; 今回の統一地方選の争点,テーマをどうご覧になっているかを。
< 統一地方選,投票日4月12日(10知事,5政令市長,41道府県議,17政令市議) .4月26日(政令市以外の89市長,295市議,東京都の11 区長,21区議,122町村長と373町村議)>
小沢 一郎 代表
地方選挙は,どちらかと言うと地域の利害が優先されて争われますから。
この永田町で,国政上で,大きなテーマとなっている問題が直接その地方選挙で議論の対象になるということでは,ないだろうと思います。
わたくしも昨日ちょっと静岡県伊東に行ってまいりましたけれども,やはり一番の問題は地域間の格差。 例えば熱海,伊東なんて言えばもの凄い観光都市なんですけれども,それがどんどん寂れていっていると。
もちろんその他の農業,漁業等も同様です。 ですからこれを,どうやって活性化させるかというような類いの身近な問題が,やはり地方選挙の大きなテーマだと思います。
それからもう1つ,静岡県の場合は,浜岡原発の話しもありました。
地域によって,そういった問題が多少異なるところもあると思いますが,原則としてそういう身の回りの課題がテーマになっているのではないかと,そう思います。
共同通信 ; 他党のことで恐縮ですが,上西小百合議員のことで。
小沢 一郎 代表
あっはっはっは。はははは。
共同通信 ; 上西議員が5日(日)維新の党を除名処分になった。 衆院本会議で予算案が通過した3月13日(金)に欠席した理由は体調が悪いとしていたが,その前日の夜にいくつか会合に出歩いて体調悪化して13日午前中に大阪に帰ってしまった。その結果として本会議に欠席した。これが党のステータスを著しく傷つけたというのが除名の理由だが,どうご覧になっているかを。
また,3月30日(月)午前に,自民党の片山さつき 外交防衛委員会・委員長は,同委理事懇談会に遅刻した。政治家としての資質という問題が相次いでいるが,全体をとおして,どのように小沢代表はご覧になっているかの2点を。
小沢 一郎 代表
上西さんのことはね,個人のことであり,また維新の党の党内の問題ですから,そのことは別にして。 やはり我々は,自由党のときからかな,党議拘束,会派拘束はしないという考え方を取っておりましたから,
まあ現実では,大きな問題では,そうそう異論が出ることはないんですけれども,例えば予算について,あるいはその他の法案について,中には自分は賛成できないとか言う人もいるわね。
そういうときに,反対票を投ずるわけにいかないから欠席するということは1つの意思表示の手段でもあるとは思います。
ただ,今回の場合は<苦笑しつつ>どういう理由だかよく分かりませんけれども しかしいずれにしろ,そういったことは,きちんと(した理由が必要だ)。
とくに総予算(本会議採決)のことでしょ。ですから,そういう大事なものについては<厳しい表情で>自分自身の考え方というものが,はっきりしていればですね,形だけのことで判断する話しではない,というふうに思います。
うぅん,ただまあ総予算はね,イエスかノオかということは 党と一緒であればそれでいいし,党と違った場合にじゃあどういう手段を取るかという問題も1つはあるかと思います。党議拘束がなければね。
あった場合は,ルール違反になっちゃうから,そっちの党内の問題ですけどね。
そういうところの「けじめ」って言いますか,理屈がしっかりしていれば,わたくしは良いんだと思います。
ただまあ,遅刻はね,高速渋滞とか<笑いながら>何とかという話しなら別だけど,そういうことも見越しながら,きちんとやっていくべきだろうと思いますね。
このことで一概に弛んでるということは言えませんけれどもね。
やっぱ,委員長なら委員長の職責を考えて <厳しい表情で> 委員長は理事会を招集し主催するわけですから,例えばね。今の話しで言えば。それは,それなりの委員長としての取るべき行動は,常識的に考えられるべきだと思いますね。
ですからそういう意味で普通の常識として,きちんとやはり自らの責任で行動していくという考え方,習慣を身に付けることが大事だと思います。
光文社FLASH ; 少し気が早い質問になりますが,来るべき総選挙。代表は野党の結集が大事だということを予て仰っているが,その軸として以前書かれた『日本改造計画』の続編を出版されるお考えは,おありかを。
小沢 一郎 代表
うーん,粗方考えは纏めてありますし,やれば出せますけれども,出しても読んでもらわないことにはしょうがないんで。
読んでもらうためには,やはり我々が政権を目指す・獲る,ということでないと,国民の関心は向きませんから。
そういう意味で,まずは政権奪還を目標にしてやっていきたいと思います。本のほうは,そのあとでゆっくり考えて間に合うと思います。<笑顔>
東京スポーツ?光文社FLASH? ; 前回の地方選挙では,保坂展人・世田谷区長が「脱原発」を掲げて当選された。この流れ「脱原発」ということで今回の統一地方選でも何人かが言っているが「脱原発」の広がりをどうご覧になっているかを。
小沢 一郎 代表
地域で原発を抱えているところでは,それは身近な生命 ・生活に関することなので,関心が高くなってると思います。
今,世田谷区っていうお話しですが,東京でそれだけ「脱原発」っていう話しが身近なこととして広がるかどうかということは,ちょっと疑問ですがね。
とくにやっぱり当時者,政府の 「もう原発事故は終わった」 みたいな,いろんな形での環境作りが進んで(原発)再稼働ということを当然のことのように言われてますから,
そういう中で,ちょっと風化してきているのではないかと。
私はそのことを大変危険だと,非常に心配しております。
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ヨーロッパ幻想、シオニズムとネオリベに乗っ取られたフランス
2015-04-08
自由、平等、博愛がスローガンだったはずのフランスだが、社会党政権になってからもさらに新自由主義とグローバリズム、シオニズムが強くなっている。
EU自体の傾向が反映している。
ーーーーーーーーーーーーーーー
認知の歪み ヨーロッパ幻想 ネオリベに乗っ取られたEU(フランス)の劣化 4/7 「街の弁護士日記」から
現代思想3月臨時増刊「総特集:シャルリ・エブド襲撃/イスラム国人質事件の衝撃」は、シャルリーエブド事件について論じられた中で、最も、フランスの実態に迫ったものではないかと思われる。
フランス社会の内部から、さまざまにこの事件を受け止めた人々の論考に、教えられることが多かった。
フランス社会は、想像以上に劣化している。
ヨーロッパ諸国に広がる極右勢力の台頭を見れば、多かれ少なかれ、ヨーロッパ諸国も劣化しているに違いない。
事件後まもなく16才の少年が逮捕された。
問題になったのは、ネットに流したこの画像。

罪名は、テロ扇動罪。
法定刑は、10年以下の拘禁及び15万ユーロ以下の罰金。
この画像は、シャルリーエブドのパロディである。
シャルリーエブドは、コーランを抱えたムハンマドが銃弾に撃たれる風刺画を掲載していた。
一方はイスラム憎悪扇動でもなくイスラム侮辱でもなく、単に風刺であり、,他方はテロ扇動の重罪である。
フランスの表現空間のダブルスタンダードな歪みを示してあまりある。
確実にいえるのは、フランス社会を劣化させた元凶がグローバリズムであることだ。
EUの実験は、その経済政策の実権がグローバルな新自由主義に握られた結果、無残な失敗に終わりつつあるようにみえる。
現代思想3月臨時増刊号で、知ったことや確認したことをいくつか紹介したい。
・フランスにおいてイスラム嫌悪は、一般化している。
エマニュエル・トッドは、「デモクラシー以後」で繰り返し、イスラム恐怖症を、批判的検討の対象にしている。
・シャルリーは、イスラム嫌悪のヘイトである。
フランス内でも、いろいろな意見があるが、僕は、イスラム嫌悪を煽っていたとする意見に共感する。
日本でたとえていえば、嫌韓言説をまきちらす「チャンネルなんちゃら」である。
「チャンネルなんちゃら」が襲撃されれば、犯人は犯罪行為として裁かれなければならない(但し、射殺刑は野蛮である)。
しかし、「私はチャンネルなんちゃら」を合い言葉とするデモは、おかしい。
シャルリー紙が、700万部も売れたことは異常である。
人口比で言えば、日本で嫌韓本が千数百万部売れたのと同じである。
ちなみに事件後のシャルリー紙の発行には、政府の支援があった。
・日本では、リベラルの高級紙として名高い、ルモンド紙は変質した。
今年1月1号の社説で同紙は「よりよい世界。その前提になるのは、まず第一にイスラム国とその盲目的野蛮との戦いの強化である」と論じた。
また、ルモンドは、シャルリー紙のイスラム嫌悪に対する批判の反論に熱心である。
さらに、さかのぼれば、2006年、自由貿易至上主義に対して保護主義の必要性を主張するエマニュエル・トッドが、当時のシラク政権に影響力を及ぼす恰好の機会に恵まれたとき、ルモンド紙はいち早く「選挙がらみの保護主義の嵐」として、3人の経済学者の論文を掲載して、トッドの影響を封じる動きを見せている(藤原書店「デモクラシー以後」)。
つまり、ルモンドの基調は、イスラム嫌悪のグローバルネオリベラリズムとなっている。
・2007年にサルコジは大統領就任直後に、「移民・統合・国民アイデンティティ省」を設置,イスラム嫌悪を制度化した。
家族移民の抑制と労働移民の促進を打ち出した。
家族移民には親子であることのDNA検査を義務づける等、人権侵害的色彩の強い法律である(李秀香「サルコジ政権下における『選択的』移民政策をめぐる論考」ただし、斜め読み)。
・オランド政権はネオリベラリズムを推進している。
新自由主義政策によって生じた格差、貧困、社会的な分裂を緩和することが期待された左派連立政権は、いっそう、ネオリベラル政策を推進し、社会の分裂を深刻化させている。
フランス社会党は、ネオリベ政党である。
2000年代半ばから、社会党の幹部がWTOやIMFの要職に就くようになった。
・オランドの支持率は、海外で武力行使をすると上がる。
オランドの支持率は史上最低であるが、2013年旧植民地マリへの内戦介入、2014年9月にIS空爆に参加することを決定したとき、支持率が上がった。
原子力空母のペルシャ湾派遣でも、支持率が上がった。
イスラム武装勢力に対する戦争政策によって最低限の民衆の支持を取り付けているのが現在のフランス左派政権である。
・オランド政権はシオニズム派である。
2014年7月のイスラエルのガザ侵攻のとき、フランス政府は、いち早く(7月9日)、イスラエルのガザ攻撃を支持した。
フランス社会党がシオニズムに親和的であることは初めて知った。
・デモの禁止が、50年振りに復活し、パレスチナ支援運動や環境保護運動のデモが禁止された。
2014年7月13日、ガザ攻撃に抗議するデモが数万人規模で行われたが、フレームアップにより、警察の介入を招き、7月19日計画された二回目のデモは、内務省通達によって禁止された。
7月26日、デモは再び禁止された。その後も、さまざまにデモが禁止されることが繰り返されるようになった。
デモの不自由な、表現の自由大国とは、なんだろう。
・2012年、テロ対策法制定。
・2014年11月14日、反テロリズム法(テロ対策強化法)が成立した。
中東の内戦に参加するために出国するフランス人を主要な対象とし、身分証明書、パスポートの没収、一定期間の出国禁止措置を可能にした。
したがって、ジャーナリストに対する旅券返納命令は先進国では例をみないかのように論じる我が国の議論はナイーブに過ぎる。
テロ対策法強化で、テロリズムを擁護すると判断されたサイトの閉鎖も可能になった。
・反テロリズム法は、フランスだけでなく欧州委員会の意思が反映したものである。
・反テロ法は、移民だけではなく、グローバリズムに抗して、高まりを見せているエコロジー系運動もテロとして射程に入れている。
完全な悪循環に陥っている。
ネオリベラリズムによって、使い捨ての安価な労働力として移民を受け入れ、その結果、賃金の低下を招き、社会が階層化し、社会統合が失われる。
その責任を移民になすりつけて、「教化」や攻撃の対象とする。
移民対策と称して、弾圧立法が強化され、反ネオリベ・反グローバル運動の弾圧にも活用さあれる。
弾圧立法が、ネオリベ政策の推進の道具とされる。
イタリアでは、トリノの高速鉄道に反対して信号を損壊した青年に懲役20年の判決が出されたとも書かれている。
かくして、トッドが嘆く、アトム化された(バラバラにされた)個人と、ナルシシズムの蔓延、恥じらいのない欲の支配する社会へとどんどん傾斜していく。
こうした社会矛盾に対する対抗勢力として極右が台頭する。
閉塞感と、極右の台頭は、フランスだけでなく、他のEU諸国にも共通しているように見える。
ネオリベに乗っ取られた、EUは失敗しつつある。
日本における報道の自由が極端にゆがめられ、政権与党が極右政党でクーデター的な独裁政治を行っている点では、日本の事態はヨーロッパ以上に深刻なのかも知れない。
しかし、少なくともテロを名目として、表現の自由を拘束する法制度や運用では、フランスやEUの方が日本のはるかに先を行っている。
株価至上主義で、年金資産まで株式市場に放り込む、むちゃくちゃな経済政策を進める安倍政権が、排外的ナショナリズムを高揚させ、共謀罪を含む弾圧法規を必要とし、海外での武力行使に執拗にこだわる様子は、フランスと重なる。
EU自体の傾向が反映している。
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認知の歪み ヨーロッパ幻想 ネオリベに乗っ取られたEU(フランス)の劣化 4/7 「街の弁護士日記」から
現代思想3月臨時増刊「総特集:シャルリ・エブド襲撃/イスラム国人質事件の衝撃」は、シャルリーエブド事件について論じられた中で、最も、フランスの実態に迫ったものではないかと思われる。
フランス社会の内部から、さまざまにこの事件を受け止めた人々の論考に、教えられることが多かった。
フランス社会は、想像以上に劣化している。
ヨーロッパ諸国に広がる極右勢力の台頭を見れば、多かれ少なかれ、ヨーロッパ諸国も劣化しているに違いない。
事件後まもなく16才の少年が逮捕された。
問題になったのは、ネットに流したこの画像。

罪名は、テロ扇動罪。
法定刑は、10年以下の拘禁及び15万ユーロ以下の罰金。
この画像は、シャルリーエブドのパロディである。
シャルリーエブドは、コーランを抱えたムハンマドが銃弾に撃たれる風刺画を掲載していた。
一方はイスラム憎悪扇動でもなくイスラム侮辱でもなく、単に風刺であり、,他方はテロ扇動の重罪である。
フランスの表現空間のダブルスタンダードな歪みを示してあまりある。
確実にいえるのは、フランス社会を劣化させた元凶がグローバリズムであることだ。
EUの実験は、その経済政策の実権がグローバルな新自由主義に握られた結果、無残な失敗に終わりつつあるようにみえる。
現代思想3月臨時増刊号で、知ったことや確認したことをいくつか紹介したい。
・フランスにおいてイスラム嫌悪は、一般化している。
エマニュエル・トッドは、「デモクラシー以後」で繰り返し、イスラム恐怖症を、批判的検討の対象にしている。
・シャルリーは、イスラム嫌悪のヘイトである。
フランス内でも、いろいろな意見があるが、僕は、イスラム嫌悪を煽っていたとする意見に共感する。
日本でたとえていえば、嫌韓言説をまきちらす「チャンネルなんちゃら」である。
「チャンネルなんちゃら」が襲撃されれば、犯人は犯罪行為として裁かれなければならない(但し、射殺刑は野蛮である)。
しかし、「私はチャンネルなんちゃら」を合い言葉とするデモは、おかしい。
シャルリー紙が、700万部も売れたことは異常である。
人口比で言えば、日本で嫌韓本が千数百万部売れたのと同じである。
ちなみに事件後のシャルリー紙の発行には、政府の支援があった。
・日本では、リベラルの高級紙として名高い、ルモンド紙は変質した。
今年1月1号の社説で同紙は「よりよい世界。その前提になるのは、まず第一にイスラム国とその盲目的野蛮との戦いの強化である」と論じた。
また、ルモンドは、シャルリー紙のイスラム嫌悪に対する批判の反論に熱心である。
さらに、さかのぼれば、2006年、自由貿易至上主義に対して保護主義の必要性を主張するエマニュエル・トッドが、当時のシラク政権に影響力を及ぼす恰好の機会に恵まれたとき、ルモンド紙はいち早く「選挙がらみの保護主義の嵐」として、3人の経済学者の論文を掲載して、トッドの影響を封じる動きを見せている(藤原書店「デモクラシー以後」)。
つまり、ルモンドの基調は、イスラム嫌悪のグローバルネオリベラリズムとなっている。
・2007年にサルコジは大統領就任直後に、「移民・統合・国民アイデンティティ省」を設置,イスラム嫌悪を制度化した。
家族移民の抑制と労働移民の促進を打ち出した。
家族移民には親子であることのDNA検査を義務づける等、人権侵害的色彩の強い法律である(李秀香「サルコジ政権下における『選択的』移民政策をめぐる論考」ただし、斜め読み)。
・オランド政権はネオリベラリズムを推進している。
新自由主義政策によって生じた格差、貧困、社会的な分裂を緩和することが期待された左派連立政権は、いっそう、ネオリベラル政策を推進し、社会の分裂を深刻化させている。
フランス社会党は、ネオリベ政党である。
2000年代半ばから、社会党の幹部がWTOやIMFの要職に就くようになった。
・オランドの支持率は、海外で武力行使をすると上がる。
オランドの支持率は史上最低であるが、2013年旧植民地マリへの内戦介入、2014年9月にIS空爆に参加することを決定したとき、支持率が上がった。
原子力空母のペルシャ湾派遣でも、支持率が上がった。
イスラム武装勢力に対する戦争政策によって最低限の民衆の支持を取り付けているのが現在のフランス左派政権である。
・オランド政権はシオニズム派である。
2014年7月のイスラエルのガザ侵攻のとき、フランス政府は、いち早く(7月9日)、イスラエルのガザ攻撃を支持した。
フランス社会党がシオニズムに親和的であることは初めて知った。
・デモの禁止が、50年振りに復活し、パレスチナ支援運動や環境保護運動のデモが禁止された。
2014年7月13日、ガザ攻撃に抗議するデモが数万人規模で行われたが、フレームアップにより、警察の介入を招き、7月19日計画された二回目のデモは、内務省通達によって禁止された。
7月26日、デモは再び禁止された。その後も、さまざまにデモが禁止されることが繰り返されるようになった。
デモの不自由な、表現の自由大国とは、なんだろう。
・2012年、テロ対策法制定。
・2014年11月14日、反テロリズム法(テロ対策強化法)が成立した。
中東の内戦に参加するために出国するフランス人を主要な対象とし、身分証明書、パスポートの没収、一定期間の出国禁止措置を可能にした。
したがって、ジャーナリストに対する旅券返納命令は先進国では例をみないかのように論じる我が国の議論はナイーブに過ぎる。
テロ対策法強化で、テロリズムを擁護すると判断されたサイトの閉鎖も可能になった。
・反テロリズム法は、フランスだけでなく欧州委員会の意思が反映したものである。
・反テロ法は、移民だけではなく、グローバリズムに抗して、高まりを見せているエコロジー系運動もテロとして射程に入れている。
完全な悪循環に陥っている。
ネオリベラリズムによって、使い捨ての安価な労働力として移民を受け入れ、その結果、賃金の低下を招き、社会が階層化し、社会統合が失われる。
その責任を移民になすりつけて、「教化」や攻撃の対象とする。
移民対策と称して、弾圧立法が強化され、反ネオリベ・反グローバル運動の弾圧にも活用さあれる。
弾圧立法が、ネオリベ政策の推進の道具とされる。
イタリアでは、トリノの高速鉄道に反対して信号を損壊した青年に懲役20年の判決が出されたとも書かれている。
かくして、トッドが嘆く、アトム化された(バラバラにされた)個人と、ナルシシズムの蔓延、恥じらいのない欲の支配する社会へとどんどん傾斜していく。
こうした社会矛盾に対する対抗勢力として極右が台頭する。
閉塞感と、極右の台頭は、フランスだけでなく、他のEU諸国にも共通しているように見える。
ネオリベに乗っ取られた、EUは失敗しつつある。
日本における報道の自由が極端にゆがめられ、政権与党が極右政党でクーデター的な独裁政治を行っている点では、日本の事態はヨーロッパ以上に深刻なのかも知れない。
しかし、少なくともテロを名目として、表現の自由を拘束する法制度や運用では、フランスやEUの方が日本のはるかに先を行っている。
株価至上主義で、年金資産まで株式市場に放り込む、むちゃくちゃな経済政策を進める安倍政権が、排外的ナショナリズムを高揚させ、共謀罪を含む弾圧法規を必要とし、海外での武力行使に執拗にこだわる様子は、フランスと重なる。
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