米軍の主権侵害、沖縄を同胞とみない政府マスコミ
2015-03-23

【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~ 3/22 「語られる言葉の河へ」氏から
(1)2月22日、米軍基地キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)の前で、山城博治・沖縄平和運動センター議長と男性1人が、基地内に正当な理由なく侵入したとして、日米地位協定の実施に伴う刑事特別法違反容疑で逮捕された。
米軍に雇われた日本人警備員が、私人逮捕した。
シュワブの幹部は、24日、藤田幸久・参議院議員(民主党)の問いに対して、拘束は「上からの指示で動いた。何回か警告したが、基地に入ってきたからだ」と答えた。
日本人警備員は、米軍から警備を委任されているだけでなく、米軍の傭兵として、米軍の指揮命令系統に従って日本人を拘束した。
現行犯、準現行犯については、司法警察職員に限らず、誰でも逮捕することができる【刑事訴訟法第213条】。
現場には30人の警官がいた。にもかかわらず、警備員は山城議長らを警察官には引き渡さず、基地内へ連行した。
しかし警備員は警察官のいる方向とは逆の基地内に山城議長らを引きずり込んだ。
後ろ手に手錠を掛け、基地内の建物に入れてから手錠を解いたようだが、その後約4時間も拘束を続けている。
刑事特別法を逸脱した人権弾圧だ。
米施政権下の1957年の伊江島で、強制接収された射爆場内に入ったとして、住民5人が逮捕される事件があった。
米兵が境界線を示す木製看板を5人の後ろにそっと置き、無断立ち入りで逮捕するという不当逮捕事件が起きている。
今回の事件と何が違うというのか。
復帰前の米統治下で繰り返された米軍による人権蹂躙(じゅうりん)の記憶を呼び起こす事態だ。
暗黒社会に逆戻りさせてはいけない。
山城議長らは23日夜に釈放された。
本来ならば逮捕、送検するべきではなかった。
辺野古への基地建設に反対する意思表示は県民の民意だ。米軍は抗議行動をする市民に指一本でも触れることは許されない。
(2)この事件で、米軍が未だ占領者であるという意識を持っていることが可視化された。
この事件は、日本の主権侵害という点でも深刻だ。
那覇地検が、山城議長らを釈放した背景に、「日本は独立国だ。米軍による私人逮捕は行きすぎだ」という検察官僚の苛立ちが反映している。
今回の事件で、沖縄県民と沖縄県外の日本、外国に居住する在外沖縄人の対米感情は悪化した。
このような事件が2、3回繰り返されれば、辺野古新基地に対する反対闘争は、反米的性格を帯びてくる。
もっとも、沖縄で活動する米国の情報将校や総領事館員は、米軍基地が沖縄県民の敵意で囲まれるような事態は米国の国益を毀損すると理解しているので、今後、傭兵を用いた私人逮捕について慎重になるだろう。
(3)沖縄以外にも日本国内に米軍基地はある。そこで、日本の警察官の前で私人逮捕が行われ、米軍が被拘束者を4時間も警察に引き渡さないような事件が発生した場合、政治家やマスコミはどのような反応をするか。
恐らく「日本の主権が侵害された」と激しく反発をするだろう。
なぜ反発するのか。日本の名誉と尊厳が毀損されたと考えるからだ。
では、日本人の圧倒的多数が、沖縄で起きた私人逮捕になぜ反発しないのだろうか。
東京の政治エリート(国会議員、官僚)、全国紙記者の集合的無意識の問題なのだろうが、沖縄人を同胞と見なしていないからだ。
だから、辺野古新基地をめぐって起きている沖縄人に対する差別と抑圧に対して、無関心でいられるのだ。
そればかりか、沖縄はカネが目的で辺野古反対闘争を行っている、という類の差別言説が書籍となり、ビジネスとして成立しているのだ。
この種の本に対して、沖縄の政治家、マスメディア関係者、有識者も、「徹底的に無視する」という対応を取っている。
差別を食いものにする輩の土俵に乗ると、事実上の宣伝になり、彼らのビジネスに貢献する。
だから、無視する賢明な対応をとっている。
(4)沖縄には、沖縄流の闘い方がある。
沖縄国家公務員労組は4日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、移設予定地に隣接する米軍キャンプ・シュワブのゲート付近に反対派市民が設営したテントの撤去に向けた業務は職員に苦痛を与えるとして、関わらせないよう内閣府沖縄総合事務局に申し入れた。
労組が事務局に提出した申し入れ書によると、撤去に向けた反対派への監視活動は「県民と敵対し精神的にも肉体的にも耐えがたい苦痛だ」と指摘、テント撤去が目的の業務に職員を動員しないよう求めた。
労組によると、対応した事務局幹部は「国道の不法占用を正常化するための業務だ」と説明したとしている。
これは、共同通信の配信記事で、記者は辺野古新基地建設がはらんでいる構造的問題をよく理解している。
辺野古で警備している沖縄県警の警察官、沖縄防衛局に雇われているガードマンの多くは沖縄人青年だ。
反対派と対峙する現場に、日本人の高級官僚や政治家は出てこない。
こういう手法は、典型的な植民地における分断統治だ。
沖縄人を沖縄人と敵対するような行動に駆り出すことに、国家公務員労組が異議申し立てをした、という出来事は、沖縄に対する構造的差別を脱構築しようとする現実的な動きだ。
(5)民主国家は、国民を代表するという前提で成り立っている。
しかし、辺野古新基地の建設に関して、東京の中央政府は、沖縄県および沖縄県以外の日本に居住する沖縄人の意思を代表していない。
中央政府に雇用されている国家公務員は、日本国家のために仕事をする。
現在、国家公務員としての職務遂行が沖縄人の良心に反するという危機的状況が発生している。
沖縄国家公務員労組は、「県民と敵対し精神的にも肉体的にも耐えがたい苦痛」をもたらす作業に限定して、沖縄人職員を外せ、という緊急避難を要求している。
沖縄人として正当かつ当然な要求だ。
沖縄国家公務員労組は、労働組合として、やるべき要求をしっかり行っている。
(6)沖縄における廃藩置県(琉球処分)が失敗した。
東京の政治エリート、全国紙記者、有識者がこの現実を認識しない限り、沖縄と日本の情報空間はますます乖離していく。
沖縄人は、これまで沖縄人性を失ったことはない。これからも失わない。
沖縄にとって死活的に重要な事柄は、いかなる対価を支払っても沖縄人自身が決定する。
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※ 米軍による主権侵害と協力した警察。
「米軍による暴行拉致監禁!警察は追従し、引き渡し後送検までした!」
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