アメリカAとアメリカBの対立:ひょう吉の疑問
2015-03-19

「ひょう吉の疑問」氏から2題紹介します。
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アメリカAとアメリカBの対立 3/16
アメリカには、アメリカAとアメリカBがある。
先日アメリカ大統領のオバマは日本の頭越しに中国に出向き、習近平と会談した。
そのオバマは日本のアベシンゾーとは仲が悪い。
習近平もアベシンゾーとは仲が悪い。
オバマはアメリカAである。
アメリカには2つの勢力がある。
それがアメリカAと、アメリカBである。
これは大まかに民主党アメリカと、共和党アメリカに分類されるが、
金融アメリカと、軍産アメリカにも分類される。
アメリカAは民主党アメリカであり、金融アメリカである。
アメリカBは共和党アメリカであり、軍産アメリカである。
日本が近づこうとしているのは軍産アメリカのほうである。
アメリカは今2つの国である。
オバマの動きと、軍産アメリカの動きは分けて考える必要がある。
日本はアメリカBとのつながりが深いから、その動きはなかなか表面上にでてこない。
このところアメリカAは、中国・ロシア・イランなどと関係を深めつつある。
対するアメリカBは、これらと逆に対立を深めつつある。
アベシンゾーは完全にこのアメリカBに取り込まれている。
アベシンゾーが集団的自衛権の容認や、周辺事態法の改悪、国家安全保障会議の設立などを行い、アラブ諸国に対立するイスラエルへの資金援助を行うことは、まさにアメリカBの路線に沿うものである。
アメリカAとアメリカBの対立 2 3/18
黒田東彦が日銀総裁になってから、来月4月で2年になる。
その間、量的金融緩和を行ってきたが、2%の物価上昇という当初の目標は達成できそうにない。
この理由として黒田は原油価格の低下をあげているが、これは国民経済にとってはプラス要因である。
原油安を背景に儲かっている企業は多いはずだ。
にもかかわらず、国民の実質賃金は減少している。
代わりに株と債券だけが上昇している。日銀が国債を買い支えているから、国債価格は高止まりし、その分、金利は低く抑えられている。
その一方で、株は19000円を超えてバブルの様相を呈している。
実体経済は良くなっていないにもかかわらず、バブルの泡のように金融資産だけが膨張している。
アメリカも同じで、ダウは18000ドル前後という高水準で推移している。
しかしアメリカの景気は決して良くない。売れているのは高級品だけで、庶民に必要な日常用品の売れ行きは良くない。
雇用統計が良くなっているというが、これは、正規労働者が首を切られ、派遣労働者などの非正規労働者が増えているためだ。
その結果、就労人口は増えているように見えるが、実質賃金は低下している。
昨年2014年10月末、アメリカは量的金融緩和第3弾(QE3)を終了したが、ほぼそれと同時に日本の黒田日銀は、追加の量的金融緩和を実施した。
それでも日本の物価は上昇しない。実質賃金も低下している。
どう見てもこの政策は失敗である。(日銀の黒田は決して認めないが)
そしてこれはアメリカA(民主党・金融業界)と結んだ日本の失敗である。
そこで焦ったアベシンゾーは今度はアメリカBと結ぼうとしている。
アメリカBとは共和党・軍産アメリカである。
アメリカの景気復活が、量的金融緩和では効果がないと分かった今、次なる景気刺激策として考えられているのが、アメリカの基幹産業である軍事産業による景気振興である。
『戦争は儲かる』と良くいわれる。
確かに一部の人にとってはそれは真実である。
戦争が起これば武器が売れる。いくら武器をつくってもそれを使う場がなければ武器は余ってしまう。武器市場にも需要と供給の関係は働く。武器市場の需要とは、つまり戦争である。
この需要を喚起するために、アメリカは今その理由づくりに動いている。
そのお先棒を勝いているのが日本のアベシンゾーである。
今年1月、のこのこ中東に赴き、そこでイスラム国と対峙している国に対する2億ドルの資金援助を約束した。
このことは日本人人質事件と絡めて、イスラム国への注目度を飛躍的に高めた。
アベシンゾーの狙いはもともとそこにあったと見て良い。
ウクライナ紛争もアメリカが狙っている戦場の一つである。
ここは2004年のオレンジ革命以来、西側と東側の綱引き場になっている。
美男でならしたユシチェンコという大統領候補がダイオキシンという毒を飲まされて顔がアザだらけになったり、
そうかと思うと不正コピーや石油利権で儲けたティモシエンコという美貌の女性が首相になったり、かと思うとけんか別れしたり、いろいろな利権が複雑に絡まっているところだ。
この紛争はどうもコーカサス地方の石油利権とパイプライン利権が絡んでいそうだ。
それはともかく、中東にしろ、ウクライナにしろ戦争が起これば、アメリカの軍事産業は潤う。アメリカは世界最大の武器輸出国である。
アメリカ自身が戦争を始めればもっと儲かる。
量的金融緩和がダメなら、戦争をしてでもお金を稼ごうというのがアメリカBである。
それにうまい具合に使われているのか日本のアベシンゾーである。
しかしそんな手荒なことをしなくても、もっとドルを印刷すれば世界中の富を手に入れられるではないかというのが、アメリカAである。
何せドルは世界の基軸通貨だから、世界中からいろいろなものが買えるのだ。
日本のアベシンゾーはアメリカAに対しては、黒田日銀を使ってどんどんと円を刷り、そのお金で窮乏するアメリカの財政を救った。
そしてアメリカBに対しては、のこのこ中東に出向いて、イスラム国とイスラエルとの対立を煽った。
そのための集団的自衛権の行使であり、そのための有事恒久法であり、そのための周辺事態法の改悪である。
日本の景気が回復するというのはウソだし、
平和のための集団的自衛権というのもウソである。
アメリカはアメリカAからアメリカBへと動き出している。
ということは日本の国内景気のための金融緩和策はいずれハシゴをはずされるということである。
日本はバブル崩壊を避けるためにお金を増刷し続けなければならなくなるが、そのお金は国内景気のためではなく、アメリカの戦争費用のために使われるということである。
ーーーーーーーーーーーーー
※ まったく同意同感。
安倍某政権の特質は「ゴロツキ右翼」であることと、国民政治などまったく考えないこと。
異常なほどに対米従属なことである。
おそらくは一期目の政権の際にオーストラリアでブッシュに脅しをかまされて、恐怖のあまり辞職したトラウマが効いているのだろう。
軍産複合体に完全従属すると同時に国際金融資本にも揺れ動いているが、ISISの人質殺害にみるとおり、軍産複合体とシオニズムのためにまっしぐらに走っている。
経済も外交も、安保も世界の孤児にならりつつあり、国民は窮乏化と戦争に向きあわされている。
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円安はこのまま安定均衡とはなりえない:野口
2015-03-19
円安はこのまま安定均衡とはなりえない 3/19 野口悠紀雄 ダイヤモンド・オンライン
2014年の秋以降、世界の金融・為替情勢が大きく変化した。
アメリカが金融緩和を終了したのに対して、ユーロと日本が金融緩和を強化し、これによって、為替レートが大きく変化したからである。
では、円安は、アメリカが金融緩和を終了した世界における新しい安定的均衡なのだろうか?
以下では、円安が進行する条件にはかなりの無理が含まれており、そのため、円安は長期安定的な均衡とはなりえないことを指摘したい。
円安のきっかけはアメリカ金融緩和終了
為替レート変化の基本的原因は、アメリカの金融緩和終了だ。
為替レートに大きな影響を与えるとされる2年国債の利回りを日米について見ると、図表1のとおりだ。
アメリカの金利がすでにかなり上昇していることがまず注目される。
2011年秋から13年5月頃までの金融緩和期においては、0.25%程度にまで低下していた。
しかし、13年5月に金融緩和の縮小(テイパリング)の可能性が言われ始めると上昇を始め、それ以降、ほぼ傾向的に上昇してきた。
14年10月に金融緩和の終了が正式に宣言され、12月末には利回りは0.7%を超えた(3月中旬では0.69%)。
緩和期に比べると、すでに3倍近い水準だ。

ただし、アメリカ2年国債金利は、06年夏には5%を超えていたので、それに比べれば現在の水準はまだ低い。
だから、まだ上がる可能性はある。
しかも、アメリカの産業はドル高で不調に陥るような構造ではなくなっている。
だから、産業界からのプレッシャーでドル安政策が取られることはない。
世界通貨安競争にはならないのだ。
では、円安・ユーロ安は、アメリカの金融政策終了後のニューノーマル(新しい安定的均衡)なのだろうか?
そうは言えない。
なぜなら、為替レートは、アメリカの金融政策だけでなく、日欧の金融政策によっても影響を受けるからだ。
日本銀行は14年10月末に追加金融緩和を行なった。
14年秋から急激に円安が進行したのは、この影響でもある。
また、ECB(欧州中央銀行)も金融緩和を行なった。
そして、これによって、ユーロはドルに対して円以上に急激に減価した。
ここで重要なのは、日欧の金融緩和には、以下に述べるように無理な要素が含まれていることである。
したがって、長期にわたって継続しうるものとは考えられないのだ。
日銀が行なった追加緩和が金利上昇を抑えた
円ドルレートを考える場合にまず留意すべきは、日本だけの政策で円安を進めることはできないことだ。
なぜなら、日本の金利水準は、すでに限界近くまで低下してしまっているからだ。
したがって、円安が進むためには、アメリカの金利上昇が不可欠である。
ただし、日本の金融政策も関係している。
なぜなら、アメリカの金利が上昇したとき、何もしなければ日本の金利も上昇する可能性が高いからだ。
実際、2013年4、5月頃に、上述のようにアメリカの金利が上昇したのだが、このとき、日本の金利も上昇した(2年国債利回りは、3月末まで0.04%程度だったが、4月には0.1%を超えた)。
14年秋にそうしたことにならなかったのは、日銀が10月31日に追加緩和を決定したからである。
追加緩和策では、マネタリーベースを年間で約80兆円増加するペースで資産買い入れを行なうこととされた。
こうした大量の国債購入が、金利を抑えることになったのである。
つまり、円ドルレートはアメリカの金融政策だけで決まってしまうのではなく、日本の金融政策にも依存している。
日本の2年国債利回りは、それまでも低下を続けていたが、14年の始めから夏頃までは、0.08%程度で、あまり大きな変化がなかった。
ところが、10月に入ってから急低下した(ただし、これは日銀の追加緩和発表前であったことに注意が必要である)。そして、12月末からはマイナスになった。
その後プラスに戻ったが、3月初めには0.02~0.03%程度だ。長期的な水準と比較すれば、かなり低い。
10年国債の利回りも類似の動きを示した。そして、15年1月下旬に0.2%台にまで低下した(いまは0.4%台)。
異次元緩和措置の効果は、国債を購入することでその利回りを低位に抑えることだ。
それが追加緩和で一層進んだのだ。
国債市場を著しく歪めた追加緩和 金利抑制にはかなりの無理
ただし、以下で述べるように、金利抑制はかなりの無理を伴っている。
まず、マネタリーベースの増加は、追加緩和で目的とされたようには進んでいない。
追加緩和で目標とされた「年80兆円」とは、月平均で言えば6.7兆円だ。
しかし、図表2に見るように、10月以降の対前月増加額平均は5.9兆円であり、目標を下回っている。
これまでも巨額の国債を買い続けてきた結果、市中の国債が品薄になり、国債の購入を簡単には増額できないのである。

つまり、マネタリーベースは飽和状態になっていて、容易に増加できないのだ。
実際、図表3に見るように、マネタリーベース残高の対前年増加率は、追加緩和前より低下している。
したがって、日銀は著しく高い価格で国債を買い上げざるをえない。このため、金利がマイナスになるような事態に陥った。

2年債の金利は、14年12月3日にマイナスになった。12月18日から15年1月27日までは連続してマイナスだった。
12月24日には、マイナス0.036%になった。
1年債の金利は、12月17日から1月27日まで連続してマイナスだった。12月24日にはマイナス0.036%になった。
以上で見た日本の金利の動きは、アメリカで金利が上昇しているのときわめて対照的だ。
なお、追加緩和はマネーストックにはほとんど影響を与えていない。
M3の増加率を見ると、14年には、異次元前の水準に戻っていた。
図表4に見るように、追加緩和はこれを戻しただけであり、対前年増加率は3%を下回っている。

要するに、追加緩和は、かなりの無理をして金利を抑えている。
しかも、マネーストック増加等の金融緩和の本来の効果は生じていない。
金利を力ずくで抑えているだけだ。高値で国債を購入しているのだから、将来金利が正常化した場合には値下がりし、日銀に損失を与えることとなるだろう。
しかも、円安によって被害を受ける部門も、次第に明らかになっている。
それは、中小企業や消費者だ。彼らの声が政治過程に表れるようになれば、これまでのような円安政策は継続しえないだろう。
すでに述べたように、アメリカの金利が上昇しても、日本が金利を抑えなければ、日米金利が拡大することはなく、したがって、円安進行を食い止めることができるのだ。
そうした方向へ向けての政治的な圧力がかかることがありうる。
ユーロ情勢はいまだに不安定 問題が深刻化すれば円高要因に
円安が長期安定的均衡と考えられないもう一つの理由は、ユーロ情勢にある。
2011年の春から夏にかけて、1ユーロは1.4ドルを超えていた。その後1.3ドル程度にまで減価したが、13年夏から再び増価し、14年春には1.4ドルに近づいていた。
ところが、4月以降、急激な減価が始まり、1ユーロ=1ドルという「パー」に近づいている。5月の1.38ドルから1.05ドルまで24%もの減価だ。
現在のレベルは、歴史的なユーロ安だ。ECBは3月から量的緩和政策を始め、ユーロ安に拍車を掛けている。
ところで、この状態も安定した均衡とは考えにくい。
それは、ユーロ問題の基本が解決されていないからだ。
ギリシャ支援策を取りまとめられるかどうかといった問題だけではない。より本質的で深刻な問題として、ドイツが負っている負担がある。
今回のECBの金融緩和も、ドイツに負担を掛けている。
高値で購入した国債が将来減価する可能性は高く、その負担の多くはドイツが負うからだ。
さらに、ユーロが減価することに対するドイツ国民の不満もあると思われる。ドイツ国民は、伝統的に強い通貨を望む。そして、ユーロ以前の時代には、西ドイツのマルクは強い通貨であり、ドイツ国民はそれをよしとしていた。
現在生じているようなユーロ安は、ドイツ国民には耐え難いものだろう。
「ユーロの維持責任」は、ドイツが負っている第2次大戦の負債の最大のものだが、ドイツ国民の我慢がいつまで続くか分からない。
ユーロが抱える本質的な問題とは、ギリシャの離脱ではなく、ドイツの離脱である。
仮にユーロ問題が深刻化すれば、10~12年頃のようにユーロ圏から資金が逃避し、それが日本に流入して円高を引き起す事態は十分考えられる。
現実の為替レートを見ても、14年12月初めには1ユーロ=150円程度であったが、3月中旬には128円程度までのユーロ安が進んでいる。これは13年6月頃の水準である。
円高期に1ユーロ=100円程度までの円高・ユーロ安が進んだことには及ばないが、14年中に140円以上の水準が続いていたことと比べると、かなりの変化だ。
2014年の秋以降、世界の金融・為替情勢が大きく変化した。
アメリカが金融緩和を終了したのに対して、ユーロと日本が金融緩和を強化し、これによって、為替レートが大きく変化したからである。
では、円安は、アメリカが金融緩和を終了した世界における新しい安定的均衡なのだろうか?
以下では、円安が進行する条件にはかなりの無理が含まれており、そのため、円安は長期安定的な均衡とはなりえないことを指摘したい。
円安のきっかけはアメリカ金融緩和終了
為替レート変化の基本的原因は、アメリカの金融緩和終了だ。
為替レートに大きな影響を与えるとされる2年国債の利回りを日米について見ると、図表1のとおりだ。
アメリカの金利がすでにかなり上昇していることがまず注目される。
2011年秋から13年5月頃までの金融緩和期においては、0.25%程度にまで低下していた。
しかし、13年5月に金融緩和の縮小(テイパリング)の可能性が言われ始めると上昇を始め、それ以降、ほぼ傾向的に上昇してきた。
14年10月に金融緩和の終了が正式に宣言され、12月末には利回りは0.7%を超えた(3月中旬では0.69%)。
緩和期に比べると、すでに3倍近い水準だ。

ただし、アメリカ2年国債金利は、06年夏には5%を超えていたので、それに比べれば現在の水準はまだ低い。
だから、まだ上がる可能性はある。
しかも、アメリカの産業はドル高で不調に陥るような構造ではなくなっている。
だから、産業界からのプレッシャーでドル安政策が取られることはない。
世界通貨安競争にはならないのだ。
では、円安・ユーロ安は、アメリカの金融政策終了後のニューノーマル(新しい安定的均衡)なのだろうか?
そうは言えない。
なぜなら、為替レートは、アメリカの金融政策だけでなく、日欧の金融政策によっても影響を受けるからだ。
日本銀行は14年10月末に追加金融緩和を行なった。
14年秋から急激に円安が進行したのは、この影響でもある。
また、ECB(欧州中央銀行)も金融緩和を行なった。
そして、これによって、ユーロはドルに対して円以上に急激に減価した。
ここで重要なのは、日欧の金融緩和には、以下に述べるように無理な要素が含まれていることである。
したがって、長期にわたって継続しうるものとは考えられないのだ。
日銀が行なった追加緩和が金利上昇を抑えた
円ドルレートを考える場合にまず留意すべきは、日本だけの政策で円安を進めることはできないことだ。
なぜなら、日本の金利水準は、すでに限界近くまで低下してしまっているからだ。
したがって、円安が進むためには、アメリカの金利上昇が不可欠である。
ただし、日本の金融政策も関係している。
なぜなら、アメリカの金利が上昇したとき、何もしなければ日本の金利も上昇する可能性が高いからだ。
実際、2013年4、5月頃に、上述のようにアメリカの金利が上昇したのだが、このとき、日本の金利も上昇した(2年国債利回りは、3月末まで0.04%程度だったが、4月には0.1%を超えた)。
14年秋にそうしたことにならなかったのは、日銀が10月31日に追加緩和を決定したからである。
追加緩和策では、マネタリーベースを年間で約80兆円増加するペースで資産買い入れを行なうこととされた。
こうした大量の国債購入が、金利を抑えることになったのである。
つまり、円ドルレートはアメリカの金融政策だけで決まってしまうのではなく、日本の金融政策にも依存している。
日本の2年国債利回りは、それまでも低下を続けていたが、14年の始めから夏頃までは、0.08%程度で、あまり大きな変化がなかった。
ところが、10月に入ってから急低下した(ただし、これは日銀の追加緩和発表前であったことに注意が必要である)。そして、12月末からはマイナスになった。
その後プラスに戻ったが、3月初めには0.02~0.03%程度だ。長期的な水準と比較すれば、かなり低い。
10年国債の利回りも類似の動きを示した。そして、15年1月下旬に0.2%台にまで低下した(いまは0.4%台)。
異次元緩和措置の効果は、国債を購入することでその利回りを低位に抑えることだ。
それが追加緩和で一層進んだのだ。
国債市場を著しく歪めた追加緩和 金利抑制にはかなりの無理
ただし、以下で述べるように、金利抑制はかなりの無理を伴っている。
まず、マネタリーベースの増加は、追加緩和で目的とされたようには進んでいない。
追加緩和で目標とされた「年80兆円」とは、月平均で言えば6.7兆円だ。
しかし、図表2に見るように、10月以降の対前月増加額平均は5.9兆円であり、目標を下回っている。
これまでも巨額の国債を買い続けてきた結果、市中の国債が品薄になり、国債の購入を簡単には増額できないのである。

つまり、マネタリーベースは飽和状態になっていて、容易に増加できないのだ。
実際、図表3に見るように、マネタリーベース残高の対前年増加率は、追加緩和前より低下している。
したがって、日銀は著しく高い価格で国債を買い上げざるをえない。このため、金利がマイナスになるような事態に陥った。

2年債の金利は、14年12月3日にマイナスになった。12月18日から15年1月27日までは連続してマイナスだった。
12月24日には、マイナス0.036%になった。
1年債の金利は、12月17日から1月27日まで連続してマイナスだった。12月24日にはマイナス0.036%になった。
以上で見た日本の金利の動きは、アメリカで金利が上昇しているのときわめて対照的だ。
なお、追加緩和はマネーストックにはほとんど影響を与えていない。
M3の増加率を見ると、14年には、異次元前の水準に戻っていた。
図表4に見るように、追加緩和はこれを戻しただけであり、対前年増加率は3%を下回っている。

要するに、追加緩和は、かなりの無理をして金利を抑えている。
しかも、マネーストック増加等の金融緩和の本来の効果は生じていない。
金利を力ずくで抑えているだけだ。高値で国債を購入しているのだから、将来金利が正常化した場合には値下がりし、日銀に損失を与えることとなるだろう。
しかも、円安によって被害を受ける部門も、次第に明らかになっている。
それは、中小企業や消費者だ。彼らの声が政治過程に表れるようになれば、これまでのような円安政策は継続しえないだろう。
すでに述べたように、アメリカの金利が上昇しても、日本が金利を抑えなければ、日米金利が拡大することはなく、したがって、円安進行を食い止めることができるのだ。
そうした方向へ向けての政治的な圧力がかかることがありうる。
ユーロ情勢はいまだに不安定 問題が深刻化すれば円高要因に
円安が長期安定的均衡と考えられないもう一つの理由は、ユーロ情勢にある。
2011年の春から夏にかけて、1ユーロは1.4ドルを超えていた。その後1.3ドル程度にまで減価したが、13年夏から再び増価し、14年春には1.4ドルに近づいていた。
ところが、4月以降、急激な減価が始まり、1ユーロ=1ドルという「パー」に近づいている。5月の1.38ドルから1.05ドルまで24%もの減価だ。
現在のレベルは、歴史的なユーロ安だ。ECBは3月から量的緩和政策を始め、ユーロ安に拍車を掛けている。
ところで、この状態も安定した均衡とは考えにくい。
それは、ユーロ問題の基本が解決されていないからだ。
ギリシャ支援策を取りまとめられるかどうかといった問題だけではない。より本質的で深刻な問題として、ドイツが負っている負担がある。
今回のECBの金融緩和も、ドイツに負担を掛けている。
高値で購入した国債が将来減価する可能性は高く、その負担の多くはドイツが負うからだ。
さらに、ユーロが減価することに対するドイツ国民の不満もあると思われる。ドイツ国民は、伝統的に強い通貨を望む。そして、ユーロ以前の時代には、西ドイツのマルクは強い通貨であり、ドイツ国民はそれをよしとしていた。
現在生じているようなユーロ安は、ドイツ国民には耐え難いものだろう。
「ユーロの維持責任」は、ドイツが負っている第2次大戦の負債の最大のものだが、ドイツ国民の我慢がいつまで続くか分からない。
ユーロが抱える本質的な問題とは、ギリシャの離脱ではなく、ドイツの離脱である。
仮にユーロ問題が深刻化すれば、10~12年頃のようにユーロ圏から資金が逃避し、それが日本に流入して円高を引き起す事態は十分考えられる。
現実の為替レートを見ても、14年12月初めには1ユーロ=150円程度であったが、3月中旬には128円程度までのユーロ安が進んでいる。これは13年6月頃の水準である。
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