働く者の健康と生命を守れ、憲法違反の残業代ゼロ法案
2015-02-21

年収400万円のあの人も残業代ゼロになる日 「1000万円プレーヤーだけ」と思ったら大間違い 2/21 東洋経済オンライン
安倍政権が2015年の通常国会で成立をもくろんでいる、通称「残業代ゼロ法案」が物議を醸している。
企業には労働基準法で定められた一日8時間、週40時間の法定労働時間を超える残業(時間外労働)をした労働者に、原則として一定の割増賃金(残業代)を支払う義務がある。
高年収ホワイトカラーを残業規制の対象外に
これに対して、現在、有識者会議などで検討されている残業代ゼロ法案は、現行労基法で残業規制の対象となっている労働者のうち、「年収1075万円以上を稼ぐホワイトカラー系の労働者」に限って残業規制を一部見直す、つまり残業代を払わないように改正するというのが柱だ。
別名で「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」とも呼ばれている。ホワイトカラー・エグゼンプションとは米国生まれの制度で、その名のとおり、ホワイトカラー労働者を残業規制の対象から外す(エグゼンプション)することを意味する。
2月13日に公表された労働政策審議会の分科会報告から、問題の部分を引用しよう。やや専門的で難解な表現となるが、原文をそのまま掲載する。
「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した労働時間制度の新たな選択肢として、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)を設けることが適当である」(平成27年2月13日労働政策審議会「今後の労働時間法制等の在り方について(建議)」)
要は「時間ではなく成果で労働を評価するためには、残業代をゼロにしなければならない」というのが根本にある理屈である。
「年収1000万円プレーヤーの話だから自分には関係ない」と思うビジネスパーソンが大半かもしれない。確かに現時点ではそうかもしれない。たとえば東洋経済オンラインが独自推計した「最新版!『40歳年収が高い』トップ300社」(2014年10月15日配信)で見ると、40歳で年収1075万円以上をもらっていると推計される上場企業社員は27社しかない。集計対象である全上場企業約3600社の1%未満だ。今回の残業代ゼロ法案で対象になりそうな労働者は多めに見積もっても全体のせいぜい1割に満たないと考えていいだろう。
だが、ここに落とし穴が隠れている。
この残業代ゼロ法案がひとたび成立してしまえば、後の法改正でその対象を広げる、つまり年収要件を下げていく方向に動いていく可能性は十分に想定される。
この議論は過去10年にわたって繰り返されてきた。発端は2005年。日本経団連が表明した「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」にその考えが示された。
当時そこにまとめられた残業代ゼロ構想の理想型は、「年収400万円以上で時間の制約が少ない頭脳系職種、つまりホワイトカラー労働者をすべて残業代ゼロにすること」だ。
経団連の意図はこうだ。「総務や経理、人事、企業法務、ファイナンシャルプランナーなどのホワイトカラー労働者の場合は、労働時間の長さと成果が必ずしも比例しないため、工場労働者がモデルとなっている現行の労働時間規制はなじまない。ホワイトカラーの生産性を上げるためには、年収や年齢で対象者範囲を限定せずに、労働時間規制を外すことが望ましい」。
際限のない長時間労働を強いられかねない
残業規制を外すことで懸念されるのは、残業代が削られるだけでなく、現実に“自分の裁量で働き方が調整できる”というホワイトカラー労働者でなければ、際限のない長時間労働を強いられかねないことだ。残業代ゼロ法案については、労働組合や法律家団体などが反対の姿勢を表明している。
そもそも現行の法制度の下で「時間ではなく、成果で評価する」ことはできないのだろうか。実はそれは問題なく可能であり、現に成果主義を採用している企業は数多く存在している。そもそも、賃金をいかなる体系で決めるかどうかは、各企業がさまざまな観点から工夫をして制度を導入している。
月給制の企業であっても、営業職では歩合による賃金を定めていたり、ボーナスでは業績に応じて各労働者の賃金に差を設けていたりするのはよくあること。極端な言い方をすれば、最低賃金を下回らない限り、どのような賃金体系をとろうと法的には全く問題はない。
残業代は、通常の給料とは別に法が定める労働時間を越えて労働した場合に、超過した労働時間の長さに応じて支払われる。あくまで時間外労働が行われた分に対しての割増賃金が定められているに過ぎず、労働者を成果ではなく時間で評価しているわけではない。残業代をゼロにしたからといって、「時間ではなく成果で評価される働き方」が実現される保証は何もない。
実際、労政審の今回の報告書では、これまで研究職や記者など労働時間の自由度が高い企画業務型の労働者に限って適用が認められていた裁量労働制の対象範囲を、一般の営業職にまで拡大適用するという内容の改正案も同時に提案されている。1日8時間、1週間で40時間と厳格に定められた労働時間規制の撤廃を今の政府が目論んでいるフシが感じられる。
残業代が割り増しされている理由
そもそも現行労基法で定められている一日8時間、週40時間を超えた場合に払われる残業代とは、何のための制度なのか。
それは、心身に悪影響が生じ、場合によっては命を落とす危険(過労死)になりかねない長時間労働を抑制するためだ。
残業代は、基本的な給料に一定の割増率を掛けて支払わなければならない。
使用者(企業)にあえて重い経済的負担を使用者に負わせることで、長時間労働を行わせない方向にインセンティブを働かせているのである。
残業代は、長時間労働の歯止めとして機能しているのであり、労働者の経済的な利益の問題だけではなく「命」の問題として残業代を考える必要がある。
残業代ゼロ法案は、このような長時間労働を防ぐための制度をなくしてしまうことにつながる可能性がある。
かつて第一次安倍政権時代の2007年にも同様の制度導入が提案されたが、長時間労働の拡大を懸念する世論の反発にあい法案提出は断念された。
現在においても、労働者の置かれている状況は当時とは変わらない。
サービス残業(賃金不払い残業)の是正が進んでいるとは言い難く、労働基準監督署に是正を求められる企業は少なくない。その中には時折、有名な大企業も含まれる。
労働基準法は、労働者が「人たるに値する生活」を送るために最低限使用者が守らなければならない労働条件を定めた法律である(労働基準法1条)。
そしてこの労働基準法は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障した憲法25条、労働者の勤労の権利などを保障した憲法27条に由来する憲法的な価値を有する法律である。
労働時間規制は、まさに「人たるに値する生活」を労働者に保障するための最低限の規制として位置づけられている。
憲法に基づいて、労働者に「人たるに値する生活」を保障するために制定された労働基準法がいま重大な危機に瀕している。
ーーーーーーーーーーーーー
※ 日本とは逆に、欧州ではこの時間外割増賃金による緩やかな規制から、強行規制への動きが進んでいる。
一日7時間、週35時間を超える労働の強制禁止である。
労働者が「健全な市民生活」を営むためには、必要不可欠ことという受け止め方である。
もちろん、使用者側には異論があるようだが、労働側と中立識者、行政側は当然の規制として進めている。
以下は勤労者賃金、労働力市場に関連するページ。
労働分配率の強制修正
なぜデフレなのか、なぜ放置するのか
日本の労働は封建主義の農奴農民か
逆進課税とデフレ恐慌
勤労者の地獄と国際金融資本の高笑い
賃上げが無ければ経済成長は無い
アベノミクス、勤労者窮乏化の効果だけは必ずある
企業内労組連合の腐敗とブラック企業、アベノミクスの茶番
限定正社員「欧米では一般的」?の大ウソ!:冷泉
日本の最低賃金は生存基準を下回る:国連
厚生年金350万人未加入と悪質事業者、老後無年金者の増加
男女同権では異常なほどの最下位国
労働搾取どころかボッタクリ収奪の日本
同一労働、同一賃金を阻害している「企業内昇進奴隷制」
労働基本権を踏みにじり、奴隷にする「残業代ゼロ法」
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ISISは米英軍産複合体のためにある、偽の対ISIS有志連合
2015-02-21

緊急インタビュー IS広報部に聞く 2/17 「街の弁護士日記」から
ついに、ここまでやるかという、21人一斉斬首映像事件を受けて、急遽、当ブログでは、極秘ルートを通じて、過激派組織ISの広報部員と接触することに成功した。
以下、その電話インタビューの一部始終をお伝えする。
-----------------------
Q あなたは過激派組織ISの広報部員でしょうか。
A ああ、そうだ。われわれは過激派組織ISだ。言っておくがイスラミック・ステイトなんかじゃねえ。
ただのアイスだ。まあ「愛す」と呼んでもらってもいいが。
Q 年明け以来、ISの活躍はめざましいが、広報部としてはどんな印象でしょうか。
A 人使いが荒いってえか、俺たちが今年にはいってから、どんだけの残虐動画を配信したか、分かってるか。残業代も出ねえし。
Q 昨日は、21人の斬首映像を流されましたが。
A あんだけの迫真の動画を撮るのに、どんなに苦労したか、メディアの人間なら分かってくれるよな。カメラ50台、撮影班200人を動員した。
しかも根拠地から遠く離れた北アフリカときた。急遽、北アフリカへ飛べってんだから、年明け以来、俺たちは休みなしだぜ。
Q あのような残虐映像を流せば、被害国が攻撃してくることは分かり切ったことで、過激派組織ISにとっては、どんな利益があるのですか。
A 俺もそう思うよ。何にもしなきゃ、あの国は、覇権国の国務長官が訪問した昨年秋も、日本の総理がバラマキを発表した1月も、俺たちを攻撃することには及び腰だったんだ。
わざわざ挑発して、攻撃されることはねえと思う。
Q それなのに、どうしてあれほど残忍な映像をあげたのですか。
A そんなことは知らねえ。とにかくできるだけ残忍で派手な映像をあげろと。
敵国は大量死刑をものともしない国だから、半端な映像じゃ驚かねえからと言われた。
仕方がないから、21人並べて斬首する壮観なシーンは、俺が考えた。
Q 今月、2月始めには、隣国のパイロットを焼殺する映像もアップされましたね。あそこまでする必要があったんですか。
A だから、できるだけ残忍な映像を作れってのが、上からの指示だって。
どう考えたって、パイロットは生死不明の状態にしておいた方が、隣国の国民は動揺して、空爆を控えるはずだ。誰が考えたってそうじゃねえか。だけどお上には逆らえねえ。
イスラムでは遺体は埋葬にすることになってんだから、焼き殺すのはタブーじゃないかって?
だから、俺たちは、どこぞの国営放送が言うような「イスラミックステイト」なんかじゃねえって。
ただの「アイス」。「愛す」って呼んでくれるともっと嬉しいけどな。
Q 日本人の人質事件では、処刑場面の動画は配信しなかったようですが。
A あんときは、上からの指示が、できるだけおだやかな…
Q おだやかですか。
A ああ、できるだけ穏やかなシーンでないと、日本人は自分の国の国民が殺されるシーンが写っていては、ビデオ自体を見てくれないだろう、と。
恐怖心を植え付けるには、警告メッセージだけで十分だと言われた。
静止画だとか、経費も安上がりだしな。どうせ日本はカネのバラマキと『人道支援』をすれば十分だからと。
Q それって何か、覇権国が言っていることと同じに聞こえますが。
A だから、言ってるじゃねえか。上からの指示だって。
Q 日本では報道されませんでしたが、日本人人質事件の直前1月中旬には、旧社会主義覇権国の人質の殺害も配信していますね。
A ああ。情報員2名を殺害した映像を配信した。
Q あらゆる国を敵に回すことになりませんか。
A 上からの指示だって。
Q イスラム国家を建国するということだと、国際社会で承認される必要があるのではないですか。
イスラエルも植民国家ですが、公式かどうかはともかく、欧米諸国が、後ろ盾になっているでしょう。
イスラム国も植民国家として認知されるためには、後ろ盾が必要なはずではないですか。
A 俺たちの仕事は、上から言われた残忍な映像を配信して、アイスは、残忍だというイメージを世界中にばらまくことだ。
それ以上のことは知らない。
Q 覇権国の女性人道活動家の件について、隣国の空爆によって死亡したということでしたが、これまでの手順からすると、少し異例に見えましたが。
A あれは、俺たち動画班は関わっていない。俺から見ても、中途半端だ。残忍さのメッセージ性が欠けている。
地上部隊の本格投入か、限定投入か、覇権国自体がはっきりしないってよ。
Q ISに共感する世界中の若者が2万人、渡航していると報道されていますが、実態はどうでしょうか。
A おっと、それは秘密だね。俺たちのサイトが、どこの国でも遮断されずにリクルートできる肝は、そこにあるからな。
ネット遮断なんて、簡単なことだ。
現に民主化運動が本当の脅威だと考えている国では、T事件を完全に遮断しているじゃないか。
本当に脅威なら遮断すればすむだけのことだ。
そこを秘密にすることが、俺たちの外交戦略というか、監視ネットワークを構築したい奴らとの手の打ち所ってえか。
Q 日本では、謎の「イスラム国」と呼ばれていますが、本当の目的は、何なのですか。
A だから、俺たちは過激派組織「アイス」だって。過激に振る舞うことが俺たちの役割だ。そん先なんて知ったことじゃねえ。
俺でもわかるのは、まだイラク戦争は終わってないってことだ。国家を破壊した覇権国に対するイラク国民の抵抗は続いている。
それを残忍なイメージに塗り替えるというのは、俺たちに課された任務の一つらしい。
Q 先週、国連安保理で、身代金取引が禁じられ、石油も価格が低迷して、ISは資金難だと報じられていますが。
A 俺は広報部だ。資金の話は、財務部に聞いてくれ。
ここだけの話、俺たちのおかげで、得した奴らの利益はすごいぜ。
覇権国も日本も過去最高の軍事予算、表現の自由大国も軍削減3カ年計画を見直すし、
西側軍事同盟は緊急展開部隊5000名を新設して、緊急即応部隊は1万5000人から3万人に増やす。
国連PKO部隊も国連事務次長が21世紀にふさわしい装備に更新すると発表したじゃないか。
そこら当たりで儲ける奴らと、俺たちは持ちつ持たれつというか、共依存ってえか。戦争にウソはつきものだ。だから、そんなとこじゃねえかと俺は思うけどな。
おっと時間だ。次の動画作成にかからねえと。
ーーーーーーーーーーーーーー
あまりにも予定調和な「イスラム国」 「イスラム国」改め「IS」=「インチキ・サイト」 2/19 「街の弁護士日記」から
「イスラム国」によるエジプト人21人一斉斬首映像の配信を受けて、エジプト空軍によるリビア空爆が始まった。
エジプトも、「イスラム国」との戦いに参加することになった。
エジプトは、これまで再三にわたって「イスラム国」に対する軍事行動を働きかけられながら、これに参加してこなかった。
昨年9月8日、ケリー国務長官は、「イスラム国」と戦う有志連合を組織することを表明した後、中東を歴訪しており、エジプトも訪問している。
しかし、エジプトからは、国内のテロに対処するのが手一杯だとして、色よい返事はえられなかった。
安倍総理が、今年1月17日に25億ドルのバラマキ支援を表明する地にカイロを選んだのも、そうしたエジプトを「イスラム国」との戦いに招き入れる意図を持ったものと推測される。
しかし、バラマキ支援の表明だけではエジプトは「イスラム国」に対する軍事行動に参加しなかった。
そのエジプトが、21人殺害映像の配信を契機に「イスラム国」に対する軍事行動を開始した。
「イスラム国」による、21人殺害映像の配信は、米国や日本による説得や支援より、はるかに大きな効果を持ったことになる。
エジプト軍の空爆については、さらに、奇妙な符合を指摘しなければならない。
昨年9月にケリー国務長官がエジプトを訪問して対「イスラム国」の戦いに支援を求めたときの記事がネットにある。
ウォールストリートジャーナル2014年9月14日
ケリー米国務長官、「イスラム国」対策でエジプトに支援要請
2014 年 9 月 14 日 13:01 JST
ケリー米国務長官、「イスラム国」対策でエジプトに支援を要請 EPA
【カイロ】ケリー米国務長官は13日、イスラム過激派組織「イスラム国」に対抗する「有志連合」においてエジプトが重要なバートナーであると表明した。一方、米国政府はエジプトの支持を得るために同国の人権問題を看過することはないと強調した。
これに対し、エジプトは隣国リビアの武装勢力との戦いに国際社会が取り組みを拡大するよう求めた。
カイロを訪問中のケリー長官はシシ大統領と会談後、シュクリ外相と共同記者会見に臨んだ。ケリー長官とシシ大統領はエジプトがどのような形で有志連合に貢献するかについて議論した。ケリー長官は会談の詳細については明らかにしなかった。
ケリー長官はカイロ訪問中、エジプトが「イスラム世界の知的、文化的首都」だと述べ、エジプトにはイスラム国のイデオロギーを非難する上で果たすべき極めて重要な役割があるとの見方を示した。
しかし、複数の軍関係者によると、エジプトは有志連合を支持する代わりに、米国がリビア問題の解決を優先課題とすることを確約するよう求めている。関係者は報道機関に話す権限がないため、匿名を条件に明らかにした。
エジプトの大統領報道官が発表した声明によると、シシ大統領はケリー長官との会談の中で、エジプト人にとって明らかにリビアを指す言葉を使用した。
声明によると、「(大統領は)テロに対抗する国際的な連合体は特定の組織と立ち向かったり一つのテロリストの温床を抑制したりすることだけに限定されず、中東とアフリカ全土にわたるテロリストの温床にまで対処する、包括的なものでなければならない」と述べた。
シュクリ外相も記者会見中に1度ならず、この点を指摘。
外相は「われわれはテロと戦うあらゆる国際的な取り組みを支持している。リビアであろうと、アラブ世界のどこであろうとアフリカ大陸であろうと、この現象を一掃することを目的としたあらゆる手段を取るつもりだ」と明らかにした。
(AP通信)
シシ大統領は、有志連合を支持する見返りとして、リビア問題の解決を優先することの確約を求めている。
今回、リビアを拠点とする過激派組織が「イスラム国」を名乗り、「イスラム国」の公認する殺害映像を配信した。
その結果、エジプトの要求でもあるリビア攻撃が「イスラム国」空爆との名目で実現したのだ。
有志連合を支持する見返りとして、リビア問題の解決を優先する。
全くその通りの、見事な符合が実現している。
ヨルダン軍パイロットを焼殺した「イスラム国」の行動も、いかにも不審なものだった。
ヨルダンはもともと脆弱な国家体制にあり、「イスラム国」空爆には消極的な意見も有力であった。
「イスラム国」が、ヨルダン軍による空爆を避け、相手国の弱体化を狙うのであれば、パイロットの生死が不明な状態で問題を長引かせることが得策であることは明らかだった。
にもかかわらず、早々にヨルダン軍パイロットの焼殺映像を配信して、ヨルダン空軍による空爆に弾みをつけた。
リビアの地の殺害映像を「イスラム国」公認動画として配信するのは、さらに奇妙だ。
これによって、エジプトはもともとの要求であったリビア空爆を、有志国連合の空爆行動として実現することができた。
できすぎている。
そう考えるのが合理的な思考というものだろう。
国営放送は、中東諸国の空爆参加が、「イスラム国」との戦いを中東対西欧あるいはイスラム対西欧の戦いではなく、国際社会が一致して対処すべきテロとの戦いであることを示すとの解説を繰り返している。
これまで空爆に参加していた中東諸国は、
サウジアラビア(人口2800万人)
アラブ首長国連邦(人口900万人)
ヨルダン(人口650万人)
カタール(人口220万人)
バーレーン(人口130万人)
だ。
米軍との関係が深く経済大国でもある、サウジアラビアを除けば、いずれも小国である。
国営放送が言うほどに、テロとの戦いに参加する有志連合は普遍的なものではないのだ。
NATOにも加盟する親欧米国である、トルコ(人口7500万人)は、米国からの再三の圧力にもかかわらず有志連合の軍事行動に参加することを拒んでいる(内藤正典「イスラム戦争」集英社新書参照)。
エジプトは、人口8200万人を数える大国である。
中東諸国を引き入れたい米国にとっては、どうしても有志連合の軍事行動に組み入れたかった国だったに違いない。
エジプトは、21人殺害映像配信のおかげで、「イスラム国」と戦う有志連合に参加させるとの米国の意向に沿いつつ、たっての要求であった、リビア攻撃のフリーハンドを得た。
「イスラム国」の広報は、国家樹立という名目とはかけ離れている。
自らへの憎悪をかき立て、敵を増やし、有志連合を拡大・活発化させる効果を生んでいるだけだ。
その結果、拡大する戦火が、米国軍産学複合体の利益に沿ったものとなっていることは、紛れもない事実だ。
イラク、シリア、リビアといった国々は、かつてネオコン牛耳る、ブッシュ政権によって悪の枢軸(拡大版)、あるいはテロ支援国家として名指しされてきた国と驚くほど一致している。
オバマ政権の政策は、これとそっくりのものになってきている。
米国軍産学複合体が政権を牛耳るさまは、2001年以来、恐ろしいほど一貫している。
アフガン・イラク戦争は終わっていない。
形を変えて、継続している。
そもそも「イスラム国」の垂れ流すインターネット情報によって、自国の青年が過激化することを本当に脅威だと考えれば、ネットを遮断すればすむことだ。
いささか不自由にはなるだろうが、社会全体が監視される不自由に比べればはるかにましだ。
ネット戦略を駆使する「イスラム国」にとっては、大きな打撃になることも自明だ。
現にイスラム系民族紛争を内部に抱えている、ロシアや中国は、「イスラム国」のサイトを遮断している可能性が高い。
欧米諸国がネットを遮断しないのにはそれなりの理由があるからであろう。
戦争にウソはつきものである。
「イスラム国」の広報部門が特殊な役割を帯びていたとして、何の不思議があるだろう。
国営放送は、「イスラム国」を「過激派組織『IS』-イスラミック・ステイト」と呼び変えることにしたという。
イスラムに対する偏見につながらないようにとの配慮だとすれば、英語に置き換えただけの「イスラミック・ステイト」を使っていては何の意味もない。
国営放送というものは何かと不合理なことをしたがるものである。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
※ 「日本は偽の対ISIS有志連合に加わってはいけない:イラン」
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大衆は虫けら、差別主義者曽野綾子
2015-02-21

経済問題を民族問題にすり替え、貧困の深刻化で支配/被支配階級を作り上げたいらしい曽野綾子 2/18 櫻井ジャーナル
曽野綾子なる人物が産経新聞に書いたコラムの内容が問題になっているようだ。
そこで「曽野綾子の透明な歳月の光」を読んでみたところ、その出だしで「他民族の心情や文化を理解するのはむずかしい」と主張している。
その事例として「イスラム国」を挙げているが、この集団はイスラムという文化に反する武装勢力にすぎない。
その戦闘員はサラフィーヤ/ワッハーブ派が多いと見られているが、「精鋭部隊」と言われているのはチェチェンの反ロシア勢力。
グルジアのパンキシ渓谷を拠点にし、そこでCIAにリクルートされた人びとが軍事訓練を受けている。グルジアはアメリカやイスラエルの強い影響下にある国だ。
昨年2月、ウクライナの首都キエフでクーデターを成功させた勢力を支える柱のひとつはネオ・ナチ(ステファン・バンデーラ派)だが、その中にはチェチェンで戦った経験を持つ人もいる。
そのクーデター、そして東/南部で展開されてきた民族浄化の背後にはドニエプロペトロフスクのイゴール・コロモイスキー知事がいる。
この人物は「オリガルヒ」(一種の政商)のひとりで、ウクライナ、キプロス、イスラエルの三重国籍を持つシオニストだ。
その背後にはネオコン/シオニストをはじめとするアメリカの支配層が存在している。つまり、ここではシオニストとネオ・ナチが手を組んでいる。
曽野の主張を読むと、「文明の衝突」論を連想する。
ネオコンの戦略に大きな影響力を及ぼしてきたONA(国防総省内部のシンクタンク)のアンドリュー・マーシャルはバーナード・ルイスを師としているが、このルイスはサミュエル・ハンチントンと同じように「文明の衝突」を主張していた人物。
このふたりはシオニストを支持し、反イスラムの立場だった。
曽野にはネオコンの臭いがするということでもある。
しかし、彼女が言いたいことは別にある。
「若い世代の人口比率が減るばかりの日本では、労働力の補充のためにも、労働移民を認めなければならない」ということだ。違法にしろ合法にしろ、移民が増えている欧米では賃金水準の引き下げや労働環境の悪化が問題になっている。
支配層にとって労働移民は労働者の力を削ぐ手段のひとつで、だからこそEUでは移民を規制すべきだという政党への支持が増えているのだ。
介護の現場で問題になっているのは労働力の不足ではなく、低賃金で劣悪な環境で働く若者を集められないことにあり、適切な対価を事業者や労働者へ支払えば解決される。
この問題の根は非正規雇用の増大や残業代ゼロ法案と一緒だ。
非正規雇用の問題でも支配層は働き方の多様化というようなことを宣伝していたが、ならば、賃金だけでなく保険や年金についても同一条件にしなければならない。
勿論、実際は違うわけで、本音は賃金の引き下げと労働環境の劣悪化を推進したいということにほかならない。
曽野のコラムを読むと、「高齢者の面倒を見るのに、ある程度の日本語ができなければならないとか、衛生上の知識がなければならないとかいうことは全くないのだ」と主張している。「優しければそれでいいのだ」という。
介護のためには専門的な知識が必要なのであり、「孫」が面倒を見るにしても、知識を得るために専門家からアドバイスを受ける必要がある。
運動能力を維持させるだけでも専門家と施設が必要だ。こうした知識がなく、経済的な余裕もないことから悲劇が起こってきた。
コミュニケーション能力を無視しているということは、介護者だけでなく、介護を受ける必要のある高齢者の人格を考慮していないということでもある。
「姥捨て」の発想だ。
曽野が想定している労働移民は、賃金の引き下げと労働環境の劣悪化を意味している。
当然、貧困問題が深刻化し、犯罪も増えるだろう。
これは「他民族の心情や文化」の問題ではなく、経済の問題だ。
貧富の差が拡大していけば、アメリカのように居住地域は所得/経済力によって色分けされてくる。
経済力による棲み分けが起こるのが先だ。「高級住宅地」に低所得者は住めない。
曽野綾子は原因と結果を取り違えている。アメリカでは歴史的な背景から人種と経済力に相関関係があり、人種の問題のように見えるが、実際は経済問題。
南アフリカでも同じことが言える。ヨーロッパ系の人びとが先住の人びとを支配するアパルトヘイトと戦ったネルソン・マンデラは1993年にノーベル平和賞を受賞したが、批判の声はある。
彼は政治的な平等を実現するために努力したものの、経済の仕組みが温存されたため、貧富の格差は解消されず、そうした格差に基づく社会不安は解決されなかったからだ。
南アフリカの問題も「他民族の心情や文化」ではなく、経済に根ざしている。
アメリカでは貧困を犯罪にしようという動きもあるが、アパルトヘイトは特定の地域を収容所にするという制度であり、問題を力で封じ込めるという政策だ。現在、イスラエルで導入されている。
「他民族の心情や文化」を強調するのは、被支配者を分断したいからにほかならない。
本来、居住をともにするために理解し合う努力をしなければならないのであり、交流すれば、自然と理解は進む。
そうした理解が進むことを恐れるのは支配層だ。
フランス国王ルイ11世は「分割して支配せよ」と言ったそうだが、互いに反目させ、争わせ、統一的な反対勢力を形成させないようにするのは支配者たちの常套手段である。
ところで、曽野の結婚相手で教育課程審議会の会長を務めたことのある三浦朱門は「ゆとり教育」について次のように語っている:
「平均学力が下がらないようでは、これからの日本はどうにもならんということです。できん者はできんままで結構。
戦後五十年、落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。
百人に一人でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです。」(斎藤貴男著『機会不平等』文藝春秋、2004年)
被支配階級である庶民には「実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです」ということだ。余計なことを考える力をつけさせたくないということだろう。
介護者は「優しければそれでいいのだ」という曽野の主張と共鳴し合っている。
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※ 支配層は支配される大衆には「みんな同じ人間。同じ感情」といい「同じ〇〇人」などと幻を吹き込む。
だが、間違ってもそんなことは信じてはいけない。
支配層は大衆のことを「みんな同じ人間。同じ感情」とか「同じ〇〇人」などとはまるっきり思っていないからである。
「虫けら」くらいにしか思っていない。
大衆が騙されたままなら、思う壺である。
曽野綾子のような頭の悪い者は、背後に虎(米英軍産複合体)がついていることを思い上がって(老人性の認知症か)支配層の考えを露骨に表明してしまっただけである。
差別主義で大衆は虫けらの曽野綾子、夫の三浦市門も同じだ。ギョロ目の爬虫類などと呼ばれる所以である。
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