ユーロの量的緩和はユーロの減価と米国流出へ
2015-01-30
意味のない量的緩和で日本を追う欧州中銀 ユーロ安・円高が進む可能性が高い 1/29 野口悠紀雄 ダイヤモンド・オンライン
1月22日、欧州中央銀行(ECB)が初の量的金融緩和を決定した。
これを受けて、日米欧の株価が上昇した。ユーロ圏の経済状況が好転するとの期待による。果たしてそうした効果が生じるのだろうか?
以下では、量的金融緩和によって、(1)ユーロの対ドル相場を下落させる効果があること。(2)ユーロの対円相場も下落させる(円高になる)可能性もあることを指摘しよう。
ECBの資産残高を12年水準まで戻す
今回の決定の内容は、つぎのとおりだ。
国債を含めて少なくとも1兆1000億ユーロ(約148兆円)の資産を購入する。
ドラギ総裁によると、月600億ユーロ(約8兆円)の資産購入を行なう。これは、事前に市場で予想されていた500億ユーロを上回るものだ。
追加購入分の80%は域内の各国中央銀行の責任で行なわれ、損失の発生に対しては各国中銀が負担する。
緩和の実施期間は当面2016年9月までとしたが、物価上昇率目標2%の達成が見通せるまでは期間以降も緩和を続けるとした。
この決定を受けて、日米欧の株価が上昇した。日本では、日経平均株価が1万7500円を回復し、今年初めて昨年末終値(1万7450円)を上回った。
ECBの資産残高のこれまでの推移は、図表1のとおりだ。12年には3兆ユーロ程度あったが、その後減少し、14年には2兆ユーロ程度になっていた。ECBの今回の決定は、これを12年頃の水準まで戻すことが目的だ。

なお、この間の日銀総資産とFRB総資産の推移は、図表2と図表3に示すとおりだ。
13年の初めに比べると、最近時点の日銀の総資産は約1.8倍に、FRB総資産は約1.3倍に増加している。
このように、これまでの数年間、日米の中央銀行とECBとでは、総資産が対称的な動きを示していたわけである。


物価下落が引き金
今回の決定は、2014年12月に、ユーロ圏の消費者物価指数が、前年同月比0.2%下落とマイナスに転じたことに促されたと言われる。
図表4に見るように、インフレ率は12年頃は2%程度だったが、その後ユーロの増価に伴い、低下していた。

ECBは今回の緩和措置によって、つぎの3つの経路を通じて消費者物価指数の引き上げを狙っていると言われる。
(1)実体経済活動の活発化
(2)株価の値上がり
(3)ユーロの減価
これらのうち、(1)や(2)が実現するかどうかは疑問である。
しかし、(3)が生じることは、ほぼ間違いないと思われる。
実際、スイス中央銀行が15日、スイスフランの対ユーロ増価を抑える無制限介入政策を放棄したのも、ECBの量的緩和実施が確実と予測されたためだ。そうなれば無制限介入に無理があると判断されたのである。
ただし、原油価格が下落しているため、原油以外の輸入価格が上昇したとしても、消費物価上昇率がプラスに転じるかどうかは分からない。この点は、日本と同じ状況だ。
また、仮に物価上昇率がプラスになったとしても、それによってユーロ圏が抱えている実体経済の問題が解決されるわけではない。
ECBは、日本銀行が犯したのと同じ道を歩もうとしているわけだ。
以下では、為替レートの問題に絞って検討を行なおう。
ドルに対するユーロ安が今後も進行する可能性は高い
金融緩和が通貨を減価させるメカニズムとして教科書に書いてあるのは、「マネーストックが増加してマネーに対する需給が緩和し、金利が低下して資本流出を招き、通貨が減価する」というものだ。
しかし、ここ数年の量的緩和は、日本でもアメリカでも、マネーストックを顕著には増加させていない。
それにもかかわらず金利は低下している。
これは、教科書的なメカニズムではなく、中央銀行が国債市場で大量の国債を購入することの直接的な結果と考えられる。
それが金利を低下させて通貨の減価を引き起しているのだ。
このことから、「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えが為替市場で支配的になってきた。
実際、図表1、図表2、図表3に示す中央銀行資産の推移と、図表5に示す為替レートの推移を見ると、中央銀行の資産の変化と為替レートの変動が強く相関していることが分かる。

ユーロの対ドルレートを見ると、2012年8月頃には1ユーロ=1.2ドル程度であったが、ECBの資産減少とFRBの資産増加に伴ってユーロが増価し、14年4月頃には、1ユーロ=1.38ドル程度になった。
ECBが今後資産を拡大していくことで、この関係が大きく変わる。FRBが金融緩和を終了したので、今後はFRBの資産は増えない。
したがって、ドルに対してユーロが下落することになる。
ユーロの下落は、すでに生じている。すなわち、14年5月頃には1ユーロ=1.4ドル程度にまでなっていたユーロの対ドル相場は、最近では1.15ドル台にまで下落している。
これは、13年以来の安値圏だ。
こうしたことから、16年末までに、02年以来の「パリティ」(1ユーロ=1ドル)が実現するとの見通しもある。
この半年間の動きからしても、また米欧金融政策の動きからしても、それはありうる事態だと思われる。
ただし、ここでつぎの点に注意する必要がある。
それは、マーケットはすでに以上で述べた条件変化を読み込み、為替レートに反映させてしまっている可能性が強いことだ。
為替市場においては、現時点で利用可能な情報は、すべて価格に反映されていると考えるのが自然だ。
そうだとすれば、今後のユーロレートは、現時点では得られない情報(例えば、ギリシャの情勢)などによってしか動かないということになる。
なお、ユーロ圏での物価上昇率が低下したのは、これまでドルに対してユーロが増価したためだ(日本における10~12年頃の状況と同じである)。
すでに述べたように、今後ユーロがドルに対して減価すれば、その状態は変わるだろう。
円高ユーロ安になる可能性が強い
ユーロ・円相場については、どうであろうか?
図表6に示すこれまでの推移を見ると、つぎのとおりだ。
リーマンショック前には1ユーロ=160円を超えていたユーロ相場は、リーマンショック以後継続的に低下し、12年夏には1ユーロ=100円を割り込む水準まで円高・ユーロ安になっていた。
しかし、そこをボトムとしてユーロは増価し、2013年12月には1ユーロ=140円を超える水準まで円安・ユーロ高が進んだ。これは、最初はECBの資産の減少と、13年以降は日銀の資産増加とも相関している。
しかし、14年12月に1ユーロ=150円近くまでになっていたユーロの対円相場は、その後急激に下がった。1月15日のスイス中銀の決定の影響と言われることがあるのだが、下落は12月初めから生じていたことに注意が必要である。

最近のレートは1ユーロ=136円程度だ。13年11月頃の水準にまで戻ったことになる。ただし、現在のところは、対ドルのような大幅なユーロ安にはなっていない。
(※ 現在はさらに130円に下落した。)
しかし、ユーロが対ドルで大きく下落すると、円に対しても下落する可能性がある。
仮に1ユーロ=1ドルが実現すれば、1ドル=130円なら1ユーロ=130円になるし、1ドル=120円なら1ユーロ=120円になる。1ユーロ=120円というのは、13年1月月頃の水準だ。
(※ 現在120円になっていることは、ユーロ自体として円に対しての下落が始まっている。)
つまり、円がドルに対して今後大幅に円安にならないかぎり、円ユーロレートはかなりの円高にならざるをえないのである。
では、どちらが実現するか? 為替レートの将来を予測するのは原理的に不可能なのだが、仮に「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えに従えば、つぎのようになる。
前述のように、ECBの資産拡大ペースは、月600億ユーロだ。これは、年0.72兆ユーロに相当する。現在の資産総額は、2.19兆ユーロなので、これが、1年後には2.91兆ユーロと1.33倍になる。仮にその後も継続すれば、2年後には3.63兆ユーロと1.66倍になる。
他方で日銀は、14年10月31日に開いた金融政策決定会合において、マネタリーベースの年間増加額を約80兆円とし、中長期国債の買い入れペースを年約80兆円にするとした。仮にそれに等しいペースで総資産が増大するとすれば、現在300兆円である総資産残高は、1年後には380兆円と1.27倍になり、2年後には460兆円と1.53倍になる。
このように、ECBの拡大ペースは日銀のそれを上回る。したがって、円高ユーロ安になる。
ただし、対ドル相場について述べたように、こうした情報はすでに市場に織り込み済みかもしれない。
前述した12月初めからのユーロ安は、そうしたメカニズムで生じた可能性もある。
日銀が追加緩和をすればこの関係は変わる。しかし、国内の国債市場はすでに飽和状態なので、第2次追加緩和は難しいだろう。
スイス中銀の決定の際には、ユーロ安・円高が生じ、日本の株価下落をもたらした。同じことが今後起こる可能性がある。
ところが、日本の株式市場は、そうした事態を考えていないようである。
ECBの量的緩和のニュースを受けてソニーの株価は上昇した。同社は欧州事業の比率が高いため、ユーロ圏の景気回復期待が買いにつながったとされる。
しかし、そうなるかどうか、疑問だ。今回の措置は、欧州に対する輸出の採算を悪化させる効果のほうが大きいだろう。
そうなれば、欧州関連銘柄を中心に日本の株価を下げる要因になる可能性がある。
「現時点で利用可能な情報はすべて価格に正しく反映する」というのが、効率的市場の条件だ。
日本の株式市場を果たして効率的市場と見なしてよいかどうか、大いに疑問だと言わざるをえない。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
※ 前にも書いたが、同じことを書く。
日本同様に、ユーロ圏からの資金流出が激しくなることは疑いない。
ではその資金は何処へ?
これは野口氏のいうとおりだ。
もっぱら米国ドル市場、そしてスイスフラン、わずかに日本円市場ということになる。
米国の量的緩和終了の尻拭いにほかならない。
米国に最も都合の良いECBの量的緩和決定なわけだ。
ECBは日本同様に米国の圧力に負けたわけである。
1月22日、欧州中央銀行(ECB)が初の量的金融緩和を決定した。
これを受けて、日米欧の株価が上昇した。ユーロ圏の経済状況が好転するとの期待による。果たしてそうした効果が生じるのだろうか?
以下では、量的金融緩和によって、(1)ユーロの対ドル相場を下落させる効果があること。(2)ユーロの対円相場も下落させる(円高になる)可能性もあることを指摘しよう。
ECBの資産残高を12年水準まで戻す
今回の決定の内容は、つぎのとおりだ。
国債を含めて少なくとも1兆1000億ユーロ(約148兆円)の資産を購入する。
ドラギ総裁によると、月600億ユーロ(約8兆円)の資産購入を行なう。これは、事前に市場で予想されていた500億ユーロを上回るものだ。
追加購入分の80%は域内の各国中央銀行の責任で行なわれ、損失の発生に対しては各国中銀が負担する。
緩和の実施期間は当面2016年9月までとしたが、物価上昇率目標2%の達成が見通せるまでは期間以降も緩和を続けるとした。
この決定を受けて、日米欧の株価が上昇した。日本では、日経平均株価が1万7500円を回復し、今年初めて昨年末終値(1万7450円)を上回った。
ECBの資産残高のこれまでの推移は、図表1のとおりだ。12年には3兆ユーロ程度あったが、その後減少し、14年には2兆ユーロ程度になっていた。ECBの今回の決定は、これを12年頃の水準まで戻すことが目的だ。

なお、この間の日銀総資産とFRB総資産の推移は、図表2と図表3に示すとおりだ。
13年の初めに比べると、最近時点の日銀の総資産は約1.8倍に、FRB総資産は約1.3倍に増加している。
このように、これまでの数年間、日米の中央銀行とECBとでは、総資産が対称的な動きを示していたわけである。


物価下落が引き金
今回の決定は、2014年12月に、ユーロ圏の消費者物価指数が、前年同月比0.2%下落とマイナスに転じたことに促されたと言われる。
図表4に見るように、インフレ率は12年頃は2%程度だったが、その後ユーロの増価に伴い、低下していた。

ECBは今回の緩和措置によって、つぎの3つの経路を通じて消費者物価指数の引き上げを狙っていると言われる。
(1)実体経済活動の活発化
(2)株価の値上がり
(3)ユーロの減価
これらのうち、(1)や(2)が実現するかどうかは疑問である。
しかし、(3)が生じることは、ほぼ間違いないと思われる。
実際、スイス中央銀行が15日、スイスフランの対ユーロ増価を抑える無制限介入政策を放棄したのも、ECBの量的緩和実施が確実と予測されたためだ。そうなれば無制限介入に無理があると判断されたのである。
ただし、原油価格が下落しているため、原油以外の輸入価格が上昇したとしても、消費物価上昇率がプラスに転じるかどうかは分からない。この点は、日本と同じ状況だ。
また、仮に物価上昇率がプラスになったとしても、それによってユーロ圏が抱えている実体経済の問題が解決されるわけではない。
ECBは、日本銀行が犯したのと同じ道を歩もうとしているわけだ。
以下では、為替レートの問題に絞って検討を行なおう。
ドルに対するユーロ安が今後も進行する可能性は高い
金融緩和が通貨を減価させるメカニズムとして教科書に書いてあるのは、「マネーストックが増加してマネーに対する需給が緩和し、金利が低下して資本流出を招き、通貨が減価する」というものだ。
しかし、ここ数年の量的緩和は、日本でもアメリカでも、マネーストックを顕著には増加させていない。
それにもかかわらず金利は低下している。
これは、教科書的なメカニズムではなく、中央銀行が国債市場で大量の国債を購入することの直接的な結果と考えられる。
それが金利を低下させて通貨の減価を引き起しているのだ。
このことから、「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えが為替市場で支配的になってきた。
実際、図表1、図表2、図表3に示す中央銀行資産の推移と、図表5に示す為替レートの推移を見ると、中央銀行の資産の変化と為替レートの変動が強く相関していることが分かる。

ユーロの対ドルレートを見ると、2012年8月頃には1ユーロ=1.2ドル程度であったが、ECBの資産減少とFRBの資産増加に伴ってユーロが増価し、14年4月頃には、1ユーロ=1.38ドル程度になった。
ECBが今後資産を拡大していくことで、この関係が大きく変わる。FRBが金融緩和を終了したので、今後はFRBの資産は増えない。
したがって、ドルに対してユーロが下落することになる。
ユーロの下落は、すでに生じている。すなわち、14年5月頃には1ユーロ=1.4ドル程度にまでなっていたユーロの対ドル相場は、最近では1.15ドル台にまで下落している。
これは、13年以来の安値圏だ。
こうしたことから、16年末までに、02年以来の「パリティ」(1ユーロ=1ドル)が実現するとの見通しもある。
この半年間の動きからしても、また米欧金融政策の動きからしても、それはありうる事態だと思われる。
ただし、ここでつぎの点に注意する必要がある。
それは、マーケットはすでに以上で述べた条件変化を読み込み、為替レートに反映させてしまっている可能性が強いことだ。
為替市場においては、現時点で利用可能な情報は、すべて価格に反映されていると考えるのが自然だ。
そうだとすれば、今後のユーロレートは、現時点では得られない情報(例えば、ギリシャの情勢)などによってしか動かないということになる。
なお、ユーロ圏での物価上昇率が低下したのは、これまでドルに対してユーロが増価したためだ(日本における10~12年頃の状況と同じである)。
すでに述べたように、今後ユーロがドルに対して減価すれば、その状態は変わるだろう。
円高ユーロ安になる可能性が強い
ユーロ・円相場については、どうであろうか?
図表6に示すこれまでの推移を見ると、つぎのとおりだ。
リーマンショック前には1ユーロ=160円を超えていたユーロ相場は、リーマンショック以後継続的に低下し、12年夏には1ユーロ=100円を割り込む水準まで円高・ユーロ安になっていた。
しかし、そこをボトムとしてユーロは増価し、2013年12月には1ユーロ=140円を超える水準まで円安・ユーロ高が進んだ。これは、最初はECBの資産の減少と、13年以降は日銀の資産増加とも相関している。
しかし、14年12月に1ユーロ=150円近くまでになっていたユーロの対円相場は、その後急激に下がった。1月15日のスイス中銀の決定の影響と言われることがあるのだが、下落は12月初めから生じていたことに注意が必要である。

最近のレートは1ユーロ=136円程度だ。13年11月頃の水準にまで戻ったことになる。ただし、現在のところは、対ドルのような大幅なユーロ安にはなっていない。
(※ 現在はさらに130円に下落した。)
しかし、ユーロが対ドルで大きく下落すると、円に対しても下落する可能性がある。
仮に1ユーロ=1ドルが実現すれば、1ドル=130円なら1ユーロ=130円になるし、1ドル=120円なら1ユーロ=120円になる。1ユーロ=120円というのは、13年1月月頃の水準だ。
(※ 現在120円になっていることは、ユーロ自体として円に対しての下落が始まっている。)
つまり、円がドルに対して今後大幅に円安にならないかぎり、円ユーロレートはかなりの円高にならざるをえないのである。
では、どちらが実現するか? 為替レートの将来を予測するのは原理的に不可能なのだが、仮に「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えに従えば、つぎのようになる。
前述のように、ECBの資産拡大ペースは、月600億ユーロだ。これは、年0.72兆ユーロに相当する。現在の資産総額は、2.19兆ユーロなので、これが、1年後には2.91兆ユーロと1.33倍になる。仮にその後も継続すれば、2年後には3.63兆ユーロと1.66倍になる。
他方で日銀は、14年10月31日に開いた金融政策決定会合において、マネタリーベースの年間増加額を約80兆円とし、中長期国債の買い入れペースを年約80兆円にするとした。仮にそれに等しいペースで総資産が増大するとすれば、現在300兆円である総資産残高は、1年後には380兆円と1.27倍になり、2年後には460兆円と1.53倍になる。
このように、ECBの拡大ペースは日銀のそれを上回る。したがって、円高ユーロ安になる。
ただし、対ドル相場について述べたように、こうした情報はすでに市場に織り込み済みかもしれない。
前述した12月初めからのユーロ安は、そうしたメカニズムで生じた可能性もある。
日銀が追加緩和をすればこの関係は変わる。しかし、国内の国債市場はすでに飽和状態なので、第2次追加緩和は難しいだろう。
スイス中銀の決定の際には、ユーロ安・円高が生じ、日本の株価下落をもたらした。同じことが今後起こる可能性がある。
ところが、日本の株式市場は、そうした事態を考えていないようである。
ECBの量的緩和のニュースを受けてソニーの株価は上昇した。同社は欧州事業の比率が高いため、ユーロ圏の景気回復期待が買いにつながったとされる。
しかし、そうなるかどうか、疑問だ。今回の措置は、欧州に対する輸出の採算を悪化させる効果のほうが大きいだろう。
そうなれば、欧州関連銘柄を中心に日本の株価を下げる要因になる可能性がある。
「現時点で利用可能な情報はすべて価格に正しく反映する」というのが、効率的市場の条件だ。
日本の株式市場を果たして効率的市場と見なしてよいかどうか、大いに疑問だと言わざるをえない。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
※ 前にも書いたが、同じことを書く。
日本同様に、ユーロ圏からの資金流出が激しくなることは疑いない。
ではその資金は何処へ?
これは野口氏のいうとおりだ。
もっぱら米国ドル市場、そしてスイスフラン、わずかに日本円市場ということになる。
米国の量的緩和終了の尻拭いにほかならない。
米国に最も都合の良いECBの量的緩和決定なわけだ。
ECBは日本同様に米国の圧力に負けたわけである。
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沖縄を踏みにじり、暴力で辺野古を強行する政権
2015-01-30

<社説>辺野古作業強行 民意踏みにじる蛮行だ 1//29 琉球新報
沖縄の民意を踏みにじる許しがたい蛮行だ。
国策に異を唱える県民、国民を足蹴(あしげ)にするような安倍政権の専横がここまでまかり通るとは信じられない事態だ。
政府は米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に向け、浮具(フロート)を固定するためのトンブロックを海中に投入した。
それも翁長雄志知事が海上作業の中止を要請した翌日の作業強行である。
翁長知事の要請は、前県政による辺野古埋め立て承認を検証する第三者委員会が結論を出すまでの間は辺野古での作業を見合わせるよう求めたにすぎない。
「辺野古移設ノー」の民意を受けて生まれた翁長県政の当然の要請である。
それすらも聞き入れずに作業を強行する政府の横暴にがくぜんとする。
しかも、県はトンブロック投入が新たな岩礁破壊に当たる可能性があるとして、沖縄防衛局に問い合わせていたという。
自然破壊を懸念する県の照会すら無視し、自らの方針を押し通した。
これほど沖縄の民意に挑戦的だった政権は過去になかったであろう。
27日の衆院本会議で普天間問題について問われた安倍晋三首相は「地元の理解を得ながら普天間の一日も早い返還に向け、安全に留意しながら着実に移設を進めていく」と答弁した。
安倍首相の発言と実際の行動は言行不一致そのものだ。
翁長知事の要請に反した作業強行は「地元の理解」を得る考えなど持ち合わせていないことの表れである。「安全に留意」とも言うが、辺野古沖では海上保安官による暴力行為が横行しているではないか。
安倍首相は「負担軽減に取り組む政府の姿勢が民主主義に反するとは考えていない」とも述べた。
いったい安倍政権のどこが民主的なのだろうか。今沖縄で起きていることは国策への従順を県民に押し付け、反対者を排除する非民主的行為そのものである。
思い起こしてほしい。2013年1月28日、県民代表はオスプレイの配備撤回と普天間県内移設断念を求める「建白書」を安倍首相に手渡した。その末尾には「国民主権国家日本のあり方が問われている」とある。
建白書は辺野古移設反対を求める「オール沖縄」の原点である。
民主主義を掲げるのなら、安倍首相は建白書に込めた沖縄の民意を黙殺することなく、辺野古での作業を即刻中止すべきだ。
ーーーーーーーーーーーーーー
辺野古に数十トンブロック投入 防衛局、作業を強行 1/28 琉球新報
米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で27日、大型クレーン船など作業船計7隻が大浦湾に到着した。
沖縄防衛局は大型クレーン船で浮具(フロート)や浮具を固定するためのトンブロック(数十トン規模のコンクリートブロック)を設置する作業を開始。これまでで最大規模の海上作業となる。
翁長雄志知事は26日に立ち上げた第三者委員会で埋め立て承認の取り消し撤回を視野にした検証期間中、海上作業を見合わせるよう求めていた。政府は要請を聞き入れず作業を強行した格好で、翁長知事は「できる限りの対処をしたい」と反発を強めている。
防衛局は環境影響評価書で「日の出1時間程度後から日没1時間程度前の間に作業を行うよう努める」としてジュゴンなど環境への影響を考慮することを明記した。だが、27日の作業が始まったのは日の出前の午前7時すぎだった。
さらにトンブロックについても県が新たな岩礁破砕に当たる可能性があるとして防衛局に詳細を問い合わせていた。
だが、回答しないまま設置作業を開始。防衛局は「個別の作業には答えられない」としている。
防衛局は27日午前7時すぎ、大型クレーン船2隻と資材運搬用の台船3隻など計7隻を大浦湾に投入した。
作業はキャンプ・シュワブのビーチ沿岸を囲んだフロートの中で行われた。大型クレーン船が何度も向きを変えながら、トンブロックを次々と海中に投下した。
関係者によると今後2、3日かけて施工区域を山形のフロートで囲い、準備が整い次第、事実上の埋め立て工事となる仮設桟橋(岸壁)設置作業を開始する。2月に大型スパット台船を投入し12カ所の海底ボーリング調査を実施する予定。
海上の作業現場は臨時制限区域を明示するために設置された油防止膜(オイルフェンス)で囲われている。
海上保安庁の巡視船が警戒する中、移設に反対する市民らは作業現場に近づけなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※ 保守革新を超えた基地反対が自民、民主の裏切りを許さずに、オール沖縄の翁長知事の実現と自民の小選挙区全滅に結びついた。
野党共闘の土台となったのが、オスプレイ配置をきっかけとした、東京抗議集会であり、「建白書」である。
反自民の保守を含めたオール沖縄はこの建白書から始まり、この建白書を追求しているものである。
「建白書」2012/1/27
内閣総理大臣安倍晋三殿
危険な飛行場に開発段階から事故を繰り返し、多数に上る死者を出している危険なオスプレイを配備することは、沖縄県民に対する『差別』以外の何ものでもない
沖縄の実情を今一度見つめていただきたい。県民総意の米軍基地からの負担軽減を実行していただきたい」
全文
われわれは、2012年9月9日、日米両政府による垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの強行配備に対し、怒りを込めて抗議し、その撤回を求めるため、10万余の県民が結集して「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」を開催した。
にもかかわらず、日米両政府は、沖縄県民の総意を踏みにじり、県民大会からわずかひと月もたたない10月1日、オスプレイを強行配備した。
沖縄は、米軍基地の存在ゆえに幾多の基地被害をこうむり、1972年の復帰後だけでも、米軍人等の刑法犯罪件数が6千件近くに上る。
沖縄県民は、米軍による事件・事故、騒音被害が後を絶たない状況であることを機会あるごとに申し上げ、政府も熟知しているはずである。
とくに米軍普天間飛行場は市街地の真ん中に居座り続け、県民の生命・財産を脅かしている世界一危険な飛行場であり、日米両政府もそのことを認識しているはずである。
このような危険な飛行場に、開発段階から事故を繰り返し、多数にのぼる死者をだしている危険なオスプレイを配備することは、沖縄県民に対する「差別」以外なにものでもない。現に米本国やハワイにおいては、騒音に対する住民への考慮などにより訓練が中止されている。
沖縄ではすでに、配備された10月から11月の2カ月間の県・市町村による監視において300件超の安全確保違反が目視されている。日米合意は早くも破綻していると言わざるを得ない。
その上、普天間基地に今年7月までに米軍計画による残り12機の配備を行い、さらには2014年から2016年にかけて米空軍嘉手納基地に特殊作戦用離着陸輸送機CV22オスプレイの配備が明らかになった。言語道断である。
オスプレイが沖縄に配備された昨年は、いみじくも祖国日本に復帰して40年目という節目の年であった。
古来琉球から息づく歴史、文化を継承しつつも、また私たちは日本の一員としてこの国の発展を共に願ってもきた。
この復帰40年目の沖縄で、米軍はいまだ占領地でもあるかのごとく傍若無人に振る舞っている。国民主権国家日本のあり方が問われている。
安倍晋三内閣総理大臣殿。
沖縄の実情をいま一度見つめていただきたい。沖縄県民総意の米軍基地からの「負担軽減」を実行していただきたい。
以下、オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会実行委員会、沖縄県議会、沖縄県市町村関係4団体、市町村、市町村議会の連名において建白書を提出致します。
1.オスプレイの配備を直ちに撤回すること。および今年7月までに配備されるとしている12機の配備を中止すること。また嘉手納基地への特殊作戦用垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの配備計画を直ちに撤回すること。
2.米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること。
沖縄の全41市町村長らが署名
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70年間平和だった日本、戦争に加担するのかの分水嶺に立つ日本:山田
2015-01-30

イスラム国を「敵」とするのか 分水嶺に立つ日本外交 1/29 山田厚史 ダイヤモンド・オンライン
オバマ大統領は国の方針を示す一般教書演説で「イスラム国を壊滅させるため、国際社会で主導的な役割を果たす」との決意を述べた。
アメリカはイスラム国を「敵」として位置付ける。では日本はどうなのか。
イスラム国を敵とするのか。これまで国際社会に敵を作らない国、それが日本だった。
安倍首相の積極的平和主義は世界を敵と味方に分ける発想だ。日本外交はいま分水嶺に立っている。
同じ価値観という大義の危うさ
「日本の首相よ、お前はイスラム国から8500キロも離れているのに、自発的に十字軍に参加した。女性や子どもを殺し、イスラム教徒の家を破壊するために、日本は1億ドルを得意げに差し出した」
人質を前に黒装束の男が発したメッセージだ。罪もない人質を殺す残酷非道なやり方は言語道断だが、日本という国が彼らからどう見られていのか、この言葉でよく分かる。
「十字軍」は日本ではカッコいいイメージがある。犠牲的精神を秘め、聖地奪還に赴く騎士団という崇高さが漂う。
ハリウッド映画の影響かもしれないが、イスラムの人たちにとっては、遠くからやって来て人を殺し、家を焼いた侵略者だ。
イラク・シリアで空爆を続ける有志連合はさしずめ現代の十字軍と彼らの目には映るだろう。
キリスト教もイスラム教も、一神教であるが故に「異教徒は殺してもよい」と曲解されかねない一面もある。
その理解に立てば、シロ・クロをはっきり分けがちだ。
日本の国柄は、ちょっと違うように思う。
敵味方を峻別しない。異教徒は殺せ、という精神風土でもない。少なくとも戦後の日本は国際社会に「殲滅すべき敵」はいなかった。
安倍首相の積極的平和外交は、地球儀俯瞰外交とか価値観外交ともいわれる。
地球を眺め、同じ価値観の国と一緒になって、世界の秩序作りに積極的に参加する、ということだろう。キーワードは、共通価値観・秩序作り・積極参加である。
共通の価値観は、法の支配、人権の尊重、民主主義、市場経済など。
西欧のキリスト教文化を下地にした生まれた近代の価値観である。
だがこの価値観が一方では帝国主義・植民地主義を生んだ。先進国の都合で勝手に敷かれた国境線でイスラム社会は分断された。
積極的平和主義の裏に潜む「軍事活動」
世界には別の価値観もある。その折り合いをどうつけるか、そこが秩序作りのポイントになるはずだ。
秩序作りの中心にいるのがアメリカである。
この国を除いて世界の秩序は語れないが、かなり風変わりな国である。
欧州で迫害された新教徒が移り住んだ地で、先住民族と戦いながら生活圏を広げてきた人たちが作った国だ。
確固たる価値観を持つが、他国にも押し付ける。そして国際紛争を武力で解決することをいとわない。
無法や非道を見つけると、よその国でも踏み込み「世界の保安官」といわれるが、逆の立場から見れば侵略である。侵略者とされないのは、掲げる価値観を多くの国に認めさせる外交力があるからだ。
日本は国際紛争の解決を武力に訴えない、と憲法に定める稀有な国だ。アメリカ式の紛争解決にはなじまない。
民主主義や市場経済で一致しても「国際紛争を武力で解決する」という考えは日本と相容れない。「共通の価値観」と一括りにするのは無理がある。
積極的平和主義の危うさは、積極的という言葉の裏に「軍事活動」が刷り込まれていることだ。
平和外交は、これまでも日本の基軸だった。安倍首相はこれまでの日本を「消極的平和外交」と見ているのだろう。
憲法が妨げになっているなら、憲法を変えよう、という考えだ。
集団的自衛権はその一歩である。憲法解釈を変えて閣議決定で決めたのは、憲法を空洞化し、改正へ向けた既成事実作りだろう。
それは「誤解」だと言えるか
26日から始まった国会には、集団的自衛権の行使容認に沿った安全保障法制の改正案が提出される。
自衛隊の海外派兵を簡便にできるようにするなど、軍事貢献を伴った外交へと着々と進んでいる。
援助にも軍事の色が滲む。
安倍政権が定めた「開発協力大綱」は、これまでのODA大綱が封印していた軍事援助に道を開いた。
戦車や戦闘機など戦闘に直接つながる機材や物資は援助できないが、災害活動や沿岸警備、軍人の留学資金などなら援助の対象にできるようルールを変えた。
軍事転用される可能性は否定できない。抜け穴を作ってかいくぐる憲法の空洞化は、援助でも進んでいる。
イスラム国が指弾したのも援助だった。
人道支援だと政府は言っても、カネに色はついていない。イスラム国と戦う国に2億ドル出す、といえば軍事支援と同じに見られるだろう。
日本政府はイスラム国を攻撃する有志連合には加わっていない。日本の国民もイスラム国を困りものと思ってはいても「敵」とは見ていない。そこはアメリカと違う。
だがイスラム国は日本を「敵」とみなし始めている。すくなくとも「敵の仲間」と見ている。
それは違う、誤解だ、と日本はいえるだろうか。
なぜイスラム国から「敵視」されるのか
日本のイスラム団体「イスラミックセンター」は、日本とイスラムは良好な関係にあることを次の5点にまとめ世界に発信した。
(1)イスラエルと闘うパレスチナに理解がある
(2)パレスチナに対する最大の援助国
(3)イスラム教徒が日本で平穏に暮らせる
(4)宗教活動に政府は干渉しない
(5)イスラム国を含め、いかなる国に対しても宣戦布告をしない唯一の国
大多数のイスラム教徒は穏健で平和を愛している。
欧米で冷ややかな視線を受ける彼らにとって日本は居心地のいい社会だろう。日本人もまたイスラム教徒を受け入れている。
日本は中東で手を汚していない。イスラム教徒と戦ったことはない。
人々は平穏な関係にありながら、イスラム国から「敵視」を受けるのは日本の外交が変わってきたからだ。
発端はイラク戦争への加担だった。
2003年3月、国際社会の支持がないままイラク攻撃に踏み切ろうとした米国を、真っ先に支持表明したのは時の小泉首相だった。
陸上自衛隊はイラクのサマワに入り給水、航空自衛隊は兵員の空輸、海上自衛隊はインド洋で艦船への給油(こちらのきかっけはアフガン戦争)で協力した。
陸海空挙げての後方支援に取り組んだ。
攻撃の口実とされた大量破壊兵器は存在せず、武力行使の大義名分は失われたがイラクの政権は倒され、フセイン大統領は処刑された。
日本はアメリカの戦争に加担した。
憲法の制約があって戦闘には加われないが、アメリカの後ろにいてカネと役務で協力する国と見られるようになった。
アメリカはイスラム国を殲滅すると宣言した。
有志連合を束ねて2000回を超える空爆をしている。ピンポイントのミサイル攻撃で指導者を殺害している。「テロとの戦い」の戦場となったイスラム国の支配地で、非戦闘員も含め多くの命が失われている。
人質をとって殺害するのは残虐極まりない。だが空爆やミサイル攻撃でもっと大規模に命が消されている。
原油施設を破壊され、輸送ルートも断たれたイスラム国は、原油価格の低下も重なり兵士を養うことが苦しくなっている、とも言われる。
アメリカはイラク北部のクルド族をけしかけて攻撃させているが、決定的な勝利には米軍の地上部隊を投入することが欠かせないといわれる。
日本はルビコン川を渡るのか
有志連合が地上戦に踏み切る時、日本はどうするのか。
アメリカは協力を求めるだろう。だが行使容認された集団自衛権でも中東への戦闘部隊の派遣は難しい。浮上するのはイラク攻撃と同様、後方支援ではないか。
正面から戦えないイスラム国勢力は、手薄なところを狙うゲリラや民衆に紛れた自爆テロで対抗するしかない。
後方支援は危ない。
戦争が終わって70年。この間、日本は戦地で誰も殺さず、一人の犠牲者も出さなかった。
だがイスラム国との戦いに参加すれば、この大記録に終止符が打たれることになるかもしれない。
戦場で血が流れた時、世論はどう動くのか。
イスラム国の人質になっていた湯川遙菜さんは殺害された可能性が高い。過激派イスラム国の残虐性への怒りが高まっている。
この原稿がアップされるころには後藤健二さんの運命は決まっているかもしれない。人質殺害は「日本にとっての9・11」という見方もある。
同時多発テロの一撃でアメリカの世論は激高し、一気に戦争へなだれ込んだ。
フランスでは「シャルリー・エブドの惨事」がテロとの戦争へと政権を走らせた。
目の前に血を見ると人々は冷静でいられない。
日本の平和外交は、いま分水嶺にある。国際紛争を武力で解決する国になるのか。敵を作り戦いに参加するか。
安倍政権は、アメリカと共に戦う国になることで、世界秩序の維持・形成に貢献したいと思っているようだ。
そのために血を流すこともいとわない国になることが、国際社会でしかるべき地位につける、と考えているようだ。それが「普通の国」であると。
アメリカやNATO参加国はそうした考えだろう。日本は異質であってはいけないのか。
文明の衝突がいわれる。
G20の時代ともいわれる。
20世紀を牽引した欧米の先進国の価値だけで世界が動く時代ではなくなっている。
日本の立ち位置が問われている。
多くの国民は、イスラム社会と仲良くしたい、と思っている。
イスラム過激派を敵に回したくない、とも考えている。
アメリカは一緒に戦おうと誘うだろう。いままでそうだった。
平和憲法があって、と言い訳しながら、日本は従う一方で武力行使は回避してきた。
これからも従うのか。安倍首相は自らの意思で協力するかもしれない。
それはルビコン川を渡ることだ。
日本も「国際紛争を武力で解決する国」の仲間に入ることになる。
「敵」は殲滅するしかないのか。
世界はシロかクロかで分けられない。その間をゆく国のかじ取りはないのだろうか。
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※ 70年間平和だった日本を本当に大好きでした。
「「平和な日本が好きだった」集団的自衛権に抗議の焼身自殺未遂男性」。
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