ギリシャ国民は「緊縮」に反対する、急進左派連合が勝利
2015-01-26

1月26日、25日投票のギリシャ総選挙では、最大野党の反緊縮派、急進左派連合(SYRIZA)が300議席中149─151議席を獲得する見通しとなった。写真は、SYRIZAのチプラス党首、25日撮影(2015年 ロイター/Marko Djurica)
ギリシャ総選挙、急進左派陣営が勝利へ 1/26 ロイター 東洋経済オンライン
チプラス党首「緊縮終わった」
[アテネ 25日 ロイター] - 25日投票のギリシャ総選挙は、開票率およそ92%の段階で、最大野党の反緊縮派、急進左派連合(SYRIZA)が300議席中149議席を獲得する見通しとなった。
得票率は36.3%で、サマラス首相率いる与党・新民主主義党(ND)を約8.5ポイント上回っている。
サマラス首相は敗北を認めた。しかし、急進左派が単独過半数である151議席を獲得したのかどうかは、最終結果を待つ必要がある。
急進左派のチプラス党首は支持者を前に勝利宣言。国際支援団体が課した財政緊縮という「屈辱と苦難の日々」は終わったと表明した。
急進左派が政権を獲得すれば、緊縮を求めるドイツなどとの軋轢が深まり、70億ユーロ超の次回の支援策実施が不透明になりかねない。
急進左派のスポークスマンによると、サマラス首相はチプラス党首に電話をかけ、総選挙での勝利に祝意を伝えた。
ギリシャでは失業率が25%を超え、貧困に苦しむ人も多い。国民の間で「緊縮疲れ」が広がる中、急進左派は急速に支持を伸ばした。
チプラス党首は「壊滅的な緊縮は終わった。恐怖と独裁、屈辱と苦難の日々は終わった」と宣言。
「公平かつ、相互の利益となるような解決策」に向けて、ユーロ圏指導者と協力する、との姿勢を示したが「ギリシャと国民が失った尊厳を回復することを優先する」と述べた。
チプラス党首は債務再交渉を公約に掲げるが、欧州委員会・欧州中央銀行(ECB)・国際通貨基金(IMF)の「トロイカ」はギリシャに支援条件順守を要求。
チプラス党首はユーロにはとどまる方針を示しており、反緊縮の主張も以前よりトーンダウンしているが、「チプラス首相」が誕生すればユーロ圏は難しい対応を迫られることになる。
ギリシャ向け支援の期限は2月28日。チプラス党首にとって喫緊の課題は、70億ユーロ超の救済資金支給をめぐる不透明感を払しょくすることだ。
EU財務相は26日、ギリシャ支援について協議する。
キャメロン英首相は、ギリシャ総選挙の暫定結果についてツイッターでコメント。欧州経済に不透明感が広がりかねないと警告した。
フランスのオランド大統領は声明を発表し、チプラス党首に祝意を示したうえで、ユーロ圏の成長と安定のため協力する姿勢を示した。
急進左派勝利の暫定結果に市場は神経質な動きを見せた。朝方のアジア市場ではユーロが11年ぶり安値に接近。米株先物も下落した。
急進左派が第1党になることがほぼ確実になった今、注目されるのは単独過半数を獲得するのかどうかだ。単独過半数に届かない場合、他の政党と連立を組むか、少数与党として政権を樹立することになる。
連立などを模索する交渉は、すぐにでも始まる見通しであり、小政党「独立ギリシャ人」のカンメノス党首と、中道政党「ポタミ」のセオドラキス党首は、急進左派への支持に前向きな姿勢を表明している。
ドイツ与党の有力議員であるヴォルフガング・ボスバッハ氏は、総選挙の暫定結果について、ギリシャ国民が緊縮を拒否したことを示す、と述べる一方、欧州は受け入れることはできない、と表明した。
独紙に対して「合意の破棄を認めることはできない。危機に見舞われたほかの国に対して、完全に誤ったメッセージを送ることになる」と指摘した。
ギリシャは借り入れコストが非常に高いため、市場での資金調達が事実上、不可能になっている。向こう数カ月に必要な資金は確保しているとされるが、夏にかけて100億ユーロの債務が返済期限を迎える。
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小沢氏1/25NHK:安倍中東発言は宣戦布告、アベノミクスは今年中に破綻
2015-01-26

NHKテレビ ラジオ第1 日曜討論 ヴィディオ出演
2015年1月24日(土)以前に収録のヴィディオを25日(日)午前10:33~10:38に 放送 1/25 書き起こし「銅のはしご」氏から
【 「イスラム国」の日本人拘束の政府対応 】
NHK島田敏男 解説委員 ; まず,2人の日本人が拘束されているあの事件への政府の対応。政府には,どのような対応を求めていきます?
小沢一郎 代表
今回の事件は,結局,安倍さんが,わざわざあっちまで行ってですね,彼ら 「イスラム国 」にとっては宣戦布告とも言えるような,記者会見で話しをしたということですね。
いわゆる「イスラム国」と戦う周辺各国に援助すると。こういう言い方を(安倍総理が)したらしいんですね。
これは,彼らにとっては,まさに自分たちの敵を援助するということですから,当然,日本も,自分たちの敵だということに捉えられて,仕方がない,しょうがないと思うんです。
ただこの問題で,政府の対応といっても アタフタしてるだけでね,どうしていいか分かんないのが実態だと思いますけれど。
日本国民が,考えなくてはならない2つの問題が提起されたと思うんです。
1つは,やっぱりこれはまさに集団的自衛権の(問題)と同じことなんですね。
今回は,アメリカを中心とした有志連合と言いますか,それと同じ立場で 「イスラム国」に敵対して,その人たちを援助するということですから。そういう意味で集団的自衛権のことを,もう少し真剣に日本人は考えなくちゃいけない。
もう1つは,その言い訳に,「人道援助」であって<苦笑しつつ>,弾薬や武器を(送るわけじゃない),あるいは軍隊を送るわけじゃないよと,こう言ってますけれども,戦争というのは,ドンパチするだけが戦争じゃありませんので。
その一番大事な要素というのは,要するに補給なんですね。 食糧を補給,ご飯食べなきゃ,兵隊さんは戦争できませんから。
ですから,食糧を送る「人道支援」という名前で言おうが何しようが,後方支援,補給というのが,戦争そのものだということをね,
わたくしは,この2点を今回の事件で,むしろ国民は考えるべきだと思うし,政府も曖昧な誤魔化しの話しは止めるべきだと思います。
【 生活の党と山本太郎となかまたち 】
NHK島田 解説委員 ; そして去年の衆議院選挙の後ですね,山本太郎・参議院議員が加わりましたね。
小沢一郎 代表
はい。<笑顔>
NHK島田 解説委員 ; そして,党名も変わったわけなんですけれども。これ,どうなんでしょう。政策の方向性とか,そういったところに変化は出てくるのか。それとも,ないのか。
小沢一郎 代表
政策的なことも,党の運営のことについても,山本太郎さんは「まったく今まで通りで,自分も同感です,同意です」 と言う話しで。
むしろ今回はですね,我々生活の党とそれから山本(太郎)さんのグループとの連合体みたいなものでして,その意味では,我々 生活の党としての今後の活動,考え方,それは一切変わらない。
ただ,政党要件を満たしませんと,お金の話しだけじゃなくて,こういうような場<党首討論などのテレビ番組ほか>にも 出られなくなっちゃいますんで。
そういう意味で,政党としての継続性を求めた結果だということです。
【 2015年 政治はどう動く 】
NHK島田 解説委員 ; 一強多弱,自民党が飛び抜けて多数を占めている。
小沢一郎 代表
はい。
NHK島田 解説委員 ; この状況を打破するために,何が一番重要とお考えですか。
小沢一郎 代表
一番はやっぱり,野党で1(位と)2位の民主党そして維新。この2つの野党が協力して,自公とちゃんと相対するという強い姿勢を取ることが,その他の野党をずっと纏めていく上にも一番大事なことだと思います。
【 「アベノミクス」と安倍内閣をどう見るか 】
NHK中川 緑アナウンサー ; 今の安倍政権になって2年が過ぎましたけれども,「アベノミクス」のこれまでというのは,どのように見ていますか。
小沢一郎 代表
結局今になって,もう「アベノミクス」というものは,全く失敗だったと。
庶民,国民一般の皆さんにとっては,何の益も無かったということが,肌身で皆さん,感じつつあるんじゃないでしょうか。
格差はどんどん開いておりますし,また,景気はさっぱり良くならない,ということでですね,
わたくしはいずれ今年中に「アベノミクス」の破綻と,そして安倍内閣への不信が,国民の間で芽生えてくるんじゃないかと思います。
【 戦後70年・総理談話は 】
NHK島田 解説委員 ; 今年は戦後70年の節目の年ですね。で,安倍総理も総理大臣談話として,今の時代についてですね,新たなコメントを出すという構えのようなんですけれども,小沢さんは,その総理大臣談話,新しい70年のもの,どのようにあるべきとお考えですか。
小沢一郎 代表
僕はね,やっぱり,はっきりと歴史の事実は事実として認めると。 その上に立っての将来展望ということであるべきで。
安倍さんも,もう少しね,自分の心の中のことを素直に,正直に話しをしないと,いけないんじゃないかなと。
今さっき言った集団的自衛権のことであれ何であれもう,言葉で誤魔化して何とか言い訳しよういう,そういうやり方は良くない。
一強多弱と呼ばれるぐらいね,議席あるんですから。もっと本当にこう思うというんなら,自信持って,はっきりした明確な言動を取るべきだ。
それがトップ・リーダーの役割じゃないかと思いますね。
NHK島田 解説委員 ; 村山総理の時からの 「痛切なお詫び」 といった文言の踏襲,これは必ずしも求めないんですか。
小沢一郎 代表
いや。ですからそれは,安倍さん自身の考え方ですが。(※ 誤魔化し言葉を止めて自分の考えを正直に述べよ。といったとおり。)
私は,歴史の事実は事実としてはっきりと認め,お詫びするところは,するべし。
その上でのきちんとした友好関係・協力関係ということであるべきだと思いますね。<毅然として厳しい表情で>
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ISISの背後に米国軍産複合体とイスラエル、仕組まれたシナリオ
2015-01-26

安倍イスラエル訪問とISIS人質事件 1/23 田中宇
1月20日、日本の安倍首相がちょうど中東のイスラエルを訪問している最中に、同じ中東のイスラム過激派組織ISIS(イスラム国、ISIL)が、昨秋から人質にしている日本人2人の動画を公開し、2億ドルの身代金を日本政府に要求してきた。
2億ドルという身代金の額は、安倍首相が今回の中東歴訪のみやげとして、ISISと戦う資金として中東諸国に出すと表明した支援金と同じ額だ。
日本が出す2億ドルは軍事支援でなく、国境警備強化や(貧困がイスラム過激派を生んでいるという理屈に基づく)貧困対策など、行政施策に使う資金の支出だと日本政府は釈明している。
しかし、日本が出す2億ドルがISISを弱体化するための支援金であることに違いはなく、ISISはこの点を突いて「そのカネをこっちによこせ。さもなくば2人を殺す」と脅してきた。 (安倍総理大臣のイスラエル訪問)
イスラエルのハアレツ紙は、安倍がイスラエルにくるたびに人質事件と戦争が起きると皮肉った。
安倍が前回首相だった06年にイスラエルを訪問した際には、2人のイスラエル軍兵士がヒズボラに誘拐され、それを機にイスラエルとレバノンの戦争が勃発した。
今回は日本人人質事件だけでなく、安倍がイスラエルに到着した日、イスラエル軍機がシリア領内に侵入してヒズボラとイランの要員を空爆し殺害する戦闘も起きた。
(ヒズボラやイラン要員は、アサド政権を支援してISISと戦うためにシリアにいた。イスラエルの空爆はISISを支援する効果をあげている)
安倍のイスラエル訪問は、経済関係の強化が主眼だった。
「平和憲法」を持つ「経済大国」(いずれも終わりかけているが)として、軍事や敵対に首を突っ込まず経済だけに注力する姿勢だ。
しかし今のイスラエルは、ガザ戦争や西岸でのパレスチナ人弾圧を国際的に人権侵害(人道の罪、戦争犯罪)と非難され、最大の貿易相手だったEUは経済制裁を強めている。
イスラエルは、EUに代わる貿易相手を探すのに必死だ。
そこに日本の安倍首相が、おそらく米国のタカ派政治家から頼まれ、経済関係を強化すると言ってイスラエルを訪問した。
日本は、戦争犯罪を犯して国際制裁されて罰せられそうなイスラエルに抜け道を用意してやった。すばらしい平和主義だ。
今回の安倍首相の中東歴訪は、エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ(自治政府、PA)を回った。イスラエルだけに行ったのでない。
しかしヨルダンもエジプトもPAも比較的親イスラエルで、これらの国の政権が、日本から資金をもらって守られる(反イスラエルの政権に転じない)ことは、イスラエルの国家安全を守るために不可欠だ。
安倍のイスラエル訪問は、3月に予定されているイスラエルの総選挙で、負けそうなネタニヤフを応援する効果ももたらした。
3月17日に予定されている総選挙では、国際制裁を無視して違法入植地を広げたり和平交渉を潰したりイスラエル国内のアラブ系住民の市民権を剥奪したがる右派を率いるネタニヤフ首相が、和平交渉の必要性を訴える中道派に破れそうになっている。 (New polls put center-left bloc ahead of Netanyahu's Likud)
イスラエル右派の米政治団体(AIPACなど)に牛耳られる傾向が強い米議会は、ネタニヤフの挽回を助けようと、2月11日にネタニヤフを米議会に招待して反イランの演説をしてもらうことに決めた。
イランはイスラエルの仇敵だが、オバマ大統領はイランと和解しようとしている。
ネタニヤフを呼んで演説させ、オバマを非難するのが米議会の狙いだ。
オバマは「3月の選挙に近すぎる日程での訪米であり、選挙に影響を与えたくないので会わない」という口実でネタニヤフとの会談を断った。 (Netanyahu's Iran speech in Congress is a recipe for an explosive U.S.-Israel clash)
オバマとイスラエルの不仲は昨秋から露呈している。
米政界は、イスラエル右派に牛耳られ続ける米議会と、イスラエル支配を脱却しようとするオバマとの政争が激化し、一枚岩でなくなっている。
日本(権力を握る官僚機構)の国是は対米従属であり、官僚を無力化しようとした民主党政権の反動で官僚の傀儡として成立した安倍政権は特にその傾向が強い。
米国の上層部が分裂する中で安倍は、オバマでなく議会を牛耳る軍産イスラエル複合体を従属の対象とみなしているようだ。
EUやオバマがネタニヤフを嫌う中で、安倍がイスラエルを訪問したことから、それがうかがえる。
偶然だろうが、安倍と同時期にマケイン上院議員ら米議会のタカ派議員たちがイスラエルを訪問しており、安倍はイスラエルでマケインらと会って懇談した。
マケインは以前、シリアを訪問して反アサド武装勢力と面談して鼓舞し、その中にのちにISISの幹部になる人々が含まれていたことで知られる「隠れISIS支援派」だ。
イスラエルの選挙で中道派が勝つと、パレスチナ和平を再開し、欧州と再和解して国際制裁を避ける策を採りそうだ(右派が全力で妨害するだろうが)。
ネタニヤフが勝つと、和平推進を拒否し、国際法廷(ICC)で有罪になったり経済制裁されるのも無視して、西岸やガザを併合した上でゲットー化する「アパルトヘイト方式の解決」を突き進みそうだ。
他国の指導者が選挙でネタニヤフを勝たせようとすることは、中東和平を妨害し、戦争や弾圧を広げる動きだ。安倍首相は中東歴訪で中東和平の推進を呼びかけ続けたが、実際の効果としては和平を潰したいネタニヤフを応援してしまっている。
安倍がその点を自覚してこの時期にイスラエルを訪問したのかどうかわからない。
たぶん、イスラエル右派とつながっている米国のタカ派議員から圧力をかけられ、対米従属の観点から言いなりになってイスラエルを訪問したのだろう。
石油輸入国である日本は1970年代の石油危機以来、親アラブを貫いてきた。
今回の安倍の中東歴訪は、日本が親アラブから親イスラエルに転じる転換点になるかもしれない。
サウジアラビアなど湾岸産油国は、米国シェール産業を潰す原油安を加速するため、アジア諸国などに原油をどんどん売りたい。
日本が親イスラエルに転じても、サウジは日本に原油を売ってくれる。
日本が米タカ派から圧力を受けて親イスラエルの傾向を強め、その反動としてISISが誘拐した日本人を殺すぞと脅しても、米タカ派やイスラエルが本当にISISやアルカイダの敵であるなら、米イスラエルと協力してISISと戦う安定した構図が存在しうる。
しかし実際は、米タカ派やイスラエルが本当にISISやアルカイダの敵であるかどうか大きな疑問がある。
アルカイダや、それがバージョンアップしたISISは、米タカ派やイスラエルが中東支配に好都合な「敵を演じてくれる勢力」として育て、こっそり支援し続けている疑いが濃い。
正月早々、米軍機がシリアで反ISISの武装勢力に支援する武器を空中から投下したところ「間違って」ISISの駐屯地に武器を投下してしまう事件が起きた。
イラクやイランの軍幹部は、米軍が意図してISISに武器を支援したと考えている。
ISISと最も効果的に戦っているのは米国でなく、イランと、イランに支援されているシリアやイラクの軍隊だ。
米国では、オバマがISISと真剣に戦う気があるようだが、国防総省はISISと戦う気がなく、それに気づいたオバマが現場の司令官に直接攻撃を指揮する傾向を強め、国防総省がオバマを煙たがっている。
この対立の余波で昨年、ヘーゲル前国防長官が辞任した。
NYタイムスの07年の記事によると、国防総省はISISの指導者バグダディが存在しない架空の人物であると知っており、アルカイダがイラクに入り込むために架空の指導者をでっち上げて過激組織(のちのISIS)を作っていると報じている。
米当局は、架空の人物とわかっているのに今もバグダディをISISの最高指導者として発表し続けている。
ゴラン高原の国連監視団によると、イスラエルはシリアで負傷したISISの兵士をゴラン高原経由で自国の病院に受け入れて治療している。
米軍がヨルダンで訓練したシリアの「穏健派反政府兵士」たちが、イスラエル領のゴラン高原を経由してシリアに入り、ISISに合流している。
ISISやアルカイダが、米イスラエルによって敵として作られた勢力であっても、ISISやアルカイダの行動のすべてが米かイスラエルの命令によるものということではない。
しかし、たとえばISISが米欧や日本人を人質にして身代金を要求したり処刑する動画を世界に公開したりするのは、欧州諸国や日本をISISとの戦いに参加せざるを得ない状況にして、それを米国が指導する構造を作り、国際軍が中東にずっと駐留してイスラエルを守ってくれる状況を生み出すことにつながる。
(これまでに発表されている、米欧の人質が処刑されている映像の中には、ISISが合成したニセモノが含まれているとの指摘がある。
ISISを支持して支配地域に入った米欧人が、ISISの存在を誇示するため、自分が殺される光景を撮して世界に発表する画策に賛成し、ニセモノの動画が作られた可能性がある)
フランスでは、仏政府が年末に国連でパレスチナ国家の創設決議案に賛成したり、パレスチナ和平を進めないイスラエルを制裁する態度を強めたところ、年初にパリで反イスラム的な雑誌社やユダヤ教徒向け(コーシェル)のスーパーマーケットが襲撃されるテロが起きた。
国際政治の舞台に立って選挙に勝ちたいネタニヤフは、仏大統領に断られたのにパリのデモに参加し、アフリカの大統領を押しのけて最前列に立った(仏政府は彼が最前列に来ることを事前に認めていたが)。パリのテロ事件をめぐる話は改めて書きたい。
ISISに捕まった日本人を救出するため、日本政府はISISに関する情報を多く持つ(ISISの生みの親である)イスラエルや米国防総省、米タカ派議員など「軍産イスラエル複合体」に頼る傾向を強めざるを得ない。
日本政府が、米イスラエルとISISとの裏のつながりを察知した上で、米タカ派やイスラエルと協調するならまだしも、そうでなく米イスラエルとISISとのつながりを陰謀論扱いして無視して動いているように見えるだけに懸念がつのる。
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