辺野古、暴力で強行する政府権力、県民はケガ人続出
2015-01-31

新基地建設強行で市民にケガ人続出! 直視すべき日本の民主主義の実態 1/31 週プレNEWS
辺野古レポート 【PART1】
沖縄・辺野古で緊迫した情勢が続いている。
選挙で示した新基地建設反対の民意を無視して安倍政権が建設作業を強行、市民らとの衝突が起こっているのだ。市民に複数のケガ人も出ており、このまま行けば最悪の事態も起こり得る。辺野古で今、何が起こっているのか? ノンフィクションライターの渡瀬夏彦氏がその実態を現場からレポート!
***
1月14日から15日未明にかけて、沖縄県名護(なご)市辺野古(へのこ)の米軍海兵隊キャンプ・シュワブの工事車両ゲート前に、100人を超える市民らが結集、ゲート封鎖を試みた。
沖縄の民意を無視して、新基地建設強行の姿勢を崩さない安倍政権(防衛省沖縄防衛局)が、海上作業再開のための資材や重機を真夜中に搬入するという情報を受け、市民有志が駆けつけたのである。
わたしも取材者である以前に、心から新基地建設阻止を願う県民のひとりとして、ゲート前に馳(は)せ参じていた。
市民らは、可動式の蛇腹ゲートにしがみついたり、防衛局が市民の抗議行動妨害のために敷いたギザギザの山型鉄板の上に座り込んだり寝転んだりして抗議・抵抗したが、その数を上回る機動隊員が投入され、市民らと全国から駆けつけた支援者は、あっけなく排除・拘束された。
そうして、15日午前1時半過ぎ、機動隊員によってガードされて造られた、新基地建設強行へのいわば「花道」を、大型重機などを載せたトレーラー、トラック8台が次々に通ってキャンプ・シュワブ内へと入っていった。
わたしはこれが菅義偉(すが・よしひで)官房長官の言う「粛々と」物事を進める手法、民意を無視して新基地建設を強引に進める安倍政権のやり方なのだ、とリアルに実感することができた。
もみくちゃにされた市民らの間からは悲鳴にも似た激しい怒号が起こり、それは沖縄防衛局の職員に対してだけでなく、安倍政権の暴走に加担している県警の警察官たちにも投げつけられていた。
「恥を知れ!」
「あんたたちは今、県民の意思に背いた恥ずかしい仕事をしているんだよーっ」
県民のひとりとしてのわたしも、防衛局の職員ひとりひとりの顔を見ながら、こう語りかけざるを得なかった。
「君たちは、危険だからゲートから離れてください、鉄板に入らないでくださいとわたしたちに言う。そして警察を味方につけて強制排除する。
しかし、沖縄県民は正々堂々と選挙を通じて、何度も繰り返し、新基地建設は許さない、という意思をはっきりさせているんだよ。
その民意を完全に無視して、危険な状態をつくり出しているのは君たちのほうなんだ。君たちこそ、罪深い仕事をしていることを恥じるべきだ。そのことだけは覚えておきなさい」
防衛局の若い職員のひとりは、わたしにビデオカメラを向け続けていたが、その顔は下を向いて、まともにわたしの目を見ることさえできない。本当に哀れというしかない姿がそこにあった。
機動隊員にも同様のことを、できる限りひとりひとりに語りかけるようにした。われながら言葉に怒気は含まれていたとは思うのだが、「君たちは民意に背く残念な任務をさせられているんだよ」ということだけは、微力ながら少しでも伝えたかったのだ。
もみ合っている最中に「警察官が暴力を振るってどうする!」と叫ぶ当方をにらみ返していた機動隊員も、整然と隊列をつくった状態で静かに語りかけられると、やはり悲しそうな表情を浮かべるしかないように見えた。妙な言い方に聞こえるかもしれないが、機動隊員全員が無条件にこの「民意の圧殺行為」に誇りを持っているわけではないと伝わってきて、ほんの少しだけ安堵の念を覚えた。
この市民の抗議の輪には「今夜、辺野古ゲートが危ないらしい」と聞いて駆けつけた山本太郎参院議員や、地元沖縄選出の糸数(いとかず)慶子参院議員もいて、ハンドスピーカーで抗議のスピーチを行なった。
山本議員自身が警察官によって暴力的に排除されるのを、わたしは横にいてつぶさに目撃した。
彼が強調したのは「名護市長選、知事選、衆院選の沖縄全選挙区で、新基地を造らせないオール沖縄が勝利したのだから、これを無視してよいわけがないでしょう」という実にまっとうな論点だった。
たくさんの県内政治家もゲート前に駆けつけていた。
例えばわたしの隣にいた旧知の県内市議会議員は、屈強な機動隊員の隊列に向かって走り、何度も何度も体当たりをしていた。
そのありったけの怒りと悔しさと抗議の意思の表現は、目の前の県警の若者たちに対してではなく、本当は、まっとうな言葉と理屈の通じない相手、すなわち安倍政権に向けられたものだと痛感させられた。
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ウクライナ市民に義勇軍と戦う気はない
2015-01-31

ポロシェンコ
ウクライナ市民には戦う気はない 1/28 ロシアの声
ウクライナ政権は兵役義務のある市民が動員を拒否したことに対し、これを非難している。
刑事犯罪に問われると脅しても、兵役義務のある市民の半数は様々な手段を用い、徴兵逃れに必死だ。
これより以前、プーチン大統領は戦争拒否を行うウクライナ国民に対し、ロシアに移住し、兵役義務の期間をやり過ごすよう提案していた。
ウクライナ西部の市民は戦地へ行くことを拒否している。これはユーリー・ビリュコフ・ウクライナ大統領顧問が自身のFacebook に書き込んでいる。
徴兵第1週目の結果はビリュコフ大統領顧問に一撃を与えた。特に彼を憤慨させたのは西部地域の州の市民だった。
なぜならこの地域は昔から、親西側のキエフ指導部の支持基盤であり、東のドンバスを忌み嫌っていたからだ。
政治学者でキエフ政治調査紛争学センターのミハイル・ポグレビンスキー所長は、ウクライナ政権にとっては、キエフへの不服従は予想外の不快な事態だったとして、次のように語っている。
「西部の住民だけでなく、ウクライナ全土で市民らはなぜ自分の命まで危険にさらす必要にあるのか、あまり理解していない。
プロパガンダはもうほとんど効果がない。それに、西部住民の大半は東部の自治に対し、何の反論もなかったのだ。
調査の結果わかったのだが、西部住民は東部でロシア語が用いられることにも異議は唱えていなかった。
そして、動員された多くのウクライナ人が戦場から生きてもどれず、また障害を負って帰還したという事実、これにプラスして、ウクライナ軍の戦線での失態。
このすべてが士気の有無に影響しているのだ。」
過去1年ですでに4度目となった全土での召集がキエフで1月20日、発表された。
兵役義務年齢は25-60歳。この年齢の市民は家から離れ、3ヶ月間の軍事教練を受けねばならない。
ウクライナ政権は、20歳の予備役軍人は「戦地」に送られることはないと約束したが、市民はこれを信用していない。
このため、徴兵から逃れる万策を探している。国外に出られる人もいる。
ルーマニアとの国境近くのホステルやモーテルはウクライナ人の若者でいっぱいだ。徴兵逃れの人口流出はポーランドにまで達している。
ロシアへは、村を挙げて移住するケースもある。
これに関連し、プーチン大統領は戦争で無駄死にしたくないというウクライナ市民は難民に認定されなくとも、現行の30日という制限枠を越えてロシア領内に残ることができるように、この問題に取り組むよう指示を出している。
ウクライナ大統領府は刑法修正を行い、徴兵逃れに対する刑罰を厳格化する構えだ。
ウクライナ軍側の戦線は危機的状況にある。人員数、武器、航空機の数では勝っているにもかかわらず、シロビキ(治安維持機関)は後退しており、敵よりも多くの犠牲を出している。
ウクライナ政権は現在、義勇軍側の優勢に傾いている戦況を一時休止させようとして、ドネツク、ルガンスクの両人民共和国のリーダーらとコンタクトを再開することまでした。
これより以前、キエフ当局は休戦期間を軍の配置換えを行い、新たな攻撃を行うために利用した。
だが今度、休戦を求めるとすれば、ドンバスにはより確固とした保証が必要だ。キエフ側は保証を与える気はない。
このため、再び時間を引き延ばし、その間にあわてて新卒兵に塹壕を掘らせているのだ。
ーーーーーーーーーーーーーー
ウクライナ軍参謀本部「ウクライナにはロシア軍の正規部隊はいない」 1/29 ロシアの声
ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍はいまロシア軍の正規部隊と戦っているのではない、と述べた。
参謀本部のヴィクトル・ムジェンコ代表は木曜の会見で、「今日時点で我々は、軍事行動をとっている不法な軍事組織の中にロシア軍人およびロシア人がいるということについて複数の事実を有している。しかしロシア軍の正規部隊による軍事行動は見られない」と述べた。
キエフおよび米国・EUは再三にわたり、ウクライナ問題にモスクワが介入していることを非難している。
ロシアはこれを否認し、受け入れがたい非難だと主張している。
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ユーロの量的緩和はユーロの減価と米国流出へ
2015-01-30
意味のない量的緩和で日本を追う欧州中銀 ユーロ安・円高が進む可能性が高い 1/29 野口悠紀雄 ダイヤモンド・オンライン
1月22日、欧州中央銀行(ECB)が初の量的金融緩和を決定した。
これを受けて、日米欧の株価が上昇した。ユーロ圏の経済状況が好転するとの期待による。果たしてそうした効果が生じるのだろうか?
以下では、量的金融緩和によって、(1)ユーロの対ドル相場を下落させる効果があること。(2)ユーロの対円相場も下落させる(円高になる)可能性もあることを指摘しよう。
ECBの資産残高を12年水準まで戻す
今回の決定の内容は、つぎのとおりだ。
国債を含めて少なくとも1兆1000億ユーロ(約148兆円)の資産を購入する。
ドラギ総裁によると、月600億ユーロ(約8兆円)の資産購入を行なう。これは、事前に市場で予想されていた500億ユーロを上回るものだ。
追加購入分の80%は域内の各国中央銀行の責任で行なわれ、損失の発生に対しては各国中銀が負担する。
緩和の実施期間は当面2016年9月までとしたが、物価上昇率目標2%の達成が見通せるまでは期間以降も緩和を続けるとした。
この決定を受けて、日米欧の株価が上昇した。日本では、日経平均株価が1万7500円を回復し、今年初めて昨年末終値(1万7450円)を上回った。
ECBの資産残高のこれまでの推移は、図表1のとおりだ。12年には3兆ユーロ程度あったが、その後減少し、14年には2兆ユーロ程度になっていた。ECBの今回の決定は、これを12年頃の水準まで戻すことが目的だ。

なお、この間の日銀総資産とFRB総資産の推移は、図表2と図表3に示すとおりだ。
13年の初めに比べると、最近時点の日銀の総資産は約1.8倍に、FRB総資産は約1.3倍に増加している。
このように、これまでの数年間、日米の中央銀行とECBとでは、総資産が対称的な動きを示していたわけである。


物価下落が引き金
今回の決定は、2014年12月に、ユーロ圏の消費者物価指数が、前年同月比0.2%下落とマイナスに転じたことに促されたと言われる。
図表4に見るように、インフレ率は12年頃は2%程度だったが、その後ユーロの増価に伴い、低下していた。

ECBは今回の緩和措置によって、つぎの3つの経路を通じて消費者物価指数の引き上げを狙っていると言われる。
(1)実体経済活動の活発化
(2)株価の値上がり
(3)ユーロの減価
これらのうち、(1)や(2)が実現するかどうかは疑問である。
しかし、(3)が生じることは、ほぼ間違いないと思われる。
実際、スイス中央銀行が15日、スイスフランの対ユーロ増価を抑える無制限介入政策を放棄したのも、ECBの量的緩和実施が確実と予測されたためだ。そうなれば無制限介入に無理があると判断されたのである。
ただし、原油価格が下落しているため、原油以外の輸入価格が上昇したとしても、消費物価上昇率がプラスに転じるかどうかは分からない。この点は、日本と同じ状況だ。
また、仮に物価上昇率がプラスになったとしても、それによってユーロ圏が抱えている実体経済の問題が解決されるわけではない。
ECBは、日本銀行が犯したのと同じ道を歩もうとしているわけだ。
以下では、為替レートの問題に絞って検討を行なおう。
ドルに対するユーロ安が今後も進行する可能性は高い
金融緩和が通貨を減価させるメカニズムとして教科書に書いてあるのは、「マネーストックが増加してマネーに対する需給が緩和し、金利が低下して資本流出を招き、通貨が減価する」というものだ。
しかし、ここ数年の量的緩和は、日本でもアメリカでも、マネーストックを顕著には増加させていない。
それにもかかわらず金利は低下している。
これは、教科書的なメカニズムではなく、中央銀行が国債市場で大量の国債を購入することの直接的な結果と考えられる。
それが金利を低下させて通貨の減価を引き起しているのだ。
このことから、「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えが為替市場で支配的になってきた。
実際、図表1、図表2、図表3に示す中央銀行資産の推移と、図表5に示す為替レートの推移を見ると、中央銀行の資産の変化と為替レートの変動が強く相関していることが分かる。

ユーロの対ドルレートを見ると、2012年8月頃には1ユーロ=1.2ドル程度であったが、ECBの資産減少とFRBの資産増加に伴ってユーロが増価し、14年4月頃には、1ユーロ=1.38ドル程度になった。
ECBが今後資産を拡大していくことで、この関係が大きく変わる。FRBが金融緩和を終了したので、今後はFRBの資産は増えない。
したがって、ドルに対してユーロが下落することになる。
ユーロの下落は、すでに生じている。すなわち、14年5月頃には1ユーロ=1.4ドル程度にまでなっていたユーロの対ドル相場は、最近では1.15ドル台にまで下落している。
これは、13年以来の安値圏だ。
こうしたことから、16年末までに、02年以来の「パリティ」(1ユーロ=1ドル)が実現するとの見通しもある。
この半年間の動きからしても、また米欧金融政策の動きからしても、それはありうる事態だと思われる。
ただし、ここでつぎの点に注意する必要がある。
それは、マーケットはすでに以上で述べた条件変化を読み込み、為替レートに反映させてしまっている可能性が強いことだ。
為替市場においては、現時点で利用可能な情報は、すべて価格に反映されていると考えるのが自然だ。
そうだとすれば、今後のユーロレートは、現時点では得られない情報(例えば、ギリシャの情勢)などによってしか動かないということになる。
なお、ユーロ圏での物価上昇率が低下したのは、これまでドルに対してユーロが増価したためだ(日本における10~12年頃の状況と同じである)。
すでに述べたように、今後ユーロがドルに対して減価すれば、その状態は変わるだろう。
円高ユーロ安になる可能性が強い
ユーロ・円相場については、どうであろうか?
図表6に示すこれまでの推移を見ると、つぎのとおりだ。
リーマンショック前には1ユーロ=160円を超えていたユーロ相場は、リーマンショック以後継続的に低下し、12年夏には1ユーロ=100円を割り込む水準まで円高・ユーロ安になっていた。
しかし、そこをボトムとしてユーロは増価し、2013年12月には1ユーロ=140円を超える水準まで円安・ユーロ高が進んだ。これは、最初はECBの資産の減少と、13年以降は日銀の資産増加とも相関している。
しかし、14年12月に1ユーロ=150円近くまでになっていたユーロの対円相場は、その後急激に下がった。1月15日のスイス中銀の決定の影響と言われることがあるのだが、下落は12月初めから生じていたことに注意が必要である。

最近のレートは1ユーロ=136円程度だ。13年11月頃の水準にまで戻ったことになる。ただし、現在のところは、対ドルのような大幅なユーロ安にはなっていない。
(※ 現在はさらに130円に下落した。)
しかし、ユーロが対ドルで大きく下落すると、円に対しても下落する可能性がある。
仮に1ユーロ=1ドルが実現すれば、1ドル=130円なら1ユーロ=130円になるし、1ドル=120円なら1ユーロ=120円になる。1ユーロ=120円というのは、13年1月月頃の水準だ。
(※ 現在120円になっていることは、ユーロ自体として円に対しての下落が始まっている。)
つまり、円がドルに対して今後大幅に円安にならないかぎり、円ユーロレートはかなりの円高にならざるをえないのである。
では、どちらが実現するか? 為替レートの将来を予測するのは原理的に不可能なのだが、仮に「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えに従えば、つぎのようになる。
前述のように、ECBの資産拡大ペースは、月600億ユーロだ。これは、年0.72兆ユーロに相当する。現在の資産総額は、2.19兆ユーロなので、これが、1年後には2.91兆ユーロと1.33倍になる。仮にその後も継続すれば、2年後には3.63兆ユーロと1.66倍になる。
他方で日銀は、14年10月31日に開いた金融政策決定会合において、マネタリーベースの年間増加額を約80兆円とし、中長期国債の買い入れペースを年約80兆円にするとした。仮にそれに等しいペースで総資産が増大するとすれば、現在300兆円である総資産残高は、1年後には380兆円と1.27倍になり、2年後には460兆円と1.53倍になる。
このように、ECBの拡大ペースは日銀のそれを上回る。したがって、円高ユーロ安になる。
ただし、対ドル相場について述べたように、こうした情報はすでに市場に織り込み済みかもしれない。
前述した12月初めからのユーロ安は、そうしたメカニズムで生じた可能性もある。
日銀が追加緩和をすればこの関係は変わる。しかし、国内の国債市場はすでに飽和状態なので、第2次追加緩和は難しいだろう。
スイス中銀の決定の際には、ユーロ安・円高が生じ、日本の株価下落をもたらした。同じことが今後起こる可能性がある。
ところが、日本の株式市場は、そうした事態を考えていないようである。
ECBの量的緩和のニュースを受けてソニーの株価は上昇した。同社は欧州事業の比率が高いため、ユーロ圏の景気回復期待が買いにつながったとされる。
しかし、そうなるかどうか、疑問だ。今回の措置は、欧州に対する輸出の採算を悪化させる効果のほうが大きいだろう。
そうなれば、欧州関連銘柄を中心に日本の株価を下げる要因になる可能性がある。
「現時点で利用可能な情報はすべて価格に正しく反映する」というのが、効率的市場の条件だ。
日本の株式市場を果たして効率的市場と見なしてよいかどうか、大いに疑問だと言わざるをえない。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
※ 前にも書いたが、同じことを書く。
日本同様に、ユーロ圏からの資金流出が激しくなることは疑いない。
ではその資金は何処へ?
これは野口氏のいうとおりだ。
もっぱら米国ドル市場、そしてスイスフラン、わずかに日本円市場ということになる。
米国の量的緩和終了の尻拭いにほかならない。
米国に最も都合の良いECBの量的緩和決定なわけだ。
ECBは日本同様に米国の圧力に負けたわけである。
1月22日、欧州中央銀行(ECB)が初の量的金融緩和を決定した。
これを受けて、日米欧の株価が上昇した。ユーロ圏の経済状況が好転するとの期待による。果たしてそうした効果が生じるのだろうか?
以下では、量的金融緩和によって、(1)ユーロの対ドル相場を下落させる効果があること。(2)ユーロの対円相場も下落させる(円高になる)可能性もあることを指摘しよう。
ECBの資産残高を12年水準まで戻す
今回の決定の内容は、つぎのとおりだ。
国債を含めて少なくとも1兆1000億ユーロ(約148兆円)の資産を購入する。
ドラギ総裁によると、月600億ユーロ(約8兆円)の資産購入を行なう。これは、事前に市場で予想されていた500億ユーロを上回るものだ。
追加購入分の80%は域内の各国中央銀行の責任で行なわれ、損失の発生に対しては各国中銀が負担する。
緩和の実施期間は当面2016年9月までとしたが、物価上昇率目標2%の達成が見通せるまでは期間以降も緩和を続けるとした。
この決定を受けて、日米欧の株価が上昇した。日本では、日経平均株価が1万7500円を回復し、今年初めて昨年末終値(1万7450円)を上回った。
ECBの資産残高のこれまでの推移は、図表1のとおりだ。12年には3兆ユーロ程度あったが、その後減少し、14年には2兆ユーロ程度になっていた。ECBの今回の決定は、これを12年頃の水準まで戻すことが目的だ。

なお、この間の日銀総資産とFRB総資産の推移は、図表2と図表3に示すとおりだ。
13年の初めに比べると、最近時点の日銀の総資産は約1.8倍に、FRB総資産は約1.3倍に増加している。
このように、これまでの数年間、日米の中央銀行とECBとでは、総資産が対称的な動きを示していたわけである。


物価下落が引き金
今回の決定は、2014年12月に、ユーロ圏の消費者物価指数が、前年同月比0.2%下落とマイナスに転じたことに促されたと言われる。
図表4に見るように、インフレ率は12年頃は2%程度だったが、その後ユーロの増価に伴い、低下していた。

ECBは今回の緩和措置によって、つぎの3つの経路を通じて消費者物価指数の引き上げを狙っていると言われる。
(1)実体経済活動の活発化
(2)株価の値上がり
(3)ユーロの減価
これらのうち、(1)や(2)が実現するかどうかは疑問である。
しかし、(3)が生じることは、ほぼ間違いないと思われる。
実際、スイス中央銀行が15日、スイスフランの対ユーロ増価を抑える無制限介入政策を放棄したのも、ECBの量的緩和実施が確実と予測されたためだ。そうなれば無制限介入に無理があると判断されたのである。
ただし、原油価格が下落しているため、原油以外の輸入価格が上昇したとしても、消費物価上昇率がプラスに転じるかどうかは分からない。この点は、日本と同じ状況だ。
また、仮に物価上昇率がプラスになったとしても、それによってユーロ圏が抱えている実体経済の問題が解決されるわけではない。
ECBは、日本銀行が犯したのと同じ道を歩もうとしているわけだ。
以下では、為替レートの問題に絞って検討を行なおう。
ドルに対するユーロ安が今後も進行する可能性は高い
金融緩和が通貨を減価させるメカニズムとして教科書に書いてあるのは、「マネーストックが増加してマネーに対する需給が緩和し、金利が低下して資本流出を招き、通貨が減価する」というものだ。
しかし、ここ数年の量的緩和は、日本でもアメリカでも、マネーストックを顕著には増加させていない。
それにもかかわらず金利は低下している。
これは、教科書的なメカニズムではなく、中央銀行が国債市場で大量の国債を購入することの直接的な結果と考えられる。
それが金利を低下させて通貨の減価を引き起しているのだ。
このことから、「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えが為替市場で支配的になってきた。
実際、図表1、図表2、図表3に示す中央銀行資産の推移と、図表5に示す為替レートの推移を見ると、中央銀行の資産の変化と為替レートの変動が強く相関していることが分かる。

ユーロの対ドルレートを見ると、2012年8月頃には1ユーロ=1.2ドル程度であったが、ECBの資産減少とFRBの資産増加に伴ってユーロが増価し、14年4月頃には、1ユーロ=1.38ドル程度になった。
ECBが今後資産を拡大していくことで、この関係が大きく変わる。FRBが金融緩和を終了したので、今後はFRBの資産は増えない。
したがって、ドルに対してユーロが下落することになる。
ユーロの下落は、すでに生じている。すなわち、14年5月頃には1ユーロ=1.4ドル程度にまでなっていたユーロの対ドル相場は、最近では1.15ドル台にまで下落している。
これは、13年以来の安値圏だ。
こうしたことから、16年末までに、02年以来の「パリティ」(1ユーロ=1ドル)が実現するとの見通しもある。
この半年間の動きからしても、また米欧金融政策の動きからしても、それはありうる事態だと思われる。
ただし、ここでつぎの点に注意する必要がある。
それは、マーケットはすでに以上で述べた条件変化を読み込み、為替レートに反映させてしまっている可能性が強いことだ。
為替市場においては、現時点で利用可能な情報は、すべて価格に反映されていると考えるのが自然だ。
そうだとすれば、今後のユーロレートは、現時点では得られない情報(例えば、ギリシャの情勢)などによってしか動かないということになる。
なお、ユーロ圏での物価上昇率が低下したのは、これまでドルに対してユーロが増価したためだ(日本における10~12年頃の状況と同じである)。
すでに述べたように、今後ユーロがドルに対して減価すれば、その状態は変わるだろう。
円高ユーロ安になる可能性が強い
ユーロ・円相場については、どうであろうか?
図表6に示すこれまでの推移を見ると、つぎのとおりだ。
リーマンショック前には1ユーロ=160円を超えていたユーロ相場は、リーマンショック以後継続的に低下し、12年夏には1ユーロ=100円を割り込む水準まで円高・ユーロ安になっていた。
しかし、そこをボトムとしてユーロは増価し、2013年12月には1ユーロ=140円を超える水準まで円安・ユーロ高が進んだ。これは、最初はECBの資産の減少と、13年以降は日銀の資産増加とも相関している。
しかし、14年12月に1ユーロ=150円近くまでになっていたユーロの対円相場は、その後急激に下がった。1月15日のスイス中銀の決定の影響と言われることがあるのだが、下落は12月初めから生じていたことに注意が必要である。

最近のレートは1ユーロ=136円程度だ。13年11月頃の水準にまで戻ったことになる。ただし、現在のところは、対ドルのような大幅なユーロ安にはなっていない。
(※ 現在はさらに130円に下落した。)
しかし、ユーロが対ドルで大きく下落すると、円に対しても下落する可能性がある。
仮に1ユーロ=1ドルが実現すれば、1ドル=130円なら1ユーロ=130円になるし、1ドル=120円なら1ユーロ=120円になる。1ユーロ=120円というのは、13年1月月頃の水準だ。
(※ 現在120円になっていることは、ユーロ自体として円に対しての下落が始まっている。)
つまり、円がドルに対して今後大幅に円安にならないかぎり、円ユーロレートはかなりの円高にならざるをえないのである。
では、どちらが実現するか? 為替レートの将来を予測するのは原理的に不可能なのだが、仮に「中央銀行のバランスシートが拡大すれば通貨が減価する」という考えに従えば、つぎのようになる。
前述のように、ECBの資産拡大ペースは、月600億ユーロだ。これは、年0.72兆ユーロに相当する。現在の資産総額は、2.19兆ユーロなので、これが、1年後には2.91兆ユーロと1.33倍になる。仮にその後も継続すれば、2年後には3.63兆ユーロと1.66倍になる。
他方で日銀は、14年10月31日に開いた金融政策決定会合において、マネタリーベースの年間増加額を約80兆円とし、中長期国債の買い入れペースを年約80兆円にするとした。仮にそれに等しいペースで総資産が増大するとすれば、現在300兆円である総資産残高は、1年後には380兆円と1.27倍になり、2年後には460兆円と1.53倍になる。
このように、ECBの拡大ペースは日銀のそれを上回る。したがって、円高ユーロ安になる。
ただし、対ドル相場について述べたように、こうした情報はすでに市場に織り込み済みかもしれない。
前述した12月初めからのユーロ安は、そうしたメカニズムで生じた可能性もある。
日銀が追加緩和をすればこの関係は変わる。しかし、国内の国債市場はすでに飽和状態なので、第2次追加緩和は難しいだろう。
スイス中銀の決定の際には、ユーロ安・円高が生じ、日本の株価下落をもたらした。同じことが今後起こる可能性がある。
ところが、日本の株式市場は、そうした事態を考えていないようである。
ECBの量的緩和のニュースを受けてソニーの株価は上昇した。同社は欧州事業の比率が高いため、ユーロ圏の景気回復期待が買いにつながったとされる。
しかし、そうなるかどうか、疑問だ。今回の措置は、欧州に対する輸出の採算を悪化させる効果のほうが大きいだろう。
そうなれば、欧州関連銘柄を中心に日本の株価を下げる要因になる可能性がある。
「現時点で利用可能な情報はすべて価格に正しく反映する」というのが、効率的市場の条件だ。
日本の株式市場を果たして効率的市場と見なしてよいかどうか、大いに疑問だと言わざるをえない。
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※ 前にも書いたが、同じことを書く。
日本同様に、ユーロ圏からの資金流出が激しくなることは疑いない。
ではその資金は何処へ?
これは野口氏のいうとおりだ。
もっぱら米国ドル市場、そしてスイスフラン、わずかに日本円市場ということになる。
米国の量的緩和終了の尻拭いにほかならない。
米国に最も都合の良いECBの量的緩和決定なわけだ。
ECBは日本同様に米国の圧力に負けたわけである。
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