中国はロシアが倒れることを望まない、意思も力もある
2014-12-21

ルーブル暴落は西側から多極側への脅し
米英とサウジによる原油価格操作に加え、国際金融資本の為替操作により、ロシア・ルーブルは暴落し、ロシア経済に危機的不安をもたらしている。
広大な国土、資源輸出、ほぼ自給できる生産構造など、欧米の「経済制裁」がロシアを「叩きのめす」可能性は著しく少ない。
米英は彼らの専門技術といってよい市場操作で、ロシアに「危機的不安」をもたらすことが、その目的である。
ルーブル暴落は仕掛けられた「脅し」である。
実体経済の基礎があるので、これから長期に何年も下落するものではない。
資本規制、物価統制などにより克服が十分可能である。
幸い、ソ連崩壊とエリツィン経済崩壊を経験し、プーチンで総括した国民は、米国の「脅し」には屈しないようだ。
プーチンのいうとおり最悪でも2年くらいのものである。
以下はロシアのルーブル危機に対する中国の公式な表明といってよい。
つまり、中国はロシアを支援する意思があり、支援する手だて、用意もあるという表明である。
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中国はロシアが倒れることを望んでいない 12/19 人民網(人民日報)
原油価格の下落とルーブルの急落によってロシア経済は今世紀に入って最も困難な境地に置かれている。
ルーブルは15日、対ドルで8%下落。16日にはさらに急落し、世界的な事件となった。
今年ルーブルはの価値は50%以下に下落し、ウクライナの通貨フリヴニャを上回る、世界で最も不安定な通貨となった。
ロシア経済を支える力強い要素は現在見られず、今後どうなるかは予測困難だ。
ソ連崩壊が1980~90年代の原油価格長期低迷期に起きたことを多くの人は連想する。
さらなる経済危機はプーチン政権を試練にさらすと指摘する声もある。
西側メディアはプーチン大統領の「強硬姿勢」が手痛い打撃をこうむると次々に予測。
戦略的に「守勢と自己防衛」に転じると分析するものもあれば、「さらに過激になる」ことを懸念するものもある。
ロシア経済・社会は1990年代のソ連崩壊当初よりもさらにひどい状況になるのだろうか?
これは興味深い問題だ。
当時と比べ、ロシアの工業・農業生産能力に大きな変化はない。
新しく増えた不利な要素は西側の制裁と露米対立の先鋭化だ。
ソ連時代と比べ、ロシアの全体的国力は大幅に下降し、戦略の幅も狭まった。
今日のロシアにとって有利な要素は、社会の結束力が高まり、プーチン大統領の威信が高いこと、
そしてソ連崩壊でひどい目にあったことから、ロシア国民が国家の困難に対して冷静かつ理性的な考えを持っており、
西側に対してもう幻想は抱いていないことだ。
中国はロシアの戦略環境にとって最大の変数だ。
ソ連崩壊前後、中国は国際的地位が低く発言力も弱かったが、現在では世界の戦略構造における新しい広大な天地となっている。
このため西側ではなく東側に目を向けることがロシアにとって現実的選択肢ともなっている。
すでに中露関係はロシアが戦略上のリスクに対抗するうえで鍵となる条件の1つと見なされている。
中国社会の観点からは、ここには整理し、明らかにする必要のある点がいくつかある。
(1)中露戦略協力はイデオロギーによる作品ではもうなく、両国の国益の相互作用による傑作だ。
米国と西側に弱みを見せないロシアは中国と国益面で策応し、中露は互いを必要としている。
これは背中合わせの戦略関係だ。
(※ 北風:イデオロギーではない、つまりイデオロギーによる対立はすでにあり得なく、実利による「背中合わせ」の防護である。)
(2)中国には肝心な時に、肝心な分野でロシアを支援する能力がある。
だが中国の対露支援はロシア政府から要請があった時に、正常な国家間協力の形で行われるべきだ。
中国はロシアを高度に尊重し、ロシア社会におけるプーチン大統領の威望を守る必要がある。
(※ 出過ぎた支援は「介入」となり、ロシアが最も警戒するところ。)
(3)今回の危機のたゆまぬ深化は、ロシア社会の戦略観にとって新たな試練となる。
ロシアが危機のために中国に接近し続けるというのは仮説に過ぎず、不確定性が多い。
中国が中露両国の根本的利益にプラスの影響力を与え、誘導することができるかどうかも試されることとなる。
(※ ソ連崩壊からプーチン再建の総括がどう為されているかが、ロシア「国民」の戦略観である。それが弱ければプーチンを支えられずに西側に屈服する可能性は排除できない。
中国としてはロシアの根本的利益(独立性)を守り、支援できるかが試される。)
中国はすでに一挙手一投足が全局面に影響を及ぼす世界的経済大国だが、これまでに発揮してきた政治的影響力は多くが間接的なものだった。
ロシア危機は経済的側面が強いが、その今後の行方は世界の政治に関わってくる。
現在各国が騒がしい中、中国は声を発していないが、遠くへ行ったわけではない。
中国はロシアが倒れることを望んでいない。
この姿勢は全世界がよく分っている。
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米国、キューバ国交回復は経済乗っ取り、政府転覆への道か
2014-12-21

キューバは53年に及ぶ米国の経済封鎖よって、一時は国家と社会の存続が危ぶまれた。
結果は一人の餓死者も出さずに切り抜け、辛抱強い苦難の末にラテンアメリカ諸国のほとんどと国交回復し、米州大陸では逆に米国が対キューバで孤立の事態になっていた。
その米国がキューバとの国交正常化に踏み出すという。
だが、キューバ国民にとっては、そう甘い話では無いかもしれない。
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米国・キューバの国交正常化の背景 12/19 闇株新聞
オバマ大統領は昨日(12月17日)ホワイトハウスで演説し、1961年以降断絶しているキューバとの国交正常化交渉を始めると表明しました。
キューバは1959年に米国の傀儡だったバチスタ政権をフィデル・カストロやチェ・ゲバラが倒し(キューバ革命)、社会主義国家を建国して現在に至ります。当然ですがキューバ建国時はソ連、現在でもロシアが後ろ盾となっています。
米国は1961年に国交を断絶したあと、ソ連がキューバに核ミサイルを持ち込み1962年10月には米ソ緊張が極限に達しました(キューバ危機)。それ以来、米国とキューバは犬猿の仲となっていました。
今回の正常化交渉は、首都ハバナに米国大使館を再開、米国民のキューバ渡航規制を緩和、キューバへの送金規制を緩和、対キューバ禁輸を緩和(通信機器輸出は緩和されますが武器輸出は不明です)、キューバのテロ支援国家指定の見直しなどが含まれます。
ちなみに米国が現在テロ支援国家に指定している国は、キューバ、イラン、シリア、スーダンだけで、北朝鮮は2008年に指定解除しています。
米国・キューバ両国は昨年から水面下でバチカン(ローマ法王)やカナダ政府の仲介で交渉していたようですが、それでは何でこのタイミングで発表に踏み切ったのでしょう?
大きく分けて2つの理由があります。
1つは任期が2年を切ったものの内政・外交とも何1つ実績がないオバマ大統領が、歴史に名を残すためです。
オバマ大統領は特に外交面でアフガニスタン、イラク、シリアの混乱を収束できず、その一方でイランに接近してサウジアラビアやエジプトとの関係をギクシャクさせてしまうなどの迷走が続きます。
もう1つは、後ろ盾のロシアが欧米の経済制裁に加え最近では原油価格とルーブルが急落して経済が混乱しているため、今のロシアは「叩いても大丈夫」と考えたからです。
プーチン大統領は本年7月にキューバを訪れており、さらに関係が強化される兆しがありました。またオバマ大統領は対ロシア経済制裁の再強化も検討しています。
どう考えても著しくバランスを欠く、大変に安直な決断です。
米国内でもさっそく野党共和党が反発しています。野党といっても共和党は1月に召集される新議会では上下院とも多数を占めるため、そうでなくても困難な議会との折衝をますます悪化させることになります。
キューバ移民の息子であるマルコ・ルビオ上院議員は「北朝鮮やイラン、ベネズエラなどの独裁者を優位に立たせるだけだ」と批判し、キューバ大使が指名されても上院は承認せず、また大使館設置予算も認めない意向を示しました。ルビオ氏は新議会でも上院外交委員長となるはずです。
また先日、次期大統領選への出馬に意欲を示したばかりのジェブ・ブッシュ・元フロリダ州知事も「悲惨な人権侵害国家の独裁者に報酬を与えた」と批判しました。
ジェブ・ブッシュ氏の夫人はヒスパニックで、ブッシュ氏自身もカトリックに改宗しているなど、米国内のキューバ移民を含むヒスパニックに大きな影響力を持っています。
つまり次期大統領選挙でも共和党の攻撃材料とされてしまいそうな決断となりそうです。
一方でキューバおよびキューバ国民には経済的メリットが大きく、大賛成であると伝えられています。
ただ国民1人あたりのGDPが300ドル程度のキューバに、米国から資本が殺到すれば(するはずです)、地上で唯一正しく機能している社会主義国家かもしれないキューバが「あっと」いう間に急激なインフレに襲われ、バブルまみれになってしまうはずです。
つまりキューバ国民にとっても問題が多いことになります。
どう考えても「いったい誰のためなのか」がよくわからない、大変に困ったオバマ大統領の決断となりそうです。
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キューバにおける体制転覆 Paul Craig Roberts 12/19 12/21翻訳:「マスコミに載らない海外記事」から
キューバとの国交正常化は、外交上の飛躍的進展の結果でもなければ、ワシントン側の心変わりでもない。
正常化は、アメリカ大企業が、キューバにおけるブロードバンド・インターネット市場開発等、キューバで利益を上げる機会を求めた結果に過ぎない。
アメリカの左翼やキューバ政府は、正常化を幸いだと考える前に、正常化すれば、アメリカの資金とアメリカ大使館がやってくることに思いをいたすべきだ。
アメリカの資金が、キューバ経済を乗っ取るだろう。
大使館は、キューバ政府を転覆させる為のCIA工作員の巣窟となるだろう。大使館は、アメリカが、キエフでの様に、だまされやすい参加者達を、適切な時期に街頭抗議行動に繰り出させることが可能なNGOをたちあげるための基地となり、大使館開設で、ワシントンは新たな政治指導部の一団を育てることが可能になる。
要するに、国交正常化とは、キューバの政権転覆を意味している。まもなく、キューバは、もう一つのワシントンの属国になるだろう。
ペギー・ヌーナンや、マルコ・ルビオ上院議員等の保守派や共和党議員は、カストロは“天国のような国を、海に浮かぶ監獄に変えた悪漢”で、キューバとの国交正常化が“カストロ政権の正当性を認める”ことにはならないと明言している
例外的なアメリカ人に、何百人もの無辜の人々が囚われ、人生のほとんどの時期を拷問されて過ごしている、キューバにあるワシントン海外拷問監獄、グアンタナモを、ヌーナンは忘れている。
キューバ革命は、キューバ国民を、外国による支配と、外国の資本家による搾取から解放する為のものだった。
成功の可能性はともあれ、半世紀にわたるワシントンの敵意は、キューバの経済問題にも共産主義イデオロギーにも関係しているのだ。
アメリカ人の独善は極端だ。ヌーナンは幸せだ。
アメリカの資本が、今やカストロが生涯を捧げた仕事をくつがえそうとしている。
そして、もし資本で倒せなければ、CIAが倒すだろう。
CIAは、ピッグズ湾の恨みを晴らす機会を長いこと伺っていたが、国交正常化がその好機をもたらしてくれよう。


カミーロ・シンフェゴスとフィデル ハバナの街角
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